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八月五日金曜日~長雨のち「夏休み後半」
夏休み後半④
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「お邪魔しまーす!」
アンとカノンの元気な声が響いたのは、その翌日だった。
一週間ぶりに玄関口で会った二人は、なんだかまた一段と日焼けをしている。
「キラリ、私ね、十メートルぐらい泳げるようになったんだから」
えっへんと威張って見せるアンに焦る。
私も明日からまた特訓しないと、追い越されてしまいそうだ。
「これ、家からです。食べて下さいって、お母さんが」
カノンは大きなスイカを丸ごと一個。
「家からは、これを。たくさん食べるんだろうから足しにしてほしいって」
桐箱に入った高級そうな素麺を見て、おばあちゃんは笑う。
今日は私のために、おばあちゃんが流し素麺とお泊り会を実施してくれた。
晩御飯は中庭でバーベキューをして花火まですることに。
「二人とも、ありがとうね! さ、キラリの部屋で昼まで宿題でもしてな? 用意ができたら呼ぶからね?」
通りかかった中庭では、キラとキラのお父さんが、器用に竹を割き削っていた。
傍らでは、ノビルが楽しそうにそれを眺めていたけど私と目が合うとソッポを向く。
おばあちゃんの話を聞いてから、ノビルは私に話しかけてこない。
話しかけても無視するし、もう、可愛くないったら。
おじいちゃんは私のこと可愛がってくれたっていうから、やっぱりノビルは違う、生まれ変わりなんかじゃないかもしれない。
「キラ! 頑張ってね」
アンの声にハートがくっついて見えた。
「お、可愛い子たちに応援されたら頑張らないとな、キラ」
ニヒヒとからかうように笑うキラのお父さんに。
「うるさい、さっさと手動かしてよ」
キラが耳まで赤くして怒っていた。
「ねえねえ、キラのお父さんもかっこよくない?」
小声で話すアンの声を。
「おじさん! アンがかっこいいね、だって」
「え、ちょっと、カノン!!」
「おー!! ありがとう、後で素麺サービスするね」
「ヤメロ、マジで恥ずかしいから!!」
アンとキラはそれぞれ変な汗をかいている。
私とカノンとおじさんは、その様子に笑い合った。
「や、ちょっとキラ!! 独り占めしないでよ!」
私が掬おうとしていた素麺の塊を、数センチ先で全部自分の器に入れてしまったキラを睨む。
「でも、オマエ、さっきから全然掬えてないじゃん? どうせ」
「確かに、キラリって流し素麺ヘタクソ?」
「いや、ヘタクソというかド素人?」
散々な言い方に私は頬を膨らませて、誰よりも前で取ろうと待ち受ける、なのに――。
「すげえな、あの至近距離で数本って」
キラが涙目で笑っているように、塊はスルリと箸先をかすめて下で待っていたアンの器へと掬われた。
「キラリちゃん、ちゃんと食べてる?」
キラのおじさんまで半笑いで見ているから、ちょっと悔しい。
おばあちゃんなんて不憫な子を見るような目をしているし。
「貸してみろ、オマエの箸」
そう言うと私の手からパッと箸を奪って、おばあちゃんが流してくれた素麺を大量に掬って私の器に放り込む。
「ありがと」
腹は立つけど、ようやくありつけた素麺を思い切り啜った。
「その内慣れるって。ウチら、小学校の時から流し素麺とか家でもやってたし」
「そんな頻繁にやるもんなの?」
「なんとなく? 夏の風物詩みたいなもんよ? キラリも慣れるよ、やってるうちに。で、来年も一緒に」
言いかけたカノンが、あっと口を閉じる。
「やめてよ、カノン! そういうの私、苦手なんだってば」
ふと見たらアンが涙目でブツブツ言いながらほっぺたパンパンに膨らまして素麺を含んでいる。
そのふてくされたような泣きそうな顔を見ていたら、私まで寂しくなる。
「まだ夏休み半分あんだぞ? 明日っから、また泳ぐんだろ?」
キラの声に、アンはウンウン頷いて、私も笑ってみせた。
「ね、今度はアンの家でお菓子作ろうよ? キラもどう?」
「やだよ、食うだけならいいけど」
「ホント? じゃあ、キラも絶対味見に来て? あ、男子一人で寂しかったら、おじさんもご一緒に」
「ちょ、なんで親父と一緒に行かなきゃなんないんだよ」
「俺はいいぞ? 美味しいオヤツ食べられるんなら、キラと一緒に行っても」
「絶対来るな!!」
こういうの何て言うんだっけ?
受験の時習ったぞ?
『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』
アンってばキラのおじさんから胃袋つかんで落とす気だな?
