《完結》《占いシリーズ》crescent…三日月

皇子(みこ)

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逃亡

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「お疲れ様~今日は人数足りてるから、帰って良いわよ」


御手洗いから帰って来て、お客様の元へ行こうとした俺を止めたのは。ケバケバしい化粧をした。プロレスラー体型の明らかに男だろうと判るが、心は女と言う、オカマバーの主人ねねさん。


「でも……」

「いいからいいから、沙知ちゃんみたいな綺麗どころは、出し惜しみした方が又、来てくれるのよ。それにあんた顔色悪いわよ。今日はゆっくり寝て明日からバリバリ客垂らし込むのよ」


俺は本当に体調を崩していたので甘えて帰ることにした。


「ねねさんすいません。今日は帰ります」

「ちょと待ちなさい。裏口から出なさいよ、プチストーカみたいになってるアイツさっき店内に居たのよ。私の魅力でデロデロにしたんだけどね~危ないから、裏から出て直ぐにタクシー乗りなさいよ」


ねねさんは帰ろうとした俺の腕を掴み、耳元で小声で囁き胸元に五千円入れ騒ぎの中に帰って行った。


「アイツか…」


俺は、ヒラヒラのドレスの着替えと、化粧を落とす為に控え室へ入った。

   この生活も2年だ。化粧を落とすのも、ドレスを着替えるのも慣れたものだ…2年前は俺は高校に入ったばかりだった、呑気に携帯ゲームしたり隠れて居酒屋に行ったりして、何気にモテていた俺は楽しい高校生活を送っていたのに……

    ある日、父親が亡くなった。交通事故だった。悲しかったな……口数は少ないが、優しい父親だったんだよ。これからは俺が母親を守ると父親の遺影にも誓ったのに…護れなかった。

    母子2人の静かだが、助け合う幸せな日々はそう長くは続かなかった。

    父親の弟だと言う人が訪ねて来て、母親は何も知らなくて、聞いたことも無かったみたいだった。父親は、親戚縁者とは疎遠だったみたいで、母親は父親の親の事も何1つ聞いたことが無いらしい。

   父親の弟だと言う人は、面影が父親と似ていたので、俺と母親は追い返す事が出来なく、今思えば色々とおかしな事が多かった様におもえるのだ。俺達は上手く丸め込まれていたのだろう。

    父親の弟と名乗る奴は、名前を聡と言った。何故か家に居座るようになり、変な輩を連れてくる事が多くなった。

働いていた母親は、急に父親の遺産があるからと仕事を辞めて昼間、何をしているか判らない奴の世話をする様になった。

    俺はその状況が嫌で、何度か奴を追い出そうとしたのだが、喧嘩もした事が無いヒョロイ俺など、相手にならず血だらけでその場に放り投げられた。

    母親は泣きながら俺に縋り付き、傷の手当てをしてはくれたが、それだけだった。その後も、何故か奴の世話を続けているのだ。

   俺は母親に逃げようと言ったのに……無理だと泣きながら言うのだ。何故なんだ⁉︎ 俺は母親と逃げたかった…父親に護ると誓ったのに。

     近所の通報で警察にも目を付けられていたから、俺は助けて欲しくて警察に相談にも行ったのに、騒いでるだけで事件も起きて無いから見回りと注意しかできないと言われた。何かが起こらないと無理なのか?起きてからでは遅いんだ…力の無い自分が悔しかった 。

    俺は、何か捕まえる証拠を探そうと、学校に行くふりをして、木に登り自分の部屋に外から忍び込んだ。きっと彼奴は、何かしていると思ったからだ。

    部屋からソッと出て、廊下を音に気をつけ進み階下へ降りた。声のする方に行くと、リビングの隣にある父親と母親の部屋だった。嫌な予感を感じながら、音を立てずドアを開けて覗いてみると……母親と奴が、抱き合っていた。

     何となく予感はしていたが……嫌悪感で身体が震えている、吐きそうだ。
目を逸らそうとした瞬間、周りに色々な物が錯乱しているのに気づいた。俺は携帯を取り出し、それらを写真に写した。写し終え逃げようとしたら、背後から声が聞こえ同時に背中に激痛が襲った。


「おい、おい!聡。お楽しみの所悪いけどよ!可愛い鼠ちゃんが居るぞぉ~ほれっ」


仲間の奴に背中を蹴られ、俺は部屋の中に倒れ込んだ。目の前には繋がり合っている母親と奴。

    気持ち悪い……目をそらすと注射器とガラス容器や紙等様々な物が散らばっている。何だここは…父親がいつも居た部屋が…俺が悪い事をして説教を受けていた、あの部屋が…何故こんな事に…


「おい!聡~~お前はその美人とお楽しみだよな。俺にこの可愛こちゃんくれよ。この部屋で4人で楽しもうぜ!この前チラッとこの子みて、気になってたんだよな~このほっそい腰、中身入ってんの?スタイル良いし、顔なんて最高じゃん!儚い美人顔を無理矢理なんて美味そう」


仲間の奴は不気味に笑い。俺の腰を撫で回し、逃げ惑う俺を馬鹿笑いしながら、捕まえ押さえ込み馬乗りになった。横では母親が何故か幸せそうに笑いながら、奴に犯されていた…俺は…俺は…

    馬乗りになった奴はニヤニヤしながら。


「可愛こちゃん。隣の美人さんみたいに楽しみたい?おクリス注射してあげようか?ふわふわで気持ちいいよぉ~」


奴は落ちてる薬を取ろうと其方に意識を向けたから、その隙に俺は力一杯奴の股間を蹴り上げ、無我夢中で逃げ出した。

     部屋を出て玄関へ靴も履かずに外に飛び出した。がむしゃらに道を走り抜け、いつも通る道なのに何故か知らない道みたいだ。逃げる場所は…と思いながら、公園の奥の樹の下に倒れ込んだ。全身が震える…何も考えられずに、身体を丸めて目を瞑ると、そのまま意識がなくなった。



   目を開けると夕方で、そこは公園の樹の下だった。

    俺は暫く意識を失ったか寝ていた様だ。起き上がり身体に着いた土や葉っぱを払い退け、ポケットを探ると7300円入っていた。後は何も無い、家には帰れ無い。友達は…迷惑掛けたくないから無理だ。

    先ずは、靴をどうにかしないと。奴等に見つかりたくないし逃げないと…ここから学校まで30分で行ける、部室にはバスケのバッシュがあるからそれ履いて何処か遠くへ逃げるぞ。
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