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148.誰が為に鐘は鳴る④藤澤視点
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「また、会えるなんて嬉しいですっ!」
...なんとも大げさな。
こんな風に俺との再会を喜んでくれるのは嬉しいが、欲をいえばさっきの優里が同じことを言ってくれる方が何百倍も嬉しかった。どうして今日はこんなに儘ならないものかと、山崎がすり寄ってくるのを避けながら、椅子ごと後ずさる。すると何かにコツンと背中が触れた気がした。
「あ、すみません」
反射的に振り返って謝ると、今、まさに右隣の席に優里が座ろうとしているところ。その引いた椅子に俺の身体が当たってしまったようだった。
「いえ...あの、隣に座っても宜しいですか?」
山崎と戯れてしまっている間に彼女の座るスペースを狭くしていたらしい。俺は即座にそれに気がつき、焦って椅子を元の位置に戻し、かしこまった。
「気がつかなくて、すみません」
「いえ、こちらこそ。お話中に申し訳ありません」
何とも味気ない会話の連続。最初に会った時以上に他人行儀な彼女の態度に先ほどの失敗が悔やまれて仕方がない。さり気なく彼女の様子をうかがうと、俺とは反対の隣の女性と話し始めてしまった。
これは彼女の俺に対する拒絶の姿勢の表れだ。今日初めて優里に同じことをされていたら、かなり心が叩きのめされ、凹んでいたことだろう。
だが、実は2度目だったりする。
1度目は付き合う前の話だったので、その当時は訳が分からず、悩んだ挙句に告白してしまうというオマケ付き。それは、結果オーライだったのだが。今回はその耐性ができているせいか、彼女の態度の硬化にそんなには悩まない。寧ろ、誤解されていても関心を持たれていることに活路を見出していた。無関心とは違い、意識はされていると。
披露宴の所要時間はおそらく2時間強。
その間に優里と話せ、連絡先を渡せればなんとかなるだろう。
こんな所で話しかけられて無視をする人間はいないだろうし、幸い席は右隣。そのくらいのことは、大した苦労も要せず、難なくできると思われたのだが...。
「向こうでの話聞かせてくださいよー」
久しぶりの再会でテンションが上がっているらしく、左隣の山崎がやたらとこちらに話しかけて困る。
「今度、そっちに遊びに行っていいですか?藤澤さん、観光案内してくださいよぉ~」
「わかった、わかった」
彼を適当にあしらいチラリと逆方向を盗み見ると、彼女は俺と違う人間と話が弾んでおり、話に夢中なせいか、ややそちらへと身体を斜めに傾けていた。
...マズイな、ずっと、この状況だと。
とりあえず、煩く纏わりついてくる山崎をどうにかしなくてはと、アルコールを勧め自分のペースに持ち込む。すると、酒に弱い彼は呆気なく潰れてくれ、思惑通り事が運んだ。
「もぉ、飲めませんよぉ...」
しばらくすると彼の言葉の呂律が怪しくなり、変なうわ言を言いながらテーブルの上に突っ伏してくれた。これなら、当分、優里と話すのを邪魔はされないと思われたのだが、違うテーブルから吉岡がやってきた。
「ほら、行くぞ」
吉岡は何か山崎に用事があったらしく、彼の肩を揺すっている。身体を揺り動かされている山崎は、ウニャウニャ言いながら反応するものの、なかなか椅子から立ち上がれない。そんな山崎に困り果てた吉岡は新たにビールを飲み始めた俺から事情を聞く。
「...こいつ、どうしたんだ?」
「俺につき合って飲んだら勝手に潰れた」
「げっ、マジかよ!?うわばみの藤澤とサシで飲むなんてバカかこいつは?」
潰れた山崎を見ながら、吉岡はため息をついて肩を落とした。
「...参ったな。余興の司会を誰がやるんだ?」
「へぇ、余興なんてあるんだ?」
田山の披露宴の準備にノータッチだった俺はこれから何が行われるのか全く分からない。だから、まるで他人事のように話をききながら、グラスに残ったビールを再び飲もうとすると、何故か飲むのを吉岡に止められる。
「そうだ、藤澤!お前が山崎の代わりやれって!」
「は?何で俺が!?」
「山崎を潰した責任とれよ」
「何言ってんだ?俺は昨日きたばかりで、余興の事なんか何も...」
「大丈夫、大丈夫。向こうにカンペあるから。それに人前で話す事に慣れているお前なら、なんとかなる!」
「おい、待てってば!!そんなの絶対、やらないぞ!!」
「いいから、いいから」
激しい抗議もむなしく、ガタイのいい吉岡をはじめとする大学時代の同窓生に半ば拉致状態で連れて行かれてしまう。余興の司会進行は彼の言う通り何とかなったのだが、そのあと、学生時代の友人のテーブルで捕まり、なかなか自席に戻れなかった。
