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10番星 今が動くとき
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優しい空の星
10番星
「…ア…アルベーサ殿下…」
そう反応したのは、私ではなくアナスタシオだ。私は突然のことに頭の整理がついていない。なぜ、アルベーサ殿下がここに……
いつかは会わねばならないと分かってはいたものの、こんなにも早く動き出すだなんて、、
「…そんなに怖がることないだろう。ついこの前まで、私を好いていてくれたのが嘘のようだ。」
…それを言われると私は黙るしかない。
私がキルを選んだから、アルベーサ殿下はこんな風になってしまった…ということもあるのだから…
…ただ、心の中で謝るだけ…それしかできない自分に嫌気がさす。
「ヴェデ。」
不意に名前を呼ばれて、体が跳ねた。
何もなかった頃のように、会ったばかりの時のように、優しい声で『ヴェデ』なんて…呼ぶんだ。
宮殿の中での、キルベール殿下派、アルベーサ殿下派に分かれてはいるものの、やはり正妃から生まれた王子様だけある、一つ一つの仕草が、気品にあふれている。…これを見れば、宮殿の外にいる国民が、殿下を慕う理由がよくわかる。宮殿では、火花がチラつくような戦いをしていても、宮殿の外では、優しい声をした、気品あふれる、美しい王子様…でも、それが私には…
「戻ってこないか。ヴェデ。」
…ほら、言うのね。あなたが宮殿から私を追い出したのに、また取り戻そうとするのね…
「ヴェデ様っ」
小さい声で私に呼びかけるアナスタシオにやっと気づいて耳を傾ける。
「?」
「これはきっと罠ですわ。走りましょう。」
「え?」
そう言って私の手を掴み走り出すアナスタシオ。
「ご無礼をお許しくださいませ。きっと、殿下はお一人でいらしてそうですし、森の中を走り回って、遠回りをして家に帰りましょう。殿下がこの土地に慣れてるとは思えませんし、めちゃくちゃに走れば方向感覚がおかしくなるはずです。それに乗じて家に帰りましょう。」
走りながら小声でそういうアナスタシオは、守られている貴族のお嬢様というイメージを変えるほど、凛としていた。それなのに私は……後ろを、アルを見ることすらできなかった。
「ルトー。もう出てきて構わん」
「追いますか?アルベーサ殿下。」
隠れていた木々から顔を出しながら聞くルトー。
彼は、俺の周りにいる内官の中で一番優秀で、リラン先生よりも、心を許せる、家族のように育ってきた存在。
「いや…これ以上の深追いは危険だ。構わん。放っておけ。何処にいるかは、もう掴めているのだからな。」
「かしこまりました。」
「…ルトー。どう思う。」
何を…とは聞かなかった。
「…ヴェデーアスティーヌ様が、殿下のお側におられるのは、もとより決まっていたことに御座います。負い目を感じるはことはございません。」
「…そうか。…母上は、今の俺を愛してくれるだろうか…」
母上…隣国から嫁いできたソニア・オリウィシュ王妃。母上がなくなってから、王妃は立てておらず空位のまま。ヴェデ、君をその地位に置きたい。
母上は、俺の顔を見て、話しかけてくれたことも、褒めてくれたこともない。それが普通なのだと、育ってきた。王子だから、庶民とは違うのだと。『愛される』そんなもの、俺は知らない。助けを求めて周りを見ても、父上は、『お前には王になる器量がない』そう言われ、内官や、兵士、女官でさえ、兄上か俺で派閥を作り、誰1人信用できない。人から愛される…母上…あなたは私を少しでも愛おしいと思ったことがありますか…『ある』そう言ってくれるなら、俺は…こんなことは…
「アルベーサ殿下、先ほどシャレードから連絡が入りました。国王陛下が殿下をお待ちしているので急ぎ王宮に戻られますようと。」
シャレードは、俺の警護はもちろん、ルトーと共に情報収集もする忍びだ。真っ黒なマントに身を包み、この国に珍しく、瞳は純黒。幼い頃から共に育って来た、姿は見えずとも、いつだって俺を警護する。命をかけて。きっと今、ここに矢が飛んで来たら、シャレードは身を呈して俺を守るだろう。…シャレードは、父上の息子、俺の弟でもあると言うのに…。シャレードは兄上と同じ側室の息子だった。いや、兄上の母君、フローラ様より、もっともっと、ずっと下の地位にいる下女。その女と父上の間に生まれたのがシャレード。本来なら、兄上の派閥、俺の派閥、そしてシャレードの派閥もあるはずだったが、シャレードが国王陛下の血を引く人間であることを王室は隠し、世間に公表されていない。兵士はおろか、内官でさえその事実を知っている人は数少ない。この国の5分の4以上は、俺と兄上の2人の王子しか存在しないと思っている。側室から生まれた兄上でさえ、王位継承が俺より低いのだ。身分を徹底しているこの国で、下女だった女の息子をたとえ国王陛下の血が通っていようと、王位につけるのは許されることではないのだろう。シャレードの母親の一族は代々下男下女、簡単に言えば、賎民のようなもの。賎民に対する国民の目はまだまだ冷たい。ヴェデの一言で、少しずつ動き出したが、ちょっとするとみんな元どおりの生活になってしまう。俺の初めての仕事だったんだが…賎民の暮らしを改善させることで、父上の視線を俺の方に向かせたかったが、そうはいかなかった。リラン先生も、あざ笑うかのような目でこっちを見ていた。上手くいったのは最初だけ。所詮、俺は出来損ないなのだ…。
母上。私の母になっても、私にちっとも話しかけてくれなかった母上…私はあなたを深く愛しています。そして、深く憎んでいます。
「ルトー。馬を回せ。」
「はっ。」
「王宮に戻る。」
私たちはその頃やっと家にたどり着いていた。
そんなことは何も知らず、母さんは夜ご飯のスープを作って明るく迎えてくれた。いつもならホッとするこの光景も、今はどこから間者が見ているかわからない状況。母さんを守らなきゃ。
「母さん!父さんは?!」
「父さんなら、今店に仕立てた服を置きに行ってるところよ。どうしたの?そんなに血相変えて…」
「キルは?!アルベーサ殿下が動き出したの!父さん、早く帰ってこないと…」
「アルベーサ殿下が?!キルベール殿下なら奥の部屋にいらっしゃるわ。」
母さんの一言に慌てて奥の部屋へと走った。
母さんも慌ててる。この状況で慌てない人なんて…リランくらい。
ものすごい勢いで奥の部屋の扉を開けると、キルが待ってましたと言わんばかりに、地図を広げ、兵の長ともに、話し合っているところだった。
「キル!大変よっ!」
「わかってる。アルベーサが動き出したんだろう。イザベルが討たれた時からそろそろ動き出すと予測はしていたが……予想以上に早いな。」
「キルベール殿下。兵を増員いたしましょうか。」
リランもすかさず策を練る。
「いや…アルベーサにはこちら側の兵力を低く見積もってもらった方が良い。いざとなれば、陛下が援護してくれるだろう。」
こんな時…何もできない自分が嫌になる。
当たり前だけど、キルやリランのように戦の経験があるわけもなくその分知識もない。何もできないまま、見ているだけ…
「…そんな顔をするな。」
「…キル?」
「私とヴェデはいつまでも一緒だ。安心していなさい。」
「……」
…あれ?…そう言えば…なんで…?
