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*サヨナラ、大好きな人*
あきらめました1
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「真宙くんとハナちゃんって付き合ってるの?!」
翌朝の教室はその話題で持ち切りだった。
どうやら私が真宙くんに抱きしめられている姿を誰かに見られていたようだ。
さてどうしようか、と真宙くんを見たら。
「ええ? 違うよ~! ハナちゃんがりんご飴落として泣いちゃったから慰めてあげてたの」
ね、ハナちゃん、といつものように笑う真宙くんにのっかって私も頷いた。
なーんだ、って皆納得してくれたのは、真宙くんがいつも女子へのスキンシップ多めの人だからだろう。
泣いた理由が春香先輩とのいざこざだった、なんて噂がたたなくて良かった。
そんなのが広がったら、きっと空人くんも気まずいと思う。
「はあ!? ぶたれたの!?」
夕べ、ルカとは会えることなく、私はまた真宙くんに送られて家に帰った。
「いや、そんなことよりルカと梶くんは」
「そんなことじゃないよ、春香先輩ひどすぎるじゃん! ちょっと私殴り返してくる」
怒りをあらわに立ち上がろうとするルカを、どうにか抑えつけた。
教室じゃなくて良かった、と思った。
ルカにはちゃんとイチから説明したくてお弁当を外で食べようと誘ったのだ。
「私が悪かったんだよ、ルカ」
「なんで」
「春香先輩からしたら、自分の彼氏のことを好きだって思う子が側にいるのって気分悪いに決まってる。バレなきゃ大丈夫。思ってるだけなら大丈夫って。だけど、そんな身勝手な考え方してたから」
春香先輩に言われた全部が痛かった。
それは私が知らず知らずのうちに春香先輩を傷つけてしまったものが、一気に塊となって押し寄せてきたような。
「もうこれからは空人くんと必要以上に話すのはやめようって思ってる」
「どうして?!」
「人間、あきらめも肝心なんだよ? ルカ」
「あきらめの悪いハナの口から、そんな言葉が出る日が来るなんて」
信じられないと悲しそうに肩を落とすルカに苦笑い。
そうだね、あきらめる、って言葉にしたことないかも。
「そうそう! 梶くん、いい人そうだよね」
「そうなの。でもいい人止まりだな。友達のままがいい」
「見え見え、私に気を使ってるなら止めて」
「そんなことないよ」
「あります~!」
だって夕べ梶くんと並んで歩くルカは、なんだかとっても可愛かった。
二人で一緒にいるのがしっくりきてて、はたから見てもお似合いだった。
「ルカ、私が空人くんをあきらめるのは、前向きなあきらめなんだよ?」
「……、意味がわかんない」
「誰か他の人を好きになってみたい、って思ったの。これってすごく前向きじゃない?」
しばらく私の顔を見ていたルカは、小さく項垂れて。
「あきらめかたに前向きがあるかどうかは知らないけど、ハナがそう思ってしまったならよっぽどなんだろうな」
ふっと小さく息をついて。
「よし、梶くんと付き合う。そして梶くんにハナに合う素敵な人探させる」
「ちょっと、何か梶くん利用しちゃってるじゃん!」
「あ、」
「大事にしなよ、ルカ」
「わかってるよ、大事にしますって。でもさ、ハナはどんな人がいい? かっこいい人? 可愛い系?」
「まだ言うか」
プハッと互いの顔を見て笑い合って。
見上げた空には飛行機雲。
「真宙だと丁度いいんだけどなあ」
「え?」
「ハナには真宙みたいな元気なのがいいと思うけど」
「丁度いいって、言い方!! 真宙くん今頃くしゃみしてそう」
カラカラと笑い合って、夏休みのことを話し合う。
去年みたいに一緒に映画に行こう、大きいプールも行こう。金槌だから浮き輪にプカプカ浮かんでいるしかできないけれど、それはそれで楽しい。
花火大会やお互いの家に泊りあったり、なんならうちの庭にテント張って梶くんや真宙くんも呼ぼうか。
