内政チートをやってみよう!……まあぼっちですが。

カナデ

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二章 増えた住人達

15話

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「やったぁ!ほら見て、シルバー!水が流れているよ!成功したのよ!ピュラ、スヴィー、それにドォルくん。本当にありがとう!皆が協力してくれたから、完成することができたわ!」

 エーデルドさんが帰ってから、一月と少し経った。やっと昨日、集落まで水路を繋げることが出来た。とは言ってもまだ集落へ流す配水の為の貯水槽までだけどね。


 集落の配置を決めた後、配置図を改めて紙に書き出し、予定地の整地と水路の設置を少しずつ進めた。
 一番最初にやったことは、予定した場所の木を伐ることだ。
 ピュラに指示して貰い、私が木を伐りシルバーが切った木を運んだ。木の根はドォルくんに土を柔らかくして貰い、縄でしばってシルバーに引いて貰って抜く。これの繰り返しになる。

 だけど、いくら建材が必要だとはいっても、さすがにこの作業を私とシルバーでやるには限界があった。木をなんとか切っても、枝を払う必要もあるし、その木をシルバーが空き地へ運んでも積み上げることは出来ない。
 なので、最初の数日で畑の分を拓くのは断念した。木を間引くくらいなら頑張れるが、整地まで考えると無謀だった。

 それを思い知ると水路に本格的に取り掛かった。
 最初に予定していたよりも大分距離が延びるので、とりあえず小川から水を引き、いったん貯水槽を作ってそこに溜め、そこから集落内へ水路を流す。集落を巡った水はため池を作って溜め、そこから小川へ戻す予定だ。
 水路に水を流す為に、高低差が必要だった為だ。

 いつも水を汲む場所から少し上流へ行くと川に段差がある場所がある。最初はそこに木製の配管を作り、そこから集落まで流すつもりだった。
 でも、段差といっても所詮小川だ。私の腰くらいしかない。そこからの高低差だけで集落の中まではどうやっても水を流すことは不可能だ。ならどうするか。そこで貯水槽が必要となった。

 貯水槽は縦型にし、下から小川からの水を注いで上からまた集落の中へと水を流すことにしたのだ。これも逆流しない工夫がいるが、そこは段差をつけることで解決した。
 でも、この貯水槽を何で作るか、で止まってしまったのだ。

 ローマ水道を思い出したけど、石を切り出して持って来るのは私とシルバーだけでは到底無理だ。これもエーデルドさん達が移住してからか、と思っていた時。

「ねえ、リザー。何そんなに悩んでいるのぉ?」
「あ、ドォルくん。ここに貯水槽を作りたいんだけど、石を持ってくれないなって思っていたのよ」
「それってどんなの?石じゃなきゃダメなのぉ?」

 地面から顔を出したドォルくんに、貯水槽がどんなもので、水路に水を流すのに必要な物だということを説明した。
「なあんだ。それなら僕が水を通さない土にしてあげるよぉ。ホラ、リザが前作っていた煉瓦、あれで作ったらどうかなぁ?」
 あっ!その手があったかっ!煉瓦で作れば良かったよね。繋ぎが不安だけど、ドォルくんがやってくれるなら、造れるわ!

「ねえ、それ私が水の流れを作れば必要ないんじゃないのー?川からぐるっと回してまた川に戻すんでしょうー?なら、私が水を流してあげるわよ!」
 ドォルくんときゃっきゃと盛り上がっていると、スヴィーが飛んで来てそう言ってくれた。

「そうね。集落の中の水路は、スヴィーにお願いしなきゃならないと思うけど、ここの貯水槽は設置するわ。ずっとスヴィーに頼る訳にもいかないもの。でも、ありがとう。とってもうれしいわ!」
「んもぉ!リザ、川で待ってるから、水浴びに来るのよー!」
 笑顔でお礼を言ったら、プイとまた川の方へ飛んで行ってしまった。照れちゃって、スヴィーってばかわいいわね。


 こうして地面をシルバーと掘ってそこから以前作っておいた煉瓦と新たに作った煉瓦を並べ、最後にドォルくんに補強して貰うことで無事に貯水槽を設置することができたのだった。
 煉瓦を積み上げている間はシルバーには小川から貯水槽までの間の水路を掘って貰った。これもドォルくんが協力してくれて、シルバーが掘りやすいように柔らかな土にしてくれたので非常に助かった。

  水路はある程度シルバーに掘って貰った後は、私が鍬で整え、木の板で圧迫して土を固めてならした。そこをまたドォルくんに固めて貰って仕上げた。
 あとは木で配管を作り、小川から十メートル程煉瓦と土で角度をつけて設置して固定し、掘った水路と繋げて完成だ。

 ここまで造るのに約一月だ。小川から貯水槽までが百メートル近くあることを思えば、かなり頑張ったと思う。それもこれも、ドォルくんの協力があってこそ、だったが。
 それなのにドォルくんも、ピュラも、水の流れを見てくれるスヴィーも、いくらお礼をいってもいいよって笑うだけなんだよね。
 いつか返せる時が来るといいな。