「…キ、キル?…いま、気になったんだけれど、こんな時にごめんなさい。いいかしら?」
「もちろん。今この状況なら、少しの疑問であろうと、この先役にたつかもしれない。なんでもどうぞ。」
「ありがとう。…あのね。アルベーサ殿下はなぜ、私たちに危害を加えようとしているの?私が王宮から出ていけば、何一つ問題なく収まる話なのに、殿下はなぜ、私たちの命をも奪おうとするのかしら。一度、殿下は王位が欲しいのだろうかと思ったんだけれど、殿下の王位継承権は第1位。キルよりも高いのだから、何も恐れることなんてないのに…それに、今日殿下は私に戻ってこいとおっしゃった。何故なのかしら…今頃な質問でごめんなさい…」
…しんっと静まり返ったこの部屋の中で沈黙を破ったのはリランだ。
「それは…アルベーサ殿下の母君のソニア王妃陛下の影響が大きいでしょう…」
「…ソニア…王妃陛下…亡くなったのよね。一体、ソニア様がアルベーサ殿下に及ぼした影響って…。 ソニア様ってどんな方だったの?」
「…聡明な方だったと聞いている。」
「そんな方がどうしてなの?キル。」
「…聡明だったんだ。お優しくて、お綺麗で、この国に来る前…シュヴァルト皇家にいらっしゃった頃までは…」
シュヴァルト皇国はアルトア王国と同じくらい大きな国で、人口も大差ない。長年のライバル国だったが、ソニア様がアルトア王国へお嫁にいらっしゃったから、今のところ両国の間に大きな戦いは起こっていない。私が生まれて間もない頃、ソニア様は亡くなったらしいから私はよく知らない。ただ、国王陛下がソニア様が亡くなった今も王妃陛下の地位を空位のままにしているのはそれほどソニア様は陛下に愛されていた、という証なのだろう…と思ってきたものの、アルベーサ殿下をお産みになる前にキルを産んだフローラ様が側室にいらしたのだから、そういうわけではないのだろう。
「これ。ソニア様の肖像画だよ。」
キルが首からペンダントを取り出して、それはロケットペンダントだったから、開けて中を見てみると、金髪で緑色の目をした美しい1人の女性と、金髪で控えめそうな顔で優しく微笑む女性が描いてあった。
「わっ。2人とも綺麗!…あ…こっちの緑色の目をした方がソニア様ね。それで控えめそうに笑うこの方がキルのお母様…ね!あたり?」
「正解。はっきりとした美しい容姿のソニア様と違って、ソニア様がバラだとしたら私の母はスミレだ。ソニア様は、私の母と親しくしてくれたらしい。さすが皇家生まれの皇女様だ。華やかなドレスがよくにあっている。そんな私の母と合うにも合わなそうなソニア様が優しく笑いかけてくれた、いろいろお話をしていろんなものを見た、と母は言っていた。私が生まれて、母は程なくしてソニア様に暗殺されたが…」
そうだ。忘れちゃいけない。ソニア様は、フローラ様を暗殺した張本人。その上遺体はまだ見つかっていなくて、キルはアネモネの花を育て続けて…儚い夢を…見ている。
「キルのお母様、美しい綺麗な方ね。キルにそっくり!」
「美しい?初めて言われたよ。母を美しいというなんて。」
「それはきっとソニア様の手前側室を美しいとは言いにくかっただけで、きっと王宮中の人が美しいって思ってたはずよ。シンプルなドレスが美しいフローラ様によく映える。ソニア様ももちろん美しいけれど、フローラ様はまた別の美しさよ。ソニア様は確かにバラのように華やかで誰もが美しいというけれど、フローラ様の控えめな美しさは見るものすべてを黙らせてしまうような威力!肖像画でこんなに美しいんだもの。実物はもっと美しくて、素晴らしい方だったんでしょう?」
聞いても返事が返ってこない。
「キル?どうしたの?」
そこには涙を流している顔を必死に隠すキルがいた。なんで泣いているのか私にはわからない。
「キル?どうして泣いているの?」
そう問うた瞬間、突然抱きしめられた。
突然のことすぎて頭の整理が追いつかない。
「…キ、キル?」
「………みなの者。少し部屋を退出してくれ。」
私を抱きしめたままその腕を解こうとしないキルはそういった。キルの一言に慌てて、部屋を退出していく兵士とリラン。
どさっ。最後の1人が部屋から出た瞬間、キルは私をベッドに寝かせ私の上に覆いかぶさった。
「…キ、キル?どうしたの?」
「…ごめん。今、こんな状況なのに、嬉しくてたまらない。キス、していい?」
「…え…う、嬉しいってなぜ…」
その言葉を遮るようにキルは私の唇に自分の唇を当てた。キルとのキスは初めてというわけじゃないけど、毎回緊張する…。優しくて温かい。いつも余裕そうに兵の士気を上げているキル。余裕そうに見えているだけで本心は辛いのだろう…。そう思った時、私は無意識にキルの頭を撫でていた。
「「え」」
これにはキルと私が同時に驚いた。
でも、また優しく私を抱きしめてくれた。だから私も、キルの頭を撫で続けた。
「……キル。さっき言ってた嬉しいってなんのこと?」
「…あれは…」
私を抱きしめたままキルは話し始めた。
「……母は、優しい方だった。美しい容姿をしていたのに、だからこそ、国王陛下に見初められたということを王宮中が知りながら、誰1人として、王妃様の手前、母を褒めたりはしなかった。王妃様の右に出るほどではないのだと…だが、それを一度として自分を崇めたりせず、いつだって自分を下として考え、国王陛下からの寵をもらいながらも、ただ静かに微笑む母が大好きだった。私もこうなりたいと、人を尊敬し、静かに微笑んでいるようなそんな人になりたいと思った。それでも、母は殺され、私は村で暮らすことを命じられた。…何度もソニア様を憎んだ。…でもその件にアルベーサが関与していたわけでもない。ただ、ソニア様から生まれたのがアルベーサだっただけ…私の憎むソニア様からアルベーサが生まれ落ちただけ…。そして、アルベーサもまた、幼い頃に母を亡くした。…そんなアルベーサをどうして憎める?…ヴェデには心から感謝しているんだ。…アルベーサを初めて愛してくれた女性で、そして、私の母を初めて美しいと言ってくれた女性。それは君だよ。ヴェデ。」
「…キル…」
「愛を知らないアルベーサに愛を教えてくれた。君を本当に私は愛している。」
「誰が誰を愛してるのかわけわかんなくなりそう。ふふ。…でも、いいじゃない。キルがキルだけがフローラ様を美しいと思っていればそれだけでフローラ様は不幸ではなかったはずよ。…フローラ様は美しい綺麗な心の持ち主のはずだから。」
「なぜ?」
「キルのお母様なんですもの。優しいあなたを産んだ人なのだから、心映えが綺麗な人なんだってことは明白よ。」
私はそう言い切ってから触れるような軽いキスをキルにした。キルは少し赤い顔をして私に口付けた。その後少しの間私とキルは抱きしめあって部屋から出てこなかった。
「こんな大事なときに、殿下が取り乱して涙を流すなんて。」
リラン様は何度も同じことを言っている。
「殿下だって人間ですわ。取り乱すこともあります。」
この人を見ているとなんだかイライラしてしまうわ。いつだって上から物を言うんだもの。殿下に対してだってそうよ。ローレン様はアルベーサ殿下をお慕いしていると言うのに、ローレン様の前でアルベーサ殿下の悪いところを口にしたり、ヴェデ様だってこんな状況にならなければ、アルベーサ殿下のおそばで笑っていらっしゃるはずでしたのに。リラン様が現れてから何もかもが崩れているわ。
「ずいぶんきつい物言いだな。貴族の娘がそんな口の利き方許されるのだな。」
「許されるも何も、今の私は貴族という身分の中になく、ヴェデ様にお仕えする女官です。縛られるものなどありません。それよりヴェデ様はキルベール殿下とお部屋で何をなさってるんですか?」
私が立ち上がって奥の部屋への廊下を歩こうとすると、リラン様は私の腕を掴んだ。
「行かないほうがいい。」
「は?」
「イザベルのことがあった後、まともにキスもできやしないさ。」
「…キス?どういうこと?」
「わかんないならいい。ただ邪魔するなよ。キルベール殿下とて、妃殿下が嫌がることはしないんだから。」
あ…そういうことね…。
イザベルのことがあってからお二人は、キスすらできないと…やっと2人なんだからキスくらいさせてやれって?
