魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

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八月五日金曜日~長雨のち「夏休み後半」

夏休み後半②

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「希帆から、連絡は来てるのかい?」

 私のポケットから顔を覗かせているスマホを横目に、おばあちゃんは独り言みたいに呟いた。
 気になっているんだろう。

「来てる、おはようとおやすみだけ。後、時々宿題やんなさいよって」
「そういうことじゃないだろに」
「だよね」

 おばあちゃんも私も顔を見合わせて苦笑した。

「あの子は、本当にね、一度こうと言い出したらきかなくて」
「うん、すっごくわかる……」

 例えば、受験したいなんて私は一度も言ったことないし、ママがそうした方がいい、っていうのは絶対だったから従っただけだ。
 おばあちゃんの口調から察すると昔から、あんな感じだったんだろうな。

「どんな事情があったのかは未だに知らないよ、キラリのパパのことは」
「うん」

 ママが『聞くな』と言っているみたいで、私も一度も聞けないパパのこと。
 なんでママは結婚をせずに、私を生むことを決めたんだろう?

「東京に就職して、一年に二回ほどは顔を見せてたのよ。でもある時、二年ほど帰ってこない時があって。そしたら突然、子供が生まれた、って連絡きて。おじいちゃんもおばあちゃんもビックリして、慌てて病院にかけつけたのよ。そこにいたのが、キラリ。ちっちゃくて可愛い女の子だったよ」

 お墓に手をあわせて立ち上がると、おばあちゃんは海の見える場所へと歩き出す。
 ノビルはまた私を引っ張ってその後ろを歩いていく。

「おじいちゃんも、おばあちゃんも、キラリのことが可愛くてね? 苦労させたくないなって、そう思ったの。産後、希帆はキラリを連れて、おばあちゃんの家で二ヶ月ほど過ごしてたんだけどね。まあ、事あるごとに私とケンカばっかりで、気が合わないのかね」

 眉尻を下げて笑うおばあちゃんに私は首を振る。
 合わないんじゃない、似てるんだ。

「そのせいもあったんだろうさ。ある日、また唐突に『東京に戻る』って言い出してさ。まだちっちゃい赤ん坊のあんたを、どうやって育てるつもりだって聞いたら、二ヶ月から預けられる保育所と仕事が見つかったんだって。自分一人で育てられるからって。そう言いだしたらきかなくてね」

 ああ、想像がつく。
 この間みたいに、突然そうなっちゃったんだろう。

「私も腹が立っちゃって。今、出て行くなら、もう二度と帰ってくるんじゃない! あんたの勝手に振り回されるのは、もうごめんだよ、そう言ってしまったんだよね。キラリと離れるのが寂しすぎて。ここにいれば、私もおじいちゃんもキラリの面倒をみてあげられるのに。なんで、わかってくれないんだろう、って思ったら、つい……。そしたら『うん、もう二度と来ない』そう言って、自分の連絡先も破り捨ててさ」

 それから、この間まで本当に音信不通、とかママらしすぎてため息が出た。
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