侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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 察するに、ローズさんがレオンハルト様にかけた言葉なのでしょう。




「まぁ、それは随分とレオの事を理解しているのですね」

 ふふふと笑って見せると、唇を少し尖らせましたわね。可愛い。



「分かっているくせに。リリは時々意地悪をする」


「レオも時々意地悪をするからですわ。レオのお顔が優れないのはローズさん自身が原因なのによくもまあと。厚顔無恥で有らせられるのね。重責ねぇ、貴族である以上責任を負うものですけれど、ローズさんはどう癒すのでしょう?」


じつのない甘言だな。あの三人にかける言葉は実に軽い。頑張ってます。凄いです。頼りになる。あれでよくなびくと感心できた程だ。それと何かにつれ触れて来ようとするから、そちらで堕ちたのだろう」


「まぁ!婚約者のいる男性にですか?なんてはしたない」

 触る方も触らせる方もどうかしておりますわ。 
 しかも、レオンハルト様の見ている前でですか?正気ですの?




「わたしにも触れてこようとするから躱し、一定の距離離れるよう伝えたがシルヴェスト等が連れてくる。彼奴らにも婚約者のいる身であるのだから行動を慎めと咎めても何かとローズ嬢を庇い言い訳をする。あれで将来国を担うつもりか」


「流石に見過ごせなくなりますわね。男爵令嬢程度の誘惑に負けられても困りますわ。手練手管に長けてもいない女性に堕ちるような者にレオの補佐をさせる訳にはいけません」


「・・・手練手管と違うが、ローズ嬢だが不思議な事にわたし達の趣味嗜好に精通している。わたしの好物が甘い物と何故か知っていた。甘い物が好きだからクッキーを焼いたと持って来たことがある。何が入っているかわからないので受け取らなかったが。暗殺するとしても普通手作りを受け取る訳がないのにな。わたしの訪れる場所など情報収集に長けているのに行動がそぐわな過ぎて何が目的なのか理解出来ない。一層の事、暗殺目的の方がまだ楽だ」



「その方が始末が楽ですものね」
 暗部に処分させて終わるだけですもの。

 国を背負う以上、清濁併せ呑まないといけませんもの。個より国を取らなくてはならないの。
 レオンハルト様に何かあってからでは遅いのだから。
 


「ああ。諜報部に探ってもらっているが背後に付いている者も洗い出せずお手上げだ。わざと泳がせているのだが行動が異常なだけで指示を受けている様子も全くないらしい」



「では、わたくしがローズさんと話をしてみますわ」


「リリ。駄目だ」

 ローズさんの真意が見えない以上、わたくしにも危険が及ぶかもしれないと止められます。
 ですが、婚約者のわたくしは最悪替えがききます。他のご令嬢でも他国の姫でも優秀な方はおりますもの。



「レオならわたくしに危険が及ばないようにしてくださるでしょう?」


「・・・勿論だ。しかし分かっていてもリリが心配なんだ」


「わたくし、レオが好きよ。好きな人が可能性が僅かでも奪われるかもしれないと思うと黙っていられない。だからレオが止めても行動するわ」



「それはない。あれは無い。でもリリから好きと言われるのは凄く嬉しいな」



 ・・・あら、心変わりの可能性は無さそうですわね。
 表情の変化を見て大丈夫そうと安心いたしました。


 お噂で聞いたローズさんって容姿はレオの好みそうでしたのでほんの少しだけ心配でしたのに。



「レオ好みの容姿ではありませんの?」


「リリ?・・・可愛い。リリの夜空色の髪も紫水晶の瞳も好きだ。綺麗な顔を赤く染めて恥じらう目の前にいる婚約者が好みだよ」


「真っ赤なのは自覚があります。これ以上言わないでくださいまし」

 未だに直接褒められ慣れていませんから仕方ないでしょう。
 レオンハルト様ってわたくしが照れるのをご存知ですから、こうやって直接口に出されるのだもの。
 しかも慣れなくていいと仰らないでください。


 
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