小悪魔なお姫様と執着深い大公

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別れという名の罠

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第二章:別れという名の罠

紅葉が舞い散る庭園。
かつて二人が愛を誓い合った場所で、彼女は何の前触れもなく別れを告げた。

「……冗談だろ?」

クラウスの声は震えていた。
彼の心には、まだ一片の希望が残っていた。

──彼女はからかっているだけなのではないか?

だが、エリスは微笑みながら、あっさりとその希望を潰した。

「冗談じゃないわ、クラウス」
「どうして、急に……?」
「“急に” じゃないわ。“最初から” よ」

彼女は、まるで 可愛がっていた玩具に飽きた子供 のような顔をしていた。

「貴方、私に尽くしすぎたのよ」

クラウスは拳を握る。

「それが悪いことなのか?」

「ええ、悪いことよ」

エリスはくすくすと笑う。

「貴方が私を追いかけるのが楽しかったの。貴方が苦しむ顔を見るのが、何よりも面白かったの。でも……もう、そんなものには飽きたわ」

──その瞬間、クラウスの頭の中が真っ白になった。

「ふざけるな……」

「ふざけてないわ。本気よ」

「俺は、お前を愛しているんだぞ」

「ええ、知ってる。でも、私はもう貴方を愛していないの」

クラウスの胸の奥が軋んだ。

信じられない。
信じたくない。

彼は どんな女よりも、彼女だけを愛したというのに。

それなのに、彼女は もう飽きたと笑うのか。

「……俺は、どうすればよかった?」

「さあ? でもね、クラウス。ひとつだけ言えるわ」

エリスは彼の頬に手を添え、甘い笑顔で囁いた。

「私はもう、貴方のものじゃない」

そう言い残し、彼女は背を向けた。

クラウスは、最後まで彼女を引き止めることができなかった。

──そして、二年が過ぎた。
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