社内恋愛はじめました。

柊 いつき

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71.Le rouge alevres⑤

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藤澤さんが触れた部分が熱を帯びたみたいに熱くなる。だんだんとその範囲が広がってゆき、自分の口からあられもない声が勝手に出てしまい、どうしようもなく恥ずかしくて手の甲で必死に声を抑えていた。

「やっ...あ!」

耳たぶにはぬるりとした感触が襲ってくる。思わず竦めた首筋に彼が顔を埋めており、肌を舐められて座れる感触に身もだえた。それでも彼は乳房の先端を指先で弄び、その都度、私は鋭い刺激に襲われる。次第にじんじんと身体の奥で疼くような熱。彼の手の中で形を変える乳房がその熱を篭らせてゆく。

そして、彼の手が私の腰の部分を撫でるように下りてゆき、そのくすぐったさに身をよじるとそのままショーツの中まで侵入してきた。

「あああんっ....!?」

長い指が私の敏感な部分をなぞるように前後に動く。必死に足を閉じようとしても男の人の力に叶うわけがなかった。心臓が初めての刺激にドクンドクンと強く脈打つ。柔らかな茂みの中を優しく動く指がもっと奥へと入ろうとしていた。その指が閉じられていた部分を開くように動き、ある部分を押し込める。

「あっ、ああ!」

鋭い刺激に襲われた私の背中は意思とは関係なく、仰け反ってしまう。

「優里からいやらしい音がする」

くちゅ、くちゅっと水音を奏でる指の動きを止めてくれずに、クスクスと小さく笑う藤澤さんは私の肌を吸い続ける。ちらりと見えたツンと立った部分が妙にリアルで思わず目瞑った。
彼の指はそれでも敏感な部分を撫でながら、もじもじと動いてしまう太ももの部分をはい回る。その動きは滑らかで優しいはずなのに、今の私には容赦がなく感じられ、徐々に開かれた部分に指が埋められた。

「あっ、んんっ...」

違和感とともに少しづつ出し入れされる指で、ざわざわと蠢く身体の奥底にある熱。その熱が次第に身体の中で大きくなって、藤澤さんの指が、舌が、唇が私に触れるたびに勝手に腰が揺れた。はあはあと息が荒くなるのを抑えきれない。

「優里」

「んっ...」

半開きになった唇に、いきなりの激しいキス。舌が絡めとられて、強く強く吸われ、息苦しい。その息苦しさで何も抵抗できなくて、思考が止まった。

「や、あああっ...あん」

...だめ、もう。耐えられない...!!

再び大きく背中を仰け反らせた私は高ぶるような感情の波に流されてしまい、頭が真っ白になる。乱れた息を吐く私の唇に、優しく藤澤さんの唇が重なった。さっきの激しいキスとは違う労わるような優しいキス。彼の腕の中に抱きしめられてホッとする。ぼうっと熱に浮かされた頭が、冷静さを取り戻す。

「...優里?」

彼は私のそんな様子を不審に思ったのか顔色を窺ってくれて、私は初めての感覚にたまらず根をあげてしまう。

「も...無理...みたい、です」

「え?」

何かを察した藤澤さんは慌てて私を抱き起こし、脱ぎ捨ててあったパジャマを彼女の肩にひっかけてくれた。

「ご、ごめん。俺だけ夢中になって」

彼は謝ってくれたけれど、私の方がこれは悪い。

「...そうじゃないんです。私が初めてだから慣れていなくて。その、藤澤さんが面倒くさくて嫌じゃないかって...」

自分で言っておきながら、情けなくなり涙ぐむ。そんな私を優しく抱きしめてくれた。

「大丈夫。優里は全く悪くない。それどころか、俺の方が悪いと思うよ」

「どうして...ですか?」

「うん...それはうまく説明は出来ないんだけど。これは多分、時間が解決するから。それよりも...」

彼は抱き合ったまま、コツンと額同士を合わせる。この距離で見つめられるといつもみたいに視線を逸らせず、俯くこともできない。けれど、まっすぐ彼の表情を見ていることで安心できた。

「今度のバレンタインは無理だったら今みたいに正直に話して。俺は、優里が受け入れてくれようとしているだけで満足なんだから」

「それは...」

「ほら、約束。指切りげんまんだったけ...?」

有無を言わさず強引な指切りの約束。子供だましみたいだったけれど、藤澤さんの優しさが垣間見れる。
そして、それからお互いに背を向け、パジャマに着替えなおし、また、一つのベッドに入った。私は彼の体温の温かさに浸っていたらいつのまにか深い眠りに陥る。

