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第一章 人生が変わった7日間
30:死亡理由を聞きました
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「……なぜ?」
アルフィール様から向けられた突き刺さるような冷たい視線に、震えそうになるけれど。私は、ここで負けるわけにはいかなかった。
「兄さんとの結婚話みたいに、全部がゲームの通りってわけじゃないですよね。だから私がうまく王子様の心を掴んだとしても、確実とはいえないと思うんです。でも私は、聖魔法を使えるんですよね? だからもし万が一があっても、死ぬ時期や死因が分かっていれば、アルフィール様をお助け出来ると思って」
私が真っ直ぐに見つめ返して言うと、アルフィール様はふっと表情を緩めた。
「そう、ね……。話しておくべきでしょうね」
自分が死ぬ話なんて、本当はしたくないだろう。それでもアルフィール様は、小さくため息を吐きつつも教えてくれた。
「わたくしが死ぬのは一年生の終わり、桃花の月よ。その月の第三週に、わたくしは魔獣に食い殺されるの」
「えっ⁉︎ なんで魔獣に⁉︎ 魔獣が王都に入り込むんですか⁉︎」
「違うわ。学園では一年間の総仕上げとして、最後の月に魔獣討伐訓練が行われるの。殿下が参加なさる訓練だから、いつもより厳重に魔獣は減らされるはずなのに……。突然現れた魔獣に襲われて、悪役令嬢アルフィールは死んでしまうのよ」
王都のすぐそばには、魔物が出る魔の森がある。王立学園の生徒たちは、毎年マルムの月にそこで討伐訓練をするそうだ。
魔の森は奥深くにいくほど強い魔物が出る。教師の引率があるとはいえ、あくまでも訓練だし学生は素人だ。危険がないように事前に騎士団がある程度間引きするし、学年毎にどのぐらい森に入るかも、きちんと決められているんだとか。
だから一年生は森の一番浅い場所にしか行かないのに、なぜか森の奥にしかいないような魔獣が現れるそうで。万が一に備えて、各学年に護衛の小隊も付いているはずなのに、それも掻い潜られるらしい。
誰のルートにいるかによって出てくる魔獣の種類も場所も変わるけれど、王子ルート以外のアルフィール様は必ず殺されてしまう。王子ルートの時だけ、ヒロインを守ろうとした第一王子が魔獣と相対し、アルフィール様は助かるんだとか。
「魔の森は広いし、事前に数も減らしてるのに出るのだから、わたくしには避けようがないでしょう? ヒロインを命懸けで守ろうとする殿下の献身のおこぼれで生き残るしか、方法はないのよ」
儚げな笑みを浮かべたアルフィール様に、私は頭を振った。
「そんなことないです。それなら訓練をお休みすればいいじゃないですか。このお屋敷にいれば安全ですよね」
「原因が分からないのだもの。もしゲームの強制力があるなら、わたくしがどこにいたって魔獣が現れる可能性はあるわ」
「それなら、王子殿下にも一緒にいてもらったらどうですか? もちろん私も一緒にいますけど、騎士団とか魔導士団にお願いして、お屋敷の周りも固めてもらえれば……」
「それは出来ないわ。討伐訓練は、王立学園のメインイベントだもの。特に王族である殿下は、立場上必ず参加しなければならないから。それに騎士団や魔導士団を動かせるのは国王陛下よ。協力を要請するには、わたくしの秘密を明かさなければならないけれど……信じてもらえなかったら、どんな罰が下るか分からない。最悪の場合、処刑されるかもしれないのよ」
魔獣が現れて襲われるという話を信じてもらえなかった場合、虚言癖があると見なされるのはまだいい方で。最悪の場合は、民衆の不安を招く者として断罪される可能性があるそうだ。
(処刑なんてことになったら、どちらにしろアルフィール様は死んでしまう……)
呆然とする私に、アルフィール様は淡々と話を続けた。
「それにね。ミュランルート以外、アルフィールはどのルートでもヒロインや殿下と一緒にいるの」
「えっ⁉︎」