なんで私があなたに命令されなきゃならないのよ。
「…それと…さっきお前女官としてって言ったな。」
「…それが何?」
「女官としてなら、俺に従ってもらおう。女官は内官よりも地位は下だ。女は黙って男に従え。」
そう言いながら私の方をポンっと叩いた。
カチンッ。私の頭が何か音を立てた。その瞬間リラン様の手を振り払った。
「なんですって!?」
私がリラン様を引っぱたこうとすると、簡単に手を取られた。
「…おっと。」
その手もまた簡単に振り払った。
「…女は男に従えって…何様のつもりよっ!女は口を出すなってこと?!男と女のどこに違いがあるっていうのよっ。地位が下とか、そういうのがあるからこの国は変わらない!そう思ってる人が1人でもいるから!国は…政治は…女がいないと崩れるのよっ。私たちのいる意味は私たちが決めるの。男か女かなんて関係ない!命に代えてでも、お仕えしている方を守ることは性別関係なく通じるはずのことよ。」
「ぷっ。あはははははは…」
…な、何笑ってるのよ…この男!私が今行ったことはそんなに馬鹿らしいことだとでも言いたいのかしら。
「な、何笑ってるんですか」
「お前二重人格か?」
「え?」
「妃殿下の前での話し方と、俺の前での話し方、どっちが本物なんだ?」
「妃殿下の前での方です!あなたを前にするとイライラして話し方が変わってしまうんですっ!いつもはイザベルがいたから良かったけれど、こうして2人で話していると積もり積もった不満が爆発するんです!部屋に戻ります!」
歩き出したしとたん私の腕を掴まれた。
「待てよ。」
「何ですか。私もうあなたと同じ空気少しでも吸いたくないんですけど。」
「面白いな。お前。」
その言葉と同時に、と行っても過言ではないほど素早くお互いの唇が重なった。私は、今何が起きてどういう状況なのか理解できない。
大嫌いなあの男と私の唇が重なった?
「思った通り、こういうことは経験ないわけか。」
「…あ…あ…あ…」
「壊れた機械みたいになってるけど、大丈夫か?」
「あ…あなたねぇ!!」
引っぱたこうと手を挙げたが、またもやそれを軽く掴まれた。
「大貴族の娘に手をあげたことは詫びるが、それ以上は謝らん。好きだ。」
「…は?」
「お前が好きだ。こんな時に不謹慎かもしれないが、イザベルとカリラがくっついた。妃殿下と殿下もくっついた。次は俺とアナスタシオ。俺らのばんだ。仲良くやろうぜ。」
「絶対無理!」
何を明るい顔で言ってんだか!
「…キル…?」
長い間沈黙を通していた私とキル。私は静かに口を開いた。
「ん?」
「…こんな…アルベーサ殿下が動き出した時に…のんびりしていてもいいのかしら…」
キルはベッドから立ち上がって、ベッドのすぐそばにあるテーブルの上に置いてあったミルクをコップに入れた。そのコップを二つ持って、またベッドに戻ってきた。
「ヴェデ。はい。」
そう言ってミルクを手渡してくれた。こんなところが私には落ち着く…
「ありがとう。」
「…ヴェデは……」
「…?」
「私と…こう、のんびりするのは、あまり好きじゃないかい?」
「…え?」
「私は、ヴェデのそばに居られるだけで幸せで、2人でのんびりできてたらそれでいいと思っている。アルベーサとの争いよりも、私は君との時間を大切にして居たい。ヴェデはどうだい?…今は、何でもいい。心の内を教えてくれるかい?」
突然の言葉に私は焦った…。
でも…やっぱり私の決意は変わらないから…
「…私は…キルと同じでこんな暖かい幸せな日が続くといいなって思ってる。でも…でもね…こんな今の時間を作ってくれてるのは、キルだけじゃなくて、リランもカリラも、イザベルもアナスタシオも…みんなのおかげだって思ってる…守りたいのよ…2人だけ幸せに…なんてそんな風に私は割り切れない。私が幸せになるにはみんなの幸せがなきゃ成り立たない…。だから、私だけ守られてるなんて嫌。みんなの近くで、みんなと同じように戦いたい。私はもともと商人の娘よ。貴族のようにドレスを着ているだけじゃ嫌なの。時には古びた服で泥だらけになりながらもみんなの役に立ちたい…キル…私に役目をちょうだい…お願い!」
王宮殿は異様に騒がしい。
陛下の部屋へと向かう途中なのに、もう何度も女官や、内官にぶつかった。こんなに騒がしく動いているなんて、何かあったのか?
「きゃっ!」
ドン!
