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【spin-off】bittersweet first love
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田山も吉岡も俺の外部受験を聞いた時は驚きはしたが、食べるのは止め、まるで自分のことのように真摯に耳を傾けてくれた。
「違う大学に行っても、たまには遊ぼうな!」
田山はもう俺が合格したかのように寂しがり、吉岡は冷静に現実を見ている。
「で、親には言ったのか?」
吉岡がそういうのも無理はなかった。俺たちが未成年である以上、そこは避けては通れない進路だからだ。
「...それが意外と反対されなかった」
話す前は反対されるかと内心ビクビクしていたのだが、考え抜いて決めた事なら最後までやり遂げろと言われた。うちの両親は、もともと子供に対し考えを尊重して個を重んじる。周りがなんと言おうと俺の意見を聞いてくれた。その代わり言ったからにはの重圧は半端ないが。
「藤澤の両親って話分かんな。うちの親なんか頭がガッチガチ」
田山がポテトを食べながら、親の事をうるさいだの愚痴るのを目の当たりにすると自分がいかに恵まれているか思い知る。自分も親になった時はなどと考えるのは、後、十数年先の事になるが。
「...残る問題は塩爺だよな」
俺以外の2人も同じ事を思ったのだろう。テーブルに置かれたままの進路志望調査票が皆の視線を集める。俺には担任の顔が浮かんできた。
...まあ、なんとかなるだろう。生徒の希望をきくのがこの紙なのだから。
※※※
進路志望調査票を提出した数日後、塩爺こと担任の塩原に名指しで放課後呼ばれる。呼ばれた先は進路指導室。俺はさして驚きもせず予想通りの展開だった。先に部屋に入っててくれと塩爺から鍵を受け取り、その鍵で中に入ると物珍しくスチール製の本棚を眺めた。
...進路指導室なんて初めて入った。結構、赤本揃ってるじゃん。
赤本とは大学、学部別の過去問題集。俺も最近手に取ってみたのだが、内部進学生が殆どのうちでこんなに揃っているとは予想できなかった。もしかしたら自分みたいな生徒も結構な数がいるのではないかと想像する。そして、案外、進路志望調査票の話は自分の思い通りに進むのではないかと思っていた矢先、遅れてきた塩爺の第一声に耳を疑う。
「藤澤、悪い事は言わん。外部受験受けるのはやめとけ。時間の無駄だ」
ガンと無防備な後頭部を金づちで殴られたような威力。だが、俺の成績はそこまでいわれるほど悪いとは思わないし、外部受験が無駄だと言われる根拠が分からない。
「...それはどういう、事、でしょうか?」
塩爺は面倒くさそうに持ってきたファイルを開く。そこからプリント資料を取り出し、こちらに見えるよう放る。
「見てみろ、この惨憺たる結果を。他の私大ならともかく、うちからここを受けるなんて無謀だ。1年浪人するなら話は別だが」
見せられた資料には過去の進路データがあり俺が希望する大学は志望者は数人いたものの、過去5年現役での合格者は皆無。俺がそのプリントを食い入るように見つめているとを塩爺は追い打ちをかけてくる。
「藤澤の成績ならは理系科目はクリアできると思うが、なんせ文系が弱い。センターなら必ず足切りに引っかかる。それでも受けるのか?」
1年の頃から担任の塩爺は俺の弱点を的確に攻め、すぐさま反論できない。確固たる実績がないと覆る事ない事を感じた俺は無言を貫き時間を稼ごうとするが、塩爺は待ってはくれなかった。
「ま、悪い事は言わん。考え直せ」
こちらからの反論がないのをいい事に話を強制的に終わらせようと、ファイルを閉じ席を立とうとする。全く聞く耳を持たずといった塩爺を追いすがろうとした時、あるポスターが目に入った。
「...ちょ、ちょっと待ってください。一度だけ、チャンスをくれませんか?」
「チャンス?」
聞きなれない言葉に眉をひそめる塩爺は動きを止める。その隙に思考をフル回転させ、閃いた俺は塩爺の後ろに掲示してあったポスターを指差し提案した。
「あの夏の模試でA判定を取ったら、外部受験を認めてもらえませんか?」
