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八月五日金曜日~長雨のち「夏休み後半」
夏休み後半⑦
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「何やってんだ? おまえら」
その声に慌てて涙をふいて顔をあげたら、いつの間にかキラがいた。
私がノビルを抱きしめてる姿に首を傾げている。
「散歩、行くんだろ?」
「あ、うん!」
そうだ、もう夕方の散歩の時間だったんだ。
ノビルはもう普通の犬みたいに、ワオンワオンとキラにじゃれつく。
時々思う。
ノビルがもし私が感じるようにおじいちゃんの生まれ変わりだとしたなら、やっぱりおばあちゃん同様キラのことも可愛いんだろうなって思う。
最近は散歩のとき、ノビルのリードは私に任せてくれる。
後、何回こうして三人で散歩できるんだろう。
そう思ったら、また寂しくなった。
「なあ、キラリ」
「うん?」
「母ちゃんと仲直りしたか?」
「な、なんでキラが知ってんの?」
「そりゃ、聞こえてたもん、隣だし。お前の母ちゃんも真希さんも声がデカイから」
ああ、もう全部筒抜けだ。
困ったように笑う私にキラが足を止めた。
「ちゃんと仲直りしろ? した方がいいぞ?」
「……、わかってる。ただ、」
「うん?」
「仲直りって、どうしたらいいんだっけ?」
困ったように笑う私にキラが立ち止まったまま、考え込むように空を仰いだ。
それから、言葉を選ぶように、ポツリポツリと話し出す。
「真希さんから聞いてるかもしんねえけどさ、俺の母さんって、ある日突然死んじゃったわけ。……朝、学校に俺を送り出してくれた時は『気を付けていってらっしゃい、夜はキラの大好きなグラタン作るね』って、そう言ってたくせにさ」
相槌を打つこともできず、ただキラの隣に立って話を聞く。
キラもまた、そのまま途切れ途切れに話を続けてく。
「あの日の朝、またパンかよって、言っちゃったんだ。いつも俺の母さん、朝早くパン工場に行っててさ。で、そこで貰ってきたパンなの、俺ん家の朝ご飯って。たまには、卵かけ納豆ご飯が食べたいって俺ワガママ言っちゃって。そしたら母さんが、いつも我慢させてごめんねって」
キラの汗が泣いてるみたいに光って見えた。
ノビルも心配そうにキラによりそっている。
「だから、母さんは夕飯で挽回しようとしてくれたんだと思う。グラタン作るね、って。でも俺意地張っちゃって。夜のグラタンじゃなくって、今、卵かけ納豆ご飯を食べたかったのに。そう思っちゃって、怒ったまんま学校に行っちゃってさ。まさか、もう二度と謝れないとか思ってなかったじゃん」
へへって笑ってみせるけど、目の淵が赤くなってる。
あの日に戻れたら、そんな思いがキラから溢れていた。
「今なら毎日忙しいのに、ありがとう、って言えるんだけどな? ガキだったよなあ、ホント」
キラの声を聞いてるうちに、鼻の奥がツンとしてくる。
小さかった頃のキラが抱えた後悔があまりに悲しい。
「だから、俺みたいになってほしくないわけ。オマエには!」
キラが真っすぐに私を見た。
それから笑顔でゴシゴシと乱暴に私の涙を拭う。
「ちゃんと仲直りしろよ、キラリ!」
コクンと大きく頷いたら、キラはニッと笑って。
だけど笑った拍子に落ちたのは、絶対に汗じゃなかったと思う。
キラがお父さんを大切にしているのは、もう二度と後悔しないためになんだろうな。
「んじゃ、帰るか」
ホラと伸ばされた手は、ノビルのリードを代わってくれるってことだったんだろうけど。
「え!?」
何を思ったか、私はその手を握ってしまった。
キラが目を見開いて固まっている。
私がそれを理解するまでに、沈黙の中で数秒が経過。
「えええええええ!?」
大声をあげて、慌ててキラの手を振り払う。
「貸せ、帰るぞ」
真っ赤な顔で私からノビルのリードを奪い取ると、いきなりマックスの速度で走り出す。
「え、ちょっと、待ってよ~!!」