また1人の女官にぶつかった。女官はそのまま床に転んでしまった。
「大丈夫かい?」
私も慌てて、自分の手を彼女に向ける。彼女はその手を優しく取り、慌てて頭を下げた。
「申し訳ございませんっ!王太子殿下…」
「…あれ…?君は、」
彼女の服装を見ると、どうやら女官ではない…服装的に、高い地位にある貴族の娘か。
「女官ではなかったのか。客人か?怪我はしていない?」
「あ、はい!怪我などしておりません。王太子殿下こそ、どこかお怪我は…?」
「私は平気だよ。」
「よかった!…あ!名前を名乗っていませんでした。私、ローレン…あ、いえ…シャーロット・サーシャと申します。」
「あ、ヴェデの…」
「何度か、ヴェデを通じてお会いした事がございましたね。」
「そういえば、君は、サーシャ公爵のご令嬢だったのか。」
「父をご存知でございますか?」
「もちろん。高い地位にいる内官だからね。」
「嬉しゅうございます!」
そう言って笑う顔は、まるで太陽だ。私はこのように笑うヴェデがことの外好きだった。私の好きだった頃のヴェデのよう…
「…シャーロット…と言ったね」
「…え?あ、はい!」
「覚えておくよ。今度2人でお茶でもしよう。」
「ほ、本当にございますか?」
「…ああ。君と、話をしたい。」
「ありがとうございます!私は幸せ者でございますね!」
無邪気に何かを喜んで笑顔でいる彼女が、ヴェデのようで気持ちが落ち着く…。
「それよりも、なぜこんなに宮殿が騒がしいか知ってるかい?さっきからものすごいことになってるが…」
「…あ…それが…」
「馬鹿者!!!!」
ガン!
国王陛下もとい、父上の部屋に入った瞬間俺は殴り飛ばされた。
「アルベーサ殿下!お怪我は…」
駆けつけたルトーによって立ち上がった。
「…サーシャ公爵の令嬢から聞きました…テリヌピア侯爵からの抗議があったと…」
「知っていたのなら、話は早い。なぜこんな事をした…答えろ…」
「国王陛下!私は!」
ガシャンッ
父上から投げられたグラスが俺の顔に当たって頬が切れる。何故だ…父上…
「お前がやったのは知っている!テリヌピア侯爵の令嬢を殺そうとしたことは…もとより内通者からの証言で知っている…何故だ…」
「…内通者…」
内通者…誰だ。この事を父上に話したのは…違う!俺ではない!俺がやったわけでは…
「テリヌピア侯爵家は、貴族の中でも力の強い家柄だ…王家でさえ、簡単にあしらうことはできん!何故こんなことをした…答えろ!」
「私ではありません。指示したのも私じゃありません…全ては内官の一存で行ったことです。」
そうだ。俺がやったわけではない。あの内官の勝手な考えだ。私は血を流さず兄上と戦うことにしていたのに…
「そう言っている間は…お前は王にはなれん。王になる器量もないままだ。もう…出て行け…なんと言おうと、この国の次期王はキルベールだ…もう二度と私の顔に泥を塗るな!お前は王族なんだ!馬鹿馬鹿しいことばかりして手を煩わせるな!キルベールのようになりたいのなら、まずは人間性を手に入れろ!お前はまだまだ何にもなれん!正室の息子だというのに…こんな人間に育ってしまった。ソニアは何をしていたんだ…」
母上のことを…今、なんと言ったんだ…この男は…
「母上は悪くない…母上のことを悪くいうことだけは許さない!…母上はお前なんか好きじゃない。父上よりもっと好きな奴がいたのに、政略的な結婚をさせられて、母上はずっとそいつの迎えを待っていた。そいつは迎えに行く直前に死んだんだ…父上…あなたの刺客によって…盗賊なんかじゃない…あなたの…あなたのっ…あなたの命令によって動いた殺し屋がっそいつを殺した…母上を自分のものにするために…許さない。私はあなたを許さない。そいつと一緒に母上の心も殺したあなただけは一生許さない。…いつか必ず母上の仇は…」
初めて、父の前で自分の感情を吐き出した。…もっと早く、もっともっと何年も早く吐き出していれば、ことはこうも大ごとにもならなかったことだろう…
「…今、お前がソニアのことで何を言っていたか、よくわからないが。今のお前に一つ知らせておきたいことがある。」
いつまでも真相を話してはくれない。母上の恋人を殺したくせに。
でも。今は…王子としてこの場にいなくては…
「なんですか。国王陛下。」
「この件についての専属の事務と、護衛を行う人間を雇った。お前にも紹介しておこう。入れ。」
専属の事務と、護衛を行う?事件の収集をする奴をつける…ってことか?
「失礼します。国王陛下。アルベーサ殿下。」
聞き覚えのある愛しい人の声…まさか…いや、そんなことあるはずがない。
俺の目の前には、貴族が着る紳士用の服をまとったヴェデがいた。
「女だが、キルベールの推薦だ。きっと役に立つ。」
「…ど、どうして、ヴェデが…国王陛下の部屋に…」
慌てて、こんなことしか言えない…紳士用の服を着て髪の毛を後ろに一つに束ねて、前髪も上にあげた美しい女になって…ヴェデが目の前にいる。…ただ守られているだけだったヴェデが、一人でそこに立っている…
「お前、何を言ってる。ヴェデなんて名前ではないぞ。この女性は…」
「はじめましてアルベーサ殿下。グレース・ヴェネツェラと申します。キルベール殿下の推薦のもと、参上仕りました。お見知り置きを。」
キルからもらった私の仕事。
『ヴェデにしかできない仕事だ。でも危険だよ。それでも行くのか?』
最後までずっと心配してた…ふふ。そういうあなたが大好きなのに…
『大丈夫ですわ。殿下。神様が守ってくださいます。それに何より、殿下だけ危険な目に合うなんて割りに合いませんわ。私も、殿下のお役に立ちたいのです。大変な時は二人一緒です。離れていても、心は一緒です。すぐたくさんの情報を持って帰ってまいります。それに…宮殿では会えますわ。グレース・ヴェネツェラとして、頑張ってまいります。愛してます。殿下。』
家を出る最後の時、私らしくなく敬語を使いたい気分になった。この先、王宮にいる間は敬語を使って話さねばならないのだから…当然だ。でも、キルはそれを嫌がった。
『もしかしたら、これが最後かもしれないんだから……敬語をやめて、ヴェデでいてくれ…』
そう言って私を抱きしめた。宮殿はアルの味方がいっぱいだ。私はすぐ殺されるかもしれない。でも…迷ってなんかいられない。ローレンに教えてもらった護身術をこんなところで使うとは思っていなかったけど…それがまた、私を守ってくれる。
王宮殿に入ったら、いつもいた、イザベルも、アナスタシオも、リランも、他の人たちもみんないない…ローレンにも会えない…
ヴェデーアスティーヌ・ステファンから宮殿入りして、オリビア・ミッシェルになって、次は、グレース・ヴェネツェラ。キルが精一杯考えてくれた名前。大好きなキル。
『大切でたまらないキル…愛してる。ちょっとの間だけ…離れていることを許して…』
…アルベーサ殿下が動き出した今、私もまた、動き出すときのなのかもしれない。私は変わるんだ。
2018年7月7日
アルベーサの発言を重点的に修正しました。
10番星
