さくさく読める男子校BL

姫咲ハルカ

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18歳になったよ

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3月1日。夕暮れの放課後。
校庭は部活に励む青少年たちの声で騒がしいが、少し離れたところにある部室棟のサッカー部部室は、静かで、うっすらと校庭の声が響くのみ。

部室内には、教師1人、生徒1人。
ジャージ姿の若い教師が、まっすぐに、マフラーを巻いた制服姿の生徒を見つめていた。
うつむいたままだった生徒が意を決したように顔を上げると、まっすぐに視線を返して見つめ合う。


「ねぇ、先生。俺、18になったよ。」

「ああ。誕生日おめでとう。」

ぶっきらぼうに見えて優しい声色に、生徒の目の奥の緊張が綻ぶように緩む。1歩、2歩、少しだけ距離をちかづけた生徒の口から、3年間で熟れた気持ちが溢れ出す。

「先生…俺と付き合って。」





「先生!俺と付き合ってください!」


初めてこの言葉を教師が聞いたのは、彼が1年生で入学してきた4月の春だった。


「はぁ~?先生ゴリマッチョだぞ~?」

「そこが良い!そこが良いの!ねぇ俺と付き合って~~!!」

「先生がお前みたいなガキと付き合うわけないだろ」


夕暮れの放課後、サッカー部の部室。
部員がみんな帰っても残って、部室で作業をしていた教師を手伝うとかなんとか言って、同じく残っていたぴかぴかの1年生から、突然の告白。
まだユニフォームには汚れひとつなく、新品の学校指定カバンを肩に下げ、教師の腰にまとわりついて必死の懇願。


「じゃあじゃあ、俺がガキじゃなくなればいい?大人になればいい?」

「そうだなぁ、大人になればな。」

「じゃあ18!18になったら付き合って!ね!」


馬鹿げた話だ、どうせ18……3年生になる頃には同い歳くらいのやつに好きなやつでも出来て、俺への恋心なんで忘れている。
そう思って教師は雑にあしらったが、それと同時に、子犬のような可愛らしい生徒が、自分にまっすぐに気持ちを向けてくることを、可愛らしいとも思っていたのだった。





「結局まるまる3年、思い続けられるとはな…。」


あの頃から背も10cmは伸びて、子犬は成犬になり、すっかり男前になっていた。
まっすぐと教師を見つめる、恋に溺れた瞳だけは、あの頃と変わらないままだった。


「おいで。」


教師が腕を広げる。

生徒はごくりと息を飲み、ゆっくりと近づくと、体を預け、逞しい腕の中に包まれた。



「先生、俺と…付き合ってくれるの?」


相手に伝わるほどの大きな鼓動をたてる心臓。
強く愛しい人を抱きしめながら、その気持ちを確認する。

沈黙が続き、問の答えがわからなかった生徒は、そっと視線を教師に向けた。

そこには、穏やかな笑みを向ける美しくて愛おしい男の顔があった。


「そうだな、お前の可愛さも、3年間で少しはわかったからな。」


優しく甘い返事に、ぱぁ、と表情を明るくすると、回した腕に強く力を込めて、引き寄せるようにして唇を……


「おっとまった、それはまだだな。」

「ええ!?付き合ったのに!?」

「卒業式まであと8日だ。耐えろ。」


3年間お預けを食らわされて、もうあと少し、手の届く距離にごちそうが来て、耐えられる気はしなかったが、生徒はこくりと頷いた。


「8日経ったら、子供は卒業させてやるよ。」


ぽんぽん、と頭を撫でながら教師は艶やかな視線を送る。
生徒の顔がみるみる真っ赤になるのを見て、教師は満足そうに笑うのだった。
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