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第四章 許されないことだとしても
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「あ、でもね?」
「ん?」
「違うかもしれないし、お父さんに聞いても覚えていないって言ってたんだけどね? お母さん、ちっちゃい頃にも時々赤い髪の男の子と遊んでたんだよね」
母の記憶の中にいる父に似た男の子は、時々夕暮れに現れるのだという。
母も母の父、つまり私の祖父を早くに亡くして祖母と母娘二人暮らしだった。
幼子を育てるため、一生懸命働いていた祖母の背中を見て育ったからこそ今の母がいるのだと思う。
当時は保育園もお金がかかるから、と母は一人で家でお留守番させられていたらし。
でも子供だもん、どうしても寂しくなっちゃうのは当たり前だ。
……私だって、そうだった。保育園で早く迎えに来てくれる人たちが羨ましかった。
母がやっと迎えに来てくれてもまた別の保育園。母は他の子たちと遊んでいる光景を見て、私のお母さんなのにって悔しく思った。
寂しいって気持ちはよくわかる。
でも、私よりも一人ぼっちだった母の幼少時代は、もっと孤独だったんだ。
そんな日々の中、ある日突然その赤い髪の男の子が現れたのだという。
夕暮れ庭先で寂しくなって母が泣いていると、どこからともなく現れて、母にお花やお菓子をくれたのだという。
二人はずっと仲良しで、母はその男の子が大好きだったらしいのだけれど――。
「私が小学校高学年くらいからかなあ、学校の帰りも遅くなったあたりね。クラブ活動もしていたし、帰ったらちょっとだけご飯の支度もしてたりで、寂しいって思う暇も無くなって、その頃から赤い髪の男の子を見かけなくなったのよ」
会えなくなってから数年の後の電車事故だったという。
「助けてくれた赤い髪の人、絶対にあの男の子だと思ってたのよ? でも、もしかしたらあの男の子であればいいな、と思ってたからかもしれないけれど、よく似ていたの、笑った顔がキレイで」
少女のように目を細めた母。
きっと幼い頃に遊んだ赤い髪の少年は、母の初恋の人だったのだろう。
「お父さんには聞いてみたの? 小さい頃遊んだよね?って」
「聞いてみたよ、でもね、覚えてないんだって」
覚えていない?!
「覚えてないって、どういうこと? まさか記憶喪失なんてこと」
「そう、それなのよ、記憶喪失!!」
「は?」
首を傾げた私を母は可笑しそうに見ているけれど、何でそれで笑ってられるのか私には全くわからない。
「電車の事故の後、ホームに上げて貰って、手当してくれる駅員さんたちに囲まれてる間に、その赤い髪の人は消えてしまっていたの。御礼も言えないままで。いつか出会えたら絶対に絶対にありがとうって伝えるつもりでいたのに。その次に出会えたのは、そこからまた大分後のことよ。私が二十六歳、母も亡くなってこの家で一人、保育園で働いてた頃でね」
「ん?」
「違うかもしれないし、お父さんに聞いても覚えていないって言ってたんだけどね? お母さん、ちっちゃい頃にも時々赤い髪の男の子と遊んでたんだよね」
母の記憶の中にいる父に似た男の子は、時々夕暮れに現れるのだという。
母も母の父、つまり私の祖父を早くに亡くして祖母と母娘二人暮らしだった。
幼子を育てるため、一生懸命働いていた祖母の背中を見て育ったからこそ今の母がいるのだと思う。
当時は保育園もお金がかかるから、と母は一人で家でお留守番させられていたらし。
でも子供だもん、どうしても寂しくなっちゃうのは当たり前だ。
……私だって、そうだった。保育園で早く迎えに来てくれる人たちが羨ましかった。
母がやっと迎えに来てくれてもまた別の保育園。母は他の子たちと遊んでいる光景を見て、私のお母さんなのにって悔しく思った。
寂しいって気持ちはよくわかる。
でも、私よりも一人ぼっちだった母の幼少時代は、もっと孤独だったんだ。
そんな日々の中、ある日突然その赤い髪の男の子が現れたのだという。
夕暮れ庭先で寂しくなって母が泣いていると、どこからともなく現れて、母にお花やお菓子をくれたのだという。
二人はずっと仲良しで、母はその男の子が大好きだったらしいのだけれど――。
「私が小学校高学年くらいからかなあ、学校の帰りも遅くなったあたりね。クラブ活動もしていたし、帰ったらちょっとだけご飯の支度もしてたりで、寂しいって思う暇も無くなって、その頃から赤い髪の男の子を見かけなくなったのよ」
会えなくなってから数年の後の電車事故だったという。
「助けてくれた赤い髪の人、絶対にあの男の子だと思ってたのよ? でも、もしかしたらあの男の子であればいいな、と思ってたからかもしれないけれど、よく似ていたの、笑った顔がキレイで」
少女のように目を細めた母。
きっと幼い頃に遊んだ赤い髪の少年は、母の初恋の人だったのだろう。
「お父さんには聞いてみたの? 小さい頃遊んだよね?って」
「聞いてみたよ、でもね、覚えてないんだって」
覚えていない?!
「覚えてないって、どういうこと? まさか記憶喪失なんてこと」
「そう、それなのよ、記憶喪失!!」
「は?」
首を傾げた私を母は可笑しそうに見ているけれど、何でそれで笑ってられるのか私には全くわからない。
「電車の事故の後、ホームに上げて貰って、手当してくれる駅員さんたちに囲まれてる間に、その赤い髪の人は消えてしまっていたの。御礼も言えないままで。いつか出会えたら絶対に絶対にありがとうって伝えるつもりでいたのに。その次に出会えたのは、そこからまた大分後のことよ。私が二十六歳、母も亡くなってこの家で一人、保育園で働いてた頃でね」
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