「…ア…アルベーサ殿下…」
そう反応したのは、私ではなくアナスタシオだ。私は突然のことに頭の整理がついていない。なぜ、アルベーサ殿下がここに……
いつかは会わねばならないと分かってはいたものの、こんなにも早く動き出すだなんて、、
「…そんなに怖がることないだろう。ついこの前まで、私を好いていてくれたのが嘘のようだ。」
…それを言われると私は黙るしかない。
私がキルを選んだから、アルベーサ殿下はこんな風になってしまった…ということもあるのだから…
…ただ、心の中で謝るだけ…それしかできない自分に嫌気がさす。
「ヴェデ。」
不意に名前を呼ばれて、体が跳ねた。
何もなかった頃のように、会ったばかりの時のように、優しい声で『ヴェデ』なんて…呼ぶんだ。
宮殿の中での、キルベール殿下派、アルベーサ殿下派に分かれてはいるものの、やはり正妃から生まれた王子様だけある、一つ一つの仕草が、気品にあふれている。…これを見れば、宮殿の外にいる国民が、殿下を慕う理由がよくわかる。宮殿では、火花がチラつくような戦いをしていても、宮殿の外では、優しい声をした、気品あふれる、美しい王子様…でも、それが私には…
「戻ってこないか。ヴェデ。」
…ほら、言うのね。あなたが宮殿から私を追い出したのに、また取り戻そうとするのね…
「ヴェデ様っ」
小さい声で私に呼びかけるアナスタシオにやっと気づいて耳を傾ける。
「?」
「これはきっと罠ですわ。走りましょう。」
「え?」
そう言って私の手を掴み走り出すアナスタシオ。
「ご無礼をお許しくださいませ。きっと、殿下はお一人でいらしてそうですし、森の中を走り回って、遠回りをして家に帰りましょう。殿下がこの土地に慣れてるとは思えませんし、めちゃくちゃに走れば方向感覚がおかしくなるはずです。それに乗じて家に帰りましょう。」
走りながら小声でそういうアナスタシオは、守られている貴族のお嬢様というイメージを変えるほど、凛としていた。それなのに私は……後ろを、アルを見ることすらできなかった。
「ルトー。もう出てきて構わん」
「追いますか?アルベーサ殿下。」
隠れていた木々から顔を出しながら聞くルトー。
彼は、俺の周りにいる内官の中で一番優秀で、リラン先生よりも、心を許せる、家族のように育ってきた存在。
「いや…これ以上の深追いは危険だ。構わん。放っておけ。何処にいるかは、もう掴めているのだからな。」
「かしこまりました。」
「…ルトー。どう思う。」
何を…とは聞かなかった。
「…ヴェデーアスティーヌ様が、殿下のお側におられるのは、もとより決まっていたことに御座います。負い目を感じるはことはございません。」
「…そうか。…母上は、今の俺を愛してくれるだろうか…」
母上…隣国から嫁いできたソニア・オリウィシュ王妃。母上がなくなってから、王妃は立てておらず空位のまま。ヴェデ、君をその地位に置きたい。
母上は、俺の顔を見て、話しかけてくれたことも、褒めてくれたこともない。それが普通なのだと、育ってきた。王子だから、庶民とは違うのだと。『愛される』そんなもの、俺は知らない。助けを求めて周りを見ても、父上は、『お前には王になる器量がない』そう言われ、内官や、兵士、女官でさえ、兄上か俺で派閥を作り、誰1人信用できない。人から愛される…母上…あなたは私を少しでも愛おしいと思ったことがありますか…『ある』そう言ってくれるなら、俺は…こんなことは…
「アルベーサ殿下、先ほどシャレードから連絡が入りました。国王陛下が殿下をお待ちしているので急ぎ王宮に戻られますようと。」
シャレードは、俺の警護はもちろん、ルトーと共に情報収集もする忍びだ。真っ黒なマントに身を包み、この国に珍しく、瞳は純黒。幼い頃から共に育って来た、姿は見えずとも、いつだって俺を警護する。命をかけて。きっと今、ここに矢が飛んで来たら、シャレードは身を呈して俺を守るだろう。…シャレードは、父上の息子、俺の弟でもあると言うのに…。シャレードは兄上と同じ側室の息子だった。いや、兄上の母君、フローラ様より、もっともっと、ずっと下の地位にいる下女。その女と父上の間に生まれたのがシャレード。本来なら、兄上の派閥、俺の派閥、そしてシャレードの派閥もあるはずだったが、シャレードが国王陛下の血を引く人間であることを王室は隠し、世間に公表されていない。兵士はおろか、内官でさえその事実を知っている人は数少ない。この国の5分の4以上は、俺と兄上の2人の王子しか存在しないと思っている。側室から生まれた兄上でさえ、王位継承が俺より低いのだ。身分を徹底しているこの国で、下女だった女の息子をたとえ国王陛下の血が通っていようと、王位につけるのは許されることではないのだろう。シャレードの母親の一族は代々下男下女、簡単に言えば、賎民のようなもの。賎民に対する国民の目はまだまだ冷たい。ヴェデの一言で、少しずつ動き出したが、ちょっとするとみんな元どおりの生活になってしまう。俺の初めての仕事だったんだが…賎民の暮らしを改善させることで、父上の視線を俺の方に向かせたかったが、そうはいかなかった。リラン先生も、あざ笑うかのような目でこっちを見ていた。上手くいったのは最初だけ。所詮、俺は出来損ないなのだ…。
母上。私の母になっても、私にちっとも話しかけてくれなかった母上…私はあなたを深く愛しています。そして、深く憎んでいます。
「ルトー。馬を回せ。」
「はっ。」
「王宮に戻る。」
私たちはその頃やっと家にたどり着いていた。
そんなことは何も知らず、母さんは夜ご飯のスープを作って明るく迎えてくれた。いつもならホッとするこの光景も、今はどこから間者が見ているかわからない状況。母さんを守らなきゃ。
「母さん!父さんは?!」
「父さんなら、今店に仕立てた服を置きに行ってるところよ。どうしたの?そんなに血相変えて…」
「キルは?!アルベーサ殿下が動き出したの!父さん、早く帰ってこないと…」
「アルベーサ殿下が?!キルベール殿下なら奥の部屋にいらっしゃるわ。」
母さんの一言に慌てて奥の部屋へと走った。
母さんも慌ててる。この状況で慌てない人なんて…リランくらい。
ものすごい勢いで奥の部屋の扉を開けると、キルが待ってましたと言わんばかりに、地図を広げ、兵の長ともに、話し合っているところだった。
「キル!大変よっ!」
「わかってる。アルベーサが動き出したんだろう。イザベルが討たれた時からそろそろ動き出すと予測はしていたが……予想以上に早いな。」
「キルベール殿下。兵を増員いたしましょうか。」
リランもすかさず策を練る。
「いや…アルベーサにはこちら側の兵力を低く見積もってもらった方が良い。いざとなれば、陛下が援護してくれるだろう。」
こんな時…何もできない自分が嫌になる。
当たり前だけど、キルやリランのように戦の経験があるわけもなくその分知識もない。何もできないまま、見ているだけ…
「…そんな顔をするな。」
「…キル?」
「私とヴェデはいつまでも一緒だ。安心していなさい。」
「……」
…あれ?…そう言えば…なんで…?