楽しい時間は、このポッカリと開いてしまった大きな穴を埋めてくれるだろうから。
翌朝の教室はその話題で持ち切りだった。
どうやら私が真宙くんに抱きしめられている姿を誰かに見られていたようだ。
さてどうしようか、と真宙くんを見たら。
「ええ? 違うよ~! ハナちゃんがりんご飴落として泣いちゃったから慰めてあげてたの」
ね、ハナちゃん、といつものように笑う真宙くんにのっかって私も頷いた。
なーんだ、って皆納得してくれたのは、真宙くんがいつも女子へのスキンシップ多めの人だからだろう。
泣いた理由が春香先輩とのいざこざだった、なんて噂がたたなくて良かった。
そんなのが広がったら、きっと空人くんも気まずいと思う。
「はあ!? ぶたれたの!?」
夕べ、ルカとは会えることなく、私はまた真宙くんに送られて家に帰った。
「いや、そんなことよりルカと梶くんは」
「そんなことじゃないよ、春香先輩ひどすぎるじゃん! ちょっと私殴り返してくる」
怒りをあらわに立ち上がろうとするルカを、どうにか抑えつけた。
教室じゃなくて良かった、と思った。
ルカにはちゃんとイチから説明したくてお弁当を外で食べようと誘ったのだ。
「私が悪かったんだよ、ルカ」
「なんで」
「春香先輩からしたら、自分の彼氏のことを好きだって思う子が側にいるのって気分悪いに決まってる。バレなきゃ大丈夫。思ってるだけなら大丈夫って。だけど、そんな身勝手な考え方してたから」
春香先輩に言われた全部が痛かった。
それは私が知らず知らずのうちに春香先輩を傷つけてしまったものが、一気に塊となって押し寄せてきたような。
「もうこれからは空人くんと必要以上に話すのはやめようって思ってる」
「どうして?!」
「人間、あきらめも肝心なんだよ? ルカ」
「あきらめの悪いハナの口から、そんな言葉が出る日が来るなんて」
信じられないと悲しそうに肩を落とすルカに苦笑い。
そうだね、あきらめる、って言葉にしたことないかも。
「そうそう! 梶くん、いい人そうだよね」
「そうなの。でもいい人止まりだな。友達のままがいい」
「見え見え、私に気を使ってるなら止めて」
「そんなことないよ」
「あります~!」
だって夕べ梶くんと並んで歩くルカは、なんだかとっても可愛かった。
二人で一緒にいるのがしっくりきてて、はたから見てもお似合いだった。
「ルカ、私が空人くんをあきらめるのは、前向きなあきらめなんだよ?」
「……、意味がわかんない」
「誰か他の人を好きになってみたい、って思ったの。これってすごく前向きじゃない?」
しばらく私の顔を見ていたルカは、小さく項垂れて。
「あきらめかたに前向きがあるかどうかは知らないけど、ハナがそう思ってしまったならよっぽどなんだろうな」
ふっと小さく息をついて。
「よし、梶くんと付き合う。そして梶くんにハナに合う素敵な人探させる」
「ちょっと、何か梶くん利用しちゃってるじゃん!」
「あ、」
「大事にしなよ、ルカ」
「わかってるよ、大事にしますって。でもさ、ハナはどんな人がいい? かっこいい人? 可愛い系?」
「まだ言うか」
プハッと互いの顔を見て笑い合って。
見上げた空には飛行機雲。
「真宙だと丁度いいんだけどなあ」
「え?」
「ハナには真宙みたいな元気なのがいいと思うけど」
「丁度いいって、言い方!! 真宙くん今頃くしゃみしてそう」
カラカラと笑い合って、夏休みのことを話し合う。
去年みたいに一緒に映画に行こう、大きいプールも行こう。金槌だから浮き輪にプカプカ浮かんでいるしかできないけれど、それはそれで楽しい。
花火大会やお互いの家に泊りあったり、なんならうちの庭にテント張って梶くんや真宙くんも呼ぼうか。
楽しい時間は、このポッカリと開いてしまった大きな穴を埋めてくれるだろうから。
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