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【spin-off】bittersweet first love
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大学四年時には、使用していたサーフィン一式は後輩に譲り、ピアスは海の中へと放り投げた。そして、大学受験並みに勉学に励み、大学院への合格を勝ち取った俺は京都という街に想いを馳せていたのだが。
...案外、人が多いな。
駅に降り立った時の率直な第一印象。京都という街に日本中の学生が修学旅行でよく行く定番の観光地というイメージを持っていたのだが、ある意味予想外。日本人以外の観光客もちらほらと見かけ、ちょうど京都が世界に誇る観光地へとシフトし出した頃のようだった。
京都の住まいは以前と違い海が身近にあるわけではなかったが、都会というわりには自然が溢れている。街を歩けば手入れの施された庭園が見事な寺院が数々あり、近所には鴨川という浅瀬の河川があった。その風景を一目で気に入った俺は、朝早く目覚めた朝は、その辺りをジョギングしたり、散歩したりする事にささやかな楽しみを見いだす。
大学院生活は思った以上に課題が厳しかった。大学時代と違い、チャラチャラと浮ついた気持ちではとても追いついていけない環境で、日本全国から集まってきている精鋭の中で切磋琢磨し合う。その中で最低限の人付き合いをし、歓迎会など当たり障りなくこなしていく。まあ、お洒落で派手な田山達と連んでいた大学時代と違い、一人になり、ますます身なりに無頓着になった俺に関心を持つような奇特な異性はいなかった。
そんな地味な学生生活を送りつつ、歴史ある古びた校舎に通うたびに愛着を覚え、ここに根付いてもいいかと思うほどになる。そのくらいここでの生活は充実しており、満足いくものだった。
それから季節は一巡し、また進路に関する岐路が生まれる2年目の春休み。
俺は家にいても暇なので大学通いに明け暮れ、実験室、図書室、研究室のいずれかにいるのがいつものルーチンワーク。
今日はデータをまとめるために研究室の定位置でパソコンと睨めっこをしていた。
...うー、目がショボショボする。
朝からパソコン画面を見続けているため、目に違和感を感じる。一旦、画面から視線を逸らし、いよいよメガネが必要かなと眉間を指でマッサージしていると、何処からかコーヒの香りがした。
「お疲れさん。休みやって言うのに藤澤君は精が出るね。それ、先週の実験のレポート?」
「あ、はい」
パソコンの傍に俺の分のコーヒーを置かれ初めて誰かの存在に気がつく。余程、集中してしまっていたんだなと、パソコン作業をやめ、勧められるままにコーヒーを口にする。コーヒーを淹れてくれた声の主は隣の椅子に腰掛け、自分もコーヒーを飲んでいる。ただ、休みに研究室に遊びに来るにしてはスーツ姿で堅苦しい。
「...ありがとうございます。今日は休みなのに授業だったんですか?」
「そ、補講やけどね。この間の試験を厳しくしすぎてしもうたんで、掬い上げてやらんとあかんかった。ほんま、試験は加減が難しいわ」
「あー、確かに。皆んなボヤいてましたよ、梶さんの試験はいつも難しいって(笑)」
「え?!そうなん??そんなつもりはないんやけどなぁ。俺としてはそんなに難しくした覚えは...」
ぶつぶつと何やら独り言を呟き始めた彼は同じ院生ではなく、れっきとした指導教官の梶講師。本来なら一介の院生の俺がこんな口を聞ける立場ではないのだが、大して歳が違わないのと話してみると意外や意外、人懐っこい人で。どこか田山と雰囲気が似ており、心許した俺は気安くプライベートで仲良くさせてもらっている。だから、こんな風に2人でいる時は他愛もない話しをすることが多かった。
「それはお疲れ様です。この後はお帰りですか?戸締りはしておきますよ。まだ、こちらは終わりそうにないので」
