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六月二十八日火曜日 虹色の雨「おばあちゃんの正体」
6/28③
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お昼まで、また少し横になり、それから熱を測ると、三十七度六分。
大分ましになったけれど、少し喉が痛い。
経験上、まだ熱は上がったり下がったりを繰り返すのだろう。
汗だくのパジャマを着替え、お水を飲もうとキッチンに向かうと、ちょうど卵がゆが出来上がったところだった。
「いただきます」
あまり食欲はないけれど、温かくて美味しい。
やっぱり、ママの作る卵がゆと同じ味だった。
「美味しい」
「そうかい、良かったよ。おかわりもあるから、好きなだけ食べな?」
「そんなに食べられないよ。残ったら、夜にまた食べるね」
普段は見れない、平日の昼間のテレビ番組を見ながら、ゆっくり味わっていると不意におばあちゃんは私を見て。
「ところで、キラリ。なんで、あんなところで倒れたんだい?」
あんなところ?
「覚えてないのかい? 畑で悲鳴を上げて倒れただろ? おばあちゃん、キラリの悲鳴で腰ぬかしそうになったよ」
……、あ、あれって、やっぱり? もしかして?
「おばあちゃん!! ウシガエルが出たの! アイツが【おい、新入り。オマエ、どっから来たんだ?】って話しかけてきて、それから【オマエも魔女なんだろ?】って言ったの! あ、そうだ、おばあちゃんがキラキラした雨を降らせていて、野菜が空を……」
じーっと私の目を見るおばあちゃんに気づき、私はタジタジとなり黙り込む。
そうだよね、そう! 変だって思われてるに決まってる。
突然ウシガエルの声が聞こえただの、魔女だの、野菜が空をなんて、とてつもなくおかしなことを言っているのだから。
「な、んてね。そんな、夢見てた」
慌てて付け足した嘘に、おばあちゃんはそれでも何も言わない。
おかしなこと言う子だって、思われてるよね。
熱のせい、全部全部熱のせいだから。
「ごちそうさまっ、おやすみなさい!!」
沈黙とおばあちゃんの視線にいたたまれず、部屋に逃げ戻ろうとした時だった。
「あんたの特技は生き物と会話できることなんだね」
「えっ」
「生まれて一番最初に使えた魔法が、一番の特技となるんだよ」
おばあちゃんが意味ありげに笑っていた。
「あんた、見てたんだろ? おばあちゃんが雨を降らすとこをさ」
「虹色の雨!? あれって、夢じゃなかったの!?」
「そうだよ、それで美味しい野菜が育つ。うちの野菜は皆あの雨を浴びて、いい色に育つのさ、勿論栄養満点。で、自分が今食べごろだよって子だけが、収穫籠に飛び込んでくる。だから、おばあちゃんの野菜はおいしいのさ」
得意げなおばあちゃんに朝の光景を思い出す。
採れたてのトマトが虹色の雨で、朝露に濡れたように、ピカピカ光っていた。
美味しそうな野菜たちがおばあちゃんの籠に飛び込んでいく。
あれは、夢じゃなかった。
ってことは!
「おばあちゃん、魔女なの!?」
「まあ、そういうことだね」
信じられなくて一分ぐらい、口を開けてたと思う。
「なんて顔してんだい! 悲鳴をあげて倒れたあんたの足元にいたウシガエルは、近くの沼のヌシさ。時々畑に遊びに来るんだよ、ずい分昔からいるからね。だからキラリを新入りだと言ったんだろ、きっと」
「……、カエル苦手なの、ヌメッとしてて。しかも、アイツってばすっごく大きくて」
「だってそういう個体だもの、仕方ないだろ? ヌシから見たら、私ら人間の方がヌメッとしてないイビツな存在かもしれないよ。苦手なものは仕方ないとしても、仮にも生き物と話せる魔女なら、命には平等でありな? キラリ」
おばあちゃんの口調はやんわりだけど、言っていることは正しいことだっていうのはわかった。
ん? 生き物と話せる魔女?
誰が? 私が?
「キラリは、いつ、生き物と話せるようになったんだい?」
「え、っと。昨日、カラスが話してるのを聞いて」
ちゃんと約束したんだから、最初に話せた生き物がノビルだったってことは伏せておく。
「ああ、やっぱり最近なんだね? 前に、おばあちゃんがキラリはどんな魔法が得意なのか聞いたことがあったろ?」
「うん、あった」
「あの時は、魔法ってなんだろう? って顔してたからさ。希帆に聞いたんだよ、キラリは魔法を使えないのかい? って」
「じゃ、じゃあ、やっぱりママも?」
「まあ、お聞き。半分当たりで半分ハズレ。ママは元魔法使い見習い。途中で魔法を封印しちまったのさ」
「封印?」
「魔法をうまくコントロールできない子だったんだよ、最も希帆に芽生えた特技魔法は特殊すぎてね。なんだったと思う?」
ママの特技?
