2 / 7
18歳になったよ
しおりを挟む
3月1日。夕暮れの放課後。
校庭は部活に励む青少年たちの声で騒がしいが、少し離れたところにある部室棟のサッカー部部室は、静かで、うっすらと校庭の声が響くのみ。
部室内には、教師1人、生徒1人。
ジャージ姿の若い教師が、まっすぐに、マフラーを巻いた制服姿の生徒を見つめていた。
うつむいたままだった生徒が意を決したように顔を上げると、まっすぐに視線を返して見つめ合う。
「ねぇ、先生。俺、18になったよ。」
「ああ。誕生日おめでとう。」
ぶっきらぼうに見えて優しい声色に、生徒の目の奥の緊張が綻ぶように緩む。1歩、2歩、少しだけ距離をちかづけた生徒の口から、3年間で熟れた気持ちが溢れ出す。
「先生…俺と付き合って。」
*
「先生!俺と付き合ってください!」
初めてこの言葉を教師が聞いたのは、彼が1年生で入学してきた4月の春だった。
「はぁ~?先生ゴリマッチョだぞ~?」
「そこが良い!そこが良いの!ねぇ俺と付き合って~~!!」
「先生がお前みたいなガキと付き合うわけないだろ」
夕暮れの放課後、サッカー部の部室。
部員がみんな帰っても残って、部室で作業をしていた教師を手伝うとかなんとか言って、同じく残っていたぴかぴかの1年生から、突然の告白。
まだユニフォームには汚れひとつなく、新品の学校指定カバンを肩に下げ、教師の腰にまとわりついて必死の懇願。
「じゃあじゃあ、俺がガキじゃなくなればいい?大人になればいい?」
「そうだなぁ、大人になればな。」
「じゃあ18!18になったら付き合って!ね!」
馬鹿げた話だ、どうせ18……3年生になる頃には同い歳くらいのやつに好きなやつでも出来て、俺への恋心なんで忘れている。
そう思って教師は雑にあしらったが、それと同時に、子犬のような可愛らしい生徒が、自分にまっすぐに気持ちを向けてくることを、可愛らしいとも思っていたのだった。
*
「結局まるまる3年、思い続けられるとはな…。」
あの頃から背も10cmは伸びて、子犬は成犬になり、すっかり男前になっていた。
まっすぐと教師を見つめる、恋に溺れた瞳だけは、あの頃と変わらないままだった。
「おいで。」
教師が腕を広げる。
生徒はごくりと息を飲み、ゆっくりと近づくと、体を預け、逞しい腕の中に包まれた。
「先生、俺と…付き合ってくれるの?」
相手に伝わるほどの大きな鼓動をたてる心臓。
強く愛しい人を抱きしめながら、その気持ちを確認する。
沈黙が続き、問の答えがわからなかった生徒は、そっと視線を教師に向けた。
そこには、穏やかな笑みを向ける美しくて愛おしい男の顔があった。
「そうだな、お前の可愛さも、3年間で少しはわかったからな。」
優しく甘い返事に、ぱぁ、と表情を明るくすると、回した腕に強く力を込めて、引き寄せるようにして唇を……
「おっとまった、それはまだだな。」
「ええ!?付き合ったのに!?」
「卒業式まであと8日だ。耐えろ。」
3年間お預けを食らわされて、もうあと少し、手の届く距離にごちそうが来て、耐えられる気はしなかったが、生徒はこくりと頷いた。
「8日経ったら、子供は卒業させてやるよ。」
ぽんぽん、と頭を撫でながら教師は艶やかな視線を送る。
生徒の顔がみるみる真っ赤になるのを見て、教師は満足そうに笑うのだった。
校庭は部活に励む青少年たちの声で騒がしいが、少し離れたところにある部室棟のサッカー部部室は、静かで、うっすらと校庭の声が響くのみ。
部室内には、教師1人、生徒1人。
ジャージ姿の若い教師が、まっすぐに、マフラーを巻いた制服姿の生徒を見つめていた。
うつむいたままだった生徒が意を決したように顔を上げると、まっすぐに視線を返して見つめ合う。
「ねぇ、先生。俺、18になったよ。」
「ああ。誕生日おめでとう。」
ぶっきらぼうに見えて優しい声色に、生徒の目の奥の緊張が綻ぶように緩む。1歩、2歩、少しだけ距離をちかづけた生徒の口から、3年間で熟れた気持ちが溢れ出す。
「先生…俺と付き合って。」
*
「先生!俺と付き合ってください!」
初めてこの言葉を教師が聞いたのは、彼が1年生で入学してきた4月の春だった。
「はぁ~?先生ゴリマッチョだぞ~?」
「そこが良い!そこが良いの!ねぇ俺と付き合って~~!!」
「先生がお前みたいなガキと付き合うわけないだろ」
夕暮れの放課後、サッカー部の部室。
部員がみんな帰っても残って、部室で作業をしていた教師を手伝うとかなんとか言って、同じく残っていたぴかぴかの1年生から、突然の告白。
まだユニフォームには汚れひとつなく、新品の学校指定カバンを肩に下げ、教師の腰にまとわりついて必死の懇願。
「じゃあじゃあ、俺がガキじゃなくなればいい?大人になればいい?」
「そうだなぁ、大人になればな。」
「じゃあ18!18になったら付き合って!ね!」
馬鹿げた話だ、どうせ18……3年生になる頃には同い歳くらいのやつに好きなやつでも出来て、俺への恋心なんで忘れている。
そう思って教師は雑にあしらったが、それと同時に、子犬のような可愛らしい生徒が、自分にまっすぐに気持ちを向けてくることを、可愛らしいとも思っていたのだった。
*
「結局まるまる3年、思い続けられるとはな…。」
あの頃から背も10cmは伸びて、子犬は成犬になり、すっかり男前になっていた。
まっすぐと教師を見つめる、恋に溺れた瞳だけは、あの頃と変わらないままだった。
「おいで。」
教師が腕を広げる。
生徒はごくりと息を飲み、ゆっくりと近づくと、体を預け、逞しい腕の中に包まれた。
「先生、俺と…付き合ってくれるの?」
相手に伝わるほどの大きな鼓動をたてる心臓。
強く愛しい人を抱きしめながら、その気持ちを確認する。
沈黙が続き、問の答えがわからなかった生徒は、そっと視線を教師に向けた。
そこには、穏やかな笑みを向ける美しくて愛おしい男の顔があった。
「そうだな、お前の可愛さも、3年間で少しはわかったからな。」
優しく甘い返事に、ぱぁ、と表情を明るくすると、回した腕に強く力を込めて、引き寄せるようにして唇を……
「おっとまった、それはまだだな。」
「ええ!?付き合ったのに!?」
「卒業式まであと8日だ。耐えろ。」
3年間お預けを食らわされて、もうあと少し、手の届く距離にごちそうが来て、耐えられる気はしなかったが、生徒はこくりと頷いた。
「8日経ったら、子供は卒業させてやるよ。」
ぽんぽん、と頭を撫でながら教師は艶やかな視線を送る。
生徒の顔がみるみる真っ赤になるのを見て、教師は満足そうに笑うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる