雨の日

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願いごと

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私の家の隣には、古びた小さな神社がある。

いつも玄関の扉をあけるとちらりと視界に入るのは、見慣れた神社と、大抵1人の老人の姿だ。

雨の日も雪の日も、必ず毎日その神社にお参りしているらしく、近所でも少し有名な「名物おばあちゃん」

子ども心に少し気になり、母にその人のことを尋ねてみたことがある。

「お一人で暮らしているみたいだし、きっとお寂しいのよ」母はさらりと言いまとめ、その表情には何だか憐れみも含まれているように見えた。

ある日の早朝、学校に向かうため家を出た。
ちらりと神社に目をやると、やはりいつもの老人の姿が見えた。

どうして急に思い立ったのか分からない。
気づくと私は、神社に向かって足を進めていた。

苔むした石段を登りきると、木々に囲まれた神社がひっそりと佇み、朱色の鳥居は少し色あせている。

背中を少し丸めて手を合わせている老人の表情は静かで、白髪は柔らかく風に揺れている。

「ねぇ、いつも何を祈っているの?」

その問いに少し間をおいて、老人は答えた。

「…お爺さんをね、忘れないようにって、願っているのよ」

私を見たその顔は、とても優しく、目は不思議と遠くを見つめていた。まるで、誰かを待っているかのように。

神さま、どうか――
あの人がいたことを、ずっと忘れずにいられますように。

その願いが心に響いて、何だか泣きそうになった。
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