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四 闇
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紫織の足首の黒い跡は、三日経っても消えなかった。
陰陽寮の見習い・安倍有景が診察に来たのは、四日目の朝であった。若いながらも鋭い観察眼を持つと評判の陰陽師は、紫織の足首を凝視し、眉をひそめた。
「これは……尋常ではない穢れです」
有景が懐から取り出したのは、白い紙で作られた人形と、小さな鈴だった。彼は人形を紫織の足首にかざし、鈴を静かに鳴らす。
「清めの術を試みます」
鈴の音が清らかに響く。すると、黒い跡から微かに煙が立ち上り、人形の表面に黒い斑点が浮かび上がった。
「む……」
有景の表情がさらに険しくなる。
「この穢れ、通常の物の怪のものとは性質が異なります。より深い……より古い闇の気配がします」
縁が心配そうに声をかけた。
「姫君に危険はないのでしょうか?」
「今のところ、生命に直接の危険はなさそうです。しかし」
有景は紫織をまっすぐ見つめた。
「姫君、この穢れを受けたとき、何か特別なことを感じませんでしたか?冷たさ以外に」
紫織は考えた。あの瞬間、怪物が発した言葉。「かえれ」「異界の者」。
「その……物の怪が、言葉を話しました」
「言葉を?」
有景の目が鋭く光る。
「何と?」
「『かえれ』と。そして『異界の者』と」
一瞬、部屋の空気が凍りついた。有景の顔から血の気が引いていくのがわかった。
「それを、誰にも話してはなりません」
声は低く、しかし緊迫していた。
「特に、宮中や貴族方には。そんなことをすれば、姫君は『物の怪に取り憑かれた』と疑われるでしょう」
縁が顔を覆った。
「まあ……なんということ」
「では、この穢れは?」紫織が尋ねた。
有景は人形を懐に収め、立ち上がった。
「浄化の術を試みますが、完全に消すことは難しいかもしれません。この穢れは……『目印』のようなものです」
「目印?」
「はい。他の物の怪が姫君を探すための」
有景は深々と一礼した。
「私は調べを進めます。何かわかれば、すぐに参ります」
彼が去った後、紫織は縁に言った。
「少し、庭を散歩したい」
「でも姫君、お身体が」
「大丈夫です。少しの間だけ」
紫織は厚い単衣を纏い、渡殿を抜けて庭へ出た。秋が深まり、紅葉は最盛期を迎えていた。しかし、その美しさにもかかわらず、紫織の心は晴れない。
彰紋との約束から三日。彼は毎日、密かに連絡をよこしていた。物の怪の動向、陰陽寮の調査結果、そして紫織を元の世界に帰す方法についての手がかり。
しかし、進展はほとんどなかった。
「紫織殿」
振り返れば、彰紋が木陰から現れた。今日は水干姿ではなく、貴族風の直衣を纏っている。変装だろう。
「彰紋さん。どうしてここに?」
「有景が診察に来ると聞き、様子を見に来た」
彼は紫織の足首を見下ろした。
「悪化していないか」
「ええ、でも……消えません」
「有景は何と言った?」
紫織はためらったが、真実を話した。目印である可能性。彼女を狙う他の物の怪の存在。
彰紋の表情が硬くなった。
「ますます危険が迫っている」
「でも、なぜ私が?なぜ『異界の者』を狙うの?」
彰紋はそばの石に腰を下ろし、紫織にも座るよう促した。
「ここ数日、調べてわかったことがある。都で起こっている怪異のほとんどは、『境界』が薄くなっている場所で起きている」
「境界?」
「現世と異界の境だ。通常は見えない、触れられない。しかし何らかの力で弱まっている場所がある。貴女がこの時代に来たのも、おそらくそのためだろう」
紫織は考えた。図書室で触れたあの古書。あの瞬間感じた歪み。
「では、私が来た場所も、そのような『境界』が薄い場所なのですか?」
「そうだろう。そして物の怪たちは、その弱まった境界を通って現世にやってくる。貴女が異界からの来訪者であることを知っているなら、貴女を狙う理由は二つ考えられる」
彰紋は指を折った。
「一つ、貴女を異界に連れ戻そうとしている。二つ、貴女の持つ『異界の力』を利用しようとしている」
「私に力なんてありません」
「ないと言えるか?」
彰紋の目が真剣だった。
「有景が言うには、境界を弱めるほどの力を持つ者が異界から来たなら、その者自身が強大な力の源かもしれないと」
紫織は自分の手を見つめた。普通の女子高生の手だ。特別な力などあるはずがない。
その時、突然、庭の池の水面が揺れた。波紋がひとりでに広がり始める。
「あれは?」
彰紋が立ち上がり、刀に手をかけた。