キラの背中を追いかけながら、自分がしてしまったことを考える。
キャーと声をあげて、走り出したくなるのをこらえた。
その声に慌てて涙をふいて顔をあげたら、いつの間にかキラがいた。
私がノビルを抱きしめてる姿に首を傾げている。
「散歩、行くんだろ?」
「あ、うん!」
そうだ、もう夕方の散歩の時間だったんだ。
ノビルはもう普通の犬みたいに、ワオンワオンとキラにじゃれつく。
時々思う。
ノビルがもし私が感じるようにおじいちゃんの生まれ変わりだとしたなら、やっぱりおばあちゃん同様キラのことも可愛いんだろうなって思う。
最近は散歩のとき、ノビルのリードは私に任せてくれる。
後、何回こうして三人で散歩できるんだろう。
そう思ったら、また寂しくなった。
「なあ、キラリ」
「うん?」
「母ちゃんと仲直りしたか?」
「な、なんでキラが知ってんの?」
「そりゃ、聞こえてたもん、隣だし。お前の母ちゃんも真希さんも声がデカイから」
ああ、もう全部筒抜けだ。
困ったように笑う私にキラが足を止めた。
「ちゃんと仲直りしろ? した方がいいぞ?」
「……、わかってる。ただ、」
「うん?」
「仲直りって、どうしたらいいんだっけ?」
困ったように笑う私にキラが立ち止まったまま、考え込むように空を仰いだ。
それから、言葉を選ぶように、ポツリポツリと話し出す。
「真希さんから聞いてるかもしんねえけどさ、俺の母さんって、ある日突然死んじゃったわけ。……朝、学校に俺を送り出してくれた時は『気を付けていってらっしゃい、夜はキラの大好きなグラタン作るね』って、そう言ってたくせにさ」
相槌を打つこともできず、ただキラの隣に立って話を聞く。
キラもまた、そのまま途切れ途切れに話を続けてく。
「あの日の朝、またパンかよって、言っちゃったんだ。いつも俺の母さん、朝早くパン工場に行っててさ。で、そこで貰ってきたパンなの、俺ん家の朝ご飯って。たまには、卵かけ納豆ご飯が食べたいって俺ワガママ言っちゃって。そしたら母さんが、いつも我慢させてごめんねって」
キラの汗が泣いてるみたいに光って見えた。
ノビルも心配そうにキラによりそっている。
「だから、母さんは夕飯で挽回しようとしてくれたんだと思う。グラタン作るね、って。でも俺意地張っちゃって。夜のグラタンじゃなくって、今、卵かけ納豆ご飯を食べたかったのに。そう思っちゃって、怒ったまんま学校に行っちゃってさ。まさか、もう二度と謝れないとか思ってなかったじゃん」
へへって笑ってみせるけど、目の淵が赤くなってる。
あの日に戻れたら、そんな思いがキラから溢れていた。
「今なら毎日忙しいのに、ありがとう、って言えるんだけどな? ガキだったよなあ、ホント」
キラの声を聞いてるうちに、鼻の奥がツンとしてくる。
小さかった頃のキラが抱えた後悔があまりに悲しい。
「だから、俺みたいになってほしくないわけ。オマエには!」
キラが真っすぐに私を見た。
それから笑顔でゴシゴシと乱暴に私の涙を拭う。
「ちゃんと仲直りしろよ、キラリ!」
コクンと大きく頷いたら、キラはニッと笑って。
だけど笑った拍子に落ちたのは、絶対に汗じゃなかったと思う。
キラがお父さんを大切にしているのは、もう二度と後悔しないためになんだろうな。
「んじゃ、帰るか」
ホラと伸ばされた手は、ノビルのリードを代わってくれるってことだったんだろうけど。
「え!?」
何を思ったか、私はその手を握ってしまった。
キラが目を見開いて固まっている。
私がそれを理解するまでに、沈黙の中で数秒が経過。
「えええええええ!?」
大声をあげて、慌ててキラの手を振り払う。
「貸せ、帰るぞ」
真っ赤な顔で私からノビルのリードを奪い取ると、いきなりマックスの速度で走り出す。
「え、ちょっと、待ってよ~!!」
キラの背中を追いかけながら、自分がしてしまったことを考える。
キャーと声をあげて、走り出したくなるのをこらえた。
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