『最弱スキルで追放されたけど、結果だけなぜか最強扱い!? 王女も魔王の娘も惚れてきて、因果がバグってます』

Kei_Ogami

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1章

4話 初めての謁見、そして王城ラブコメ戦争

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王城の厚い扉を通り抜けた先にある“応接の間”。重厚なカーペットに、金銀細工の鏡、くすんだ宝石のランプ……まるで異世界への入り口だ。

そこには、白いドレスの侍女たちがすらりと並び、カイルの前に待ち構えていた。

「こちらへ――」

「はい、靴からお脱ぎください」

見慣れない服と目を逸らしたくなるほど大量の装飾品に囲まれ、カイルは思わず後ずさる。

「えっ、ちょ、ちょっと待ってください! 俺、こういうの慣れてないんすけど!?」

「大丈夫ですわ、殿下の大切なお連れ様ですから」
「失礼があってはなりませんのよ」

侍女たちの声はとても丁寧だが、目付きは真剣そのもの。まるで王族の仕度をしろと言われているかのようだ。

「お、俺ってもしかして......婚約者候補か何かって思われてるんじゃ?」

「いいえーーでも、ご安心を」
「殿下のご意向が最優先ですもの」

服の色がどうだ、刺繍の柄がどうだと続く説明に、カイルの頭はパニック寸前。
そうして、何も考えられないまま、あれよあれよと最後の一枚にーー。

「ちょ、ちょっと待ってください! 俺、普通の旅人ですから! 王女様と一緒だなんて、考えたこともないですから!」

声を張ると、侍女たちがピタリと止まった。

その時――応接室の奥から軽やかな足音がして、リュミエール王女が優雅に現れた。青いドレスの裾がふわりと揺れ、窓からの光を受けて金髪が瞬く。

「おはよう、カイル」

王女はにこりと笑った。その笑顔は太陽のように温かく、カイルのカチコチに震えた頬が一瞬で緩む。

「大丈夫よ。見るのは――私だけにしてあげるわ」

──まるで天然に告白するかのように真顔で言う王女に、カイルは思わず吹き出しそうになった。

「えっ……? な、なんですか、それ!?」

侍女たちの手が止まり、口元がきゅっと緊張する。

「……恋人ってことで、お願いします」

リュミエールの言葉に、カイルの頬が熱くなった。
ーー視界にスッと【ステータスカード】が現れる。

【冒険者記録カード】
■ 名前:カイル・エルグランド
■ 種族:人間
■ 年齢:17
■ スキル:《因果律干渉》
※王女の“恋愛補正”が影響?
■ ステータス:
・筋力:13
・敏捷:14
・魅力:12 → 14 
・幸運:12


「……え、魅力? なんで?」

首を傾げるカイル。

リュミエールは微笑んで、「ふふ」と頬に手を当てた。

「見てたの。あなたが、少し緊張すると……可愛いって思っちゃった」

――侍女たちも皆、思わず頬をほころばせた。
その場にいた全員が、ほんの少し、空気が柔らかくなったように感じた。

カイルは思った。

「……この王女、天然すぎる……でも、ま、悪くないかもな」

そして、その気持ちが、どこか自分の胸に温かく根を張っていくのを感じていた。






王宮の謁見の間──
高い天井に描かれた天使のフレスコ画が、午後の光に淡く照らされている。

深紅の絨毯が玉座へと続き、その先には王冠を戴く老王が座っていた。気品と威厳が空気を振るわせる。

緊張で胸が締め付けられる中、カイルは王女リュミエールと並んで、最初の一歩を踏み入れた。

「……すごい、人が多い……目が泳ぐ……」

後ろにいる副団長リヴェルトが、小声で囁く。

「気をしっかりと。殿下の後ろにいれば、大丈夫ですから」

しかし、カイルの胸ポケットはビリビリと熱を帯び、また《ステータスカード》が微かに光った。


玉座の老王――エル=フェルデン三世は、銀髪と深い皺の間に、鋭いまなざしを潜ませていた。

リュミエールが低く頭を下げると、カイルも慌てて従う。

「これは、カイル・エルグランド殿……。私の“命の恩人”であり、不可思議な縁持ちし者です」

部屋がざわめき、両端に居並ぶ貴族たちの視線が一斉にこちらへと注がれる。
その空気に、カイルは思わずーー"心の中"で叫んだ。

(え、俺が命の恩人!? しかも、なんか格好いい単語使われてる!?)

