パーティー全員転生者!? 元オタクは黒い剣士の薬草になる

むらくも

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15_道中

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 森を出て皆の所に戻ると、俺達を見つけたレティが駆け寄ってきた。
 突獣を退けてから、馬車に居たはずの俺をずっと探してくれてたらしい。自分が馬車に居ろと言ったせいで巻き込んでしまったと物凄く落ち込んだ様子で話してて、勢いで行動した手前チクチクちくちく良心が痛む。
「えと、あの、ごっ、ごめん……魔物を追跡してったエルを追いかけるのに必死で……」
 言葉がどんどん小さくなっていくのが自分でも分かった。流石にレティの事を忘れてたとは恐ろしくて言えない。魔法でこんがり焼かれそうで。
「何にせよ無事で良かったですわ。職人の街に移動しましょう」
「職人の街? 出てきた街に戻らなくていいの?」
 受けた依頼は受けたギルドで報告しなきゃいけないはずだ。こんな大量の冒険者の報告を、依頼発注したギルド以外で受け付けて貰えるとは思えないけど。
「乗ってきた馬車が全損してしまいましたもの。職人の街の方がここから近いので、一度そちらに皆で移動して休む事になったのです」
 そういえば、崖から突っ込んできた魔物が思いっきり馬車ぶっ壊してたな……。
 確かに遠い町に行くより、近くの街で一回休む方がいっか。魔物が居なくなったって分かったら馬車も借りれるかもしれないし。街の人には申し訳ないけど。
 
 なんと討伐隊のリーダーだったらしい山賊風の冒険者に報告を終えると、すぐ職人の街へ向かって出発することになった。
 ――エルとこっそり相談して、巣に居た魔物達の事は言わないまま。
 獅子型は何とか倒した。俺達が見つけたのは空になってた巣で、突獣型や獅子型が使ってたんだろうって話にしたのだ。
 うっかり変な顔しないかドキドキしてたから、エルがレティや他の冒険者とどんな会話してたか全然覚えてないけど。

 
「なぁ、お前」
 隊列の少し後ろで皆に混ざって歩いてると、後ろから声が聞こえてくる。
 振り向くと僧侶が二人。馬車に魔物が突っ込んできた時に他の僧侶を誘導してた先輩っぽい二人組だ。
「さっきはありがとう。お前が知らせてくれたお陰で皆助かったよ」
「あ、うん、どういたしまして。よかった、みんな無事だったんだ」
「お陰様で。突獣に囲まれた時は、流石に新人は何人かダメになるかもしれないと思っていたけれど」
 後ろに後輩が居るからか少しだけ声を小さくした呟きに、ちょっと疲れた様子で僧侶二人は仲良く苦笑する。
 聞くと二人は新人を連れて掃討や討伐隊に参加してる教育係みたいなものらしい。自分の能力では最前線には行けないけれど、後ろで指揮を執る方に適正があると判断されたとかで。
 情けないよと言うけれど、それは完全に先生ポジションの凄い奴なんじゃなかろうか。そりゃあんなテキパキ色んな奴に指示出せる訳だ。

 今までの新人のやらかしの話やら、凄いと思った話やら、色々な話題が出てくる。だけどお約束に少しずつ愚痴っぽくなってきて。
「神殿も無茶を言うよ。いくら今年は新人の術覚えが早いからって、いきなり討伐戦なんて」
 これが僧侶が存在するファンタジー世界じゃなきゃ、彼らの姿は道で愚痴ってるリーマンである。所属してる組織に愚痴ってしまうのは日本と大して変わらないらしい。勤め人ってどこでも大変そうだな。
「いつもは違うんだ?」
「普通は冒険者をつけて近場の遺跡に潜るんだ。初心者向けの遺跡で戦闘の動き方を覚えてから、実戦として掃討や討伐に出るものなんだが」
「急いで経験を積め、だもんな……魔王の噂が出て焦っているんだろうが、こんな事をしていたら脱落する新人がいつ出てもおかしくない」
 なるほど。だから僧侶がギルドに来るのか。経験を積んだり依頼をこなしたり、神殿の面子だけじゃ出来ない事を頼みに来るんだ。
 僧侶も祈ってるだけじゃ術の使い方がレベルアップ出来ないんだな。
 
 それにしたって、実戦初参加で馬車ごと魔物に踏み潰される所だったとか嫌すぎる。
「皆、大変なんだなぁ」
「えらく他人事だな。お前はどこの所属なんだ」
「えっ」
 急に話が自分に向いて、ギクリとした。
 一番指摘されちゃいけない相手に指摘されてる。やばい。勝手に僧侶っぽい服着てコスプレしてるってバレる。
「神殿で点呼を取った時は居なかった気がするんだがな」
「えっと、その」
 じ、と顔を覗き込まれて顔の筋肉が引きつってしまった。
 バレてるだろこれ。だって不思議そうな顔なんか全然してない。点呼なんか取ってたら絶対俺が神殿の人間じゃないって分かってるじゃん。分かって探りにきただろこれ。
 どうしよう。誤魔化す……にしても上手い言い訳が出てこない。
 助けを求めようにもエルもレティも少し前に居る。今から駆け寄ったら怪しいよな……。
「え――――っと、あのぅ……お、怒らないで聞いて欲しいんだけど」
 うう、仕方ない。もう腹を括るしかない。

