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バレンタインチョコレート
しおりを挟む2月半ば。
甘い香りが立ち込める街。
この時期の男たちの心をときめかす宝石のようなチョコレート。
絶望的とわかっていても期待せずにはいられない、そんな男子高校生達が集う冬空の教室に…
ソイツは突然現れた。
「あっ」
突然上がった間抜けな声に教室の視線が集中する。
そこには、女っ気の無い男子高校生、小塚と、足元に転がったピンクのリボンに包まれた小箱。
「チ…チョコレートだぁ~~~!?!?」
少しの静寂の後、小塚の叫びによって教室がわかりやすく動揺する。2月の宝石を前に男どもは小塚の足元に群がるが、小塚が慌てて拾い上げて腕をいっぱいに伸ばし頭の上に避難させる。
「あっぶな!お前らあぶな!!割れたらどーすんだよ!!!!」
「なに?ほんとにチョコレートなの?」
それをひょいっと背伸びもせず手に取れてしまう長身、バスケ部の木崎くん。
木崎くんが箱に鼻を近づけると確かに甘い香りがするのか、おお、と俄に目を輝かせる。
群がる男どもが手を伸ばすが、木崎の頭の上には誰も届かない。
「木崎くん…!その気合いの入った包装…本命チョコだよ絶対~~~!」
「片瀬、わかるの?」
「わかるよ~~~!好きでもない人にそんなしっかりした箱に入れたチョコ作らないよ!僕のねーちゃんは義理には袋に2、3個小分けにしたチョコをクラスで配り歩いてるよ?」
ハート柄の箱、ピンクのリボン、持ち主の恋心が透けて見えるような宝石箱を目前に、教室中の男子が魅せられたような視線を向ける。
特に、最初に見つけた小塚の執着は強く、木崎の腕を掴んでまで取り返そうと必死。
「おい、最初に見つけたのは俺だぞっ…!」
「関係なくない?落とし主困ってるよ多分。」
「か、え、せ!!」
「大事に作られてるらしいぞ。」
特に動揺もせずチョコレートを見つめる彼だが、この獣のようなクラスメイト達に渡すわけにはいくまいとご自慢の長い腕を上げ続けている。
事態は硬直、かのように思えたがここで鶴の一声。
「悪ぃ、それ俺のだ。」
名乗りを上げたのは屈指のイケメン澤田くん。
自信満々、堂々と真顔で手を差し出し、木崎にチョコレートを渡すようせがむ。
「…なんで澤田のってわかるんだ。」
「そりゃ、このクラスでバレンタインのチョコレートを貰えるようなやつ俺しかいないからな。」
この言葉には教室も大ブーイング。
小塚に至っては人を殺しかねない視線を澤田に向けてしまっている。
木崎と澤田、静かに見つめ合う2人。
木崎の腕がゆっくりと下がる。
チョコレートは果たして澤田の元に渡ってしまうのか…!?
「酷いよ澤田くん!!」
涙声の突然の叫びに教室はまたもどよめく。
先程まで笑顔だった片瀬が目を潤ませ、今にも泣きそうな表情で澤田を睨む。
この場で状況を掴めるものは誰もいないのか皆が片瀬の涙におろおろおろ。
特に動揺するのは涙を向けられた澤田。
「な、なんだよ片瀬…。俺のじゃないってのかよ。」
「そうだよ!僕のことなんだと思ってるの!?」
見えない話にクラスメイト皆、唖然。
終始落ち着いていた木崎くんもぽかん。
「僕の澤田くんへの本命チョコはお家に帰って食べさせる予定なの!だってケーキなんて学校に持ってこれるわけないでしょ!?澤田くんにはたくさん食べてもらわないと行けないんだから!!!」
「か、片瀬…!!!」
抱き合う2人。
わぁっ、と大歓声の沸き起こる教室。
そう、2人は愛し合っていたのだ!!
クール木崎くんも愛し合う2人の姿にほっこり表情を綻ばせて手を叩き祝福を贈る。
あれ、手を叩く?
さっきまで何か持っていた気がするんだが…
*
人のいない廊下、騒ぐ教室を置き去りにチョコレートを手に走り去る小塚くん。
リボンを徐に解き、中を開けると、そこにはキラキラと光るほど丁寧に作られた手作りチョコレート。
「……よかった、割れてない……」
ほっ、と一息ついた小塚くん、そっとチョコレートの箱を閉じてリボンを巻き直す。
「大事に…作ったんだよ、バカ鈍感。見たらわかるだろ…。」
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