玉座の傍らにはべる、筆頭補佐らしき中年貴族が前に進み出る。

「陛下。無名の若者を此処にお連れになるとは......! 前代未聞の厚遇にございますぞ!」

周囲の侍従、貴族たちも、皆ゆっくりと頷く。
カイルは思わず、声が出てしまった。

「それ、俺も思ってました!!」

場が水を打ったように静まり返る。だが、リュミエールはふんわりと笑って口を開いた。

「それでも、私が選びました。彼には、"特別な運命"があると感じたのです」

老王はその言葉に、長く目を細めて静かに頷く。


その瞬間、ふたたび塔の方向から、柔らかな風が吹き込むかのような"気配"があった。
胸のポケットから、再びステータスカードを取り出し、確かめる。


■ スキル:因果律干渉
──新補助能力:運命の枝分かれ/選定ルート(暫時可視化)


「……なんか、俺の人生、選ばれてる感じなんだけど!?」

カイルのぼやきに、後ろに控えていたリヴェルトが反応する。

「……現実、です」


静寂の後、老王がゆっくりと口を開く。

「ならば、そなたの"眼"を信じて、三日の猶予を与えよう。その“特別な運命”が本物かどうか......この王宮で、見極めようではないか」


リュミエールが嬉しそうに微笑む。

「ねえ、カイル。あなたと一緒に、もっとこの王城を歩きたい」

カイルは戸惑いながらも、その手をそっと取った。

君のほんの少しの勇気に、僕は応えよう──そんな決意と、少しの期待を胸に。





謁見の間を出た先には、静寂に包まれた回廊が続く。
昼下がりの陽光が窓の格子を通り抜け、大理石の床に格子模様の影を作っていた。

その先にあるのは、リュミエール王女の私室。薄紫のカーテンが窓を包み、淡い金色の光を誘っていた。

「ここで、ちょっと休んでいてね」

リュミエールがベッドの端に腰掛けると、ふんわりと風が髪を撫でた。
部屋の空気が、一瞬甘く揺らいだように感じる。

「えっ……ここ、寝室じゃないですか? 俺、何もしないですから!」

カイルは慌てて後ろに下がり、思わず手を振った。
王女の微笑みが甘くて、心臓がまた、ギュッと締めつけられる。

「大丈夫よ……怖がらないで?」

リュミエールのひと言に、カイルは、水を飲んだようにむせた。

「やめろ! マジでやめて......!」

悲鳴にも近い返答に、王女はくすっと笑って首を傾げた。その様子は——天然すぎる。

「ふふ……冗談よ。でも、あなたがここで安心できるなら」
 

そして、ベッドに腰掛けたまま向き直り、王女の表情はふっと真剣なものに変わった。

「ねえ、あの塔……覚えてる気がするの。小さい頃、夢で何度も見ていた」

窓外の庭をぼんやり見つめながら、柔らかい声を落とす。

カイルの胸奥もざわりと揺れ、喉が渇くように言葉が出た。

「俺も……塔を見たとき、“果実のなる樹”がふいに浮かんできたんです。あれは、夢かな……?」

その瞬間、胸ポケットのステータスカードが、軽く震えながら、淡い光を帯びた。


■ スキル:因果律干渉
──新派生効果:【記憶同調】(発動条件:因果と感情の共鳴)

効果:過去の記憶が揺らいで共鳴する。二人の記憶がリンクする可能性あり。


(……また、増えた)

