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1章
3話 王都へ連行? 俺、犯罪者じゃないよね!?
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王都が、見えてきた。
霧の向こうに、白い城壁と尖塔がそびえていた。まるで空から落ちてきた神殿のように荘厳で、どこか近寄りがたい気配を放っている。
(うわ、あれが……王都……)
そんな威容を前にしても、俺の問題は目の前だった。
ーー騎士団に、囲まれていたのだ。
右も左も、前も後ろも。銀の鎧に身を包んだ騎士たちが、ぴったりと俺の周囲を固めている。まるで極悪人を護送するかのような物々しさだ。
「いやいやいや……俺、任意同行って聞いてたぞ!? なんでこんな護送スタイル!?」
「ご安心ください。見かけが少々物々しいだけで、殿下の御意に従っているだけですから」
横を歩く副団長――リヴェルトという名の中年騎士が、やや気まずそうに口元を引き締めながら答えた。目は優しく、どこか苦笑気味だ。
「......見かけってレベルじゃねぇよ」
広場に集う町人たちは、ざわざわとした視線を向けてきた。誰かが「なにあれ、囚人?」「いや、王女の愛人候補らしいわよ」と囁く。
(なんだその極端な噂は!?)
――そして極めつけは。
「カイル~! こっち見て、手ぇ振って~♪」
馬車の窓から、リュミエール王女が身を乗り出し、にこにこと手を振っていた。
町人の視線がさらに集中する。ざわ……ざわ……と、騒ぎが波紋のように広がっていく。
「うわあああああ……目立ちすぎィ!!」
顔を両手で覆う俺の前で、騎士たちの顔が揃ってこわばった。
――と、その時だった。
「きゃあっ! だれか、たすけてっ!」
少女の叫びが、門前の市場の方から響いた。
そちらを見ると、小さな女の子が、暴走する魔獣――いや、子犬サイズだが翼と角が生えた奇妙な生き物――を追いかけていた。尻尾が青白く発光しており、魔力を帯びているのが遠目でも分かる。
「誰かっ、あの子止めて! 魔獣が暴走して……!」
町人たちが慌てふためく中、魔獣はまっすぐこちらに突進してきた。
「うわっ!?」
避けようとした瞬間、俺の身体が――勝手に、動いた。
足が地を蹴り、手が伸び、魔獣の動きを読むように身をひねる。そして、暴れるその身体をぴたりと両腕に収めた。
「――っと。危ないだろ、お前」
抱きとめた瞬間、魔獣の身体がふわりと光り、まるで懐いたように大人しくなる。
少女が泣きながら駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、ありがとう……! ルル、怪我してない?」
魔獣はキュウと鳴いて、少女の腕にじゃれるように収まった。
(……なんだ今の)
俺は息を整えながら、胸元のポケットに手を入れ――薄く光るカードを引き出す。
【冒険者記録カード】
■ 名前:カイル・エルグランド
■ 種族:人間
■ 年齢:17
■ スキル:《因果律干渉》
副効果:+【状況適応】スキル発現
補正効果:危機的状況下での反射神経/直感精度向上
補助効果:動物・精霊種への親和性 上昇
(……また増えてる……)
「……やっぱり、あなただったのね」
背後から、やわらかな声がした。
振り返れば、リュミエールがいつの間にか馬車から降りてきていて、青い外套の裾をひるがえしながらこちらへと歩いてくる。
風にそよぐ髪が、陽を受けて金色に輝いていた。
「殿下? いや、その……馬車の中じゃなかったんですか?」
俺が戸惑いながら聞くと、彼女はくすっと笑って答える。
「だって……気になったもの。あなたが、どんなふうに動くのか」
「動くのかって……俺、獣じゃないですよ?」
「ふふ。じゃあ、旅人獣ね。とっても珍しい種の。捕まえると、幸運を運んでくれるって、どこかの絵本にあったのよ」
「俺、伝説の生き物扱いされてます?」
「ううん、あなたはきっと――伝説を作る側の人。そんな気がするの」
言葉に詰まる俺を見て、彼女はそっと魔獣の子を撫でる。
「ルル、いい子ね……怖かったでしょう?」
魔獣は甘えるように目を細め、ぴたりと王女に身を寄せる。
「もしかして、殿下も動物に好かれるタイプだったり?」
「ううん。私じゃなくて、あなたを追いかけてきたのよ」
王女の視線が、真っ直ぐに俺を射抜く。
「"変わった風が吹くとき”に、あなたは現れるのね」