塩爺が振り返る先には誰が貼ったのか大手予備校の模試のポスター。形だけとはいえここは進路指導室。その試験を受ける事を止める教師はいないだろう。
「...そこまで言うなら待つが。その代わりA判定だぞ?」
「分かっています」
こうして、俺の首の皮1枚繋がった。
「違う大学に行っても、たまには遊ぼうな!」
田山はもう俺が合格したかのように寂しがり、吉岡は冷静に現実を見ている。
「で、親には言ったのか?」
吉岡がそういうのも無理はなかった。俺たちが未成年である以上、そこは避けては通れない進路だからだ。
「...それが意外と反対されなかった」
話す前は反対されるかと内心ビクビクしていたのだが、考え抜いて決めた事なら最後までやり遂げろと言われた。うちの両親は、もともと子供に対し考えを尊重して個を重んじる。周りがなんと言おうと俺の意見を聞いてくれた。その代わり言ったからにはの重圧は半端ないが。
「藤澤の両親って話分かんな。うちの親なんか頭がガッチガチ」
田山がポテトを食べながら、親の事をうるさいだの愚痴るのを目の当たりにすると自分がいかに恵まれているか思い知る。自分も親になった時はなどと考えるのは、後、十数年先の事になるが。
「...残る問題は塩爺だよな」
俺以外の2人も同じ事を思ったのだろう。テーブルに置かれたままの進路志望調査票が皆の視線を集める。俺には担任の顔が浮かんできた。
...まあ、なんとかなるだろう。生徒の希望をきくのがこの紙なのだから。
※※※
進路志望調査票を提出した数日後、塩爺こと担任の塩原に名指しで放課後呼ばれる。呼ばれた先は進路指導室。俺はさして驚きもせず予想通りの展開だった。先に部屋に入っててくれと塩爺から鍵を受け取り、その鍵で中に入ると物珍しくスチール製の本棚を眺めた。
...進路指導室なんて初めて入った。結構、赤本揃ってるじゃん。
赤本とは大学、学部別の過去問題集。俺も最近手に取ってみたのだが、内部進学生が殆どのうちでこんなに揃っているとは予想できなかった。もしかしたら自分みたいな生徒も結構な数がいるのではないかと想像する。そして、案外、進路志望調査票の話は自分の思い通りに進むのではないかと思っていた矢先、遅れてきた塩爺の第一声に耳を疑う。
「藤澤、悪い事は言わん。外部受験受けるのはやめとけ。時間の無駄だ」
ガンと無防備な後頭部を金づちで殴られたような威力。だが、俺の成績はそこまでいわれるほど悪いとは思わないし、外部受験が無駄だと言われる根拠が分からない。
「...それはどういう、事、でしょうか?」
塩爺は面倒くさそうに持ってきたファイルを開く。そこからプリント資料を取り出し、こちらに見えるよう放る。
「見てみろ、この惨憺たる結果を。他の私大ならともかく、うちからここを受けるなんて無謀だ。1年浪人するなら話は別だが」
見せられた資料には過去の進路データがあり俺が希望する大学は志望者は数人いたものの、過去5年現役での合格者は皆無。俺がそのプリントを食い入るように見つめているとを塩爺は追い打ちをかけてくる。
「藤澤の成績ならは理系科目はクリアできると思うが、なんせ文系が弱い。センターなら必ず足切りに引っかかる。それでも受けるのか?」
1年の頃から担任の塩爺は俺の弱点を的確に攻め、すぐさま反論できない。確固たる実績がないと覆る事ない事を感じた俺は無言を貫き時間を稼ごうとするが、塩爺は待ってはくれなかった。
「ま、悪い事は言わん。考え直せ」
こちらからの反論がないのをいい事に話を強制的に終わらせようと、ファイルを閉じ席を立とうとする。全く聞く耳を持たずといった塩爺を追いすがろうとした時、あるポスターが目に入った。
「...ちょ、ちょっと待ってください。一度だけ、チャンスをくれませんか?」
「チャンス?」
聞きなれない言葉に眉をひそめる塩爺は動きを止める。その隙に思考をフル回転させ、閃いた俺は塩爺の後ろに掲示してあったポスターを指差し提案した。
「あの夏の模試でA判定を取ったら、外部受験を認めてもらえませんか?」
塩爺が振り返る先には誰が貼ったのか大手予備校の模試のポスター。形だけとはいえここは進路指導室。その試験を受ける事を止める教師はいないだろう。
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