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第四章
73話
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「ただいま。遅くなってごめん」
お昼過ぎにはエルビラの家に戻るつもりだったのだが、ランクアップの話などで遅くなり、実際に帰ってきたのは1時をかなり過ぎていた。
勝手口から入ると母がキッチンでお昼御飯の片付けをしていた。
今日のお昼御飯はエルビラの家のキッチンを借りて母が作ることになっていたのだ。
「おかえり。遅かったわね。先にお昼御飯食べちゃったわよ」
「うん、ギルドでちょっと話があってね。それで時間がかかったんだ。いただきます」
俺は椅子に座ってテーブルに置いてあるお昼御飯を食べる。
「エルビラとペリシアは?」
「2人とも店舗の片付けに行ってるわよ。それももう少しで終わると思うわ」
「そっか。お昼御飯食べたら行ってみるよ」
お昼御飯をすませた俺は2人が片付けをしている店舗に向かった。
店内の物は殆ど片付けられており、とても広く感じられた。
そしてその広さは寂しさも伝えてきた。
そんな店内を見つめているとペリシアが俺に気付いた。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
ペリシアの声でエルビラもこちらを向く。
「ドルテナ君おかえり。遅かったけど何かあったの?」
「ただいま。ちょっとギルドで話があってね。大丈夫、深刻な話じゃないよ。全員が集まってるときに話すね」
エルビラが不安そうな顔をしたが、俺が困ったような表情をしなかったから特に何も言わなかった。
「それで、俺は何を手伝ったらいい?」
「もう殆ど終わってるからここと物置の木箱をお願いしていい?」
「了解。とりあえずここの木箱は終わってるやつだけアイテムボックスに入れていくよ。その後に物置に行ってからここの残りをするね」
「うん、お願い。あ、木箱に入らなかった物もあるからそれもお願い」
「棚以外は全部ってことね。わかった、行ってくるよ」
俺は端から木箱をアイテムボックスに入れていき物置へと向かった。
物置に入ると部屋の中央に荷物が纏めて置いてあり、とてもわかり易かった。
「物置終わったよ。纏めてあったからわかり易かったよ。ありがとう」
店舗へ戻ってきた俺はエルビラに声をかけた。
「あれなら見るだけでわかってもらえると思ってね。そしたらこのテーブルと椅子もお願い」
「お兄ちゃん、この木箱もいいよ」
テーブルと椅子、そしてペリシアの足下にあった数個の木箱で全てのようだ。
それをアイテムボックスに入れると予定していた片付けは全て終わり。
家に残っているのはエルビラが生活するのに必要な物だけだ。
「よし、終了。お母さんの所に行ってお茶でも飲もう。ギルドでの話もしなきゃ行けないし」
そうして3人でキッチンへ移動した。
「お母さん、こっちは終わったよ。皆の飲み物お願いできる?」
「お茶ね、座って待ってて」
「あ、お義母さん、私が」
「あぁ、いいわよこれくらい。座ってて」
うむ。2人の様子だと嫁姑問題はなさそうだな。
そんなことを思いつつ椅子が3脚しかなかったので、店舗にあった椅子を出して座った。
お茶を配り終えた母がペリシアの横に座ったのを確認してギルドでの話を皆にする。
俺の隣は勿論エルビラだ。
「ギルドに行った目的の報酬はきちんと受け取れたんだけど、その後でギルドから話があるからってことで別室に案内されたんだ。それで ── 」
と、ランクアップの話を皆にした。
三者三様の反応が返ってきた。
母は、狼の魔物の群れなんて危険すぎるから止めなさいと。後、行き先のヒュペリトへなぜがあまりいい顔をしなかったな。
ペリシアは凄い!と喜んでくれた。
エルビラは俺が変異種を倒したことを信じなかったギルドに腹を立てていた。狼に関しては問題ないと思っているようだ。
「エルビラさん、あなた心配じゃないの?」
「変異種との戦いを目の前で見てましたから。あれを見た後だと狼の魔物程度でドルテナ君がどうにかなるなんて思えないので」
おぉ。エルビラからの信頼は厚そうだな。ちょっとむず痒いが……。
「そ、そうなの。そんなにテナーは強かったの?」
「ええ、それはもう。ドルテナ君の武器には私は何度も助けられてますから。あの変異種だって無傷で倒せたんです。凄かったんですから!私と父を ── 」
その後、俺が変異種を倒すまでの様子を事細かに話していたのだが、その姿に若干母とペリシアが引いていた気がする。
まぁエルビラの愛を感じられたからいいけどね。
「エルビラさんがそこまで言うなら大丈夫なんでしょうね」
って母よ、俺をジト目で見ないでくれよ!
