約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第四章 許されないことだとしても

4-18

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「碧、今までありがとう」

 立ち上がった私は碧を見据えた。

「紅、駄目だ、宵の言うことに耳を貸しちゃ」
「わかってる、だけど宵はきっと私を騙したりしてないってこともわかるから」

 色んな事差し引いたって、今一番大事なのはメイちゃんの命だ。
 その保障が絶対なのは、確かだから。
 宵に向かって伸ばした私の手。
 それを優しく握り返す宵に微笑んで頷いた。
 一緒に、あなたと歩いてくよ。

「紅っ」

 碧の顔が涙でぼやけていく。
 バイバイ、碧。
 ねえ、宵、早く、早く、早く。
 碧の前から私を連れ去って。

「紅ちゃん、目瞑ってくれる? しずらい、かも」

 真正面に立ち私を見下ろす宵の顔が少し照れているようにも見えた。
 前は騙すようにしておでこに印《キス》したくせに。
 大丈夫、もう覚悟は決まってるから。
 いいよ、と微笑んでみせると安心したように宵も頷いている。
 それを合図に、ゆっくり瞼を閉じると押し出されるように落ちる涙。
 気にしないでね、きっとこんな涙は最後にする。
 今優先すべきことを大事にしたい。
 少し上を向いて、宵からの契約の印《キス》を待った。

 だけど、時間が経っても一向に落ちてこない、代わりに。

「ちょ、碧くん、邪魔しないで!!」

 宵の声に驚き目を開けると宵の顔を手で押さえ込み、キスを阻止している碧の姿がある。

「な、碧!?」

 何してんのよ、と言うより先に宵を遮りながら振り返った碧は、

「返すよ、紅の能力ちから。好きに使いなよ、後1回だけ」

 微笑みながら、やっぱりさっきと変わらずに泣いている。
 何で、ねえ、何でそんなあっさりと?

「いいの?」

 さっきまであんなに反対していたというのに、本当にいいの?

「宵と同じで何か条件があるんじゃないの? 碧にも何か迷惑がかかったり」
「さあ? ただ、一つだけ言えるのは」

 一つ、だけ。

「君は君のもう一つの故郷である時空界には、永遠に行けなくなるということ」
 
 それ、だけ? 本当に?
 他に隠していることがあるような気がして、碧の瞳の奥を覗き込むけれど、碧はそれに応えるように私を見つめ返すならば、……信じていいの?

「それでもいい? 紅」
「いいに決まって!」
「いつか、時空界の裁判官に、あれももう無くなるよ」
「そんなの、全然構わない」

 それすら諦めれば全部うまくいくというのなら構わない。

「待ってよ、碧くん。横から割り込んできていきなりはズルイ。それにどうもその話、オレには不利じゃない?」

 緩んだ碧の手からようやく逃れた宵の頬は真っ赤、相当力強く抑えつけられてたみたいだ。
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