それは意味深で、けれどどこか信頼に満ちた言葉だった。
「何か、知ってるんですか?」
「何も知らないわ。でも、感じるの。心が覚えてる……そんな気がするのよ」
ーーまったく、何がどうなってるんだ。
だが俺は、少しだけ――ほんの少しだけ、その言葉が嬉しいと思ってしまった。
*
王都の門が、目前に迫っていた。
白亜の城壁は霧の中に輪郭を浮かべ、尖塔はまるで空に届くかのように天を突いている。その荘厳さに見とれる間もなく、門前広場はすでに騒然としていた。
「やああああ……! 本当に目立ってるじゃねぇか……!」
思わず頭を抱えた俺の周囲で、町人たちのざわめきが渦巻く。
「王女様の……あれ、婚約者候補!?」「違う違う、護衛隊長らしいよ」
「いやいや、あんなぼさぼさ頭が?」「でも殿下、ずっと馬車から手振ってたし……」
(いや手振るなよ王女様! この空気、俺のせいじゃねぇ!)
「カイル、顔がひきつってますよ」
隣を歩く副団長・リヴェルトが、口元を引き締めて忠告してくる。
「笑顔を……もう少しだけ柔らかく」
「無理! この状況で柔らかい笑顔とか、どんな訓練すればできるんだよ!」
「ご安心ください。陛下に紹介される前の者は、大抵そんな顔をしています」
「え、前に似たような人いたんですか?」
「いえ、あなたが初です。例え話です」
「だよな!」
そのとき、別の騎士がすっと馬を寄せてきた。若く、端整な顔立ちをした青年だ。
「副団長。報告。王都門前、群衆制御に警備兵を増派済み。門内側も誘導班を配備」
「ご苦労。……カイル殿、この者は第三部隊隊長、ギルベルト・アーデルハイト」
青年騎士が軽く頭を下げた。
「王女殿下がここまで一般人を同行されるとは前代未聞です。……警備上、急遽“賓客指定”としました」
「賓客って、そんな……ただ靴が逆だったって話しただけですよ、俺」
「“それだけ”で殿下がここまで懐かれるなら、我々の努力とは一体……」
「すいません、逆に謝りたい……」
そのやり取りを遠巻きに見ていたリュミエールが、またも馬車の扉から顔をのぞかせる。
「ふふ……カイル。王都って、初めて?」
「ええ、まぁ……って、また馬車から顔出して!」
「だって、あなたの困った顔、面白……じゃなかった、可愛らしくて」
「今“面白い”って言いかけましたよね!?」
そして――門が開かれる。
白と金の装飾が施された、威厳に満ちた大門。その向こうには、整然と整備された街路と、美しく連なる建造物の影。
「ようこそ、王都カリストポリスへ」
副団長が声を張ると、周囲の騎士たちが一斉に敬礼する。
その視線の先、俺の目には王都の光と影が交錯する、どこか不穏な空気が見えたような気がした――。
(……なんかもう、完全に逃げられない空気だよな、これ)
*
王都の大通りを抜け、俺たちはついに“王宮”の正門前に到着した。
大理石の柱が並び立ち、黄金の紋章が輝くその門構えは、まさに“選ばれし者”のみが通ることを許される空間といった趣だった。
「……あの門、入ったら最後って気がしてきた」
「ええ。帰る道はありませんよ、たぶん」
リヴェルト副団長の返答が、なぜかさらりと重い。
「慰めて!? 今それ慰めのつもりで言った!?」
「現実です」
「容赦ねぇな副団長!?」
門の前には、衛兵たちが整列していた。
王女の馬車が近づくと、衛兵たちは膝をつき、王女の名を呼んで敬礼する。
「――リュミエール殿下、ようこそお戻りくださいました」
馬車が止まり、扉が開く。現れたリュミエールは、まるで花が咲くような笑みを浮かべていた。
そして、俺の手を取る。
「行きましょう、カイル。……お父様のところへ」
「……やっぱ逃げよう。森に帰ろう」
「逃げたら、また私が迎えに行くわ?」
「マジで!? 重い、王女様重いッ!!」
――と、そこだった。
門の内側から、突然“風”が吹き抜けた。
正確には、風というより――《気配》だった。
(……なんだ、この感覚)
頭の奥が、ズンと重くなる。視界の端で、空間が揺らぐような錯覚。ステータスカードが、胸ポケットの中で熱を帯びた。
「……来た」
リュミエールが、ぽつりとつぶやく。
懐から取り出し、《ステータスカード》を確かめる。
■スキル:《因果律干渉》
新効果追加:+【結節探知】(状態:一時活性)
効果概要:自他の運命上の“因果の結節点”を感知・表示する能力。一時的に強制感応発生の可能性あり。
補助補正:対象存在(王族・精霊系)に対する感応度上昇中。
(……結節って、なんだよ……!)