「そうすると、あの事もどうするかまた考えないといけないわね」
「あの事って?」
「あなたたちの住まいの事よ。私は2人でここに住んではどうかと思ってたのよ。本当なら未成年者だけっていうのは色々とよくないかと思ってたけど、テナーならしっかりしてるから自制できそうだしね」
自制ですか……。ワカミチからの帰り道の事を考えると自信がないです。
とは思ったが顔には出さないように頑張った。
「でもテナーが試験のために街から出るんだったらエルビラさんを1人でここに住ませるのはあまりよくないと思うわ」
確かに14歳の女の子が1人で住むのは色々と危険だな。
「それなら俺が帰るまでの間、一葉に泊まったらどう?変異種の討伐報酬で余裕はあるからそれくらい泊まっても問題ないよ」
「ドルテナ君いいの?結構な額になるよ?」
エルビラが心配そうに顔を見てくるが、今の俺にとってそれくらいの額は問題にならない。
「大丈夫だよ。それに一葉にいてくれるなら俺も安心して討伐に行けるからね」
「うん、わかった。ドルテナ君の言う通りにする」
エルビラを1人にして街から離れるなん心配だからね。一葉なら母もいるし安心だ。
「ねぇ、お母さん。冒険者ってそんなに稼げるの?」
俺達の話をジッと聞いていたペリシアが母の方を向いて聞いてきた。
「いいえ、見習い冒険者は普通こんなにお金を稼ぐことはできないのよ。見習い期間中は稼ぐと言うより冒険者のイロハを学ぶことがメインなの。テナーの様に稼いでる見習い冒険者なんて聞いたことないわよ。だからこれが普通と思っちゃダメよ」
「うん、わかった!」
やたらと元気よく返事をしたペリシアが俺に向かってニコニコしている。
な、なんだ?
「あのね、お兄ちゃん。私欲しい物が ── 」
「ペリシア、お兄ちゃんにせがむんじゃありません」
ペリシアがねだり母が止める。俺が急な展開に唖然としている間にも話は進んでいく。
「えぇ、だってお兄ちゃん稼いでるならいいじゃん」
「ほんとにもう。そういうのは私に言いなさい。それで何が欲しいの」
「……本が欲しいの」
ペリシアが俯いて消えそうな声で答えた。
この世界の本は前世の日本に比べて非常に高価だ。一般人がホイホイと買えるような物ではない。
一葉からの給料ではとてもじゃないが簡単には買えないだろう。
しかし、今まで本が欲しいなんて一度も言ったことないのに急にどうしたんだ?