「あ、それなら頼むわ。俺はもうすぐ帰るよって。ただ、ちょっと君に一つ聞きたいことがあってな。ここに寄ったんや」
「それはわざわざすみません。で、ご用件というのは?」
梶さんの言わんとしている事が全く想像のつかない俺は首を捻る。
...案外、人が多いな。
駅に降り立った時の率直な第一印象。京都という街に日本中の学生が修学旅行でよく行く定番の観光地というイメージを持っていたのだが、ある意味予想外。日本人以外の観光客もちらほらと見かけ、ちょうど京都が世界に誇る観光地へとシフトし出した頃のようだった。
京都の住まいは以前と違い海が身近にあるわけではなかったが、都会というわりには自然が溢れている。街を歩けば手入れの施された庭園が見事な寺院が数々あり、近所には鴨川という浅瀬の河川があった。その風景を一目で気に入った俺は、朝早く目覚めた朝は、その辺りをジョギングしたり、散歩したりする事にささやかな楽しみを見いだす。
大学院生活は思った以上に課題が厳しかった。大学時代と違い、チャラチャラと浮ついた気持ちではとても追いついていけない環境で、日本全国から集まってきている精鋭の中で切磋琢磨し合う。その中で最低限の人付き合いをし、歓迎会など当たり障りなくこなしていく。まあ、お洒落で派手な田山達と連んでいた大学時代と違い、一人になり、ますます身なりに無頓着になった俺に関心を持つような奇特な異性はいなかった。
そんな地味な学生生活を送りつつ、歴史ある古びた校舎に通うたびに愛着を覚え、ここに根付いてもいいかと思うほどになる。そのくらいここでの生活は充実しており、満足いくものだった。
それから季節は一巡し、また進路に関する岐路が生まれる2年目の春休み。
俺は家にいても暇なので大学通いに明け暮れ、実験室、図書室、研究室のいずれかにいるのがいつものルーチンワーク。
今日はデータをまとめるために研究室の定位置でパソコンと睨めっこをしていた。
...うー、目がショボショボする。
朝からパソコン画面を見続けているため、目に違和感を感じる。一旦、画面から視線を逸らし、いよいよメガネが必要かなと眉間を指でマッサージしていると、何処からかコーヒの香りがした。
「お疲れさん。休みやって言うのに藤澤君は精が出るね。それ、先週の実験のレポート?」
「あ、はい」
パソコンの傍に俺の分のコーヒーを置かれ初めて誰かの存在に気がつく。余程、集中してしまっていたんだなと、パソコン作業をやめ、勧められるままにコーヒーを口にする。コーヒーを淹れてくれた声の主は隣の椅子に腰掛け、自分もコーヒーを飲んでいる。ただ、休みに研究室に遊びに来るにしてはスーツ姿で堅苦しい。
「...ありがとうございます。今日は休みなのに授業だったんですか?」
「そ、補講やけどね。この間の試験を厳しくしすぎてしもうたんで、掬い上げてやらんとあかんかった。ほんま、試験は加減が難しいわ」
「あー、確かに。皆んなボヤいてましたよ、梶さんの試験はいつも難しいって(笑)」
「え?!そうなん??そんなつもりはないんやけどなぁ。俺としてはそんなに難しくした覚えは...」
ぶつぶつと何やら独り言を呟き始めた彼は同じ院生ではなく、れっきとした指導教官の梶講師。本来なら一介の院生の俺がこんな口を聞ける立場ではないのだが、大して歳が違わないのと話してみると意外や意外、人懐っこい人で。どこか田山と雰囲気が似ており、心許した俺は気安くプライベートで仲良くさせてもらっている。だから、こんな風に2人でいる時は他愛もない話しをすることが多かった。
「それはお疲れ様です。この後はお帰りですか?戸締りはしておきますよ。まだ、こちらは終わりそうにないので」
「あ、それなら頼むわ。俺はもうすぐ帰るよって。ただ、ちょっと君に一つ聞きたいことがあってな。ここに寄ったんや」
「それはわざわざすみません。で、ご用件というのは?」
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