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*新しい関係性*
聞けませんでした4
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「そういえば、空人くん帰ったんじゃなかったの?」
だってさっきまでカバンもなかったし。
私の問いかけに、う~んと考え込んでいた空人くんが。
「春香に呼び出されて」
「え?」
春香先輩に?
「うん、」
きっと、ヨリを戻すんだ。
「良かったね」
「勘違いしてる、二宮」
「え?」
「春香には、もう付き合えないってちゃんと断ってきた」
「なんでっ?!」
『お願いだから、空人をとらないで。空人を返して』
春香先輩の泣き顔を思いだしたら苦しくなっちゃって。
「だって空人くん、ずっと春香先輩のこと好きだったんでしょ? 春香先輩と一緒にいるためにこの高校に入ったって、なのに」
「真宙から?」
マズイ、そうだった。
同じ中学じゃない私がこんなに知っているのはおかしい。
「薄情だよな、確かにずっと好きだと思っていたんだ。そのはずだったのに……」
空人くんがじっと私の目を見ていた。
それを反らすことができずにいたら、どうしようもなく泣きたい気持ちになってきた。
「二宮?」
伸びてきた空人くんの指先が私の睫毛に触れかけたその時だった。
バタバタと遠くから走ってきた足音が教室に駆け込んできた。
「ハナちゃん、お待たせっ、あれ?」
真宙くんの声だ。
「ま、仕方ないか」
見えはしないけど、きっと真宙くんはカバンを持って教室を出ていったみたい。
私がもう帰ったと思い込んで。
気配が無くなってしばらくしても、私の震える手を握りしめる空人くん。
二人ともミリも動くことなく、息を殺したたったの数分、いや、もしかしたら1分にも満たなかったかもしれないのに。
「なんで?」
誰かが教室に走ってくる音に気が付いた空人くんは、私の手を引いた。
教卓の上のカバンまで抱きしめるようにして隠して。
まるで真宙くんから隠れるように、二人で教卓の下に気配を消したのだ。
「なんで、だろ? わかんないけど」
教壇の下、とても二人で入っているのには狭苦しくて空人くんは背中がはみ出ちゃってる。
もし真宙くんに見つかってたら何て言いわけをしたのだろう?
「見られたくなかった、二宮の泣き顔」
「え?」
空人くんの大きな手が私の頬を拭う。
「夏休みが終わったら、本当に真宙と付き合うの?」
「空人くんには関係ないよ」
空人くんが退いてくれないと、教卓から抜け出せないのに。
まるで塞がれているみたい、空人くんに覆われているみたい。
答えるまでここから出してもらえないんじゃないかって不安になるくせに。
この距離にドキドキしてる……、ダメなのに。
「オレ、気になってる人がいるんだ。誰か、わかる?」
聞いちゃいけない、そんな予感がして。
私は両の耳を自分で塞いでブンブンと首を横に振った。
そんな私を見て困惑したような顔をした空人くんは。
ゴメンと口元を動かして。
耳に宛てた私の手を優しく引くと教卓から出してくれた。
「今日は俺、真宙の家行かないから。あとでうまいこと連絡しとく」
クシャクシャと私の頭を撫でた空人くんは。
「もう何も言わないから。夏休み中、一日だけ俺に付き合ってよ、二宮」
と寂しそうに笑った。
だってさっきまでカバンもなかったし。
私の問いかけに、う~んと考え込んでいた空人くんが。
「春香に呼び出されて」
「え?」
春香先輩に?
「うん、」
きっと、ヨリを戻すんだ。
「良かったね」
「勘違いしてる、二宮」
「え?」
「春香には、もう付き合えないってちゃんと断ってきた」
「なんでっ?!」
『お願いだから、空人をとらないで。空人を返して』
春香先輩の泣き顔を思いだしたら苦しくなっちゃって。
「だって空人くん、ずっと春香先輩のこと好きだったんでしょ? 春香先輩と一緒にいるためにこの高校に入ったって、なのに」
「真宙から?」
マズイ、そうだった。
同じ中学じゃない私がこんなに知っているのはおかしい。
「薄情だよな、確かにずっと好きだと思っていたんだ。そのはずだったのに……」
空人くんがじっと私の目を見ていた。
それを反らすことができずにいたら、どうしようもなく泣きたい気持ちになってきた。
「二宮?」
伸びてきた空人くんの指先が私の睫毛に触れかけたその時だった。
バタバタと遠くから走ってきた足音が教室に駆け込んできた。
「ハナちゃん、お待たせっ、あれ?」
真宙くんの声だ。
「ま、仕方ないか」
見えはしないけど、きっと真宙くんはカバンを持って教室を出ていったみたい。
私がもう帰ったと思い込んで。
気配が無くなってしばらくしても、私の震える手を握りしめる空人くん。
二人ともミリも動くことなく、息を殺したたったの数分、いや、もしかしたら1分にも満たなかったかもしれないのに。
「なんで?」
誰かが教室に走ってくる音に気が付いた空人くんは、私の手を引いた。
教卓の上のカバンまで抱きしめるようにして隠して。
まるで真宙くんから隠れるように、二人で教卓の下に気配を消したのだ。
「なんで、だろ? わかんないけど」
教壇の下、とても二人で入っているのには狭苦しくて空人くんは背中がはみ出ちゃってる。
もし真宙くんに見つかってたら何て言いわけをしたのだろう?
「見られたくなかった、二宮の泣き顔」
「え?」
空人くんの大きな手が私の頬を拭う。
「夏休みが終わったら、本当に真宙と付き合うの?」
「空人くんには関係ないよ」
空人くんが退いてくれないと、教卓から抜け出せないのに。
まるで塞がれているみたい、空人くんに覆われているみたい。
答えるまでここから出してもらえないんじゃないかって不安になるくせに。
この距離にドキドキしてる……、ダメなのに。
「オレ、気になってる人がいるんだ。誰か、わかる?」
聞いちゃいけない、そんな予感がして。
私は両の耳を自分で塞いでブンブンと首を横に振った。
そんな私を見て困惑したような顔をした空人くんは。
ゴメンと口元を動かして。
耳に宛てた私の手を優しく引くと教卓から出してくれた。
「今日は俺、真宙の家行かないから。あとでうまいこと連絡しとく」
クシャクシャと私の頭を撫でた空人くんは。
「もう何も言わないから。夏休み中、一日だけ俺に付き合ってよ、二宮」
と寂しそうに笑った。
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