「ペリシアはどうして本が欲しいの?」
俯いたままのペリシアに聞いてみる。
「お勉強したいの」
「お勉強して何になりたいの?」
ペリシアが首を横に振る。
「私がいっぱい勉強して頭がよくなったら、またお店できるよね?お見せするのには色んな事を知らないとできないんだよね?」
「ペリシアは昔みたいに皆でお店をやりたいの?」
顔を上げたペリシアが力強く頷く。
「だから本を読んで勉強したいの」
まさかペリシアがそんなことを考えていたとは思わなかった。
まだまだ何も考えられない子供なんだと思っていたけどそれは違ったようだ。
それを聞いた母が目に涙を溜めて今にも泣きそうだよ。
この世界にも学校はある。但し義務教育ではない。
一般人でも大棚等の資産家が通う学校がある。というか学校なんて通えるのが資産家だけなんだけどね。
国からの補助金なんかはないので、学校の経費は全て生徒からの学費でまかなわれる。その為学費が高額となり資産家しか通えないのだ。
だから普通の一般人は家庭で親などから教わる。そして多少余裕のある家庭なら本を買い与えて教えている。
我が家も読み書きだけは親から教わった。
ペリシアはその本が欲しいようだ。
「わかったよ。俺は勉強をする時間がないから、ペリシアに俺の分まで勉強してもらおうかな」
そう言って金貨を1枚取り出した。
「お母さん、これでペリシアに本を選んでくれる?どんなのがいいのか俺はわからないから」
「ッ!?テナーあなたこんな大金どこ……そ、そうね変異種の報酬があるんだったわね。でもいいの?」
「うん、本だけじゃ勉強できないだろうから、ペンや紙も一緒に買ってあげて欲しい。金貨は多いかも知れないけど、いつかお店をできるための投資だよ」
母は「わかったわ」と言って金貨を受け取ってくれた。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
「あぁ。お店ができるようにしっかり勉強してくれよ」
「うん、まかせて!」
お店か……。何の店ができるんだろうな。
「さぁ、一葉に戻りましょう。私達も夕方からの仕事が始まるわ」
「そうだね。エルビラ、とりあえず……エルビラ?」
「え?あぁ、そうね、いつかお店ができるといいわね」
何か考え事をしていたエルビラが頓珍漢な返事をして皆が固まった。
「いや、まぁそうなんだが、その話はもう終わったよ?一葉に帰ろって話してたんだけど……」
「あ、ごめんなさい!」
「いやいいんだよ。何か考え事をしていたようだし。それで、暫く泊まれるように荷物を用意して欲しいんだ」
「わかった、直ぐするね」
エルビラが慌てて自室に戻ろうとしたが、それを母が止めた。
「エルビラさん、急がなくても大丈夫よ。私とペリシアは先に帰るから、後でテナーと戻ってくればいいから。それより忘れ物がないようにね」
「はい、すみませんお義母さん」
「気にしないで。テナー、先に帰るからエルビラさんと戻っておいでね」
母とペリシアが帰って行った後、準備を終えたエルビラと共に俺は一葉に戻って行った。
お昼過ぎにはエルビラの家に戻るつもりだったのだが、ランクアップの話などで遅くなり、実際に帰ってきたのは1時をかなり過ぎていた。
勝手口から入ると母がキッチンでお昼御飯の片付けをしていた。
今日のお昼御飯はエルビラの家のキッチンを借りて母が作ることになっていたのだ。
「おかえり。遅かったわね。先にお昼御飯食べちゃったわよ」
「うん、ギルドでちょっと話があってね。それで時間がかかったんだ。いただきます」
俺は椅子に座ってテーブルに置いてあるお昼御飯を食べる。
「エルビラとペリシアは?」
「2人とも店舗の片付けに行ってるわよ。それももう少しで終わると思うわ」
「そっか。お昼御飯食べたら行ってみるよ」
お昼御飯をすませた俺は2人が片付けをしている店舗に向かった。
店内の物は殆ど片付けられており、とても広く感じられた。
そしてその広さは寂しさも伝えてきた。
そんな店内を見つめているとペリシアが俺に気付いた。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
ペリシアの声でエルビラもこちらを向く。
「ドルテナ君おかえり。遅かったけど何かあったの?」
「ただいま。ちょっとギルドで話があってね。大丈夫、深刻な話じゃないよ。全員が集まってるときに話すね」
エルビラが不安そうな顔をしたが、俺が困ったような表情をしなかったから特に何も言わなかった。
「それで、俺は何を手伝ったらいい?」
「もう殆ど終わってるからここと物置の木箱をお願いしていい?」
