魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

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六月二十七日月曜日 晴れ時間「ライバル」

6/27晴れ①

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「キラリ、起きろ! 早く支度しろ!」

 ゴンゴンとガラス窓を叩く音で目が覚めた。
 時計は五時三十分、しまった、寝坊した!
 スマホには、昨夜私が寝る前に送ったおやすみスタンプにママがお返しのおはようスタンプをくれていて、安心する。
 十五日前に行った手術の結果は良好で、案外早く抗がん剤治療が始まりそうだと言っていた。

「おい、起きてんのか? 置いてくぞ?」
「い、今行くから、あと二分待って」
 
 慌てスウェットパンツとTシャツに着替えて、顔も洗わずに縁側から外に飛び出す。

「おせえわ」
「ごめん、目覚まし止めてたみたい」
「ったく、今度は起こさずに置いてくからな?」
 
 そう言うけど、実はもう三回目だ。
 それでもあきらめずキラが声をかけてくれることに、感謝する。

「おはよ、ノビル」
「アウッ」

 私の顔にも見慣れたらしいノビルがピョンとジャンプして、尻尾を振ってくれた。
 結局、あの日以来、私は朝と夕方にキラと二人でノビルの散歩をさせている。

「そろそろ、梅雨に入るからな。ノビルの散歩も大変になるな」
「あー、雨だとね」
「そうじゃねえんだわ、ノビルのやつ、濡れるとすぐブルブルって雨を払うからさ。そんで、こっちもびしょ濡れになる」
「げっ、ノビルにもレインコート着させようかな」
「犬用のやつ? 着てくれっかな?」

 あの日、私がここに来た理由をキラに吐き出してから、なんとなくキラとは距離が近くなった気がする。
 カノンちゃんのことも下の名前で呼べるようになった。
 こっちの学校は幼稚園の頃から皆幼馴染で下の名前で呼び合っているから、私一人がまだちょっと浮いた状態で。
 向こうがキラリや、キラリちゃんと呼んでくれる人のことは、できるだけ下の名前で呼ぼうと思っているけれど。
 桜庭ファミリーだけは私のことをずっと柴田さんって呼ぶから、私も用事のある時だけ「桜庭さん」って呼ぶことにしていた。
 あ、桜庭ファミリーというのは、あの有名なサクラダファミリアをもじって、桜庭さんとその仲間のことを勝手に私がそう呼んでいるだけ。
 知られたらめちゃくちゃ怒りそうだから絶対に言えない。

「キラリ、競争するか?」
「ええ? やだよ、どうせ負けるもん」

 小学校までは男子よりも足が速かった私が、人生で初めて負けた相手がキラだった。
 ほんの鼻先くらいの差だけど、負けは負けだ。
 悔しがる私に対して、キラは相当喜んで、ことあるごとにこうやって勝負を挑んでくるけれど。

「行くぞ、よーいドン!」

 ノビルと一緒にかけてくキラを私は慌てて追いかける。

「不意打ち、ズルイ!! おばあちゃんに言いつけてやる」
「止めろ、真希さんには言うな!」

 朝陽に照らされた海を横目に砂浜をかけながら、笑い合った。
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