「空を飛べる?」
「そんなもの、練習すれば魔法使いなら誰でも飛べるようになるさ。そうじゃなくて、あの子が一番最初に身に着けた魔法はね」
勿体ぶったおばあちゃんの次の台詞に、私はゴクンと生唾をのんだ。
大分ましになったけれど、少し喉が痛い。
経験上、まだ熱は上がったり下がったりを繰り返すのだろう。
汗だくのパジャマを着替え、お水を飲もうとキッチンに向かうと、ちょうど卵がゆが出来上がったところだった。
「いただきます」
あまり食欲はないけれど、温かくて美味しい。
やっぱり、ママの作る卵がゆと同じ味だった。
「美味しい」
「そうかい、良かったよ。おかわりもあるから、好きなだけ食べな?」
「そんなに食べられないよ。残ったら、夜にまた食べるね」
普段は見れない、平日の昼間のテレビ番組を見ながら、ゆっくり味わっていると不意におばあちゃんは私を見て。
「ところで、キラリ。なんで、あんなところで倒れたんだい?」
あんなところ?
「覚えてないのかい? 畑で悲鳴を上げて倒れただろ? おばあちゃん、キラリの悲鳴で腰ぬかしそうになったよ」
……、あ、あれって、やっぱり? もしかして?
「おばあちゃん!! ウシガエルが出たの! アイツが【おい、新入り。オマエ、どっから来たんだ?】って話しかけてきて、それから【オマエも魔女なんだろ?】って言ったの! あ、そうだ、おばあちゃんがキラキラした雨を降らせていて、野菜が空を……」
じーっと私の目を見るおばあちゃんに気づき、私はタジタジとなり黙り込む。
そうだよね、そう! 変だって思われてるに決まってる。
突然ウシガエルの声が聞こえただの、魔女だの、野菜が空をなんて、とてつもなくおかしなことを言っているのだから。
「な、んてね。そんな、夢見てた」
慌てて付け足した嘘に、おばあちゃんはそれでも何も言わない。
おかしなこと言う子だって、思われてるよね。
熱のせい、全部全部熱のせいだから。
「ごちそうさまっ、おやすみなさい!!」
沈黙とおばあちゃんの視線にいたたまれず、部屋に逃げ戻ろうとした時だった。
「あんたの特技は生き物と会話できることなんだね」
「えっ」
「生まれて一番最初に使えた魔法が、一番の特技となるんだよ」
おばあちゃんが意味ありげに笑っていた。
「あんた、見てたんだろ? おばあちゃんが雨を降らすとこをさ」
「虹色の雨!? あれって、夢じゃなかったの!?」
「そうだよ、それで美味しい野菜が育つ。うちの野菜は皆あの雨を浴びて、いい色に育つのさ、勿論栄養満点。で、自分が今食べごろだよって子だけが、収穫籠に飛び込んでくる。だから、おばあちゃんの野菜はおいしいのさ」
得意げなおばあちゃんに朝の光景を思い出す。
採れたてのトマトが虹色の雨で、朝露に濡れたように、ピカピカ光っていた。
美味しそうな野菜たちがおばあちゃんの籠に飛び込んでいく。
あれは、夢じゃなかった。
ってことは!
「おばあちゃん、魔女なの!?」
「まあ、そういうことだね」
信じられなくて一分ぐらい、口を開けてたと思う。
「なんて顔してんだい! 悲鳴をあげて倒れたあんたの足元にいたウシガエルは、近くの沼のヌシさ。時々畑に遊びに来るんだよ、ずい分昔からいるからね。だからキラリを新入りだと言ったんだろ、きっと」
「……、カエル苦手なの、ヌメッとしてて。しかも、アイツってばすっごく大きくて」
「だってそういう個体だもの、仕方ないだろ? ヌシから見たら、私ら人間の方がヌメッとしてないイビツな存在かもしれないよ。苦手なものは仕方ないとしても、仮にも生き物と話せる魔女なら、命には平等でありな? キラリ」
おばあちゃんの口調はやんわりだけど、言っていることは正しいことだっていうのはわかった。
ん? 生き物と話せる魔女?
誰が? 私が?
「キラリは、いつ、生き物と話せるようになったんだい?」
「え、っと。昨日、カラスが話してるのを聞いて」
ちゃんと約束したんだから、最初に話せた生き物がノビルだったってことは伏せておく。
「ああ、やっぱり最近なんだね? 前に、おばあちゃんがキラリはどんな魔法が得意なのか聞いたことがあったろ?」
「うん、あった」
「あの時は、魔法ってなんだろう? って顔してたからさ。希帆に聞いたんだよ、キラリは魔法を使えないのかい? って」
「じゃ、じゃあ、やっぱりママも?」
「まあ、お聞き。半分当たりで半分ハズレ。ママは元魔法使い見習い。途中で魔法を封印しちまったのさ」
「封印?」
「魔法をうまくコントロールできない子だったんだよ、最も希帆に芽生えた特技魔法は特殊すぎてね。なんだったと思う?」
ママの特技?
「空を飛べる?」
「そんなもの、練習すれば魔法使いなら誰でも飛べるようになるさ。そうじゃなくて、あの子が一番最初に身に着けた魔法はね」
勿体ぶったおばあちゃんの次の台詞に、私はゴクンと生唾をのんだ。
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