44 / 53
八月五日金曜日~長雨のち「夏休み後半」
夏休み後半④
しおりを挟む
「お邪魔しまーす!」
アンとカノンの元気な声が響いたのは、その翌日だった。
一週間ぶりに玄関口で会った二人は、なんだかまた一段と日焼けをしている。
「キラリ、私ね、十メートルぐらい泳げるようになったんだから」
えっへんと威張って見せるアンに焦る。
私も明日からまた特訓しないと、追い越されてしまいそうだ。
「これ、家からです。食べて下さいって、お母さんが」
カノンは大きなスイカを丸ごと一個。
「家からは、これを。たくさん食べるんだろうから足しにしてほしいって」
桐箱に入った高級そうな素麺を見て、おばあちゃんは笑う。
今日は私のために、おばあちゃんが流し素麺とお泊り会を実施してくれた。
晩御飯は中庭でバーベキューをして花火まですることに。
「二人とも、ありがとうね! さ、キラリの部屋で昼まで宿題でもしてな? 用意ができたら呼ぶからね?」
通りかかった中庭では、キラとキラのお父さんが、器用に竹を割き削っていた。
傍らでは、ノビルが楽しそうにそれを眺めていたけど私と目が合うとソッポを向く。
おばあちゃんの話を聞いてから、ノビルは私に話しかけてこない。
話しかけても無視するし、もう、可愛くないったら。
おじいちゃんは私のこと可愛がってくれたっていうから、やっぱりノビルは違う、生まれ変わりなんかじゃないかもしれない。
「キラ! 頑張ってね」
アンの声にハートがくっついて見えた。
「お、可愛い子たちに応援されたら頑張らないとな、キラ」
ニヒヒとからかうように笑うキラのお父さんに。
「うるさい、さっさと手動かしてよ」
キラが耳まで赤くして怒っていた。
「ねえねえ、キラのお父さんもかっこよくない?」
小声で話すアンの声を。
「おじさん! アンがかっこいいね、だって」
「え、ちょっと、カノン!!」
「おー!! ありがとう、後で素麺サービスするね」
「ヤメロ、マジで恥ずかしいから!!」
アンとキラはそれぞれ変な汗をかいている。
私とカノンとおじさんは、その様子に笑い合った。
「や、ちょっとキラ!! 独り占めしないでよ!」
私が掬おうとしていた素麺の塊を、数センチ先で全部自分の器に入れてしまったキラを睨む。
「でも、オマエ、さっきから全然掬えてないじゃん? どうせ」
「確かに、キラリって流し素麺ヘタクソ?」
「いや、ヘタクソというかド素人?」
散々な言い方に私は頬を膨らませて、誰よりも前で取ろうと待ち受ける、なのに――。
「すげえな、あの至近距離で数本って」
キラが涙目で笑っているように、塊はスルリと箸先をかすめて下で待っていたアンの器へと掬われた。
「キラリちゃん、ちゃんと食べてる?」
キラのおじさんまで半笑いで見ているから、ちょっと悔しい。
おばあちゃんなんて不憫な子を見るような目をしているし。
「貸してみろ、オマエの箸」
そう言うと私の手からパッと箸を奪って、おばあちゃんが流してくれた素麺を大量に掬って私の器に放り込む。
「ありがと」
腹は立つけど、ようやくありつけた素麺を思い切り啜った。
「その内慣れるって。ウチら、小学校の時から流し素麺とか家でもやってたし」
「そんな頻繁にやるもんなの?」
「なんとなく? 夏の風物詩みたいなもんよ? キラリも慣れるよ、やってるうちに。で、来年も一緒に」
言いかけたカノンが、あっと口を閉じる。
「やめてよ、カノン! そういうの私、苦手なんだってば」
ふと見たらアンが涙目でブツブツ言いながらほっぺたパンパンに膨らまして素麺を含んでいる。
そのふてくされたような泣きそうな顔を見ていたら、私まで寂しくなる。
「まだ夏休み半分あんだぞ? 明日っから、また泳ぐんだろ?」
キラの声に、アンはウンウン頷いて、私も笑ってみせた。
「ね、今度はアンの家でお菓子作ろうよ? キラもどう?」
「やだよ、食うだけならいいけど」
「ホント? じゃあ、キラも絶対味見に来て? あ、男子一人で寂しかったら、おじさんもご一緒に」
「ちょ、なんで親父と一緒に行かなきゃなんないんだよ」
「俺はいいぞ? 美味しいオヤツ食べられるんなら、キラと一緒に行っても」
「絶対来るな!!」
こういうの何て言うんだっけ?
受験の時習ったぞ?
『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』
アンってばキラのおじさんから胃袋つかんで落とす気だな?
