侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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 後に、悪夢ナイトメア卒業サプライズパーティーと呼ばれたあの一夜の騒動から数年。
 


 わたくしは、現在視察も兼ねて北方の山岳地域に足を運んでおります。標高は高く一年の半分は雪が残るそうです。
 生活は思っているより苦しくはないそうで、雪山に棲むイエフィと呼ばれる何かを彷彿とさせる二足歩行の動物が特産で毛皮や脂肪を蓄えた肉等が取引されているそうです。
 雪の中でも育つ野菜は甘みが強く、保存食の技術も高く、上手く売り出せば新たな産業が発展するやもしれません。問題はやはり移動が大変な事ですね。雪が邪魔になりますもの。
 イエフィを飼い慣らす事が出来れば、イエフィソリとか出来ないかしら?


 視察の報告を脳内でまとめながら、面会室の椅子に座り今回の目的の一つとなるある方を暫し待ちます。







「うげっ」

 扉が開かれての第一声に、この方は未だにお変わりないのかと、懐かしさと残念な気持ちが入り混じります。



「お久しぶりですわローズさん」

 対面に腰掛けるローズさんとわたくしの間には、鉄格子が嵌められお互いのいる場所に行き来出来ないようにされています。
 一応、面会者が逃亡の手助けをさせない為の措置ですわね。
 嗜好品などのある程度の差し入れは許されてるようですので、鉄格子越しにお渡しするのでしょう。
 
 


「何しに来たのよ。わざわざこんな場所まで人の不幸を見に来たの?本当、性格悪いわよね」

 卒業パーティーの時から一度もお会いする事がなかったローズさんは、何でしょうか少しだけ印象が変化したような気がします。

 綺麗な手は今では荒れてしまい、日々のお努めに励んでいるのを感じる事が出来ますし、簡素なドレスを身に着けていらしてようやく年相応にお見受けできるせいでしょうか?



 卒業パーティーの時の、三歳の妹が着るお誕生日ドレスと同様のデザインと言わしめたドレスはやりすぎでしたものね。

 リボン、フリルを多用し過ぎて、あれはドレスと言うより寧ろリボンだったとか、あのパーティー会場にいた実行委員の下級生から広まった噂と思われる卒業パーティーでピンクのリボンを着けると呪われるという逸話を残すいわくのついたドレスでしたものね。


 レオンハルト様にもトラウマを植え付けたのか、お陰でわたくしの衣装や宝飾にピンクNGが出ております。
 リボンは五つまでなら許すと。
 わたくしの容姿は黒髪に瞳が紫なので、別に似合わないからいいですけど。


「ちょっと話聞いてる?」

  暫し、あの生き恥ドレスに思いを馳せておりましたら当人のローズさんに話しかけられていることに気が付きます。

 人の趣味嗜好に口を挟むつもりはないので、この事はお伝えするつもりはありませんけれど。



「申し訳ありませんわ。旅の疲れが出たようです。こちらに足を運んだのはローズさんに確認したい事があったからですわ」

「今更、聞きたいことなんてあんの?つーか、ゲームの攻略について聞きたいってあんたに言われても教えるつもりなんてないから。あんたばっか幸せになるとかないわー」

「そういうのはいいです」



 興味ありませんので。
 聞きたい事はそうではないの。



「ローズさんって、もしかして生前日本という国に居たりしませんでした?」


 
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