「王子ルートではない場合、殿下はアルフィールを守ってくれるはずだけれど、アルフィールは死ぬわ。そもそもアルフィール自身、学園内で殿下に次ぐ魔力の持ち主で強力な攻撃魔法の使い手だから、そう簡単に殺されたりしないはずなのに。太刀打ち出来ないぐらい、強い魔獣が出てくるのよ。たった一撃で死んでしまうから、ヒロインの聖魔法も出番がないの」
「そんな……」
「もしかしたら、ジミ恋に一切出てこない国に行けば、ゲームの強制力からも外れて逃げられるかもしれないけれど。わたくしは殿下の婚約者だから、出国の許可もされることはないわ」
あんまりな話に、震えが走る。アルフィール様はテーブル越しに手を伸ばし、私の手をそっと握った。
「怖がらないで。大丈夫よ」
「アルフィール様……」
「あなたはディライン殿下と恋に落ちて、ゲーム通りにわたくしを救ってくれる。そうでしょう?」
どうにか逃げられないかと足掻こうとしてる私に、アルフィール様は優しく微笑んだ。嘘をついている自分に嫌気がさすけれど、ワガママな私は両方とも諦めきれない。
(この人を助けたい。そして、イールトさんにも好きだと言いたい)
何も言えないまま。でも絶対に見捨てないと誓って、アルフィール様の手を強く握る。アルフィール様は一瞬だけ目を見張り、ふふふと笑った。
「ありがとう、シャルラさん。あなたがヒロインで良かった」
「いえ……」
「あとは質問はないかしら?」
「はい。大丈夫です」
何が大丈夫なんだろう。罪悪感で胸がズキズキと痛んで、顔を上げられない。
(王子様と結婚する気にはなれないけれど。絶対にアルフィール様は助けたい。でも、本当に出来るの? もし第一王子が協力してくれなかったら……?)
不安を誤魔化すようにハーブティーに口を付ければ、落ち着く香りが胸いっぱいに広がった。僅かに混じる柑橘系の香りに、イールトさんを思い浮かべて涙が出そうになる。
それでもどうにか顔に出さずにいたら、アルフィール様がイールトさんに視線を向けた。
「イールト。あの子を呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
アルフィール様から向けられた突き刺さるような冷たい視線に、震えそうになるけれど。私は、ここで負けるわけにはいかなかった。
「兄さんとの結婚話みたいに、全部がゲームの通りってわけじゃないですよね。だから私がうまく王子様の心を掴んだとしても、確実とはいえないと思うんです。でも私は、聖魔法を使えるんですよね? だからもし万が一があっても、死ぬ時期や死因が分かっていれば、アルフィール様をお助け出来ると思って」
私が真っ直ぐに見つめ返して言うと、アルフィール様はふっと表情を緩めた。
「そう、ね……。話しておくべきでしょうね」
自分が死ぬ話なんて、本当はしたくないだろう。それでもアルフィール様は、小さくため息を吐きつつも教えてくれた。
「わたくしが死ぬのは一年生の終わり、桃花の月よ。その月の第三週に、わたくしは魔獣に食い殺されるの」
「えっ⁉︎ なんで魔獣に⁉︎ 魔獣が王都に入り込むんですか⁉︎」
「違うわ。学園では一年間の総仕上げとして、最後の月に魔獣討伐訓練が行われるの。殿下が参加なさる訓練だから、いつもより厳重に魔獣は減らされるはずなのに……。突然現れた魔獣に襲われて、悪役令嬢アルフィールは死んでしまうのよ」
王都のすぐそばには、魔物が出る魔の森がある。王立学園の生徒たちは、毎年マルムの月にそこで討伐訓練をするそうだ。
魔の森は奥深くにいくほど強い魔物が出る。教師の引率があるとはいえ、あくまでも訓練だし学生は素人だ。危険がないように事前に騎士団がある程度間引きするし、学年毎にどのぐらい森に入るかも、きちんと決められているんだとか。
だから一年生は森の一番浅い場所にしか行かないのに、なぜか森の奥にしかいないような魔獣が現れるそうで。万が一に備えて、各学年に護衛の小隊も付いているはずなのに、それも掻い潜られるらしい。