カノンも同じことを思ったらしく、私の顔を見て噴き出した。
アンとカノンの元気な声が響いたのは、その翌日だった。
一週間ぶりに玄関口で会った二人は、なんだかまた一段と日焼けをしている。
「キラリ、私ね、十メートルぐらい泳げるようになったんだから」
えっへんと威張って見せるアンに焦る。
私も明日からまた特訓しないと、追い越されてしまいそうだ。
「これ、家からです。食べて下さいって、お母さんが」
カノンは大きなスイカを丸ごと一個。
「家からは、これを。たくさん食べるんだろうから足しにしてほしいって」
桐箱に入った高級そうな素麺を見て、おばあちゃんは笑う。
今日は私のために、おばあちゃんが流し素麺とお泊り会を実施してくれた。
晩御飯は中庭でバーベキューをして花火まですることに。
「二人とも、ありがとうね! さ、キラリの部屋で昼まで宿題でもしてな? 用意ができたら呼ぶからね?」
通りかかった中庭では、キラとキラのお父さんが、器用に竹を割き削っていた。
傍らでは、ノビルが楽しそうにそれを眺めていたけど私と目が合うとソッポを向く。
おばあちゃんの話を聞いてから、ノビルは私に話しかけてこない。
話しかけても無視するし、もう、可愛くないったら。
おじいちゃんは私のこと可愛がってくれたっていうから、やっぱりノビルは違う、生まれ変わりなんかじゃないかもしれない。
「キラ! 頑張ってね」
アンの声にハートがくっついて見えた。
「お、可愛い子たちに応援されたら頑張らないとな、キラ」
ニヒヒとからかうように笑うキラのお父さんに。
「うるさい、さっさと手動かしてよ」
キラが耳まで赤くして怒っていた。
「ねえねえ、キラのお父さんもかっこよくない?」
小声で話すアンの声を。
「おじさん! アンがかっこいいね、だって」
「え、ちょっと、カノン!!」
「おー!! ありがとう、後で素麺サービスするね」
「ヤメロ、マジで恥ずかしいから!!」
アンとキラはそれぞれ変な汗をかいている。
私とカノンとおじさんは、その様子に笑い合った。
「や、ちょっとキラ!! 独り占めしないでよ!」
私が掬おうとしていた素麺の塊を、数センチ先で全部自分の器に入れてしまったキラを睨む。
「でも、オマエ、さっきから全然掬えてないじゃん? どうせ」
「確かに、キラリって流し素麺ヘタクソ?」
「いや、ヘタクソというかド素人?」
散々な言い方に私は頬を膨らませて、誰よりも前で取ろうと待ち受ける、なのに――。
「すげえな、あの至近距離で数本って」
キラが涙目で笑っているように、塊はスルリと箸先をかすめて下で待っていたアンの器へと掬われた。
「キラリちゃん、ちゃんと食べてる?」
キラのおじさんまで半笑いで見ているから、ちょっと悔しい。
おばあちゃんなんて不憫な子を見るような目をしているし。
「貸してみろ、オマエの箸」
そう言うと私の手からパッと箸を奪って、おばあちゃんが流してくれた素麺を大量に掬って私の器に放り込む。
「ありがと」
腹は立つけど、ようやくありつけた素麺を思い切り啜った。
「その内慣れるって。ウチら、小学校の時から流し素麺とか家でもやってたし」
「そんな頻繁にやるもんなの?」
「なんとなく? 夏の風物詩みたいなもんよ? キラリも慣れるよ、やってるうちに。で、来年も一緒に」
言いかけたカノンが、あっと口を閉じる。
「やめてよ、カノン! そういうの私、苦手なんだってば」
ふと見たらアンが涙目でブツブツ言いながらほっぺたパンパンに膨らまして素麺を含んでいる。
そのふてくされたような泣きそうな顔を見ていたら、私まで寂しくなる。
「まだ夏休み半分あんだぞ? 明日っから、また泳ぐんだろ?」
キラの声に、アンはウンウン頷いて、私も笑ってみせた。
「ね、今度はアンの家でお菓子作ろうよ? キラもどう?」
「やだよ、食うだけならいいけど」
「ホント? じゃあ、キラも絶対味見に来て? あ、男子一人で寂しかったら、おじさんもご一緒に」
「ちょ、なんで親父と一緒に行かなきゃなんないんだよ」
「俺はいいぞ? 美味しいオヤツ食べられるんなら、キラと一緒に行っても」
「絶対来るな!!」
こういうの何て言うんだっけ?
受験の時習ったぞ?
『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』
アンってばキラのおじさんから胃袋つかんで落とす気だな?
カノンも同じことを思ったらしく、私の顔を見て噴き出した。
1
あなたにおすすめの小説
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
ハピネコは、ニャアと笑う
東 里胡
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞受賞
目が覚めたら昨日だった。知ってる会話、見覚えのあるニュース。
二度目の今日を迎えた小学五年生のメイのもとに、空から黒ネコが落ちてきた。
人間の言葉を話し魔法を使える自称ハッピーネコのチロル。
彼は西暦2200年の未来から、逃げ出した友達ハピネコのアイルの後を追って、現代にやってきたという。
ハピネコとは、人間を幸せにするために存在する半分AIのネコ。
そのため、幸せの押し付けをするチロルに、メイは疑問を投げかける。
「幸せって、みんなそれぞれ違うでしょ? それに、誰かにしてもらうものじゃない」
「じゃあ、ボクはどうしたらいいの? メイのことを幸せにできないの?」
だけど、チロルにはどうしても人間を幸せにしなければいけないハピネコとしての使命があって……。
幼なじみのヒューガ、メイのことを嫌うミサキちゃんを巻き込みながら、チロルの友達アイルを探す日々の中で、メイ自身も幸せについて、友達について考えていく。
表紙はイラストAC様よりお借りしました。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる