魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

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六月二十八日火曜日 虹色の雨「おばあちゃんの正体」

6/28②

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 おばあちゃんが楽しそうに野菜とお話をしていた。
 虹色の雨が空から降り注ぐ。
 それによりできた大きな虹の橋を、野菜たちが楽しそうにスキップして渡る。
 おばあちゃんは、魔法使いみたいにほうきにのって空を飛び、野菜たちと歌を歌っていて。
 まるで夢のような美しい光景。
 私はそれを呆けたように、見上げていた。

【おい、新入り。オマエ、どっから来たんだ?】

 足元から聞こえてきた声。
 見下ろした先、喉元をぷくうっと膨らませている。
 もしかして、今しゃべったのって!?
 世の中で一位二位を争うぐらいに苦手なアイツの姿に、私は硬直したまま動けなくなる。

【オマエも魔女なんだろ?】

 やっぱり、しゃべった!!

「いやああああああああああああああああ」

 ジタバタと暴れた私は、ゴチンと頭をぶつけて、その痛みで目が覚めた。
 大汗をかいて悪夢をみていたらしく、布団の上で暴れすぎて壁に頭をぶつけたようだ。
 それにしても、とんでもない夢を見た。
 苦手なカエル、しかも私の手のひらより、大きいやつ。
 あれって、ウシガエルって言うんだっけ?
 それが私に向かって話しかけて来るのが、リアルすぎて。
 ぼんやりと部屋を見渡したら、時計が目に入る。
 ん……?
 もうすぐ時計の針は十時を指すところ。
 カーテンの隙間から入ってくる陽ざしは遥か高い角度にあって。
 さっきとはまた違う、今度は冷や汗がダラダラと額を伝ってくる。
 そこでようやっと本当に目覚めた。

「遅刻した! おばあちゃんー!!」

 なんで起こしてくれなかったの?
 半泣きで学校に行く用意を始めた私の耳に。

「ようやっと目が覚めたかい?」

 部屋の入り口を開けたのは、おばあちゃんだった。

「学校には休むって連絡しておいたから、安心おし」
「で、でも」

 私が休んだら、昨日のこともあって心配してると思うし。
 アンちゃんなんて、特に気に病んでるかもしれない。

「三十九度も熱出して、ぶっ倒れたんだもの。昨日の雨で風邪ひいたんだろうってさ。それに、環境が変わりすぎてそろそろ疲れも出てくる頃だろうって。二、三日休めばすぐに元気になるだろうってさ」

 三十九度!?
 そう言われればフラフラするかも。
 コテンとその場に座り込んだ。
 おばあちゃんのかかりつけのお医者様に往診してもらったらしい。
 枕もとにはお薬と、暴れた拍子に外れたらしいアイスノン。
 大汗をかいて悪夢にうなされるなんて、本当に病人みたいだ。

「おばあちゃん」
「うん?」
「イチゴのかき氷アイスって、ある?」

 私の問いかけに、おばあちゃんはフっと笑って。

「あるさ、ちょっと待ってな」

 お店のアイスボックスを開け閉めする音、そして私が欲しかったイチゴのかき氷アイスを手にしておばあちゃんが戻ってきた。

「これだろ?」

 袋を開けて手渡してくれたアイスを受け取って、口の中に含む。
 熱を持った口の中がひんやりとする。
 ぼんやりと壁の木目を見ながら、シャリシャリとかじっていると。

「希帆も好きだったよ、そのアイス」
「ママも?」
「そ、熱を出す度にそれを欲しがってね」
「ふうん」

 なんだか嬉しくなってしまう。
 小さい頃から私が熱を出す度に、ママが買ってくれたこのアイス。

「おばあちゃんがママに教えたの?」
「熱を出すと、冷たいもの欲しがってたから、ついね」

 ママと私とおばあちゃんが、イチゴのかき氷でつながってるみたいだ。

「だいぶ、顔色がいいね。少し熱も下がってるようだし、お昼には卵がゆを作ってあげようか。食べられるかい?」
「それって、味噌が入ってるやつ?」
「ああ、そうだよ」

 きっとママが作ってくれていた卵がゆと同じ味がするんだろうな。
 おばあちゃんもそれに気づいて笑ってくれた。
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