見渡すと、王宮の門の奥――そのさらに先にある建物のひとつ、塔の上部が、ほのかに“光って”見えた。誰にも見えていないはずなのに、そこだけが鮮烈な存在感を放っていた。
「見えたのね、カイル」
「え……何がですか……」
「あれは、"かつて封じられた場所”」
「封じられた……?」
「とても古い、そして……とても危うい因果が、眠っているの。あそこには、誰も近づかない。誰も、覚えていないはずだったのに」
リュミエールの声が、ふと沈む。
けれどすぐに、また笑顔を浮かべる。
「でも、見えたのなら――やっぱり、あなたなのね」
(……“俺だから”見えたってことか? というか、あの塔、そんな重要スポットだったの!?)
困惑する俺の胸ポケットで、ステータスカードがまた微かに脈動した。
塔は、光の中で揺れて見える。その奥に、何かが――“俺を待っているような気配”があった。
門が、ゆっくりと開く。
その先に待つ“何か”が、俺のスキルに反応している――そんな気がしてならなかった。
(これ、マジで帰れないやつだよな……)
でも、不思議と――足は止まらなかった。
霧の向こうに、白い城壁と尖塔がそびえていた。まるで空から落ちてきた神殿のように荘厳で、どこか近寄りがたい気配を放っている。
(うわ、あれが……王都……)
そんな威容を前にしても、俺の問題は目の前だった。
ーー騎士団に、囲まれていたのだ。
右も左も、前も後ろも。銀の鎧に身を包んだ騎士たちが、ぴったりと俺の周囲を固めている。まるで極悪人を護送するかのような物々しさだ。
「いやいやいや……俺、任意同行って聞いてたぞ!? なんでこんな護送スタイル!?」
「ご安心ください。見かけが少々物々しいだけで、殿下の御意に従っているだけですから」
横を歩く副団長――リヴェルトという名の中年騎士が、やや気まずそうに口元を引き締めながら答えた。目は優しく、どこか苦笑気味だ。
「......見かけってレベルじゃねぇよ」
広場に集う町人たちは、ざわざわとした視線を向けてきた。誰かが「なにあれ、囚人?」「いや、王女の愛人候補らしいわよ」と囁く。
(なんだその極端な噂は!?)