そして、優里とは一言も言葉を交わせずに、ただ、時間だけが過ぎてゆく。
...なんとも大げさな。
こんな風に俺との再会を喜んでくれるのは嬉しいが、欲をいえばさっきの優里が同じことを言ってくれる方が何百倍も嬉しかった。どうして今日はこんなに儘ならないものかと、山崎がすり寄ってくるのを避けながら、椅子ごと後ずさる。すると何かにコツンと背中が触れた気がした。
「あ、すみません」
反射的に振り返って謝ると、今、まさに右隣の席に優里が座ろうとしているところ。その引いた椅子に俺の身体が当たってしまったようだった。
「いえ...あの、隣に座っても宜しいですか?」
山崎と戯れてしまっている間に彼女の座るスペースを狭くしていたらしい。俺は即座にそれに気がつき、焦って椅子を元の位置に戻し、かしこまった。
「気がつかなくて、すみません」
「いえ、こちらこそ。お話中に申し訳ありません」
何とも味気ない会話の連続。最初に会った時以上に他人行儀な彼女の態度に先ほどの失敗が悔やまれて仕方がない。さり気なく彼女の様子をうかがうと、俺とは反対の隣の女性と話し始めてしまった。
これは彼女の俺に対する拒絶の姿勢の表れだ。今日初めて優里に同じことをされていたら、かなり心が叩きのめされ、凹んでいたことだろう。
だが、実は2度目だったりする。
1度目は付き合う前の話だったので、その当時は訳が分からず、悩んだ挙句に告白してしまうというオマケ付き。それは、結果オーライだったのだが。今回はその耐性ができているせいか、彼女の態度の硬化にそんなには悩まない。寧ろ、誤解されていても関心を持たれていることに活路を見出していた。無関心とは違い、意識はされていると。
披露宴の所要時間はおそらく2時間強。
その間に優里と話せ、連絡先を渡せればなんとかなるだろう。
こんな所で話しかけられて無視をする人間はいないだろうし、幸い席は右隣。そのくらいのことは、大した苦労も要せず、難なくできると思われたのだが...。
「向こうでの話聞かせてくださいよー」
久しぶりの再会でテンションが上がっているらしく、左隣の山崎がやたらとこちらに話しかけて困る。
「今度、そっちに遊びに行っていいですか?藤澤さん、観光案内してくださいよぉ~」
「わかった、わかった」
彼を適当にあしらいチラリと逆方向を盗み見ると、彼女は俺と違う人間と話が弾んでおり、話に夢中なせいか、ややそちらへと身体を斜めに傾けていた。
...マズイな、ずっと、この状況だと。
とりあえず、煩く纏わりついてくる山崎をどうにかしなくてはと、アルコールを勧め自分のペースに持ち込む。すると、酒に弱い彼は呆気なく潰れてくれ、思惑通り事が運んだ。
「もぉ、飲めませんよぉ...」
しばらくすると彼の言葉の呂律が怪しくなり、変なうわ言を言いながらテーブルの上に突っ伏してくれた。これなら、当分、優里と話すのを邪魔はされないと思われたのだが、違うテーブルから吉岡がやってきた。
「ほら、行くぞ」
吉岡は何か山崎に用事があったらしく、彼の肩を揺すっている。身体を揺り動かされている山崎は、ウニャウニャ言いながら反応するものの、なかなか椅子から立ち上がれない。そんな山崎に困り果てた吉岡は新たにビールを飲み始めた俺から事情を聞く。
「...こいつ、どうしたんだ?」
「俺につき合って飲んだら勝手に潰れた」
「げっ、マジかよ!?うわばみの藤澤とサシで飲むなんてバカかこいつは?」
潰れた山崎を見ながら、吉岡はため息をついて肩を落とした。
「...参ったな。余興の司会を誰がやるんだ?」
「へぇ、余興なんてあるんだ?」
田山の披露宴の準備にノータッチだった俺はこれから何が行われるのか全く分からない。だから、まるで他人事のように話をききながら、グラスに残ったビールを再び飲もうとすると、何故か飲むのを吉岡に止められる。
「そうだ、藤澤!お前が山崎の代わりやれって!」
「は?何で俺が!?」
「山崎を潰した責任とれよ」
「何言ってんだ?俺は昨日きたばかりで、余興の事なんか何も...」
「大丈夫、大丈夫。向こうにカンペあるから。それに人前で話す事に慣れているお前なら、なんとかなる!」
「おい、待てってば!!そんなの絶対、やらないぞ!!」
「いいから、いいから」
激しい抗議もむなしく、ガタイのいい吉岡をはじめとする大学時代の同窓生に半ば拉致状態で連れて行かれてしまう。余興の司会進行は彼の言う通り何とかなったのだが、そのあと、学生時代の友人のテーブルで捕まり、なかなか自席に戻れなかった。
そして、優里とは一言も言葉を交わせずに、ただ、時間だけが過ぎてゆく。
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