ヒロインと呼ばれても〜自称悪役令嬢に王子をお勧めされましたが、私の好みは貴女の従者様です

春日千夜

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第二章 諦めない70日間

45:意外な場所で会いました

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 カッとなって言った事も、一晩経って冷静になれば言い過ぎたかなと思うもので。ラステロくんに謝らなくちゃと思いながら登校した、授業二日目の朝。
 意外にもラステロくんは、昨日と同じくニコニコ笑顔で校舎入り口に立っていた。

「おはよう、シャルラちゃん」
「ラステロくん……おはよう。あの、昨日はごめんね」
「あー、あれ? いいよ、気にしないで。シャルラちゃんは当たり前のことを言っただけだから。ボクこそごめんね」

 拍子抜けするぐらい、ラステロくんは朗らかで。まるで昨日の事なんてなかったみたいに接してくるから驚いたけれど、私は内心ホッとした。
 それでもやっぱり、気持ちの変化はあったみたいで。アルフィール様やイールトさんが私との間に入ると、あっさり離れてくれるようになった。

 そんなわけでその日以降私は、昼休みや教室移動の合間、放課後に補習を終えた後などに第一王子を探しに行く事が出来たんだけれど。どうしてか、出現ポイントという場所に行っても、第一王子と会えなかった。

(おかしいなぁ。場所は間違ってないはずのに。またこれも、ゲームと変わってるのかな?)

 私が今いるのは、魔法薬の授業で使う温室そばにある木の下だ。生垣と温室に挟まれてちょうど死角になっているこの場所に、第一王子は息抜きのために一人でいる事があると、アルフィール様から聞いていた。

(でも他の人たちは、ちゃんと出現ポイントにいるんだよね……。第一王子だけ、なんでいないんだろう?)

 騎士団長の息子のゼリウス様は、剣の素振りが出来る訓練場。宰相の息子のジェイド様は図書室。魔導士団長の息子のラステロくんは、魔道具実験室が出現ポイントになっている。もしかすると第一王子も誰かと一緒にそっちにいるのかと思って見に行ったりもしたけれど、それぞれの攻略対象しか見つけられなくて。やっぱり第一王子と会う事は出来なかった。
 ちなみにミュラン兄さんは、屋敷で会えるからか出現ポイントは特にないそうだ。

(確か兄さんと第一王子は同じクラスだったはずだから、二年生の教室に行けば第一王子にも会えるんだろうけど……。さすがにそんな場所で話しかけられないしなぁ)

 第一王子だって、私に何か話したそうにしてた。『続きは近いうちに』って言ってたから、避けられてるって事はないはず。

(第一王子がいつもどこにいるのかラステロくんなら知ってそうだけど、聞くわけにもいかないし)

 ああでもないこうでもないと、色々考えたりもしたけれど。やっぱり第一王子に会えないまま、あっという間に一週間が終わってしまった。

 そうして迎えた、学園の休日であるソイルの日。私はリジーと二人で、メギスロイス公爵家を訪れた。
 本当なら、学園がお休みの日はイールトさんが子爵家に来て、マナーを教えてくれる予定だったけれど。ずっと第一王子と会えなかったから、一度集まって話をしようと約束していた。

「いらっしゃい、シャルラさん」
「こんにちは、アルフィール様。お招き頂きありがとうございます。あの、これお土産です」
「まあ、何かしら」
「この前話してた、バゲットサンドです。私が作ったんですけど、パンは親父さんが焼いてくれたものですから。私が働いてたお店の味に近いはずです」
「ありがとう。お昼に頂きましょう。イールト、受け取っておいて」
「はい、お嬢様」

 ここは学園じゃないから、今の私はドレス姿。それにメイドのリジーもいるんだから、貴族令嬢としては荷物を自分で持っちゃいけないんだけれど。私の手作りだからどうしても自分で運びたくて、バゲットサンドを入れたバスケットは私が持ってきていた。
 イールトさんに直接籠を手渡せば、どことなくイールトさんの頬が緩んでいて。お昼を楽しみにしてくれてるのかなって、ちょっぴり嬉しくなった。

