魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

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七月十七日日曜日 晴天、のち「久々の再会」

7/17②

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「今日は、午前中で店を閉めるよ」
「なんで?」
「おばあちゃん、午後から婦人会の集まりがあるのさ」

 お昼のラーメンを食べた後、おばあちゃんが茹でてくれたトウモロコシまで頬張る。

「私、一人でもお店見てられるよ?」
「いいんだよ、時々は店も休ませてやらないとね? キラリも、たまにはカノンちゃんやアンちゃんと遊んできたらいいじゃないか」

 そう言っておばあちゃんは出かけて行った。
 多分、お店を休ませてやると言うのはただの口実なだけで、私に遊んでこい、と言ってくれてるのだろうけれど。
 残念ながら、アンは家族で町にお出かけだと言っていたし。
 カノンに電話したら、後ろで弟たちがギャーギャーケンカをしていて、「ごめん、キラリ、急ぎの用事? ちょっと今、無理で。こらあ! おまえら、いい加減にしなさいよ! ま、また、後で連絡して~!」とガチャリと切られてしまった。
 いっそ、キラの家にでも遊びに行こうかと思ったけれど、どうせ夕方に会うしなあ。
 アイスを一本もらって、中庭にいるノビルに縁側から声をかける。

「ねえ、ノビル! 私の魔法見る?」
『お、使えるようになったのか?』
「うん、ホラ見て? たつまき~!」

 今朝と同じように手のひらの上でクルクル踊るつむじ風を見せたら、ノビルが微妙な顔をしていた。

「なによ?」
『いや、別に』

 絶対ショボイ魔法だって思ってたな?
 ムッとしながら、つむじ風を止めてアイスを食べる。
 傍らでノビルは水を飲む。

「知ってる? ノビル」
『うん?』
「私の魔法って、一番得意なのってこうしてノビルや動物や生き物と話せることだけどさ」
『そうなのか?』
「そうなんだって。で、今魔法の書の生き物の書をおばあちゃんに内緒で読んでるんだけど」
『なんで内緒?』
「だって、おばあちゃんが順番にって言うんだもの。風の書、水の書、緑の書、山の書、海の書、生き物の書、って順で、たどり着くまでにまだまだあるんだもの。あ、空の書なんか最後の方よ? 空の書っていうのは、魔法使いの特権である空を飛べる魔法が書いてあるんだけど、その本はね、開かないの。なんでかっていうと、私にまだ力がないからなんだって。だけどね? 緑の書、山の書、海の書は開かないっていうのに、生き物の書は風の書、水の書と同じように最初から開けてて」
『うん? つまり、それは飛び級みたいなもんか?』
「そうなのかな。でもおばあちゃんに言ったら、順番にってまた言われそうだから、生き物の書が開けるのは私とノビルだけの内緒だよ?」
『オレは真希ちゃんとは話せないから、内緒もなにも……、というか、勝手に読んでいいもんなのか?』

 それなんだよね、まさにそれ。
 おばあちゃんは、順々に魔法をマスターしていくようにと教えてくれたけれど。
 
「でも、生き物の書面白いんだもん」

 生き物と話せるだけじゃない。
 たとえば、生き物の能力を借りることが出来たり。
 応用すれば、私が動物の体の中に入り込むこともできるらしい。
 もちろん、肉体的にではなく、思念をうつす?
 つまり動物の体を私が一時的に乗っ取るということらしい。
 ノビルの体を乗っ取ったら、嗅覚がするどくなって大変そうだな、なんて読んでる最中に思ってしまったのは内緒だ。

『面白いからって勝手に飛び級はするなよ? 真希ちゃんの言うことは守れよ』
「つ、使わないよ! 使えるわけないじゃん」

 ノビルの瞳は、いつもと変わらずキレイなのに、疑わしそうにじっと見上げている気分になるのは自分が後ろめたいからだ。
 本当は、風の書や水の書よりも、スルスルと頭に入って来る。
 試してはないけれど呪文もいくつか覚えてしまった。
 それが私の得意魔法だからなんだろうな、というのは感覚でわかってしまう。
 でも、おばあちゃんとの約束があるから使わない。
 ちゃんと、他の書の魔法を使いこなせるようになってからと決めているんだもん。
 私をずっと見つめていたノビルの耳が、突然ピクンと動いた。

『キラリ、誰か来た』

 ノビルがそう言った後、家の前に車が止まる音がした。
 
「誰だろう?」

 首をかしげた私にノビルも、同じような角度で首を曲げていた。
 ノビルにも覚えのない気配ってこと?
 バタンと車のドアが閉じる音がして、少ししてから家のブザーがなった。
 インターホンのピンポーンではなく、ビービーと音を立てるものだ。

「はーい」

 慌てて家のドアへと急ぐ。
 ドアスコープから覗いたら、見覚えのある男の人がそこに立っていた。
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