「了解。とりあえずここの木箱は終わってるやつだけアイテムボックスに入れていくよ。その後に物置に行ってからここの残りをするね」
「うん、お願い。あ、木箱に入らなかった物もあるからそれもお願い」
「棚以外は全部ってことね。わかった、行ってくるよ」
俺は端から木箱をアイテムボックスに入れていき物置へと向かった。
物置に入ると部屋の中央に荷物が纏めて置いてあり、とてもわかり易かった。
「物置終わったよ。纏めてあったからわかり易かったよ。ありがとう」
店舗へ戻ってきた俺はエルビラに声をかけた。
「あれなら見るだけでわかってもらえると思ってね。そしたらこのテーブルと椅子もお願い」
「お兄ちゃん、この木箱もいいよ」
テーブルと椅子、そしてペリシアの足下にあった数個の木箱で全てのようだ。
それをアイテムボックスに入れると予定していた片付けは全て終わり。
家に残っているのはエルビラが生活するのに必要な物だけだ。
「よし、終了。お母さんの所に行ってお茶でも飲もう。ギルドでの話もしなきゃ行けないし」
そうして3人でキッチンへ移動した。
「お母さん、こっちは終わったよ。皆の飲み物お願いできる?」
「お茶ね、座って待ってて」
「あ、お義母さん、私が」
「あぁ、いいわよこれくらい。座ってて」
うむ。2人の様子だと嫁姑問題はなさそうだな。
そんなことを思いつつ椅子が3脚しかなかったので、店舗にあった椅子を出して座った。
お茶を配り終えた母がペリシアの横に座ったのを確認してギルドでの話を皆にする。
俺の隣は勿論エルビラだ。
「ギルドに行った目的の報酬はきちんと受け取れたんだけど、その後でギルドから話があるからってことで別室に案内されたんだ。それで ── 」
と、ランクアップの話を皆にした。
三者三様の反応が返ってきた。
母は、狼の魔物の群れなんて危険すぎるから止めなさいと。後、行き先のヒュペリトへなぜがあまりいい顔をしなかったな。
ペリシアは凄い!と喜んでくれた。
エルビラは俺が変異種を倒したことを信じなかったギルドに腹を立てていた。狼に関しては問題ないと思っているようだ。
「エルビラさん、あなた心配じゃないの?」
「変異種との戦いを目の前で見てましたから。あれを見た後だと狼の魔物程度でドルテナ君がどうにかなるなんて思えないので」
おぉ。エルビラからの信頼は厚そうだな。ちょっとむず痒いが……。
「そ、そうなの。そんなにテナーは強かったの?」
「ええ、それはもう。ドルテナ君の武器には私は何度も助けられてますから。あの変異種だって無傷で倒せたんです。凄かったんですから!私と父を ── 」
その後、俺が変異種を倒すまでの様子を事細かに話していたのだが、その姿に若干母とペリシアが引いていた気がする。
まぁエルビラの愛を感じられたからいいけどね。
「エルビラさんがそこまで言うなら大丈夫なんでしょうね」
って母よ、俺をジト目で見ないでくれよ!
「そうすると、あの事もどうするかまた考えないといけないわね」
「あの事って?」
「あなたたちの住まいの事よ。私は2人でここに住んではどうかと思ってたのよ。本当なら未成年者だけっていうのは色々とよくないかと思ってたけど、テナーならしっかりしてるから自制できそうだしね」
自制ですか……。ワカミチからの帰り道の事を考えると自信がないです。
とは思ったが顔には出さないように頑張った。
「でもテナーが試験のために街から出るんだったらエルビラさんを1人でここに住ませるのはあまりよくないと思うわ」
確かに14歳の女の子が1人で住むのは色々と危険だな。
「それなら俺が帰るまでの間、一葉に泊まったらどう?変異種の討伐報酬で余裕はあるからそれくらい泊まっても問題ないよ」
「ドルテナ君いいの?結構な額になるよ?」
エルビラが心配そうに顔を見てくるが、今の俺にとってそれくらいの額は問題にならない。
「大丈夫だよ。それに一葉にいてくれるなら俺も安心して討伐に行けるからね」
「うん、わかった。ドルテナ君の言う通りにする」
エルビラを1人にして街から離れるなん心配だからね。一葉なら母もいるし安心だ。
「ねぇ、お母さん。冒険者ってそんなに稼げるの?」
俺達の話をジッと聞いていたペリシアが母の方を向いて聞いてきた。
「いいえ、見習い冒険者は普通こんなにお金を稼ぐことはできないのよ。見習い期間中は稼ぐと言うより冒険者のイロハを学ぶことがメインなの。テナーの様に稼いでる見習い冒険者なんて聞いたことないわよ。だからこれが普通と思っちゃダメよ」
「うん、わかった!」
やたらと元気よく返事をしたペリシアが俺に向かってニコニコしている。
な、なんだ?