 そうしてアルフィール様の向かいに座ると、紅茶を飲みながらお互いに情報を交換していった。私が動けるように、アルフィール様とイールトさんはあの手この手でラステロくんを引き止めてくれてたから、じっくり話す機会は今日までなかったんだ。

「そう。シャルラさんは殿下のお姿すら、一度も見ていないのね」
「はい、そうなんです。だから二年生の教室に行くしかないのかなって思ってたんですけど。そもそも出現ポイントって、どのぐらいの頻度で会える場所なんですか?」
「最低でも週に一度は会えるはずなの。毎日違う攻略キャラと話す事だって可能だったから」
「そうですか……」
「殿下は授業が終わるとすぐ教室を出ているようだから、姿ぐらい見てもいいはずなのだけれど。イールトは、何か分かったかしら? 聞き込みをしていたわよね?」
「調べていますが、今の所どこへ行かれてるのかは分かっておりません。お昼もいつものサロンにいらっしゃらないようですね」
「まあ、珍しい。サロンにもいらっしゃらないなんて」

 基本的に学園でのお昼は学食のホールで食べるけれど、サロンを借りて食べる事も出来る。第一王子は王族だから、いつもは側近候補の人たちとサロンで食べていたそうだ。
 教室を出ていて、サロンにもいないなんて。第一王子はどこに行ってるんだろう?

「ラステロくんに聞いたら、第一王子がどこにいるか分かるでしょうか」
「そうね。側近候補だから知ってるとは思うけれど、直接聞くのはやめた方がいいわ。少し大人しくなったように見えるけれど、気を許さない方がいいもの」
「え……そうなんですか?」
「ええ。気付いていないの? あの子がシャルラさんを見る目、かなり危ないわ。好感度の上がり方は本当におかしくなってるわね」

 ラステロくんの目が危ない? 警戒されてるって事かな。『嫌い』って言ったの、気にしてないように見えたけど、実はまだ怒ってるのかもしれない。

「うーん。それなら、どうすればいいんでしょう? 二年生の教室からどこに行くのか、後をつけてみるとか?」
「それも無理ね。ゼリウスは気配に敏感だし、魔法を使えばラステロに気付かれてしまうもの。それにきっと、わたくしとイールトが殿下を探っているのを、ジェイドがそろそろ気付くはずだわ」

 アルフィール様はため息混じりに話すと、憂うように目を伏せた。アルフィール様が無理っていうなら、無理なんだろう。

 それならやっぱり、向こうから話しにきてくれるのを待つしかないのかな。もしラステロくんと仲良く出来るなら、手紙を渡してもらえるよう頼んでみるとか?
 でも気を許さない方がいいって言われたばかりだし、それを提案するのもちょっとね……。それに、何で私が第一王子と会いたいのか、ラステロくんに説明もしなくちゃいけなくなるし。うーん、困った。

 私とアルフィール様、イールトさんやリジーも一緒になって考えてみるけれど、第一王子とまた会う良い方法は何も浮かばない。
 するとそこへコンコンと扉が叩かれ、公爵家の執事長さんが顔を出した。

「失礼いたします。お嬢様、殿下がお越しになられました。こちらへお通ししてもよろしいでしょうか」

 ん? 何か今、おかしな言葉が聞こえた気がする。執事長さん、『殿下』って言った?

 ぽかんとしたのは、私だけじゃなかったみたいで。アルフィール様が唖然とした様子で立ち上がった。

「ちょっと待って。今、誰が来たって言ったの?」
「私だよ、アルフィール。お邪魔させてもらうね」
「やっほー、フィーちゃん。わあ、シャルラちゃん、ドレス姿も可愛いね!」
「失礼します、アルフィール嬢」
「先触れも出さず、突然すみません」

 執事長さんの後ろから、優雅な微笑みを浮かべた第一王子と、ニコニコ笑うラステロくんが当たり前のように堂々と入ってきて。続けてやって来たゼリウス様はキリッと挨拶して、ジェイド様が苦笑を浮かべた。……って、何で⁉︎
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