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*心に降る雨*
覚悟を決めました1
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テスト対策の集まりは、今回はなかった。
いや、私と真宙くんはやってほしかったけど。
『ハナは入院明けだし、真宙は一度自分の力で頑張っておいで。それで追試になるんなら仕方ないから面倒見てあげる』
ルカの言葉に、鬼! 悪魔! と涙目で罵った真宙くん。
『追試も面倒見ないよ?』
ルカのトドメの一言に黙るより他なかったみたい。
そして当のルカはというと梶くんと二人で勉強会だとか、結局そっちなんかい! って、真宙くんと抗議したくなったけれど。
うん、敵に回すのは怖いから止めておこう、追試になったら私も面倒見てほしいし。
一人余裕な顔をした空人くんは、相変わらず私たちのやり取りを楽しそうに見ているだけだ。
あれから、時々春香先輩を見かけた。
廊下で空人くんとすれ違う春香先輩の顔は俯き、今にもいつも泣き出しそうな顔をしていた。
ズキンと胸が痛む。
あの時、私がお祭りに行っていなければ、春香先輩と空人くんはまだ続いていたのかもしれない。
二人はケンカなんかしなかったのかもしれない。
退院から一週間後、七月初めの土曜日。
シトシトと降り続く長雨は気分を憂鬱にさせた。
家で勉強していると何だか逃げ出したくなる気分になったりもする。
いつもは気にならない場所を掃除してみたり整頓してみたりして。
ハッと気づけばすぐに一時間は経っているのだ、まずい。
「図書館、行ってくるよ。夕方には帰ってくる」
玄関でレインブーツを履く私をママが心配そうに見ている。
「一人で平気?」
「ママ、私のこと何歳だって思ってるの?」
「でも、退院したばかりだし。それにまだ検査結果が出てないのよ?」
「それでも私の期末テストは待ってくれないんだよ、ママ。代わりに受けてくれないでしょ。だからやるしかない、応援して」
仕方ないか、とママは苦笑して見送ってくれた。
無理はしないこと、何かあったらすぐに連絡をすること。
それだけは約束させられた上で送り出してくれたのだ。
霧雨のような細かな雨が紫陽花を鮮やかな紫に染め上げて、緑色の葉の上にはカタツムリがのっていた。
図書館入り口のその愛らしい景色に、思わずスマホを構える。
紫陽花と葉っぱとカタツムリ、その微妙なバランスを大きさを考えて、角度を変えながら何枚か写す。
「あ、これいいかも」
と自己満足しながら、後で真宙くんに送ってみようと思った。
今送ったら『どこにいるの?』になって、きっと真宙くんもやってくる。
そして結局勉強のわからない者同士で、悩み続けるだけになる気がして写真は家に帰ってからとした。
スマホでも上手に撮れる方法を真宙くんから何度か教えてもらっている。
おかげでだいぶ上達したので誰かに見せたくなってしまうのだ。
入り口前で写真の出来をスライドしたりズームしたりしてじっくり見ていたら。
「二宮?」
頭の上から降ってきたその声に驚く。
夢にまで出てくるほどに、覚えてしまった声の主は空人くん。
心配そうな目で私を見下ろしていた。
いや、私と真宙くんはやってほしかったけど。
『ハナは入院明けだし、真宙は一度自分の力で頑張っておいで。それで追試になるんなら仕方ないから面倒見てあげる』
ルカの言葉に、鬼! 悪魔! と涙目で罵った真宙くん。
『追試も面倒見ないよ?』
ルカのトドメの一言に黙るより他なかったみたい。
そして当のルカはというと梶くんと二人で勉強会だとか、結局そっちなんかい! って、真宙くんと抗議したくなったけれど。
うん、敵に回すのは怖いから止めておこう、追試になったら私も面倒見てほしいし。
一人余裕な顔をした空人くんは、相変わらず私たちのやり取りを楽しそうに見ているだけだ。
あれから、時々春香先輩を見かけた。
廊下で空人くんとすれ違う春香先輩の顔は俯き、今にもいつも泣き出しそうな顔をしていた。
ズキンと胸が痛む。
あの時、私がお祭りに行っていなければ、春香先輩と空人くんはまだ続いていたのかもしれない。
二人はケンカなんかしなかったのかもしれない。
退院から一週間後、七月初めの土曜日。
シトシトと降り続く長雨は気分を憂鬱にさせた。
家で勉強していると何だか逃げ出したくなる気分になったりもする。
いつもは気にならない場所を掃除してみたり整頓してみたりして。
ハッと気づけばすぐに一時間は経っているのだ、まずい。
「図書館、行ってくるよ。夕方には帰ってくる」
玄関でレインブーツを履く私をママが心配そうに見ている。
「一人で平気?」
「ママ、私のこと何歳だって思ってるの?」
「でも、退院したばかりだし。それにまだ検査結果が出てないのよ?」
「それでも私の期末テストは待ってくれないんだよ、ママ。代わりに受けてくれないでしょ。だからやるしかない、応援して」
仕方ないか、とママは苦笑して見送ってくれた。
無理はしないこと、何かあったらすぐに連絡をすること。
それだけは約束させられた上で送り出してくれたのだ。
霧雨のような細かな雨が紫陽花を鮮やかな紫に染め上げて、緑色の葉の上にはカタツムリがのっていた。
図書館入り口のその愛らしい景色に、思わずスマホを構える。
紫陽花と葉っぱとカタツムリ、その微妙なバランスを大きさを考えて、角度を変えながら何枚か写す。
「あ、これいいかも」
と自己満足しながら、後で真宙くんに送ってみようと思った。
今送ったら『どこにいるの?』になって、きっと真宙くんもやってくる。
そして結局勉強のわからない者同士で、悩み続けるだけになる気がして写真は家に帰ってからとした。
スマホでも上手に撮れる方法を真宙くんから何度か教えてもらっている。
おかげでだいぶ上達したので誰かに見せたくなってしまうのだ。
入り口前で写真の出来をスライドしたりズームしたりしてじっくり見ていたら。
「二宮?」
頭の上から降ってきたその声に驚く。
夢にまで出てくるほどに、覚えてしまった声の主は空人くん。
心配そうな目で私を見下ろしていた。
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