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第1章
その5
しおりを挟むナナが仕立て屋を呼んでもらっている
間にすぐにリリアは着ているドレスを
自ら脱ぎ、コルセットをはずしてから
動きやすいデイドレスに着替えた。
初めて脱ぐそれは思ったよりも
複雑で少し手こずったものの
なんとか自分一人で脱げたことに
リリアは綻んだ。
そんなリリアを戻ってきた
ナナが驚いた。
「お、嬢様…ご自分で脱がれたのですか?」
リリアはナナが侍女になってから
身支度の世話はずっとナナに任せていた。
だからまさかリリア自らドレスを
脱いだ事がナナには驚愕だった。
「これからはなるべく自分で着替えれるようにするわ。ナナには多分今よりもっと仕事が増えるかもしれないし…だからできることは自分でしたいの。」
自分の夢のためとはいえ
ナナにはこれから色んなことを
お願いするだろう。
今ですら忙しいのにさらに
ナナの負担を少しでも減らしたいと思い
リリアは自分でできることは
自分でやりたいと思った。
「リリア様…」
ナナは躊躇したが自分を思ってくれる
リリアに感謝する。
(今日のリリア様はなんだか変だわ。でもやっぱり私の主がリリア様で本当に良かった。)
どこかの貴族令嬢は平気で
自分の気に食わないことがあると
頬を打ったり、侍女になど
一つも恩情などかけたりしないと聞く。
リリアはナナ以外の使用人や
下っ端の下っ端。
料理人見習いにまで優しく接している。
ナナはそんな心優しいリリアが自慢の主であった。
「ところでリリア様。よーふく?と言うのはどう言うものでしょうか?」
「ああ、洋服ね。洋服。簡単に言うとドレスじゃない召し物かな?」
顎に人差し指を当てて思案する顔をしながらリリアはナナに洋服の説明をした。
「ドレスじゃないお召し物ですか?
メイドが着るようなワンピースとかでしょうか?」
「そうね。たしかにワンピースも洋服だわ。でもワンピースじゃなくてもう少し現代風というか…」
ナナが今着ているのは
襟元は白の丸襟でハルベルト家の名が
赤の糸で刺繍されている。
首まできっちり締めれる前ボタンで
足首より少し上のワンピースに白の腰エプロン。
その腰エプロンの右下の端にも
同じくハルベルト家の名が赤の糸で刺繍が施されていた。
リリアはナナの着ているお着仕せを
下から上までジロジロとみる。
ナナはその目に居たたまれなさを感じつつもリリアの言葉に疑問を抱く。
今日のリリアはナナにとって不思議で仕方なかった。
「げ、んだふう???」
リリアの言葉につい首を傾げる。
「あーえっと。んー。…まぁとにかく私閃いたの!」
リリアは説明するのが難しいと考えて
言葉を曖昧に濁す。
そして扉付近に立っているナナを背にして
窓際にある猫足の机の前まで行き、
紙に羽ペンで何かを書き始める。
数分後にその紙を持ってナナの前までに
戻るとナナの目線に合わせて
その紙を見せてきた。
ナナはまじまじとその紙をみる。
「これは…なんでしょうか?」
訝しく思いつつリリアの顔と紙を
交互に見てナナは顎に手を当て
首を傾げた。
「これはね。そのTシャツよ!」
決して上手くはない絵ではあるが
リリアはとっても上手く描けたと思っている。
リリアが描いたいたものは
紛れもなく現代の日本でよくみる
Tシャツだ。
「ちなみにこれは上半身のみなの。」
「下はないんですか?」
「下はまぁ、今はないかな。
とりあえずこれだけを着て寝たいの!」
「…これは寝着でしょうか?」
「人それぞれかな。外でも着れるし寝着にもなるし。でも兼用はあんまりしないかも。」
リリアが前世で生きていた時は
学校の文化祭でみんなで作った
学祭Tシャツなどはその時しか
着なくなるため
文化祭が終われば必然と
寝巻きに早変わりしていた。
基本的に前世ではTシャツ1枚だけを
着て下は何も履かずに寝ていた。
すべすべのシーツに素足を滑らせて
寝るのが最高に気持ちよくて
夏は基本的にこのスタイルだった。
キャミソールやパジャマなどもあるけど
伸縮性があり汗対策にも適している
Tシャツが特にリリアは大好きだ。
こっちの世界での寝着は
たしかに薄生地で肌触りも悪くないけど
足首まで長いのが難点。
一枚でさらっと着れるとこはいいけども。
前世の記憶を思い出したからには
Tシャツのみで寝ることの快適さ。
まずは洋服作りの第一歩として
それからこれから忙しくなるであろうから
しっかりと睡眠が取れるように
リリアは最初に作るのはTシャツに決めた。
(後半の理由の方が実は大きかったり)
「…じゃあリリア様はこのTシャツなるものをお作りされたいということでしょうか?」
「そうよ!そのためにはまず生地に糸にミシンが必要なの。それでお父様に頼んでミシンを調達したくて。」
「なるほど。このTシャツ?なるものがどういうのかよくわかりませんが
とにかくやってみましょう!」
「ありがとう!ナナ!」
リリアはナナの両手を取り
破顔してお礼を言った。
そしてしばらくしてから
ノックの音がして
使用人の一人が仕立て屋が到着したという知らせが届いた。
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