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家族だから。
娘にそう思われているとは露とも知らず。
誰一人として仲睦まじく過ごす者がいないのに。
家族を求めているとはな、やはり子供か。貴族に愛情など不要であろう。
「諸悪の根源であるお父様は最後として、お兄様に言わせていただきます。使用人達を雇っているのはヴェルザード家ではあります。しかし雇っているからといって何をしても良いわけではありませんわ。不満はいずれ不義となります。裏切られたいのなら別ですが。使用人達はお兄様の鬱憤晴らしの道具ではありません。後、太り過ぎです。減量の為にダンスを習っていただきます」
「ぃやだ。何で僕だけ嫌な目に合わなきゃならないんだ。使用人をこき使って何が悪い。逆らったらこいつら解雇して新しい使用人を雇えばいいだろ」
エドワードは近衛兵を警戒しながらも妹の言葉を否定する。
「嫌な目に合っているのはお兄様だけでもなく、お兄様が手を挙げている使用人達もですね。自分を不幸にして酔ってらっしゃるお兄様より不幸ですわ。それに使用人が辞めてばかりの家に勤めたいと思う者がいまして?辞めた人間の口がいつまでも塞がっているとお思いですか。お兄様に問題有りと噂になりましてよ」
「僕は・・・僕だけなんでこんな目に」
「お兄様は努力も苦労もしていないのに不幸と決め付けていらっしゃる。可能性を自ら捨てているのがお兄様です。全て完璧でなくて良いのです。お兄様が諦めてしまうようになられたのはお兄様のせいだけでないのは分かっております。お兄様を認めてくれる者がいなかったのがお兄様の不幸です」
「認めてくれるひと・・・」
「ええ、お兄様を認め褒めてくれる人です。わたくしが覚えている限り、お父様もお母様もわたくしも、お兄様を認め褒めて差し上げてあげていませんでした。得意不得意は人それぞれです。お兄様の得意を見つけてみませんか?それだけでお兄様は変われると思います」
「・・・変われるのか?僕は」
「ええ、でもまずは減量です。嗜みにもなりますのでダンスを習いましょう」
「そんな金はない。余裕はないのだ。屋敷にいる者に教えさせているではないか」
エドワードには家庭教師を一人付けている。何人も雇える余裕は今はない。
「お兄様はその時間部屋におりますわ。使用人達の言うことを聞かないのにやるわけがないです。生活に余裕が無いのはそれはお父様の努力不足です。他人をあてにした金策しかしない。滞納している請求書の事はお母様はご存知ないようですね」
「滞納ですって?」
エメルダが初めて知らされたという顔をしているが、お前のせいで王家に援助を申し込む恥をかいているのだ。
「お母様のドレスと宝石は手放していただくので、それで教師を雇いましょう。体を動かして発散すると食事もより楽しめますわ」
「わたしの宝石を?嫌よ」
「体動かすの好きじゃない」
「お兄様。踊れない豚は、只の豚です。お兄様は踊れないただの豚で終わりますか?」
は?
娘の言葉に家族どころか尚書局の者も近衛兵もポカンとした表情を浮かべている。
「え?豚?」
「はい、豚です。豚のままでよろしいですか?」
「え?そう言われると嫌だけど」
幾つもの疑問符を頭に浮かべているようなエドワードはきっと訳の分からないまま答えたのだろう。
「では、決定ですね。お金の工面がつき次第習っていただきます。それと、早食いはお勧めいたしません。ゆっくり噛んで下さい。次はお母様です」
「え?あ、うん」
兄が妹に押し切られるままダンスを習う事が決定した瞬間だった。
娘にそう思われているとは露とも知らず。
誰一人として仲睦まじく過ごす者がいないのに。
家族を求めているとはな、やはり子供か。貴族に愛情など不要であろう。
「諸悪の根源であるお父様は最後として、お兄様に言わせていただきます。使用人達を雇っているのはヴェルザード家ではあります。しかし雇っているからといって何をしても良いわけではありませんわ。不満はいずれ不義となります。裏切られたいのなら別ですが。使用人達はお兄様の鬱憤晴らしの道具ではありません。後、太り過ぎです。減量の為にダンスを習っていただきます」
「ぃやだ。何で僕だけ嫌な目に合わなきゃならないんだ。使用人をこき使って何が悪い。逆らったらこいつら解雇して新しい使用人を雇えばいいだろ」
エドワードは近衛兵を警戒しながらも妹の言葉を否定する。
「嫌な目に合っているのはお兄様だけでもなく、お兄様が手を挙げている使用人達もですね。自分を不幸にして酔ってらっしゃるお兄様より不幸ですわ。それに使用人が辞めてばかりの家に勤めたいと思う者がいまして?辞めた人間の口がいつまでも塞がっているとお思いですか。お兄様に問題有りと噂になりましてよ」
「僕は・・・僕だけなんでこんな目に」
「お兄様は努力も苦労もしていないのに不幸と決め付けていらっしゃる。可能性を自ら捨てているのがお兄様です。全て完璧でなくて良いのです。お兄様が諦めてしまうようになられたのはお兄様のせいだけでないのは分かっております。お兄様を認めてくれる者がいなかったのがお兄様の不幸です」
「認めてくれるひと・・・」
「ええ、お兄様を認め褒めてくれる人です。わたくしが覚えている限り、お父様もお母様もわたくしも、お兄様を認め褒めて差し上げてあげていませんでした。得意不得意は人それぞれです。お兄様の得意を見つけてみませんか?それだけでお兄様は変われると思います」
「・・・変われるのか?僕は」
「ええ、でもまずは減量です。嗜みにもなりますのでダンスを習いましょう」
「そんな金はない。余裕はないのだ。屋敷にいる者に教えさせているではないか」
エドワードには家庭教師を一人付けている。何人も雇える余裕は今はない。
「お兄様はその時間部屋におりますわ。使用人達の言うことを聞かないのにやるわけがないです。生活に余裕が無いのはそれはお父様の努力不足です。他人をあてにした金策しかしない。滞納している請求書の事はお母様はご存知ないようですね」
「滞納ですって?」
エメルダが初めて知らされたという顔をしているが、お前のせいで王家に援助を申し込む恥をかいているのだ。
「お母様のドレスと宝石は手放していただくので、それで教師を雇いましょう。体を動かして発散すると食事もより楽しめますわ」
「わたしの宝石を?嫌よ」
「体動かすの好きじゃない」
「お兄様。踊れない豚は、只の豚です。お兄様は踊れないただの豚で終わりますか?」
は?
娘の言葉に家族どころか尚書局の者も近衛兵もポカンとした表情を浮かべている。
「え?豚?」
「はい、豚です。豚のままでよろしいですか?」
「え?そう言われると嫌だけど」
幾つもの疑問符を頭に浮かべているようなエドワードはきっと訳の分からないまま答えたのだろう。
「では、決定ですね。お金の工面がつき次第習っていただきます。それと、早食いはお勧めいたしません。ゆっくり噛んで下さい。次はお母様です」
「え?あ、うん」
兄が妹に押し切られるままダンスを習う事が決定した瞬間だった。
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