小悪魔なお姫様と執着深い大公

鎖と誘惑

第十一章：鎖と誘惑

　その夜。

　エリスは、静かにベッドの中で目を閉じていた。
　拘束は解かれ、自由の身になったが──彼女はまだここにいた。

「……逃げないのか？」

　クラウスが、ベッドの縁に腰掛けながら問いかける。

「逃げようと思えば、逃げられるわ」

　エリスは薄く笑い、シーツを指でなぞる。

「でも……」

　彼女はゆっくりと身を起こし、クラウスの首に腕を回した。

「もう少しだけ、遊んであげてもいいかしら？」

　彼の体が、一瞬強張る。

　──その反応を見て、エリスは心の中で笑った。

彼はもう、彼女なしではいられない。

「クラウス、貴方は私に執着しているけれど……」

　エリスは彼の耳元に唇を寄せ、そっと囁く。

「貴方が私を手に入れられる日が来るかどうかは……まだ、わからないわよ？」

　クラウスの手が、エリスの腰を強く引き寄せる。

「……逃がさない」

「ふふ、本当に？」

　エリスは妖しく笑い、クラウスの唇にそっと触れた。

「じゃあ……もっと見せてちょうだい？」

　彼の瞳が、完全に熱を帯びる。

今夜もまた、二人は狂おしく絡み合う。

──そして、彼女はまた、彼の心を弄ぶのだ。

どこまで狂わせられるか。
どこまで彼を虜にできるか。

それが、エリスの一番の楽しみだった。