 素直に今までの経緯を二人に話した。
 神殿の僧侶をかたる訳じゃなく、あくまで戦場での識別をしやすくするためのコスプレだということを全力で強調して。
「はぁ!? 神殿で修行を積んでない!?」
「なのに治癒の奇跡が使えるっていうのか」
 始まりの村で見たリアクションを目の前の二人も返してくる。野良の僧侶ってそんな珍しいんだなって改めて実感してしまった。
「う、うん、使えるのは回復魔法いっこだけど」
 俺と同じくらいのレベルっぽい新人集団は回復と支援をいくつか覚えてるらしい。やっぱちゃんと勉強してるのと、ただ経験値集めてるだけじゃ違うんだろうな。
 ふむ、と先輩僧侶の二人は顔を見合わせた。
「まさか、とは思うが……実際お前の行動も言動も、とても神殿で修行していたとは思えないしな」
「あまりにも粗雑だもんな」
「うわぁスゲェ真剣にディスられる」
 そりゃ落ち着きないけど。後ろの奴らみたいに大人しくないけど。
 比較的モブ顔寄りの二人にさえ煽られてしまった……この世界は軽く煽るのがデフォルトなんだろうか。

 しばらく沈黙が落ちたけど、片方の先輩僧侶が軽く頷いてこっちを見た。
「なら俺達と神殿に来い。今からでも修行できるように神殿には上手く取り計らってやる」
「え、な、何、急に」
「経緯はどうあれ恩人だからな。このままにしておくのは忍びない」
 どうやらちゃんと僧侶にならないかと誘ってくれてるらしい。そのレベルでスキル一つはやりづらいだろう、なんて同情してんだか煽ってんだか分からないセリフを付け足しながら。
 微妙に腹立つけど、同じレベルの後輩と比べて回復一本なのが気の毒だと思ってはくれてるっぽい。ツンデレか。
 つーか、あれだな、今の自分はエルの言うとおり薬草状態だってことだな。魔力もあんまり伸びてないし。地味につれぇ。
「それがいいな。神殿で治癒と支援の奇跡を覚えれば、もう少しましな冒険者を選べるさ」
「は?」
 言葉としては把握できたけど、その意味が理解できなかった。
 だって、もう仲間は居るのに。冒険者を選べるって何。
「黒を纏う人間や魔法使いと行動するなんて正気の沙汰じゃない。最悪の取り合わせだ」
「っ、な……」
 馬鹿にすんなって思わず叫びそうになった。
 そりゃあパーティ組む時に掃討クエスト中で他に居なかったから、エルとは仕方なしに組んだところもあるけど。レティとは気が付いたら組むことになってたけど。
 だからって他人に正気の沙汰じゃないとか最悪とか言われる筋合いはない。しかもその理由が黒を纏ってるからとか魔法使いだからとか、一緒に戦うのに何も関係ない部分じゃないか。
 だけどここで騒いだりしたら、エルとレティまで巻き込んで注目される事になる。
 こいつらも悪意があるって感じじゃない。ナチュラルに失礼なだけで。
 そう思うと飛び出しかけた文句が全部喉の奥に引っ込んで、ぐっと息を飲み込むだけだった。
「…………要らない。気持ちだけ貰っとく」
「なに? あっ、おい」
 最低限だけ答えると速足で二人から離れて、少し前を歩いてるエルとレティの間に突っ込んだ。

 突然ぶつかってきた俺に、二人は驚いた様子でこっちを見る。
「あら、前方不注意ですわよ」
「ごめん」
 二人の顔が真っ直ぐ見れない。
「どうした」
「なにも」
 地面を見たまま離れると、エルの手がそっと耳の辺りを撫でてくる。手袋越しなのにどこか暖かい気がして、鼻の奥が少しつんとした。
 しばらくすると横髪を撫でてた手が離れて行った。こっそり様子を盗み見ると、ちらりと後ろを見たみたいだった。だけど、二人はそれ以上何も聞いてこなかった。

 
 めちゃくちゃ分かりやすく二人を馬鹿にされた。
 多分アイツらは自分達がどれだけ失礼な事を言ってるのか気付いてない。完全に良かれと思って言ってきてる。なのに俺は指摘しなかった。二人を馬鹿にするなって言い返す事すらしなかった。
 ……出来なかった。
 悪い奴らじゃないし、って。それは違うって言う事にすら言い訳して黙ってしまった。
 そんな自分に腹が立って、情けなくて、悔しくて。何も言えなかった。
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