「あのね、お兄ちゃん。私欲しい物が ── 」
「ペリシア、お兄ちゃんにせがむんじゃありません」
ペリシアがねだり母が止める。俺が急な展開に唖然としている間にも話は進んでいく。
「えぇ、だってお兄ちゃん稼いでるならいいじゃん」
「ほんとにもう。そういうのは私に言いなさい。それで何が欲しいの」
「……本が欲しいの」
ペリシアが俯いて消えそうな声で答えた。
この世界の本は前世の日本に比べて非常に高価だ。一般人がホイホイと買えるような物ではない。
一葉からの給料ではとてもじゃないが簡単には買えないだろう。
しかし、今まで本が欲しいなんて一度も言ったことないのに急にどうしたんだ?
「ペリシアはどうして本が欲しいの?」
俯いたままのペリシアに聞いてみる。
「お勉強したいの」
「お勉強して何になりたいの?」
ペリシアが首を横に振る。
「私がいっぱい勉強して頭がよくなったら、またお店できるよね?お見せするのには色んな事を知らないとできないんだよね?」
「ペリシアは昔みたいに皆でお店をやりたいの?」
顔を上げたペリシアが力強く頷く。
「だから本を読んで勉強したいの」
まさかペリシアがそんなことを考えていたとは思わなかった。
まだまだ何も考えられない子供なんだと思っていたけどそれは違ったようだ。
それを聞いた母が目に涙を溜めて今にも泣きそうだよ。
この世界にも学校はある。但し義務教育ではない。
一般人でも大棚等の資産家が通う学校がある。というか学校なんて通えるのが資産家だけなんだけどね。
国からの補助金なんかはないので、学校の経費は全て生徒からの学費でまかなわれる。その為学費が高額となり資産家しか通えないのだ。
だから普通の一般人は家庭で親などから教わる。そして多少余裕のある家庭なら本を買い与えて教えている。
我が家も読み書きだけは親から教わった。
ペリシアはその本が欲しいようだ。
「わかったよ。俺は勉強をする時間がないから、ペリシアに俺の分まで勉強してもらおうかな」
そう言って金貨を1枚取り出した。
「お母さん、これでペリシアに本を選んでくれる?どんなのがいいのか俺はわからないから」
「ッ!?テナーあなたこんな大金どこ……そ、そうね変異種の報酬があるんだったわね。でもいいの?」
「うん、本だけじゃ勉強できないだろうから、ペンや紙も一緒に買ってあげて欲しい。金貨は多いかも知れないけど、いつかお店をできるための投資だよ」
母は「わかったわ」と言って金貨を受け取ってくれた。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
「あぁ。お店ができるようにしっかり勉強してくれよ」
「うん、まかせて!」
お店か……。何の店ができるんだろうな。
「さぁ、一葉に戻りましょう。私達も夕方からの仕事が始まるわ」
「そうだね。エルビラ、とりあえず……エルビラ?」
「え?あぁ、そうね、いつかお店ができるといいわね」
何か考え事をしていたエルビラが頓珍漢な返事をして皆が固まった。
「いや、まぁそうなんだが、その話はもう終わったよ?一葉に帰ろって話してたんだけど……」
「あ、ごめんなさい!」
「いやいいんだよ。何か考え事をしていたようだし。それで、暫く泊まれるように荷物を用意して欲しいんだ」
「わかった、直ぐするね」
エルビラが慌てて自室に戻ろうとしたが、それを母が止めた。
「エルビラさん、急がなくても大丈夫よ。私とペリシアは先に帰るから、後でテナーと戻ってくればいいから。それより忘れ物がないようにね」
「はい、すみませんお義母さん」
「気にしないで。テナー、先に帰るからエルビラさんと戻っておいでね」
母とペリシアが帰って行った後、準備を終えたエルビラと共に俺は一葉に戻って行った。
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