――そして極めつけは。
「カイル~! こっち見て、手ぇ振って~♪」
馬車の窓から、リュミエール王女が身を乗り出し、にこにこと手を振っていた。
町人の視線がさらに集中する。ざわ……ざわ……と、騒ぎが波紋のように広がっていく。
「うわあああああ……目立ちすぎィ!!」
顔を両手で覆う俺の前で、騎士たちの顔が揃ってこわばった。
――と、その時だった。
「きゃあっ! だれか、たすけてっ!」
少女の叫びが、門前の市場の方から響いた。
そちらを見ると、小さな女の子が、暴走する魔獣――いや、子犬サイズだが翼と角が生えた奇妙な生き物――を追いかけていた。尻尾が青白く発光しており、魔力を帯びているのが遠目でも分かる。
「誰かっ、あの子止めて! 魔獣が暴走して……!」
町人たちが慌てふためく中、魔獣はまっすぐこちらに突進してきた。
「うわっ!?」
避けようとした瞬間、俺の身体が――勝手に、動いた。
足が地を蹴り、手が伸び、魔獣の動きを読むように身をひねる。そして、暴れるその身体をぴたりと両腕に収めた。
「――っと。危ないだろ、お前」
抱きとめた瞬間、魔獣の身体がふわりと光り、まるで懐いたように大人しくなる。
少女が泣きながら駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、ありがとう……! ルル、怪我してない?」
魔獣はキュウと鳴いて、少女の腕にじゃれるように収まった。
(……なんだ今の)
俺は息を整えながら、胸元のポケットに手を入れ――薄く光るカードを引き出す。
【冒険者記録カード】
■ 名前:カイル・エルグランド
■ 種族:人間
■ 年齢:17
■ スキル:《因果律干渉》
副効果:+【状況適応】スキル発現
補正効果:危機的状況下での反射神経/直感精度向上
補助効果:動物・精霊種への親和性 上昇
(……また増えてる……)
「……やっぱり、あなただったのね」
背後から、やわらかな声がした。
振り返れば、リュミエールがいつの間にか馬車から降りてきていて、青い外套の裾をひるがえしながらこちらへと歩いてくる。
風にそよぐ髪が、陽を受けて金色に輝いていた。
「殿下? いや、その……馬車の中じゃなかったんですか?」
俺が戸惑いながら聞くと、彼女はくすっと笑って答える。
「だって……気になったもの。あなたが、どんなふうに動くのか」
「動くのかって……俺、獣じゃないですよ?」
「ふふ。じゃあ、旅人獣ね。とっても珍しい種の。捕まえると、幸運を運んでくれるって、どこかの絵本にあったのよ」
「俺、伝説の生き物扱いされてます?」
「ううん、あなたはきっと――伝説を作る側の人。そんな気がするの」
言葉に詰まる俺を見て、彼女はそっと魔獣の子を撫でる。
「ルル、いい子ね……怖かったでしょう?」
魔獣は甘えるように目を細め、ぴたりと王女に身を寄せる。
「もしかして、殿下も動物に好かれるタイプだったり?」
「ううん。私じゃなくて、あなたを追いかけてきたのよ」
王女の視線が、真っ直ぐに俺を射抜く。
「"変わった風が吹くとき”に、あなたは現れるのね」
それは意味深で、けれどどこか信頼に満ちた言葉だった。
「何か、知ってるんですか?」
「何も知らないわ。でも、感じるの。心が覚えてる……そんな気がするのよ」
ーーまったく、何がどうなってるんだ。
だが俺は、少しだけ――ほんの少しだけ、その言葉が嬉しいと思ってしまった。
*
王都の門が、目前に迫っていた。
白亜の城壁は霧の中に輪郭を浮かべ、尖塔はまるで空に届くかのように天を突いている。その荘厳さに見とれる間もなく、門前広場はすでに騒然としていた。
「やああああ……! 本当に目立ってるじゃねぇか……!」
思わず頭を抱えた俺の周囲で、町人たちのざわめきが渦巻く。
「王女様の……あれ、婚約者候補!?」「違う違う、護衛隊長らしいよ」
「いやいや、あんなぼさぼさ頭が?」「でも殿下、ずっと馬車から手振ってたし……」
(いや手振るなよ王女様! この空気、俺のせいじゃねぇ!)
