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八月五日金曜日~長雨のち「夏休み後半」
夏休み後半①
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まるで私の心みたいだ。
ママが東京に戻った翌日から、降り続いていたどしゃぶりの雨が、昨夜ようやく止んだ。
今日からまた通常の夏休みに戻れるというのに、カノンやアンの誘いを断り、ノビルの散歩にも行かなかった。
部屋の片隅に積まれた魔法の書も、あれから一度も開けてない。
『魔法はもう止めて』
ママの言葉を思い出すと胸がぎゅうっと痛くなる。
「キラリ、ちょっと窓から空を見てごらん?」
部屋の前でおばあちゃんの声がした。
ノソリと起き上がって小さく窓を開けた。
「何か見えないかい? 面白い雲」
面白い雲!?
見回すようにおばあちゃんのいう面白い雲を探したら。
「あ、あった!!」
虹色に光る雲が一つ、青空に浮かんでいる。
「あれ、おばあちゃんが作ったの!?」
虹色の雨を降らすことができるおばあちゃんの仕業かと思った。
「違うよ、キラリ。あれは彩雲《さいうん》って言うんだよ。あの雲が見れたならいいことがあるんだってさ」
「ふうん……」
いいこと、何もないよ。
考えれば考えるほど、いい方向になんか向かない気がしていた。
私はママの子供だし。
子供は親の保護下にあるんだから、どんなに嫌がっても東京に連れ戻されるんだろうし。
それに、反対したところでママは沢田さんと結婚するんだろう。
いや、そもそも沢田さんが嫌とかじゃないの、むしろ大好きだけど。
違うの、やっぱり内緒にされてたのが悲しいの。
だけど、ママも同じなのかな?
私とおばあちゃんがママに内緒で魔法を使っていたこと。
ママもショックだったのかなあ?
グルグルと考えを巡らせてるうちに、彩雲は少しずつ消えていく。
いいことなんか、きっと何もない、この先ずっと……。
ため息をついた私の耳におばあちゃんの声がまた聞こえた。
「キラリ、おばあちゃんね、これから出かけてくる。おじいちゃんの墓参りに行ってくるから留守番頼んでもいいかい?」
「……、待って、おばあちゃん、私も行きたい!!」
東京に連れ戻されたら、もう二度とおじいちゃんのお墓にも行けないかもしれない。
慌てて部屋から飛び出した私をおばあちゃんは微笑んで待っていてくれた。
おじいちゃんのお墓は、家から十分ほど歩いた丘の上にあった。
そこから見下ろすと、いつも泳いでいた海が見えた。
今日も、キラたちは泳いでるのかな?
「あ、ノビル、待って」
せっかくだからとノビルも連れてきた。
いつまでも海を眺めていそうな私をグイグイ引っ張って、おばあちゃんの後をついていく。
「柴田伸一郎って、おじいちゃんの名前?」
「そうだよ、あんたのおじいちゃんの名前さ」
墓標に刻まれた名前、いつもは仏壇の戒名しか見てなかったから、初めて知った。
畑で育てている色とりどりの菊の花を二つの花瓶に生けて備える。
その横で私は、おばあちゃんの指示でお墓をお水で洗う。
ん? 伸一郎……、ん!?
「あ!! ノビルと、一緒だ」
「うん?」
「ほら、ノビルの小屋に書いてる漢字! おじいちゃんの「伸」の字だ」
だから、最初はノビルのこと、シンだと思ってたんだもん。
「おじいちゃんが亡くなったすぐ後にね、ノビルが家に来たんだよ。迷い犬だった。妙に懐かれてしまって、飼い主も見つからないしね。で、おじいちゃんの字を貰って、ノビルと名付けて飼うことにしたんだよ」
おばあちゃんに撫でられたノビルは、くうんと嬉しそうに鳴きながら尻尾を振っている。
ん? 待って? もしかして!?