「…キ、キル?…いま、気になったんだけれど、こんな時にごめんなさい。いいかしら?」
「もちろん。今この状況なら、少しの疑問であろうと、この先役にたつかもしれない。なんでもどうぞ。」
「ありがとう。…あのね。アルベーサ殿下はなぜ、私たちに危害を加えようとしているの?私が王宮から出ていけば、何一つ問題なく収まる話なのに、殿下はなぜ、私たちの命をも奪おうとするのかしら。一度、殿下は王位が欲しいのだろうかと思ったんだけれど、殿下の王位継承権は第1位。キルよりも高いのだから、何も恐れることなんてないのに…それに、今日殿下は私に戻ってこいとおっしゃった。何故なのかしら…今頃な質問でごめんなさい…」
…しんっと静まり返ったこの部屋の中で沈黙を破ったのはリランだ。
「それは…アルベーサ殿下の母君のソニア王妃陛下の影響が大きいでしょう…」
「…ソニア…王妃陛下…亡くなったのよね。一体、ソニア様がアルベーサ殿下に及ぼした影響って…。 ソニア様ってどんな方だったの?」
「…聡明な方だったと聞いている。」
「そんな方がどうしてなの?キル。」
「…聡明だったんだ。お優しくて、お綺麗で、この国に来る前…シュヴァルト皇家にいらっしゃった頃までは…」
シュヴァルト皇国はアルトア王国と同じくらい大きな国で、人口も大差ない。長年のライバル国だったが、ソニア様がアルトア王国へお嫁にいらっしゃったから、今のところ両国の間に大きな戦いは起こっていない。私が生まれて間もない頃、ソニア様は亡くなったらしいから私はよく知らない。ただ、国王陛下がソニア様が亡くなった今も王妃陛下の地位を空位のままにしているのはそれほどソニア様は陛下に愛されていた、という証なのだろう…と思ってきたものの、アルベーサ殿下をお産みになる前にキルを産んだフローラ様が側室にいらしたのだから、そういうわけではないのだろう。
「これ。ソニア様の肖像画だよ。」
キルが首からペンダントを取り出して、それはロケットペンダントだったから、開けて中を見てみると、金髪で緑色の目をした美しい1人の女性と、金髪で控えめそうな顔で優しく微笑む女性が描いてあった。
「わっ。2人とも綺麗!…あ…こっちの緑色の目をした方がソニア様ね。それで控えめそうに笑うこの方がキルのお母様…ね!あたり?」
「正解。はっきりとした美しい容姿のソニア様と違って、ソニア様がバラだとしたら私の母はスミレだ。ソニア様は、私の母と親しくしてくれたらしい。さすが皇家生まれの皇女様だ。華やかなドレスがよくにあっている。そんな私の母と合うにも合わなそうなソニア様が優しく笑いかけてくれた、いろいろお話をしていろんなものを見た、と母は言っていた。私が生まれて、母は程なくしてソニア様に暗殺されたが…」
そうだ。忘れちゃいけない。ソニア様は、フローラ様を暗殺した張本人。その上遺体はまだ見つかっていなくて、キルはアネモネの花を育て続けて…儚い夢を…見ている。
「キルのお母様、美しい綺麗な方ね。キルにそっくり!」
「美しい?初めて言われたよ。母を美しいというなんて。」
「それはきっとソニア様の手前側室を美しいとは言いにくかっただけで、きっと王宮中の人が美しいって思ってたはずよ。シンプルなドレスが美しいフローラ様によく映える。ソニア様ももちろん美しいけれど、フローラ様はまた別の美しさよ。ソニア様は確かにバラのように華やかで誰もが美しいというけれど、フローラ様の控えめな美しさは見るものすべてを黙らせてしまうような威力!肖像画でこんなに美しいんだもの。実物はもっと美しくて、素晴らしい方だったんでしょう?」
聞いても返事が返ってこない。
「キル?どうしたの?」
そこには涙を流している顔を必死に隠すキルがいた。なんで泣いているのか私にはわからない。
「キル?どうして泣いているの?」
そう問うた瞬間、突然抱きしめられた。
突然のことすぎて頭の整理が追いつかない。
「…キ、キル?」
「………みなの者。少し部屋を退出してくれ。」
私を抱きしめたままその腕を解こうとしないキルはそういった。キルの一言に慌てて、部屋を退出していく兵士とリラン。
どさっ。最後の1人が部屋から出た瞬間、キルは私をベッドに寝かせ私の上に覆いかぶさった。
「…キ、キル?どうしたの?」
「…ごめん。今、こんな状況なのに、嬉しくてたまらない。キス、していい?」
「…え…う、嬉しいってなぜ…」
その言葉を遮るようにキルは私の唇に自分の唇を当てた。キルとのキスは初めてというわけじゃないけど、毎回緊張する…。優しくて温かい。いつも余裕そうに兵の士気を上げているキル。余裕そうに見えているだけで本心は辛いのだろう…。そう思った時、私は無意識にキルの頭を撫でていた。
「「え」」
これにはキルと私が同時に驚いた。
でも、また優しく私を抱きしめてくれた。だから私も、キルの頭を撫で続けた。
「……キル。さっき言ってた嬉しいってなんのこと?」
「…あれは…」
私を抱きしめたままキルは話し始めた。
「……母は、優しい方だった。美しい容姿をしていたのに、だからこそ、国王陛下に見初められたということを王宮中が知りながら、誰1人として、王妃様の手前、母を褒めたりはしなかった。王妃様の右に出るほどではないのだと…だが、それを一度として自分を崇めたりせず、いつだって自分を下として考え、国王陛下からの寵をもらいながらも、ただ静かに微笑む母が大好きだった。私もこうなりたいと、人を尊敬し、静かに微笑んでいるようなそんな人になりたいと思った。それでも、母は殺され、私は村で暮らすことを命じられた。…何度もソニア様を憎んだ。…でもその件にアルベーサが関与していたわけでもない。ただ、ソニア様から生まれたのがアルベーサだっただけ…私の憎むソニア様からアルベーサが生まれ落ちただけ…。そして、アルベーサもまた、幼い頃に母を亡くした。…そんなアルベーサをどうして憎める?…ヴェデには心から感謝しているんだ。…アルベーサを初めて愛してくれた女性で、そして、私の母を初めて美しいと言ってくれた女性。それは君だよ。ヴェデ。」
「…キル…」
「愛を知らないアルベーサに愛を教えてくれた。君を本当に私は愛している。」
「誰が誰を愛してるのかわけわかんなくなりそう。ふふ。…でも、いいじゃない。キルがキルだけがフローラ様を美しいと思っていればそれだけでフローラ様は不幸ではなかったはずよ。…フローラ様は美しい綺麗な心の持ち主のはずだから。」
「なぜ?」
「キルのお母様なんですもの。優しいあなたを産んだ人なのだから、心映えが綺麗な人なんだってことは明白よ。」
私はそう言い切ってから触れるような軽いキスをキルにした。キルは少し赤い顔をして私に口付けた。その後少しの間私とキルは抱きしめあって部屋から出てこなかった。
「こんな大事なときに、殿下が取り乱して涙を流すなんて。」
リラン様は何度も同じことを言っている。
「殿下だって人間ですわ。取り乱すこともあります。」
この人を見ているとなんだかイライラしてしまうわ。いつだって上から物を言うんだもの。殿下に対してだってそうよ。ローレン様はアルベーサ殿下をお慕いしていると言うのに、ローレン様の前でアルベーサ殿下の悪いところを口にしたり、ヴェデ様だってこんな状況にならなければ、アルベーサ殿下のおそばで笑っていらっしゃるはずでしたのに。リラン様が現れてから何もかもが崩れているわ。
「ずいぶんきつい物言いだな。貴族の娘がそんな口の利き方許されるのだな。」
「許されるも何も、今の私は貴族という身分の中になく、ヴェデ様にお仕えする女官です。縛られるものなどありません。それよりヴェデ様はキルベール殿下とお部屋で何をなさってるんですか?」
私が立ち上がって奥の部屋への廊下を歩こうとすると、リラン様は私の腕を掴んだ。
「行かないほうがいい。」
「は?」
「イザベルのことがあった後、まともにキスもできやしないさ。」
「…キス?どういうこと?」
「わかんないならいい。ただ邪魔するなよ。キルベール殿下とて、妃殿下が嫌がることはしないんだから。」
あ…そういうことね…。
イザベルのことがあってからお二人は、キスすらできないと…やっと2人なんだからキスくらいさせてやれって?
