さくさく読める男子校BL

姫咲ハルカ

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スカートと風紀

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校内中見渡す限り、男、男、男。
唯一の女子は食堂のおばちゃんという華のない男子校に、ひらり翻るミニスカート。

如月勇次郎は、女装男子であった。

明るい髪色のウィッグにキャラクター物のアクセサリーをつけまくっては、デコった鞄に短いスカート。
喋ってそのバリトンボイスを響かせなければ完全に女子高生で、男だらけの校内をひとたび歩けば、視線を奪われない者はいなかった。


「ふん、男ってちょろいぜ」


如月が可愛く微笑めば、皆ちやほやしてくれる。可愛がってくれる。如月にとって女装は、もはや生きるために欠かせないツールとなっていた。

しかし、そんな如月に鬼のように厳しい者がたった1人。


「くぉらぁぁ!!如月!!!何度言ったら制服を着る気になるんだぁぁぁ!!!」


牙をむきだしブチ切れて突進してくるのは、風紀委員の二宮 樹。校内では馬鹿がつくほどの真面目と名が通っており、多少の制服の乱れも許さない風紀の鬼、もとい校則の犬である。


「げっ、二宮かよ。なんで俺のこの可愛さがわからんのかなぁ」

「可愛い可愛くないの問題では無い!規則を守るということは社会生活を送っていくことで当たり前に守るべきことなのだ!!」


人より数倍でかい声で叱られると、耳の中でキーンと音がなり、このまま難聴になりそうだ、と如月は可愛くない表情で舌打ちをした。


「見てな、お前が俺にデレデレになるまで、俺は女装を辞めない」

「そんな体たらく、私が晒すわけないだろ!」


この日の宣言以降、如月はあらゆる女装を二宮に披露した。清楚系、お嬢様風、クールビューティ、そのクオリティは眼福そのもので、飢えた男子高校生共は骨抜きにされていったが、二宮だけは、いつも通り叱りつけるだけだった……。





「なんだよアイツ……もしかして男が好きなのか……?」


今日のセクシー白ギャル女装も響かないとなると、いよいよネタ切れで、口元に手を当ててぶつぶつと呟きながら廊下を歩く如月。
ふと視線を前に向けると、ちょうど二宮の姿が。色仕掛けでも仕掛けてやろうと、壁に隠れて待ち伏せしたところ、二宮の話し声が聞こえてくる。


「なあ二宮は如月さんの女装、どれが好きなんだよ」


ナイス~~~!と心の中でガッツポーズ。
ぜひ聞いてみたかった話題を聞ける僥倖に、ドキドキしながら耳をそばだてる。


「私は彼の女装を認めていないぞ」

「いやーそれは校則があるからだろ。そうだ、学校じゃなかったとしたら?」


心臓の高鳴りが収まらない。
これまでに無いくらい緊張しながら固唾を飲んで次の言葉を待った。


「私は、近所のスーパーで買い物してた時の姿が1番好きだがな」


……。
予想がの言葉に一瞬思考が停止する。

そして、回り出す。

スーパーで買い物…?校外で女装をするのは街に出る時だけ。いつも行くスーパーは近所だから、わざわざウィッグをセットしたりメイクをしたりなんかしていない。
なんならいつもスウェットで……。


「や、やっぱ男が好きなんじゃねえか……」

誰に向けるでもなく言葉を紡いだ頬は、チークも要らないくらい色づいていた。





「き、如月……!その格好は……!」


次の日、如月は制服をきっちり着込んで、黒い短髪を整えて登校した。他の生徒の落ち込みっぷりときたら筆舌に尽くし難いが、二宮だけは、感動して嬉しそうな笑顔を見せていた。


「素晴らしい!品行方正な姿だ!」

「変わってるよ、お前……」

「変わってなどいない。ルールに則っているのだから、むしろ真っ当なのだ」


可愛くない自分でいることに不満はあるが、二宮の笑顔はあまりにも眩しく、もう女装を辞めてもいいとすら思ってしまった。


「君がしたい格好は、許されるところでするといい」

「女装自体に否定的な訳じゃないんだ」

「君が君らしくあることは良い事だ。美しいんだから、ありのままの自分も、着飾った自分も楽しみなさい」


美しい、なんて言われ慣れているはずなのに、二宮の言葉はじんわりと心の内に広がり体を暖めていくようだった。

もうスカートは履いていないはずなのに、気分は少女漫画のヒロインのよう。

男を好きになってしまったのは、男の姿になってからだった。
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