侯爵令嬢は悪役だったようです

Alice

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 侍女に使いを出し、放課後コーネリア様やアメリア様、マリアンヌ様とお茶会を開く事に致しました。
 
 お話して驚いたのは、皆様ローズ・クローブという男爵令嬢がレオンハルト様達の前に現れていることにご存知なかった事です。
 平民として暮らしていた男爵令嬢がいるらしいという情報しかないのは学年の違うアメリア様とマリアンヌ様ならまだわかるのですが、コーネリア様もその程度の認識しかお持ちでしかなかったのです。

 学年は同じといえ、コーネリア様とローズさんのクラスは違うのですがお噂はまだ届いていないようです。
 まぁ、追い払っているので耳に入れて余計な心配をかけないように配慮させているのでしょう。 


 レオンハルト様はわたくしの性格をご存知ですので、黙っている方が心配させると理解しておりますし、あのお疲れのご様子から気持ちを吐露して楽になりたかったのもあったのでしょう。

 ただ疑問に残る事があります。
 わたくし達がレオンハルト様と共に行動する時と同様、お三人方も婚約者と居る時にローズさんが現れていない事です。
 
「まるで、わたくし達を避けるような行動ですわね」
 
「ええ、鉢合わせすると都合が悪いのかしら」

「こうなると話は変わりますわ」

 香る茶葉の香りに焼き菓子を楽しみながら、ふふふとお互いに笑いあう。

  ローズ・クローブの動向を注視する事を共通の認識としてその日は解散致しました。







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「アーシェス様が?」

 レオンハルト様の従者と連絡を取った侍女からの報告に思わず聞き返してしまいましたわ。

 先日のお茶会から三日も経過していませんわよ。
 本日の昼食時、食堂に現れたローズさんに、アーシェス様が同席をお許しになられたそうです。
 テーブルにはレオンハルト様達も同席しているので二人きりではないですが、コーネリア様がその場にいらっしゃらないのに隣に座らせるのはご友人としても如何でしょうか。周囲に誤解を生む行為は慎むべきです。
 

 僅かに席を離したとはいえ、王太子に高位貴族令息の座るテーブルに男爵令嬢一人が席に着いたのですから瞬く間にこの事実は広まる事でしょう。

 ローズさんはコーネリア様を欺いてアーシェス様を籠絡させたのでしょうか?
 レオンハルト様を狙ったとしても周囲から陥落させるのも手段の一つですものね。
 


 アメリア様とマリアンヌ様の方は大丈夫でしょうか?
 シルヴェスト様は潔癖のきらいが、ガドウィン様は女性の扱いが不得手とお見受けいたしますので、ローズさんと仲良くなると思えませんが一応心配ですわね。

 
  






 その後、まさかシルヴェスト様とガドウィン様も本当にローズさんに陥落される日が来るとは思いませんでした。
 側近候補と言われる三人が婚約者を蔑ろにし、ローズさんを囲んで牽制しつつも仲睦まじく行動を共にする姿は、悪評として瞬く間に学園中に広まりました。







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「リリ」
 
 ぎゅっと背後から抱きしめられる。
 深い溜息がわたくしの髪を嬲る。

 寮では例え婚約者でも入室出来ないから、レオンハルト様と二人きりになれるのは限られた時間だけ。


「レオ、昼食を摂る時間がなくなりましてよ」
 廻された彼の腕に触れ、よしよしと撫でると更に力が増した。


 視線で従者に合図を送ると食事の給仕の準備へと入る。



「あのお三人、懐柔されたそうですわね」

「ああ、ここまで愚かだったかと評価を変えざるしかない」

「レオ、腕を離していただける?」

「嫌だと言ったら?」

「わたくしがレオを抱きしめられないとお答えしますわ」

 彼の手が離れたので振り返り、両手を広げ抱きしめた。
 お互いぎゅっと抱きつき、僅かな時間の抱擁の後に離れます。

 その辺はお互いわきまえておりますの。



 席に着き、少し冷めたスープを口に含みながら、レオンハルト様のお話を待ちます。



「重責に耐えているわたしを慰めたいそうだ」
 
「レオ?」

「いつも大変そうなお顔をされてます。レオンハルト様には笑って欲しい。そのお手伝いをしたいのだと。次はわたしの番か」


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