《完結》僕は棄てたのだ。

皇子(みこ)

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「ううぅーーーん……」

「あら?やっとお目覚め?いつもいつもアンタは、トロいわね」

「えっ……愛美……なぜここに?ここは……どこ?……僕は……」

「アンタの所為で私は被害を受けたから、アンタに責任を取って貰おうと思ってね!うふふ楽しみだわ!」


だんだん頭がはっきりしてきた。
僕は、駅まで急いでる途中で拉致されたんだ。
最後に微かに聞こえた声は、妹の愛美の声だった。


「愛美、縄解いてくれないか?」

「バカじゃないのアンタ!
あたしが捕まえたのに、逃す訳ないじゃないの。
これからアンタは大金に変わるのよ。
アンタと一緒に住んでる金持ちのイケメンに、アンタと引き換えに金要求すんのよ!

さぁ~幾らにしょうかなぁ?
あのイケメン500ぐらい出すよねー
楽しみだわぁ~」

「隼人さんに迷惑かけないで!僕はどうなっても良いから…あの人には連絡しないで!」

「アンタほんっとにバカね!アンタを無傷で返す訳ないでしょ!
そのお綺麗な顔、ホント気に入らない!!
隠しておいたのに!だしやがって!!
お仕置きにこれから良いことが始まるからね。
お楽しみにぃ~」


愛美は靴音を響かせながら高らかに笑い、重そうな扉を閉めて出て行った。

静かになった部屋の中。
僕はどこに居るのだろう?

周りを見渡すと薄暗く良く見えないが、工場の様な場所なのだろう。
多分、使われていないだろう雰囲気が感じられる。

逃げれないかな?
背後に手を縛られているし、足もキツく一纏めにされている。

隼人さんに逢いたい…………隼人さん……
何故こんな事に…訳が分からなくて自然と涙が溢れてくる。

駄目だ!泣いてても何もならない!
手足が縛られているから、これを外さないと……何か切れそうなものがあれば良いのに。

僕は、芋虫の様に手足を動かし多少の痛みは気にしない様にして、口に砂が入ろうが頬が地面と擦れ様が、気にせず部屋の端へと少しづつだけど、近づいて行く。

どうにか端迄辿り着き、壁を支えに立ち上がった。

部屋の中を見渡すと、ガラーンとした何も無い空間が広がっていた。
窓も何も無い。何も落ちてもいない。

僕はどうすればいいんだろう………






(この先隼人視点で進みます)




遅い!楓!どうしたんだ?連絡も無しに遅れる楓じゃない……何かあったとしか思えない。

俺は透に電話をかけた。


「おい!楓の周りで怪しい奴、お前調べてたろ!今何処に居るか調べろ」

「いきなり何ですか?
今日試写会の筈では?
始まっている時間ですよ。私は仕事中…

「楓が待ち合わせに来ない」

「えっ………又連絡する」

「頼む」



透は、以前。
楓の親との話し合いの場での、違和感を話していた。

親は楓に基本的興味が無いのか、比較的落ち着いていて、スムーズに話し合いも進んでいたのだが、妹は違っていた様だ。

誰といるのか、何処に居るのか、連れて来いと言った何時もの風貌とは違った様子を見せた様で、透は危険だと感じ妹を深く調べ始めた。

事前の情報では、お嬢様学校に通う。
一つ下の可愛らしい妹と、周りにはアピールしていたらしいが。

その後調べると、裏では同級生を虐めぬき、学校を、辞めさせたとの報告が多数あった。

普段は優等生でクラスの中心人物だから、周りもそれに従う。
教師も裏の顔を知らない。

被害者の親達も、表立ってしまうと自身の子がこれ以上傷つく事を恐れて、他校への転校への道へ逃げてしまう。
適度にお嬢様学校ゆえの体面というものだろうな。

俺も面倒は嫌いだからその考えには賛成だ。
虐めてる奴らは腹立つし、最低だとは思うが自身の労力を使って其奴等に話しても、改心させる優しさは無い。

そういう奴はほっとくに限る。
結局、俺自身や近しい奴等が幸せで居られれば良いんだよ。

だかな!その幸せを壊す奴は容赦しねえよ。
楓待ってろよ!






  
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