王太子殿下はTシャツを捲りたい。

平山美久

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第3章

その11

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次の日のお昼もリリアはエリックと一緒にいた。

二人で会話を楽しんでいたが
リリアはふとエリックの眼鏡と髪の毛が気になった。

隣に座っているエリックに手を伸ばしてエリックの眼鏡を外して前髪をあげる。

前髪を上げるとそこには見目麗しい姿が
顕になる。


「まぁ!」

リリアは感慨深げにこえをあげた。

そんなリリアの突然の行動に
エリックは驚いてリリアを凝視する。

数度瞬きをしてリリアと近く
目を合わせていた後、
途端に悲痛に顔を歪ませて、
前髪を上げていたリリアの手を掴むと
すぐに顔を隠してしまう。

「どうして隠すのよ!綺麗な瞳なのに!」

「綺麗なんかじゃないです!」

「そんなことないわ!とっても綺麗だもの!もう一度見せて!」

リリアはそういうと今一度エリックに
近づいた。

エリックは下唇を噛みつつも
リリアに根負けしてしまい
恐る恐るといった風に
ゆっくり顔を上げた。


「わぁ!やっぱりあなたの瞳とっても綺麗ね!」

分厚い眼鏡の奥に隠されていた
翡翠色の瞳は純粋さを失わずに
澄んだようにキラキラしている。

この国ではあまり見かけない瞳の色だ。


「…変じゃないですか?」

「変?別に。とっても素敵だわ!」

リリアはそう微笑むと
エリックは少しだけホッとしたように
息を吐いた。

「この国にはこの瞳の色は滅多にいないですから…。」

「そうね。隣国にも滅多にいないものね。」

「そうなんです。…この瞳のせいで色々あったもので…。」

そう言ってエリックは再び
メガネをかけ直す。

「そうだったの…。ごめんなさい勝手に見て…。」

軽率な行動にリリアは反省して
眉尻を下げ肩を竦ませた。

エリックはそんなリリアに触れようとして慌てて手を引っ込める。

「いえ、少し驚いたけどリリアは怖がらずにいてくれたのがとても嬉しかったので。気にしないで?」

そう言って分厚い眼鏡の奥の瞳は
ふんわりと優しく微笑んだ。

「リリアは変わってますよね。」

「なによ急に。」

自分が変人だというのか。と
少しだけムッとして唇を尖らせる。

「こんな末端貴族の子息に優しいだけでなく差別もしないんだから。リリアは変わってますよ。」

「当たり前でしょ?身分とか見た目とか関係ないでしょ」

なにを当たり前のことをと思い
言い返せばエリックは
はあっとため息を吐き

「身分なんて関係ないか…。」

ボソッと呟いたけれど
リリアは聞き取れなかった。

それからエリックは黙ってしまって
気づけばいつのまにか次の授業が
始まる時間になっていた。

リリアはそろそろ教室に戻るねと言って図書館を後にした。







 
朝いちでお父様からミシンが今日の午後に届くと言うことを聞いたリリアは
一日休もうとしたら怒られたのでしぶしぶ学園に行く。

この前みたいに途中で帰ってきたら怒るというので
どうしようかと考えるもどうしても気になる。

午前だけ受けて午後は早退しようと決めたリリアは昼休みに図書館に行き
エリックに午後の授業のノートを
とって欲しいとお願いしにきていた。

変わりに彼の課題を見てあげることになった。

こうほぼ毎日一緒にいるとリリアはエリックが見た目のわりに怠慢だということに気づく。

エリックならちゃんと課題を
済ませていそうなのに
全然してないことを知ったとき
驚きを隠せなかった。

なのでおそらく今日も課題をしていないのだろうと声をかけたら
案の定してないかった。

リリアは昼休みの時間を
割いて熱心に彼に課題を教えた。

「だからね。ここはほらこうして…そう!…エリックやればできるのにどうしてしないの?」

エリックは覚えがいいのか
少し教えただけですんなりと解けていく
自分が教えなくてもあっという間に
終えれるはずなのにと訝しむ。

「い、忙しいと課題に手が回らないものでッ」

何かを誤魔化すようにいうエリックに
リリアは内心疑問符を浮かべながらも

「商会のお手伝いとか?それは忙しいかも。」

「そうです!商会の方の手伝いが多くてッ」

それなら仕方ないなって思い
再びエリックの課題を一緒に解いていった。




「じゃあ、午後の授業お願いするね!」

机に散らばった本や書類を片しながら
リリアはエリックにお願いする。

「はい!任せてください。」

「ありがとう。」

そう言ってエリックに頬んだ後
リリアは図書館を出た。

1人残ったエリックは
閉められた扉をいつまでも
見つめていた。

「本当は君と少しでも長く居たいから…なんて言えないよね。」

呟かれた言葉は1人残った
図書館にこだまするだけだった。


エリックは自分も教室に戻ろうとした時
図書館の扉が開く。
リリアが何か忘れ物でもしたのかと
扉を見やればそこには
珍しい人物が姿を現した。


「…ア…ベル殿下。」

その人物にエリックは一瞬驚いた後
すぐに紳士の振る舞いで頭を下げる。

そんなエリックに気にもせず
アベルは中に入ってくると
エリックの前まできて立ち止まる。

「顔を上げろ。」

顔をゆっくりと上げれば
アベルは剣呑な目でエリックを見ていた。

「さっきまでリリアがここにいたみたいだが、あいつは俺の婚約者だ。これ以上近づかれては困る。」

アベルは一切の迷いなく
エリックにそう告げた。

自然と握り拳を作ってしまう。


「……僕も他の男たちのように排除しますか?」


その言葉にアベルは片眉を少し上げただけで
ジッとエリックを睨みつけたままだった。
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