なんで私があなたに命令されなきゃならないのよ。
「…それと…さっきお前女官としてって言ったな。」
「…それが何?」
「女官としてなら、俺に従ってもらおう。女官は内官よりも地位は下だ。女は黙って男に従え。」
そう言いながら私の方をポンっと叩いた。
カチンッ。私の頭が何か音を立てた。その瞬間リラン様の手を振り払った。
「なんですって!?」
私がリラン様を引っぱたこうとすると、簡単に手を取られた。
「…おっと。」
その手もまた簡単に振り払った。
「…女は男に従えって…何様のつもりよっ!女は口を出すなってこと?!男と女のどこに違いがあるっていうのよっ。地位が下とか、そういうのがあるからこの国は変わらない!そう思ってる人が1人でもいるから!国は…政治は…女がいないと崩れるのよっ。私たちのいる意味は私たちが決めるの。男か女かなんて関係ない!命に代えてでも、お仕えしている方を守ることは性別関係なく通じるはずのことよ。」
「ぷっ。あはははははは…」
…な、何笑ってるのよ…この男!私が今行ったことはそんなに馬鹿らしいことだとでも言いたいのかしら。
「な、何笑ってるんですか」
「お前二重人格か?」
「え?」
「妃殿下の前での話し方と、俺の前での話し方、どっちが本物なんだ?」
「妃殿下の前での方です!あなたを前にするとイライラして話し方が変わってしまうんですっ!いつもはイザベルがいたから良かったけれど、こうして2人で話していると積もり積もった不満が爆発するんです!部屋に戻ります!」
歩き出したしとたん私の腕を掴まれた。
「待てよ。」
「何ですか。私もうあなたと同じ空気少しでも吸いたくないんですけど。」
「面白いな。お前。」
その言葉と同時に、と行っても過言ではないほど素早くお互いの唇が重なった。私は、今何が起きてどういう状況なのか理解できない。
大嫌いなあの男と私の唇が重なった?
「思った通り、こういうことは経験ないわけか。」
「…あ…あ…あ…」
「壊れた機械みたいになってるけど、大丈夫か?」
「あ…あなたねぇ!!」
引っぱたこうと手を挙げたが、またもやそれを軽く掴まれた。
「大貴族の娘に手をあげたことは詫びるが、それ以上は謝らん。好きだ。」
「…は?」
「お前が好きだ。こんな時に不謹慎かもしれないが、イザベルとカリラがくっついた。妃殿下と殿下もくっついた。次は俺とアナスタシオ。俺らのばんだ。仲良くやろうぜ。」
「絶対無理!」
何を明るい顔で言ってんだか!
「…キル…?」
長い間沈黙を通していた私とキル。私は静かに口を開いた。
「ん?」
「…こんな…アルベーサ殿下が動き出した時に…のんびりしていてもいいのかしら…」
キルはベッドから立ち上がって、ベッドのすぐそばにあるテーブルの上に置いてあったミルクをコップに入れた。そのコップを二つ持って、またベッドに戻ってきた。
「ヴェデ。はい。」
そう言ってミルクを手渡してくれた。こんなところが私には落ち着く…
「ありがとう。」
「…ヴェデは……」
「…?」
「私と…こう、のんびりするのは、あまり好きじゃないかい?」
「…え?」
「私は、ヴェデのそばに居られるだけで幸せで、2人でのんびりできてたらそれでいいと思っている。アルベーサとの争いよりも、私は君との時間を大切にして居たい。ヴェデはどうだい?…今は、何でもいい。心の内を教えてくれるかい?」
突然の言葉に私は焦った…。
でも…やっぱり私の決意は変わらないから…
「…私は…キルと同じでこんな暖かい幸せな日が続くといいなって思ってる。でも…でもね…こんな今の時間を作ってくれてるのは、キルだけじゃなくて、リランもカリラも、イザベルもアナスタシオも…みんなのおかげだって思ってる…守りたいのよ…2人だけ幸せに…なんてそんな風に私は割り切れない。私が幸せになるにはみんなの幸せがなきゃ成り立たない…。だから、私だけ守られてるなんて嫌。みんなの近くで、みんなと同じように戦いたい。私はもともと商人の娘よ。貴族のようにドレスを着ているだけじゃ嫌なの。時には古びた服で泥だらけになりながらもみんなの役に立ちたい…キル…私に役目をちょうだい…お願い!」
王宮殿は異様に騒がしい。
陛下の部屋へと向かう途中なのに、もう何度も女官や、内官にぶつかった。こんなに騒がしく動いているなんて、何かあったのか?
「きゃっ!」
ドン!
また1人の女官にぶつかった。女官はそのまま床に転んでしまった。
「大丈夫かい?」
私も慌てて、自分の手を彼女に向ける。彼女はその手を優しく取り、慌てて頭を下げた。
「申し訳ございませんっ!王太子殿下…」
「…あれ…?君は、」
彼女の服装を見ると、どうやら女官ではない…服装的に、高い地位にある貴族の娘か。
「女官ではなかったのか。客人か?怪我はしていない?」
「あ、はい!怪我などしておりません。王太子殿下こそ、どこかお怪我は…?」
「私は平気だよ。」
「よかった!…あ!名前を名乗っていませんでした。私、ローレン…あ、いえ…シャーロット・サーシャと申します。」
「あ、ヴェデの…」
「何度か、ヴェデを通じてお会いした事がございましたね。」
「そういえば、君は、サーシャ公爵のご令嬢だったのか。」
「父をご存知でございますか?」
「もちろん。高い地位にいる内官だからね。」
「嬉しゅうございます!」
そう言って笑う顔は、まるで太陽だ。私はこのように笑うヴェデがことの外好きだった。私の好きだった頃のヴェデのよう…
「…シャーロット…と言ったね」
「…え?あ、はい!」
「覚えておくよ。今度2人でお茶でもしよう。」
「ほ、本当にございますか?」
「…ああ。君と、話をしたい。」
「ありがとうございます!私は幸せ者でございますね!」
無邪気に何かを喜んで笑顔でいる彼女が、ヴェデのようで気持ちが落ち着く…。
「それよりも、なぜこんなに宮殿が騒がしいか知ってるかい?さっきからものすごいことになってるが…」
「…あ…それが…」
「馬鹿者!!!!」
ガン!
