雌(おんな)

Tosagin-Ueco

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「雌(おんな)」No.11

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            11、
「ほな、旦那さん、どう落とし前つけてくれるか、話、しよか?」
「そやな。あんた、顔も器量良しやけど、体もええ体しとる、見ててほんま惚れ惚れして、ずっと見てしもうた。
 それに、こないして、覗き魔と顔合わせても素知らん顔して、ええ度胸や、どや、儂の女になれ、いや、成ってくれ、お前に、このホテルやる、お前に権利全部やる、お前が切り盛りして、儲けはあんたが八分、儂が二分、で、どないや」
「何かええ話に聞こえるけど、はい、判りました、ほなお世話になります、て股開いたらそれでお終い、ってことやないやろな、ほな、聞くけど、店の女将さん、どないすんね?」
「里子にはもうあの店から出て行って貰う、そこそこの銭、渡したったら里子も納得しよるやろ、何やったら、店、その後、あんたに任せてもええ、条件、同じや、八分二分、や」
「女将さん、口説くときも、今と同じように、八分二分の話、したんやろ。、やけど、うちは騙されへんで」
「お前は知らんやろけど、この辺り、こんなホテル建ててパンパンに連れ込みさせてんの、儂だけやし、他誰も未だ真似出来へん、儂、先見の明、あんね、  
 この辺り、寺町、後何年もしたら、寺、皆、消えて無うなる。進駐軍が、この先、この国、占領したまま、日本に返還せえへん、儂にはそこまで見えてるんや、 
 そないなったら寺なんぞ、進駐軍の一声で、明日にでも取り壊しや、何でて、進駐軍はアーメンの国やで、アーメンの国が、ナンマイダーの寺を放っとくはずがない、ジンムの神様も放っとくはずがない、
神社仏閣、全部取り壊しや、そないなってからでは遅い、儂は、この辺り一帯、儂とこの土地や寺、さっさと取り壊して、料理屋やホテル、建てる、客はなんぼでも来よる、金持ってなんぼでも来よる、皆、朝鮮戦争で銭儲けてるんや、
アメリカはこの先、シナとも、ソ連とも戦争する、ずっと戦争する、日本のえらい人も云うてる、日本はアメリカの防波堤になる、アメリカの巨大不沈空母になって、アメリカ合衆国の一つの衆になるて、そないなったら、いや必ずそないなる、そないなったら、日本中、進駐軍の兵隊だらけになる、
今でも、うちのホテルにどんだけのアメリカ兵が来てる思う?これが、何十倍にも、何百倍にもなるんやで、銭、おもろいぐらい儲かる、せやよって、儂、寺の敷地、全部ぶっ壊して、ホテル、もっと仰山建てる、もっと何階もある高いホテルも建てるんや。
儂、な、ひとに云うたらあかんぜ、進駐軍と心安うやってんね、進駐軍のエライテさんや」
云いながら、谷川は、藤子の体に巻いたタオルを剥がそうとする、
「ちょい待ち、まだ、うちに指一本触らんといてんか、未だ何も話、決まってない、あんたの夢物語、法螺話、聞かされただけや、
 このホテル、いつうちの名義にしてくれる?その前に、女将さん、いつ店から追い出してくれるんや?」
「来月一杯、待ってくれ、何やかやと段取りもあるし、売り買いの締め日もあるよって」
「嘘こいたら承知せえへんからな、うちな、前に、うちに嘘こいた爺さんのあそこ、包丁で切り落としたことあんねんで、そいで、今でも警察に追われてんね、一本が二本切っても、罪一緒や、切ったらもう二度と生えてけえへんねやで、云うとくけど」
「コワイ話すんなや、可愛い顔して」

               
 谷川の大きな腹に敷かれて、藤子は久しぶりの快楽に恍惚としていた、ふと、何かに気を奪られ、目を開けると、天井に一匹の、小さな蜘蛛が、天井に張り付いて、蠢いている、女郎蜘蛛、だった、藤子は、徳田に連れ込まれた旅館で、徳田の頭を腹に抱えて見上げた天井に一匹の蜘蛛を見つけて暫く眺めていた時のことが思い出された。
 不意にその女郎蜘蛛が一瞬に天井一杯に大きく見えたような気がして、藤子は驚いて身が強張った。藤子はその時初めて気が付いた、谷川の背中に、大きな、赤や青、黄色で彩りした女郎蜘蛛の入れ墨、その頭の八つの眼が藤子を睨み、足が今にも藤子に飛び掛からんと身構えている、天井の女郎蜘蛛は、谷川の背中の入れ墨が反射して見えたのか。
 藤子は女郎蜘蛛との奇縁を感じる、
(うちは、何んと無う、女郎蜘蛛に縁が有るんや、その縁がうちにとって、ええのやらわるいのやら…ま、どっちゃでもええ、今は、な、成るようにしか成らん、やろ)
 藤子は、この谷川と云う男、一体、何者んなんやと、ふと思う、寺の次男坊だと聞いているが、たった今、本人が喋ったように、寺の跡継ぎに未練がないようだし、ひたすら金儲け、それも男と女の乳繰り合いで銭儲けを企む、俗に云う破戒坊主、それだけやない、ウソかホンマか、進駐軍のエライ手とも繋がって、何やら商売もしているような口振り…
(ま、今は、この男の背中の、女郎蜘蛛に賭けてみよ、賭ける云うても一銭も元手無しや、うちに有るんは、うちのこの体だけや、こんなもん、なんぼの値打ちもないけど、男に欲しがられる内が華や、どっち転ぶか分らん、判らんけど、何やおもろそうや)
(竜次さん、あんた、さっきの谷川の話、聞いてくれた?うちな、店、持つんやて、あんたとうちの夢やった、小料理屋、信じられへんけど、どうやらほんまにそないなるらしい、まだ、嘘かほんまか判れへんけど、もし、うち、店持ったら、あんた、店の名前、うち、もう決めてんねんで、何んや、と思う?  
 あ、は、云わん、まだ云わんとく、楽しみにしといて、な、うち、店持ったら、そんじょそこらの店より、絶対、店、めちゃ儲けて、大きな店にすんね、 
 あ、もう一つ、云うとく、うちな、さっきあんたも聞いた思うねんけど、パンパン宿もうちの物んになんねんて、えらいツキまくってるけど…女郎蜘蛛さんとのご縁かな?)
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