カノンも同じことを思ったらしく、私の顔を見て噴き出した。
アンとカノンの元気な声が響いたのは、その翌日だった。
一週間ぶりに玄関口で会った二人は、なんだかまた一段と日焼けをしている。
「キラリ、私ね、十メートルぐらい泳げるようになったんだから」
えっへんと威張って見せるアンに焦る。
私も明日からまた特訓しないと、追い越されてしまいそうだ。
「これ、家からです。食べて下さいって、お母さんが」
カノンは大きなスイカを丸ごと一個。
「家からは、これを。たくさん食べるんだろうから足しにしてほしいって」
桐箱に入った高級そうな素麺を見て、おばあちゃんは笑う。
今日は私のために、おばあちゃんが流し素麺とお泊り会を実施してくれた。
晩御飯は中庭でバーベキューをして花火まですることに。
「二人とも、ありがとうね! さ、キラリの部屋で昼まで宿題でもしてな? 用意ができたら呼ぶからね?」
通りかかった中庭では、キラとキラのお父さんが、器用に竹を割き削っていた。
傍らでは、ノビルが楽しそうにそれを眺めていたけど私と目が合うとソッポを向く。
おばあちゃんの話を聞いてから、ノビルは私に話しかけてこない。
話しかけても無視するし、もう、可愛くないったら。
おじいちゃんは私のこと可愛がってくれたっていうから、やっぱりノビルは違う、生まれ変わりなんかじゃないかもしれない。
「キラ! 頑張ってね」
アンの声にハートがくっついて見えた。
「お、可愛い子たちに応援されたら頑張らないとな、キラ」
ニヒヒとからかうように笑うキラのお父さんに。
「うるさい、さっさと手動かしてよ」
キラが耳まで赤くして怒っていた。
「ねえねえ、キラのお父さんもかっこよくない?」
小声で話すアンの声を。
「おじさん! アンがかっこいいね、だって」
「え、ちょっと、カノン!!」
「おー!! ありがとう、後で素麺サービスするね」
「ヤメロ、マジで恥ずかしいから!!」
アンとキラはそれぞれ変な汗をかいている。
私とカノンとおじさんは、その様子に笑い合った。
「や、ちょっとキラ!! 独り占めしないでよ!」
私が掬おうとしていた素麺の塊を、数センチ先で全部自分の器に入れてしまったキラを睨む。
「でも、オマエ、さっきから全然掬えてないじゃん? どうせ」
「確かに、キラリって流し素麺ヘタクソ?」
「いや、ヘタクソというかド素人?」
散々な言い方に私は頬を膨らませて、誰よりも前で取ろうと待ち受ける、なのに――。
「すげえな、あの至近距離で数本って」
キラが涙目で笑っているように、塊はスルリと箸先をかすめて下で待っていたアンの器へと掬われた。
「キラリちゃん、ちゃんと食べてる?」
キラのおじさんまで半笑いで見ているから、ちょっと悔しい。
おばあちゃんなんて不憫な子を見るような目をしているし。
「貸してみろ、オマエの箸」
そう言うと私の手からパッと箸を奪って、おばあちゃんが流してくれた素麺を大量に掬って私の器に放り込む。
「ありがと」
腹は立つけど、ようやくありつけた素麺を思い切り啜った。
「その内慣れるって。ウチら、小学校の時から流し素麺とか家でもやってたし」
「そんな頻繁にやるもんなの?」
「なんとなく? 夏の風物詩みたいなもんよ? キラリも慣れるよ、やってるうちに。で、来年も一緒に」
言いかけたカノンが、あっと口を閉じる。
「やめてよ、カノン! そういうの私、苦手なんだってば」
ふと見たらアンが涙目でブツブツ言いながらほっぺたパンパンに膨らまして素麺を含んでいる。
そのふてくされたような泣きそうな顔を見ていたら、私まで寂しくなる。
「まだ夏休み半分あんだぞ? 明日っから、また泳ぐんだろ?」
キラの声に、アンはウンウン頷いて、私も笑ってみせた。
「ね、今度はアンの家でお菓子作ろうよ? キラもどう?」
「やだよ、食うだけならいいけど」
「ホント? じゃあ、キラも絶対味見に来て? あ、男子一人で寂しかったら、おじさんもご一緒に」
「ちょ、なんで親父と一緒に行かなきゃなんないんだよ」
「俺はいいぞ? 美味しいオヤツ食べられるんなら、キラと一緒に行っても」
「絶対来るな!!」
こういうの何て言うんだっけ?
受験の時習ったぞ?
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カノンも同じことを思ったらしく、私の顔を見て噴き出した。
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