国王陛下もとい、父上の部屋に入った瞬間俺は殴り飛ばされた。
「アルベーサ殿下!お怪我は…」
駆けつけたルトーによって立ち上がった。
「…サーシャ公爵の令嬢から聞きました…テリヌピア侯爵からの抗議があったと…」
「知っていたのなら、話は早い。なぜこんな事をした…答えろ…」
「国王陛下!私は!」
ガシャンッ
父上から投げられたグラスが俺の顔に当たって頬が切れる。何故だ…父上…
「お前がやったのは知っている!テリヌピア侯爵の令嬢を殺そうとしたことは…もとより内通者からの証言で知っている…何故だ…」
「…内通者…」
内通者…誰だ。この事を父上に話したのは…違う!俺ではない!俺がやったわけでは…
「テリヌピア侯爵家は、貴族の中でも力の強い家柄だ…王家でさえ、簡単にあしらうことはできん!何故こんなことをした…答えろ!」
「私ではありません。指示したのも私じゃありません…全ては内官の一存で行ったことです。」
そうだ。俺がやったわけではない。あの内官の勝手な考えだ。私は血を流さず兄上と戦うことにしていたのに…
「そう言っている間は…お前は王にはなれん。王になる器量もないままだ。もう…出て行け…なんと言おうと、この国の次期王はキルベールだ…もう二度と私の顔に泥を塗るな!お前は王族なんだ!馬鹿馬鹿しいことばかりして手を煩わせるな!キルベールのようになりたいのなら、まずは人間性を手に入れろ!お前はまだまだ何にもなれん!正室の息子だというのに…こんな人間に育ってしまった。ソニアは何をしていたんだ…」
母上のことを…今、なんと言ったんだ…この男は…
「母上は悪くない…母上のことを悪くいうことだけは許さない!…母上はお前なんか好きじゃない。父上よりもっと好きな奴がいたのに、政略的な結婚をさせられて、母上はずっとそいつの迎えを待っていた。そいつは迎えに行く直前に死んだんだ…父上…あなたの刺客によって…盗賊なんかじゃない…あなたの…あなたのっ…あなたの命令によって動いた殺し屋がっそいつを殺した…母上を自分のものにするために…許さない。私はあなたを許さない。そいつと一緒に母上の心も殺したあなただけは一生許さない。…いつか必ず母上の仇は…」
初めて、父の前で自分の感情を吐き出した。…もっと早く、もっともっと何年も早く吐き出していれば、ことはこうも大ごとにもならなかったことだろう…
「…今、お前がソニアのことで何を言っていたか、よくわからないが。今のお前に一つ知らせておきたいことがある。」
いつまでも真相を話してはくれない。母上の恋人を殺したくせに。
でも。今は…王子としてこの場にいなくては…
「なんですか。国王陛下。」
「この件についての専属の事務と、護衛を行う人間を雇った。お前にも紹介しておこう。入れ。」
専属の事務と、護衛を行う?事件の収集をする奴をつける…ってことか?
「失礼します。国王陛下。アルベーサ殿下。」
聞き覚えのある愛しい人の声…まさか…いや、そんなことあるはずがない。
俺の目の前には、貴族が着る紳士用の服をまとったヴェデがいた。
「女だが、キルベールの推薦だ。きっと役に立つ。」
「…ど、どうして、ヴェデが…国王陛下の部屋に…」
慌てて、こんなことしか言えない…紳士用の服を着て髪の毛を後ろに一つに束ねて、前髪も上にあげた美しい女になって…ヴェデが目の前にいる。…ただ守られているだけだったヴェデが、一人でそこに立っている…
「お前、何を言ってる。ヴェデなんて名前ではないぞ。この女性は…」
「はじめましてアルベーサ殿下。グレース・ヴェネツェラと申します。キルベール殿下の推薦のもと、参上仕りました。お見知り置きを。」
キルからもらった私の仕事。
『ヴェデにしかできない仕事だ。でも危険だよ。それでも行くのか?』
最後までずっと心配してた…ふふ。そういうあなたが大好きなのに…
『大丈夫ですわ。殿下。神様が守ってくださいます。それに何より、殿下だけ危険な目に合うなんて割りに合いませんわ。私も、殿下のお役に立ちたいのです。大変な時は二人一緒です。離れていても、心は一緒です。すぐたくさんの情報を持って帰ってまいります。それに…宮殿では会えますわ。グレース・ヴェネツェラとして、頑張ってまいります。愛してます。殿下。』
家を出る最後の時、私らしくなく敬語を使いたい気分になった。この先、王宮にいる間は敬語を使って話さねばならないのだから…当然だ。でも、キルはそれを嫌がった。
『もしかしたら、これが最後かもしれないんだから……敬語をやめて、ヴェデでいてくれ…』
そう言って私を抱きしめた。宮殿はアルの味方がいっぱいだ。私はすぐ殺されるかもしれない。でも…迷ってなんかいられない。ローレンに教えてもらった護身術をこんなところで使うとは思っていなかったけど…それがまた、私を守ってくれる。
王宮殿に入ったら、いつもいた、イザベルも、アナスタシオも、リランも、他の人たちもみんないない…ローレンにも会えない…
ヴェデーアスティーヌ・ステファンから宮殿入りして、オリビア・ミッシェルになって、次は、グレース・ヴェネツェラ。キルが精一杯考えてくれた名前。大好きなキル。
『大切でたまらないキル…愛してる。ちょっとの間だけ…離れていることを許して…』
…アルベーサ殿下が動き出した今、私もまた、動き出すときのなのかもしれない。私は変わるんだ。
2018年7月7日
アルベーサの発言を重点的に修正しました。
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お気に入りのやり方がわかりお気に入りさせていただきました!
全く縁のない世界を描けるなんてすごいなぁと思いました
もしかして縁があったりするんですか…?笑笑
ぜひファンタジーなどの小説もかいていただきたいなぁと思いました!
お気に入りありがとうございます!!
本当にありがとうございます!!
感想3回目もありがとうございます!読んでもらえるだけで嬉しいのに、まさか、感想までこんなにいただけるなんて私は幸せ者です!
縁のなさすぎる生活を送っております笑笑
縁がなさすぎて悲しくなるほどです。
ファンタジーは書いてみたいと思ってます!
感想ありがとうございます!
ちょっと嬉しすぎてその辺飛び回ってきます!ありがとうございました!!!