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七月二十日水曜日~晴れのち大荒れ「夏休み前半」
夏休み前半⑥
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沢田さんの提案で、ママとおばあちゃんにお土産を買う。
ママには水族館オリジナルのバンダナを三枚、おばあちゃんには色んな石がついた涼し気なブレスレット。
今朝と夕方、ノビルの散歩を一人で引き受けてくれたキラと、今日明日は会えないカノンとアンにはイルカのキーホルダーを色違いで買った。
「はい、キラリちゃんにも」
車に乗ってから渡されたのは、シャチのぬいぐるみ。
「わー!! これ、実は欲しかったの! ありがとう、沢田さん」
ふわふわなぬいぐるみをギュッと抱きしめたら沢田さんは嬉しそうに目を細めた。
ようやく平和な気分になって家に帰ったというのに、玄関口には荷物を持ったママが座って待っていた。
「ママ? ただいま」
「キラリ、支度して? 東京に戻るから」
「え?」
「もうここには来ないの。早く、支度して? 今すぐ帰るから」
「なんで? ねえ、ママ?」
車を止めてから追いついてきた沢田さんもママの怒っている姿に困惑している。
「希帆さん、落ちついて? 帰るのは明日でしょ?」
「もう、いいの! 今日は東京の家に泊まって、明日病院に戻る。保《たもつ》、その後はキラリのことお願いしてもいい? 普段は一人でも平気だとは思うけど、時々様子見に行ってもらえたら」
「バカなこと言ってんじゃないよ、帰るならあんた一人で帰りな、希帆」
ママのヒステリックな声に業を煮やしたように、現れたおばあちゃん。
ママの怒った顔にそっくりだった。
「沢田さんとか言ったかい? あんたに恨みがあるわけじゃないし、別に反対してるわけじゃない。だけどね? あんたら、今までキラリに何一つ言わないまま、私に先に挨拶しようだなんて、おかしな話だと思わないかい? まだ家族でもないのに、キラリの面倒見てもらおうだなんて、希帆、あんた言ってることメチャクチャだよ」
「え?」
まだ、家族でもない、のに?
その言葉の意味に、ふと見上げた沢田さんは申し訳なさそうにうつむいて。
「母さんには関係ないでしょ? 私たちの問題に首を突っ込まないで。それに、保は母さんよりもキラリと一緒にいた時間は長いの。母さん以上には家族だわ! さあ、キラリ、東京に帰ったらちゃんと話すから、まずは支度して」
「キラリ抜きで決めておいて、なにが私たちだよ。大体、あんたは昔から自分勝手すぎるんだよ」
睨み合う、ママとおばあちゃんの様子に心臓がドキドキした。
だけど、なんとなくママが言う『東京に帰ってから話したい事』が、沢田さんの困りきった様子からわかってしまった。
「ママ……、帰るならママと沢田さんだけで帰って」
「キラリ?」
「私、夏休みの間はおばあちゃんのところにいたい。それから、」
ママと沢田さんの二人の顔を交互に見比べた。
「結婚するの? ママと沢田さん」
しばらくの沈黙の後で、口を開いたのは沢田さんだった。
「希帆さんが病気だって知って、それからなんだ。ボクが希帆さんを支えたいってそう思って」
「キラリには、ちゃんと話そうって。だから今回一緒に来たの。ごめんね、やっぱり最初から話すべきだった、ごめん」
二人の言葉に首を横に振った。
「別に結婚してもいいよ、沢田さんはいい人だし、ママもきっと幸せになれる。でも、そこに私はいらないと思う。だって、私がずっと千葉にいてママに会えない時も、沢田さんはお見舞いに行ってたんでしょ? ママだって沢田さんがいればそれでいいんじゃない?」
「キラリ!!」
立ち上がったママが震える手で私の頬を叩こうとして、沢田さんがそれを止めた。
「内緒にしてたこと怒ったの、ママの方じゃん? なのに自分も大事なこと秘密にしてたくせに! 私やおばあちゃんを怒るのおかしいよ! ママなんか大嫌い! 今日一緒にいたくせに、何も教えてくれなかった沢田さんも大嫌い。二人とも早く東京に帰ってよ!!」
「キラリ、待ちなさい、キラリ!!」
逃げるように自分の部屋へ駈け込んで背中で扉を抑えつけた。
しばらく玄関先でおばあちゃんとママが言い争う声が聞こえてきて、静かになったあと、車が発進する音が聞こえた。
「キラリ? 寝てるのかい?」
トントンと控えめなノックの音のあと、おばあちゃんの声が聞こえた。
「希帆は帰ったよ」
その言葉にズキッと胸が痛む。
ほら、やっぱり、ママは私じゃなくて沢田さんを選んだんだ。
「おばあちゃん……」
ギイっと開けたドアの前でおばあちゃんは私を待っていてくれた。