誰のルートにいるかによって出てくる魔獣の種類も場所も変わるけれど、王子ルート以外のアルフィール様は必ず殺されてしまう。王子ルートの時だけ、ヒロインを守ろうとした第一王子が魔獣と相対し、アルフィール様は助かるんだとか。
「魔の森は広いし、事前に数も減らしてるのに出るのだから、わたくしには避けようがないでしょう? ヒロインを命懸けで守ろうとする殿下の献身のおこぼれで生き残るしか、方法はないのよ」
儚げな笑みを浮かべたアルフィール様に、私は頭を振った。
「そんなことないです。それなら訓練をお休みすればいいじゃないですか。このお屋敷にいれば安全ですよね」
「原因が分からないのだもの。もしゲームの強制力があるなら、わたくしがどこにいたって魔獣が現れる可能性はあるわ」
「それなら、王子殿下にも一緒にいてもらったらどうですか? もちろん私も一緒にいますけど、騎士団とか魔導士団にお願いして、お屋敷の周りも固めてもらえれば……」
「それは出来ないわ。討伐訓練は、王立学園のメインイベントだもの。特に王族である殿下は、立場上必ず参加しなければならないから。それに騎士団や魔導士団を動かせるのは国王陛下よ。協力を要請するには、わたくしの秘密を明かさなければならないけれど……信じてもらえなかったら、どんな罰が下るか分からない。最悪の場合、処刑されるかもしれないのよ」
魔獣が現れて襲われるという話を信じてもらえなかった場合、虚言癖があると見なされるのはまだいい方で。最悪の場合は、民衆の不安を招く者として断罪される可能性があるそうだ。
(処刑なんてことになったら、どちらにしろアルフィール様は死んでしまう……)
呆然とする私に、アルフィール様は淡々と話を続けた。
「それにね。ミュランルート以外、アルフィールはどのルートでもヒロインや殿下と一緒にいるの」
「えっ⁉︎」
「王子ルートではない場合、殿下はアルフィールを守ってくれるはずだけれど、アルフィールは死ぬわ。そもそもアルフィール自身、学園内で殿下に次ぐ魔力の持ち主で強力な攻撃魔法の使い手だから、そう簡単に殺されたりしないはずなのに。太刀打ち出来ないぐらい、強い魔獣が出てくるのよ。たった一撃で死んでしまうから、ヒロインの聖魔法も出番がないの」
「そんな……」
「もしかしたら、ジミ恋に一切出てこない国に行けば、ゲームの強制力からも外れて逃げられるかもしれないけれど。わたくしは殿下の婚約者だから、出国の許可もされることはないわ」
あんまりな話に、震えが走る。アルフィール様はテーブル越しに手を伸ばし、私の手をそっと握った。
「怖がらないで。大丈夫よ」
「アルフィール様……」
「あなたはディライン殿下と恋に落ちて、ゲーム通りにわたくしを救ってくれる。そうでしょう?」
どうにか逃げられないかと足掻こうとしてる私に、アルフィール様は優しく微笑んだ。嘘をついている自分に嫌気がさすけれど、ワガママな私は両方とも諦めきれない。
(この人を助けたい。そして、イールトさんにも好きだと言いたい)
何も言えないまま。でも絶対に見捨てないと誓って、アルフィール様の手を強く握る。アルフィール様は一瞬だけ目を見張り、ふふふと笑った。
「ありがとう、シャルラさん。あなたがヒロインで良かった」
「いえ……」
「あとは質問はないかしら?」
「はい。大丈夫です」
何が大丈夫なんだろう。罪悪感で胸がズキズキと痛んで、顔を上げられない。
(王子様と結婚する気にはなれないけれど。絶対にアルフィール様は助けたい。でも、本当に出来るの? もし第一王子が協力してくれなかったら……?)
不安を誤魔化すようにハーブティーに口を付ければ、落ち着く香りが胸いっぱいに広がった。僅かに混じる柑橘系の香りに、イールトさんを思い浮かべて涙が出そうになる。
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「イールト。あの子を呼んでちょうだい」
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