「カイル、顔がひきつってますよ」
隣を歩く副団長・リヴェルトが、口元を引き締めて忠告してくる。
「笑顔を……もう少しだけ柔らかく」
「無理! この状況で柔らかい笑顔とか、どんな訓練すればできるんだよ!」
「ご安心ください。陛下に紹介される前の者は、大抵そんな顔をしています」
「え、前に似たような人いたんですか?」
「いえ、あなたが初です。例え話です」
「だよな!」
そのとき、別の騎士がすっと馬を寄せてきた。若く、端整な顔立ちをした青年だ。
「副団長。報告。王都門前、群衆制御に警備兵を増派済み。門内側も誘導班を配備」
「ご苦労。……カイル殿、この者は第三部隊隊長、ギルベルト・アーデルハイト」
青年騎士が軽く頭を下げた。
「王女殿下がここまで一般人を同行されるとは前代未聞です。……警備上、急遽“賓客指定”としました」
「賓客って、そんな……ただ靴が逆だったって話しただけですよ、俺」
「“それだけ”で殿下がここまで懐かれるなら、我々の努力とは一体……」
「すいません、逆に謝りたい……」
そのやり取りを遠巻きに見ていたリュミエールが、またも馬車の扉から顔をのぞかせる。
「ふふ……カイル。王都って、初めて?」
「ええ、まぁ……って、また馬車から顔出して!」
「だって、あなたの困った顔、面白……じゃなかった、可愛らしくて」
「今“面白い”って言いかけましたよね!?」
そして――門が開かれる。
白と金の装飾が施された、威厳に満ちた大門。その向こうには、整然と整備された街路と、美しく連なる建造物の影。
「ようこそ、王都カリストポリスへ」
副団長が声を張ると、周囲の騎士たちが一斉に敬礼する。
その視線の先、俺の目には王都の光と影が交錯する、どこか不穏な空気が見えたような気がした――。
(……なんかもう、完全に逃げられない空気だよな、これ)
*
王都の大通りを抜け、俺たちはついに“王宮”の正門前に到着した。
大理石の柱が並び立ち、黄金の紋章が輝くその門構えは、まさに“選ばれし者”のみが通ることを許される空間といった趣だった。
「……あの門、入ったら最後って気がしてきた」
「ええ。帰る道はありませんよ、たぶん」
リヴェルト副団長の返答が、なぜかさらりと重い。
「慰めて!? 今それ慰めのつもりで言った!?」
「現実です」
「容赦ねぇな副団長!?」
門の前には、衛兵たちが整列していた。
王女の馬車が近づくと、衛兵たちは膝をつき、王女の名を呼んで敬礼する。
「――リュミエール殿下、ようこそお戻りくださいました」
馬車が止まり、扉が開く。現れたリュミエールは、まるで花が咲くような笑みを浮かべていた。
そして、俺の手を取る。
「行きましょう、カイル。……お父様のところへ」
「……やっぱ逃げよう。森に帰ろう」
「逃げたら、また私が迎えに行くわ?」
「マジで!? 重い、王女様重いッ!!」
――と、そこだった。
門の内側から、突然“風”が吹き抜けた。
正確には、風というより――《気配》だった。
(……なんだ、この感覚)
頭の奥が、ズンと重くなる。視界の端で、空間が揺らぐような錯覚。ステータスカードが、胸ポケットの中で熱を帯びた。
「……来た」
リュミエールが、ぽつりとつぶやく。
懐から取り出し、《ステータスカード》を確かめる。
■スキル:《因果律干渉》
新効果追加:+【結節探知】(状態:一時活性)
効果概要:自他の運命上の“因果の結節点”を感知・表示する能力。一時的に強制感応発生の可能性あり。
補助補正:対象存在(王族・精霊系)に対する感応度上昇中。
(……結節って、なんだよ……!)
見渡すと、王宮の門の奥――そのさらに先にある建物のひとつ、塔の上部が、ほのかに“光って”見えた。誰にも見えていないはずなのに、そこだけが鮮烈な存在感を放っていた。
「見えたのね、カイル」
「え……何がですか……」
「あれは、"かつて封じられた場所”」
「封じられた……?」
「とても古い、そして……とても危うい因果が、眠っているの。あそこには、誰も近づかない。誰も、覚えていないはずだったのに」
リュミエールの声が、ふと沈む。
けれどすぐに、また笑顔を浮かべる。
「でも、見えたのなら――やっぱり、あなたなのね」
(……“俺だから”見えたってことか? というか、あの塔、そんな重要スポットだったの!?)
困惑する俺の胸ポケットで、ステータスカードがまた微かに脈動した。
塔は、光の中で揺れて見える。その奥に、何かが――“俺を待っているような気配”があった。
門が、ゆっくりと開く。
その先に待つ“何か”が、俺のスキルに反応している――そんな気がしてならなかった。
(これ、マジで帰れないやつだよな……)
でも、不思議と――足は止まらなかった。
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