《完結》僕は棄てたのだ。

相沢拓

家電屋さんでの爆買いで、購入した最新の調理器具達を、纏めて特別に今日中に配送して貰える事になった。

     裕翔さんか、裕樹さんが受け取るらしい。

     その後は、食品を買いに食料品店へ行ったのだが、見たことのない雰囲気で、ちょっとだけ引いた。
置いてある品物が同じ物もあったのに？何故か違う物に見えたんだよ、値段も確実に高いんだ。


「隼人さん……普通のスーパーが良いです。此処は高いし、雰囲気が……」

「今日の所は此処で我慢してくれ。
今度は近所のスーパーに行こうな。
今日は、たちまち数日分の食材や調味料を買うぞ。
俺は何もわからんから、楓に任せた。
遠慮なく買えよ」

「わかりました隼人さん。気にしない様にします」


僕は値段を出来るだけ、目に入れない様にして、必要な物をカートのカゴに入れて行った。

    調味料を最低限必要な物を入れて……これだけでもカゴの中が、大変だ。

   そういえば、お米は炊飯器買った時に、オマケでくれたから要らないでしょう。嬉しかったなオマケしてもらえて。

   調理器具の小物達も家電屋さんで色々出逢えて嬉しかった。

   総ての物達は大切に使ってあげないとね……って、駄目だ駄目だ！
今は食材を探さないと駄目なんだよ。

    ついつい幸せ過ぎて、思いに溺れてしまう。

   僕はカートを押しながら、楽しそうに周りを見ていた、隼人さんに視線を向けて聞いてみた。


「隼人さんは、何が食べたいですか？」

「俺か？そうだな……オムライス…シチュー…ハンバーグ…照り焼きチキン…カレー…そんな感じのものだ。
あまり小鉢でちょっとづつとかは、苦手かもしれないな」

「良かったです。それなら僕でも大丈夫そうです。
そうですね…うどんグラタンとかどうですか？
後は、とりムネ肉とお豆腐を使った
ハンバーグとかコロッケ風チーズ焼きやホワイトロールキャベツ。
どれも僕が良く食べていた、節約料理なんですが」

「楓が良く食べてたんなら、俺もそれが食いたい。俺に作ってくれ」

「はい！美味しいかわからないけど…心はいっぱい込めて作りますね」

「笑顔の楓は可愛いな」


隼人さんが、僕の頭を優しく撫でてくれていたら。


「おいおいおいおい！ピンクのオーラ撒き散らしてんじゃね～よ。
此処はスーパーなんだけど、知ってる？お二人さん。

そして、お前は誰だよ？びっくりだわ！
透には聞いてたが、スッゲー変わり様だな。
恋人を見つけたら人間ってこんなに変わるのか？」


隼人さんの背後から、低いハスキーボイスが聞こえて来たので、僕が隼人さんの腕の隙間から覗いてみたら、灰色？の髪のジャージを着たイケメンさんが、変な顔をして立ってた。


「なんで拓がこんな時間こんな所に居るんだよ？
仕事は大丈夫なのか？明日から開演じゃなかったか？」

「今はたまたま休憩なんだよ。
近くの劇場だろう。
飯買いに来たらピンクオーラ見つけて、おいおいって思ったらお前だったんだよ。
俺のがびっくりだ。

    あっ！俺、時間あんまり無いんだ。
明日のチケット一人分しか渡してないけど、2人分の席用意するから一緒においで。
その時ゆっくり自己紹介するよ。

またな！隼人」


その人は最後の方、僕の目の前に来て
目線を合わせて笑顔で話し、颯爽と去って行きました。


「誰？」

「マジか？楓知らないのか？あいつの事……テレビや雑誌で出てるだろ」

「ごめんなさい……テレビ見ないです。
雑誌も図書館で興味のある物しか見なくて。
あの方は誰ですか？」

「今をときめく、女殺し俳優なんだとよ……俺と透の昔馴染みの友人でもある。
いい奴だから、安心して接しても大丈夫だ」

「俳優さんですか……僕何も知らなくて」


落ち込む僕に隼人さんが頭を撫でてくれながら。


「これから色々俺と知っていけばいいじゃないか。
教えてやるし、綺麗な場所に俺もいきたいから、旅行にも沢山行こうな。
楽しみだ。

先ずは、今晩の夕食の確保が先だがな。

さあ！買い物の続き行くぞ」

「はい、隼人さん」