 予定では、この貯水槽から集落まで水を引く予定なんだけど、ここから先はさすがに移住までには間に合わないだろう。
 でも、貯水槽まで水が来ているので、水には困らなくなっただけでも良かったよね。間に合って良かった。井戸一つだけだと、小川まで毎回汲みに来るようになっちゃうもの。

「ありがとうね、シルバー!シルバーが頑張ってくれなかったら、絶対無理だったわ。本当にありがとう」
「ガウっ!」
「ふふふふ。じゃあ今日は、シルバーも水浴びしてね!キレイにしたら今晩は一緒に寝ようね」

 ぐるぐる言いながら寄り添うシルバーをもふもふする。ぶんぶん降られる尻尾を見ながら、今日までのシルバーの頑張りを思返す。
 毎日毎日、煉瓦を一緒に運んでは、前脚で穴を掘り、木材を運んでは穴を掘ってくれていた。
 ここまで出来たのは勿論シルバーが頑張ったからで、とても感謝しているけど毎日土を掘ってくれたシルバーは、ちょっと土っぽい。ごめんね、シルバー。今抱き着くのは、もふもふでもちょっと抵抗があるのよ……。

「ガウウゥゥウ?」
「いやいや、なーんにも思ってないよ、シルバー!うん、やっぱりシルバーはもふもふ気持ちいいなーって」
 危ない危ない。本当にシルバーは鋭いわよね。ほーらもふもふ。もふもふもふ。
 今日はしっかりとシルバーを洗おう。私だって、かなり埃っぽいもの。こんな日に、エーデルドさんが戻って来るなんて。顔だけは洗ったけど、服が汚れているのは仕方ないわよね。

 予めピュラに、他の森の精霊さんにもエーデルドさんが結界の近くへ来たら教えて欲しいと伝言を頼んでおいたのだ。そうしたら少し前に、エーデルドさんが何人かを連れて結界の近くまで来ているとピュラが知らせに来てくれたのだ。
 そろそろかな、と思っていたところだったけど、本当に急いで意見を纏めて戻って来てくれたんだろうな。

「さ、シルバー。もうそろそろエーデルドさんが着くわ。無理の境まで迎えに行きましょうか」
「バァウ?」
「水浴びは後でね。夕食はキレイにしてから食べたいでしょ。ピュラが今どこら辺まで来ているか見に行ってくれているから、このまま行くわよ」
「ガウっ!」

 さらさらと流れる水音を聞きながら、エーデルドさんが来るだろう向こう側を目指してシルバーと歩き出す。
 この一月と少しの間に、耕した畑に小麦の種を蒔いた。その横を通り過ぎ、集落の中心部への道を辿る。
「結局家の解体もできなかったね。いくらシルバーが頑張ってくれても、私とシルバーじゃ屋根に登って作業するのも大変だものね」
 以前と変わったことといえば、広場に切った木が置いてあることくらいだ。

 この一月は、力不足を実感する期間でもあった。
 シルバーと二人きりだけだったら、家を解体しようとは思わなかったし、森を伐り拓こうともしなかっただろう。この集落の中で、こじんまりと二人で少しずつ快適に暮らせるようにと頑張るだけだっただろう。
 まあ、水路は二人きりでも作ったでしょうけどね。お風呂がかかっているんだもの。

 でも、少しずつ二人でやっても、やはり限界が来ただろうと、今では思う。生きて行くだけならいくらでもできただろうが、新しいことをしようと思うとやはり人手が必要なのだ。
「結局トイレもまだ作れていないしね。これは時間を掛ければ出来るかもしれないけど」
「ガァウ?」
「いいえ。シルバーと二人だけが、嫌だった訳ではなかったのよ。ただ、私一人の力じゃ、やれることは限られていたんだな、って思ったの。もっとやれるつもりでいたのよね」

 シルバーと二人で暮らしても、もっとずっとサクサクと物事を進められると思っていたのだ。でも、それを今回思い知ったことは良かったのかもしれない。ここは私の集落だけど、今度は皆の集落になる。なら皆で力を合わせて作り上げていくべきだったのだから。

「ふふふふ。ねえ、シルバー。どんな人達が来るかまだ分からないし、この集落が変わっていくのは寂しい気もするけれど、でもなんだかとってもわくわくしているの。なんだかお祭りの前の気分なのよ」

 人数がどんどん減るばかりの集落だったけれど、ロムさんが来ていた頃までは麦の収穫が終わると収穫祭が行われた。祭りの時は、みんな笑顔で沢山の料理を並べて騒いでいたのだ。
 その楽しさがまたこの集落に戻って来る。そう思うだけでうれしい気持ちが溢れてくる。

「シルバー、移住を受け入れてくれて、本当にありがとう。これからもずっとよろしくね」
「ガウガウッ!!」

「あー、いたいたリザ!エーデルドさん達が結界を越えたわよ」
「ありがとう、ピュラ!じゃあ急ぎましょ、シルバー!」
 そっと隣を歩くシルバーの頭を撫でると、歩調を速めて歩き出した。

 これで一人とシルバーだけの集落はおしまい。今だけ味わえる寂寥感と期待感をかみしめながら、出迎えに歩いて行った。



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