カイルが目を見開く。リュミエールは視線を上げ、静かにうなずく。

「……私たち、やっぱりただの偶然じゃない」

気づけば、淡い光に包まれた空気の中、ふたりの視界が柔らかく滲んでいた。

——そして、視界の端に、あの“幻の景色”が浮かび上がる。


**幻視**
庭園の果実が鈍く光る大樹。
幼いふたり(カイルとリュミエール)——
「また会いましょうね」
「靴、ちゃんと履いてきてね」
そんな約束が、霧の奥に響いていた。


目を開けると、リュミエールが軽く涙ぐみ、微笑んでいる。

「……見えたのね」

「え、見えたって……君も?」

「ええ、きっと」

言葉にならない......。
その場の空気が、ふたりにとって、重大な転機かもしれないと告げていた。

カイルの心臓が、また大きく揺れる。

「……なんだこれ、恋どころじゃないぞ、マジで」

リュミエールはそっとカイルの手に触れ、真っ直ぐ、眼を合わせて告げる。

「カイル。あなたとなら、この記憶も、未来も……一緒に歩ける気がするの」

カイルの胸の奥が、ゆっくりと熱を帯びていくのを感じた。

リュミエールの瞳に映る自分が、これから何かを変えていく――そんな予感が、静かに息づいていた。





午後の陽射しがやわらかく部屋に射し込んでいた。
薄紫のカーテン越しにゆれる光は、王女の部屋をやさしい陰影で包み、どこか懐かしい柑橘の香りが漂っている。

テーブルの上には、果実を焼き込んだ小さなパイと、温かな蜂蜜茶──だが、その香りに気づく者は誰もいなかった。

リュミエールは静かに、部屋の隅の本棚に向かう。重厚な棚板の裏側、目立たぬ一角から、古びた文書箱を取り出す。

「カイル、これ……見て」

差し出された箱の中には、厚い革表紙に「封印の鍵」と記された古文書。歴史を感じさせるその装丁に、思わず息を呑んだ。

「これは“塔に封じられし鍵”──かつて王国が、因果の力を操るために研究させた、古い記録よ」

彼女は表紙を開きながら、続けた。

「……でも、本来なら、もうこの記録は残っていないはずなの。何代か前の王が、“運命に関わる研究は禁忌”と定めたから。書物も記録も、すべて封印か焼却されたはず……」

つまりこれは、処分を免れて密かに隠されていた“禁書”だ。

リュミエールの指がページを滑り、ひとつの文を指し示す。

「塔には運命を結びし力が眠る。結ぶ者、導く者、破る者……
その鍵を持つ者がすべてを左右せん」

「“運命を結びし力”って……具体的には?」

俺が問うと、王女は一呼吸置いて、視線を落とした。

「……“塔”には、強大な幻獣──人の意志を読み、姿を変える存在が封じられていると記されているわ。
とても古くて、言い伝えにすら残らなかった幻の存在」

「姿を変える……?」

「たぶん、人の心や記憶に反応して、“願いに近い姿”を取るのかも。だからこそ……危ういの」

彼女の瞳は、わずかに陰を帯びる。

「この記録……私も、父も、宮廷の記録官も知らなかった。
“禁忌”という言葉すら記されていないのは、歴史から消されたから。そうでもしなければ、塔に眠る存在は本当に危険だったのよ」


その時、扉の外から、急ぎ足の気配とともに、侍女の声が響いた。

「姫様! 王城の周囲で、小型の幻獣が暴れています! 衛兵たちが対応中です!」

一瞬、部屋の空気が凍った。

幻獣──ふつう、王都には近づかないはずだ。
それがこの“封印の鍵”に触れた直後に出現するなんて、偶然とは思えない。

俺とリュミエールは顔を見合わせ、無言のまま合意する。
塔の力が……目覚めようとしている。


リュミエールは、ゆっくりと窓辺に歩み寄り、白いレース越しに遠くの塔を見つめた。
午後の光に照らされたその影は、まるで何かを“呼んでいる”かのようだった。

「塔の封印が……本当に揺らいでいるのかもしれないわ」

その声には、不安だけでなく、決意がこもっていた。


そして彼女は、ふいに振り返り、俺の目をまっすぐに見た。

「カイル……お願い。私と一緒に来てほしい。あの塔へ」

その眼差しに、偽りはなかった。
俺は言葉より先に、自然と頷いていた。

「……もちろん、行きます」

リュミエールはほっと微笑むと、控えていた騎士と侍女たちに向かって声を上げた。

「彼も私の同行者です。騎士団には、最大限の警護をお願いします」

「畏まりました!」

兵たちの背筋が、ピンと伸びる。

王女の言葉だけでなく、“彼女が選んだ者”として、俺が認められた……そんな空気を感じた。


そうして、手つかずの焼き菓子と蜂蜜茶が、午後の陽だまりにそっと残されたまま。
冒険の予感だけが、甘い香りの中、確かに満ちていた。
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