「ここにいたらいい。気の済むまで、ずっと」
その優しい声にすがるように、おばあちゃんに抱きついて声をあげて私は泣いた。
ママには水族館オリジナルのバンダナを三枚、おばあちゃんには色んな石がついた涼し気なブレスレット。
今朝と夕方、ノビルの散歩を一人で引き受けてくれたキラと、今日明日は会えないカノンとアンにはイルカのキーホルダーを色違いで買った。
「はい、キラリちゃんにも」
車に乗ってから渡されたのは、シャチのぬいぐるみ。
「わー!! これ、実は欲しかったの! ありがとう、沢田さん」
ふわふわなぬいぐるみをギュッと抱きしめたら沢田さんは嬉しそうに目を細めた。
ようやく平和な気分になって家に帰ったというのに、玄関口には荷物を持ったママが座って待っていた。
「ママ? ただいま」
「キラリ、支度して? 東京に戻るから」
「え?」
「もうここには来ないの。早く、支度して? 今すぐ帰るから」
「なんで? ねえ、ママ?」
車を止めてから追いついてきた沢田さんもママの怒っている姿に困惑している。
「希帆さん、落ちついて? 帰るのは明日でしょ?」
「もう、いいの! 今日は東京の家に泊まって、明日病院に戻る。保《たもつ》、その後はキラリのことお願いしてもいい? 普段は一人でも平気だとは思うけど、時々様子見に行ってもらえたら」
「バカなこと言ってんじゃないよ、帰るならあんた一人で帰りな、希帆」
ママのヒステリックな声に業を煮やしたように、現れたおばあちゃん。
ママの怒った顔にそっくりだった。
「沢田さんとか言ったかい? あんたに恨みがあるわけじゃないし、別に反対してるわけじゃない。だけどね? あんたら、今までキラリに何一つ言わないまま、私に先に挨拶しようだなんて、おかしな話だと思わないかい? まだ家族でもないのに、キラリの面倒見てもらおうだなんて、希帆、あんた言ってることメチャクチャだよ」
「え?」
まだ、家族でもない、のに?
その言葉の意味に、ふと見上げた沢田さんは申し訳なさそうにうつむいて。
「母さんには関係ないでしょ? 私たちの問題に首を突っ込まないで。それに、保は母さんよりもキラリと一緒にいた時間は長いの。母さん以上には家族だわ! さあ、キラリ、東京に帰ったらちゃんと話すから、まずは支度して」
「キラリ抜きで決めておいて、なにが私たちだよ。大体、あんたは昔から自分勝手すぎるんだよ」
睨み合う、ママとおばあちゃんの様子に心臓がドキドキした。
だけど、なんとなくママが言う『東京に帰ってから話したい事』が、沢田さんの困りきった様子からわかってしまった。
「ママ……、帰るならママと沢田さんだけで帰って」
「キラリ?」
「私、夏休みの間はおばあちゃんのところにいたい。それから、」
ママと沢田さんの二人の顔を交互に見比べた。
「結婚するの? ママと沢田さん」
しばらくの沈黙の後で、口を開いたのは沢田さんだった。
「希帆さんが病気だって知って、それからなんだ。ボクが希帆さんを支えたいってそう思って」
「キラリには、ちゃんと話そうって。だから今回一緒に来たの。ごめんね、やっぱり最初から話すべきだった、ごめん」
二人の言葉に首を横に振った。
「別に結婚してもいいよ、沢田さんはいい人だし、ママもきっと幸せになれる。でも、そこに私はいらないと思う。だって、私がずっと千葉にいてママに会えない時も、沢田さんはお見舞いに行ってたんでしょ? ママだって沢田さんがいればそれでいいんじゃない?」
「キラリ!!」
立ち上がったママが震える手で私の頬を叩こうとして、沢田さんがそれを止めた。
「内緒にしてたこと怒ったの、ママの方じゃん? なのに自分も大事なこと秘密にしてたくせに! 私やおばあちゃんを怒るのおかしいよ! ママなんか大嫌い! 今日一緒にいたくせに、何も教えてくれなかった沢田さんも大嫌い。二人とも早く東京に帰ってよ!!」
「キラリ、待ちなさい、キラリ!!」
逃げるように自分の部屋へ駈け込んで背中で扉を抑えつけた。
しばらく玄関先でおばあちゃんとママが言い争う声が聞こえてきて、静かになったあと、車が発進する音が聞こえた。
「キラリ? 寝てるのかい?」
トントンと控えめなノックの音のあと、おばあちゃんの声が聞こえた。
「希帆は帰ったよ」
その言葉にズキッと胸が痛む。
ほら、やっぱり、ママは私じゃなくて沢田さんを選んだんだ。
「おばあちゃん……」
ギイっと開けたドアの前でおばあちゃんは私を待っていてくれた。
「ここにいたらいい。気の済むまで、ずっと」
その優しい声にすがるように、おばあちゃんに抱きついて声をあげて私は泣いた。
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