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*サヨナラ、大好きな人*
あきらめました2
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昇降口に立つ人は私を見つけると手をあげた。
どうやら私を待っていたみたいだ。
「二宮、昨日は」
そう言いかけた空人くんに微笑んだ。
「春香先輩、大丈夫だった?」
「二宮の方こそ、大丈夫だった? 昨日の内に連絡できなくて、ゴメン」
心配そうな顔をした空人くん。
空人くんのせいじゃないのに。
「ごめんね、空人くん。私が考えなさすぎだった。彼氏に女友達がいっぱいいたんじゃ心配になるもんね」
「いっぱいなんていない、二宮と安西だけだ」
「それでも私たち、距離が近すぎたんだと思う。春香先輩が心配するくらいに」
目を見ないままで靴を履き替えて外に出ると、空人くんも並ぶように歩き出す。
「春香先輩に見られたら、またケンカになっちゃうよ?」
「ならないよ、もう」
もう?
「ならない。昨日、別れたから」
「どうして!?」
私のせいで?
「二宮のせいなんかじゃないよ。ずっと、何となく違うなって感じてた」
揺れる、心がまた揺れて、昨日までの自分に戻ってしまいそうになる。
「二宮にお守りの話したことがあっただろ? 春香から貰ったって」
「うん」
「春香は違うって言うけど、俺はずっと忘れてるだけだってそう思ってさ。そんぐらい小さい時のことだし」
確かに幼い時の記憶なんて曖昧だ。
私にもある。
いつも見るあの夢、建物。
本当に体験したかのように鮮やかなのに、矛盾点がいっぱいあって……。
「ただ俺の記憶の中の春香は、……、はーちゃんっていう小さな女の子は、すっごい元気で頑張り屋でさ。いつも気弱だった俺にも優しくて励ましてくれた。成長したら、ずっと会ってなければ性格だって変わることもあるかもしんないし、俺がそれにこだわりすぎるのかもしんないけど」
小さなため息が途切れた会話の中で聞こえた。
「少なくとも俺の覚えているはーちゃんは、誰かを叩くようなことはしなかった。それが決定的だったのは確か。だけど春香が叩いた相手が二宮じゃなくて安西でも同じだったよ。だから二宮のせいではないから」
心が震えて、昨日までの自分に戻りたくなっている。
空人くんの言葉の優しさが波のように襲ってきて。
もう揺らがないはずだった私の心を引き潮で持って行ってしまいそう。
どうやら私を待っていたみたいだ。
「二宮、昨日は」
そう言いかけた空人くんに微笑んだ。
「春香先輩、大丈夫だった?」
「二宮の方こそ、大丈夫だった? 昨日の内に連絡できなくて、ゴメン」
心配そうな顔をした空人くん。
空人くんのせいじゃないのに。
「ごめんね、空人くん。私が考えなさすぎだった。彼氏に女友達がいっぱいいたんじゃ心配になるもんね」
「いっぱいなんていない、二宮と安西だけだ」
「それでも私たち、距離が近すぎたんだと思う。春香先輩が心配するくらいに」
目を見ないままで靴を履き替えて外に出ると、空人くんも並ぶように歩き出す。
「春香先輩に見られたら、またケンカになっちゃうよ?」
「ならないよ、もう」
もう?
「ならない。昨日、別れたから」
「どうして!?」
私のせいで?
「二宮のせいなんかじゃないよ。ずっと、何となく違うなって感じてた」
揺れる、心がまた揺れて、昨日までの自分に戻ってしまいそうになる。
「二宮にお守りの話したことがあっただろ? 春香から貰ったって」
「うん」
「春香は違うって言うけど、俺はずっと忘れてるだけだってそう思ってさ。そんぐらい小さい時のことだし」
確かに幼い時の記憶なんて曖昧だ。
私にもある。
いつも見るあの夢、建物。
本当に体験したかのように鮮やかなのに、矛盾点がいっぱいあって……。
「ただ俺の記憶の中の春香は、……、はーちゃんっていう小さな女の子は、すっごい元気で頑張り屋でさ。いつも気弱だった俺にも優しくて励ましてくれた。成長したら、ずっと会ってなければ性格だって変わることもあるかもしんないし、俺がそれにこだわりすぎるのかもしんないけど」
小さなため息が途切れた会話の中で聞こえた。
「少なくとも俺の覚えているはーちゃんは、誰かを叩くようなことはしなかった。それが決定的だったのは確か。だけど春香が叩いた相手が二宮じゃなくて安西でも同じだったよ。だから二宮のせいではないから」
心が震えて、昨日までの自分に戻りたくなっている。
空人くんの言葉の優しさが波のように襲ってきて。
もう揺らがないはずだった私の心を引き潮で持って行ってしまいそう。
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