翌朝、私の方が早く目覚めた。こそっと彼の腕から抜け出し身支度を済ませてから静かにカーテンを開けると藤澤さんが何やらもぞもぞと...。ベッドに近づき顔を覗き込むと、目をこすっていたので起きそうだ。

「...おはようございます。もしかして、起こしちゃいましたか?」

小声で声をかけると、しっかり彼は目を開けており。

「あ、いや...大丈夫。でも、もっと近くで顔見せてくれない?」

疑問に思いながらも言われた通りに顔を寄せると、後頭部を抑えられ強引に唇を奪われた。

「...なっ!?」

唇が離れたと同時に後ずさると、彼は悪びれることなくペロッと舌を出す。

「目覚めのキス、ごちそうさま」

...昨夜あれだけキスをしたのに、また。

藤澤さんは絶対キス魔だと複雑な気分でいたら、彼は笑いながら身支度の為に洗面所の方へと消えた。いつもやり込められていてなんだか悔しいと思うと、ベッドサイドテーブルに置きっぱなしになっていたあるものに気が付がつく。それをしまおうとして、ピンと閃いた。

私は洗面所の方まで出向きこそっと彼の様子をのぞいてみる。どうやら、シェーバーで髭をそっているみたいだった。早く終わらないかなとのぞいたり引っ込んだりしたけれど、気が付いていないみたいっだったのでリビングに戻る。

「お待たせ」

ソファーに座ってお化粧ポーチを弄っていたら後ろからぎゅっと。ビビリな私は小さく悲鳴をあげ、身体をびくんと弾ませる。

「もう、藤澤さんったら...なんですか。そんな待ってはいないですけど...」

「いや、待ってたでしょっていうか俺に用でもあった?さっきから、ひっきりなしにこっちにきてたの見えていたから」

「え、ウソ?」

彼に指摘されてのぞいていたのがバレていたのかと思うと恥ずかしい。

「それはその...そんなに?」

「うん、バレバレ。鏡に何度も丸写りしてたからね」

その状況を彼の口から直接聞いてバレていないと思った私はかなりの間抜けだ。
けれど、この際それもこれも置いておいて。

「...実は、一つお願いがありまして」

「お願いって...?」

何事かと珍しくうろたえる藤澤さんがちょっと可愛い。彼の腕の中からスルリと抜け出た私は調子に乗った。

「藤澤さんってお化粧映えしそうな顔立ちですよね?」

相当な間があったのち、聞き返される。

「...........は?」

彼は言われている意味が分からないようで首を傾げている。それでも私は嬉々として拝み倒した。

「だから、私にも藤澤さんに口紅を塗らせてもらえませんか?」

私の突拍子のないお願いに、彼は難しい顔をして固まってしまう。そのおかげで次の言葉を発するまで、かなりの時間を要していた。

「...それはその...昨日、俺がしたように優里が俺にしたいと?」

「はい、正解です!」

最初は本当に嫌な顔をして拒否していたけれど、なんだかんだ言っても彼は優しい。最終的には根負けしてくれた。

「す、少しだけならね...」

口元を引きつらせて言われたけれど、私は見ないふりっと。早速ソファーに座ってもらい、彼の形のいい唇にリップブラシを滑らせる。ただ、困ったことに藤澤さんは目をなかなか閉じてくれなくて、見られていることに照れながら作業をする羽目になり、完成。

「...わ、素敵!思った通りキレイです」

「...そう、かな?」

口紅を塗られた藤澤さんの顔にウットリとして賛辞を並べると、応じる彼はもちろん嬉しそうじゃなく。

...こんなにキレイなのになあ。

もともと目鼻顔立ちはすっきりとしていて肌がきれいなタイプ。しかもわりと色白だったから口紅だけでも私よりもよっぽど化粧映えしている。フルメイクをしたら、ちょっとキツメの美人さんになりそうな感じだった。

それを想像すると楽しくなり、もう一つお願いを。

「しゃ、写真撮っても...」

「それはダメ!」

言葉を言い終わらないうちに、即、却下され、当然といえば当然だけれど少し残念。
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