「おばあちゃん、ノビルは、もしかしたら!?」
「アオーン、ウワンワンワン!!!!」
私の言葉を遮るようにノビルが吠えて、こっちを向いて歯を見せて威嚇している。
「ね、ノビルがおじいちゃんの生まれ変わりだったらいいのにね」
おばあちゃんは私が言おうとしたことを察してくれたようだ。
ヨシヨシとまた頭を撫でられたノビルは、シュンと俯いた。
多分、絶対に答えてなんかくれそうにないけど、妙におばあちゃんのことに詳しいノビルのことだもの、きっと……。
「うん、そうだったらいいね」
おばあちゃんに見えない角度でノビルにウィンクしたら、また私だけに歯を剥きだして威嚇していた。
ママが東京に戻った翌日から、降り続いていたどしゃぶりの雨が、昨夜ようやく止んだ。
今日からまた通常の夏休みに戻れるというのに、カノンやアンの誘いを断り、ノビルの散歩にも行かなかった。
部屋の片隅に積まれた魔法の書も、あれから一度も開けてない。
『魔法はもう止めて』
ママの言葉を思い出すと胸がぎゅうっと痛くなる。
「キラリ、ちょっと窓から空を見てごらん?」
部屋の前でおばあちゃんの声がした。
ノソリと起き上がって小さく窓を開けた。
「何か見えないかい? 面白い雲」
面白い雲!?
見回すようにおばあちゃんのいう面白い雲を探したら。
「あ、あった!!」
虹色に光る雲が一つ、青空に浮かんでいる。
「あれ、おばあちゃんが作ったの!?」
虹色の雨を降らすことができるおばあちゃんの仕業かと思った。
「違うよ、キラリ。あれは彩雲《さいうん》って言うんだよ。あの雲が見れたならいいことがあるんだってさ」
「ふうん……」
いいこと、何もないよ。
考えれば考えるほど、いい方向になんか向かない気がしていた。
私はママの子供だし。
子供は親の保護下にあるんだから、どんなに嫌がっても東京に連れ戻されるんだろうし。
それに、反対したところでママは沢田さんと結婚するんだろう。
いや、そもそも沢田さんが嫌とかじゃないの、むしろ大好きだけど。
違うの、やっぱり内緒にされてたのが悲しいの。
だけど、ママも同じなのかな?
私とおばあちゃんがママに内緒で魔法を使っていたこと。
ママもショックだったのかなあ?
グルグルと考えを巡らせてるうちに、彩雲は少しずつ消えていく。
いいことなんか、きっと何もない、この先ずっと……。
ため息をついた私の耳におばあちゃんの声がまた聞こえた。
「キラリ、おばあちゃんね、これから出かけてくる。おじいちゃんの墓参りに行ってくるから留守番頼んでもいいかい?」
「……、待って、おばあちゃん、私も行きたい!!」
東京に連れ戻されたら、もう二度とおじいちゃんのお墓にも行けないかもしれない。
慌てて部屋から飛び出した私をおばあちゃんは微笑んで待っていてくれた。
おじいちゃんのお墓は、家から十分ほど歩いた丘の上にあった。
そこから見下ろすと、いつも泳いでいた海が見えた。
今日も、キラたちは泳いでるのかな?
「あ、ノビル、待って」
せっかくだからとノビルも連れてきた。
いつまでも海を眺めていそうな私をグイグイ引っ張って、おばあちゃんの後をついていく。
「柴田伸一郎って、おじいちゃんの名前?」
「そうだよ、あんたのおじいちゃんの名前さ」
墓標に刻まれた名前、いつもは仏壇の戒名しか見てなかったから、初めて知った。
畑で育てている色とりどりの菊の花を二つの花瓶に生けて備える。
その横で私は、おばあちゃんの指示でお墓をお水で洗う。
ん? 伸一郎……、ん!?
「あ!! ノビルと、一緒だ」
「うん?」
「ほら、ノビルの小屋に書いてる漢字! おじいちゃんの「伸」の字だ」
だから、最初はノビルのこと、シンだと思ってたんだもん。
「おじいちゃんが亡くなったすぐ後にね、ノビルが家に来たんだよ。迷い犬だった。妙に懐かれてしまって、飼い主も見つからないしね。で、おじいちゃんの字を貰って、ノビルと名付けて飼うことにしたんだよ」
おばあちゃんに撫でられたノビルは、くうんと嬉しそうに鳴きながら尻尾を振っている。
ん? 待って? もしかして!?
「おばあちゃん、ノビルは、もしかしたら!?」
「アオーン、ウワンワンワン!!!!」
私の言葉を遮るようにノビルが吠えて、こっちを向いて歯を見せて威嚇している。
「ね、ノビルがおじいちゃんの生まれ変わりだったらいいのにね」
おばあちゃんは私が言おうとしたことを察してくれたようだ。
ヨシヨシとまた頭を撫でられたノビルは、シュンと俯いた。
多分、絶対に答えてなんかくれそうにないけど、妙におばあちゃんのことに詳しいノビルのことだもの、きっと……。
「うん、そうだったらいいね」
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