水面に映るはずのないものが映り始めた。歪んだ建物。光る窓。走る箱のようなもの。
「あっ……」
紫織の息が止まった。
それは、現代の街並みだった。
「紫織殿、これは?」
「私の……私の世界です」
水面はさらに揺らぎ、映像は変わっていく。桜華学園の校舎。図書室。そして――あの古書『平安異聞記』が開かれている机。
「彰紋さん、あれ、私が来たときの……」
その瞬間、水面から黒い手が伸びてきた。
紫織の足首を掴もうとする。
「離れろ!」
彰紋が紫織を引き寄せ、刀で黒い手を切り払おうとした。しかし刀は手を貫通し、水面に突き刺さるだけだった。
手は紫織の足首に触れようと伸びてくる。黒い跡が熱く疼き始めた。
「紫織殿、逃げろ!」
「でも――」
「早く!」
紫織は後ずさりした。すると、手は突然方向を変え、水面の中の『平安異聞記』に向かった。
本のページをめくるように、手が動く。
そして、ある一節を指さした。
紫織は必死にその文字を読もうとした。
『――西より来たりし姫、都の闇を祓う力を持つ。されどその力発露のとき、姫自らも闇に飲まれる危あり――』
「なに……?」
さらに手はページをめくる。
『――姫を護る将、その身をもって闇を封ず。されど代償として――』
そこまで読んだとき、水面が突然渦を巻き始めた。黒い手は引き込まれ、映像は歪み、やがて静かな池の面に戻った。
二人は息を殺して立ち尽くした。
「今の……なんだったの?」
紫織の声が震えていた。
彰紋はゆっくりと刀を納めた。
「境界からのメッセージ……か。それとも警告か」
「あの本、『平安異聞記』。私が図書室で触れた本です」
「その本に、貴女の運命が書かれているということか」
彰紋の顔が青ざめているのに紫織は気づいた。
「彰紋さん、どうかしたの?」
「……いや、なんでもない」
しかし、彼の目には動揺が隠せなかった。あの文章の続きが気になっているのだろう。『代償として』の後に何が書かれていたのか。
その時、遠くから叫び声が聞こえてきた。
「物の怪だ!物の怪が!」
二人は顔を見合わせ、急いで声のする方へ走った。
邸宅の東門に近づくと、家臣たちが騒いでいる。地面には黒い跡が残り、門番の一人が気絶していた。
「何事だ!」彰紋が駆け寄った。
「彰紋様!さっき、黒い影が門を襲い、この者を襲いました!」
「怪我は?」
「傷はありませんが、冷たくなっています。まるで生気を吸い取られたようです」
彰紋が気絶した男の脈を取る。かすかだが、脈は打っている。
「すぐに屋内に運べ。暖かい布で包み、湯を飲ませろ」
下人たちが男を運び去る間、彰紋は門の黒い跡を調べた。紫織の足首の跡と同じ性質のものだ。
「また……私を狙ってきたの?」
紫織の声が小さく響く。
彰紋は立ち上がり、彼女の肩に手を置いた。
「恐れるな。私が護る」
「でも、次は誰かが傷つくかもしれない。門番の方が、私の代わりに……」
「ならば、対策を急がねばならない」
彰紋の目に決意の光が灯った。
「陰陽寮と協力し、境界を強化する方法を探す。そして貴女を元の世界に帰す方法を、一刻も早く見つける」
「でも、あの水面に映った文章……私が力を使うと、闇に飲まれるかもしれないって」
「ならば、力を使わずに帰る方法を探せばいい」
彰紋の言葉は力強かったが、紫織は彼の目尻のわずかな曇りを見逃さなかった。あの文章の続きが気になっている。『代償として』の後に来る言葉が。
夕闇が迫り始めた。
二人は邸宅の中へ戻ろうとした時、紫織はふと東の空を見上げた。
薄暮の中、異様に黒い雲が渦を巻いている。それは自然の雲ではない。不気味な動きで、ゆっくりと都の中心へと向かっている。
「彰紋さん、あれ……」
彰紋も空を見上げ、顔を強張らせた。
「物の怪の気配が、一点に集まっている」
「どこへ?」
彰紋は黙って指さした。
その指の先にあったのは――
宮中の大極殿だった。
都の中心。天皇の住まう場所に、闇が集まり始めている。
紫織は足首の跡が疼くのを感じた。まるで、闇の呼びかけに応えようとしているかのように。
彰紋は紫織の手を握りしめた。
「明日から、計画を変えよう。陰陽寮だけでなく、宮中にも助けを求めねばならない」
「でも、私の正体がばれたら……」
「それでもだ」
彰紋の目は闇に向かって輝いていた。
「都全体が危険にさらされている。そしてその中心に貴女がいる。もう、隠しているだけでは済まされない」
彼の手の温もりが、紫織の冷たい指に染み渡っていく。
「約束しよう。たとえ宮中の全てが敵になろうとも、私は貴女を護る」
その誓いの言葉が、迫り来る闇の夜に、かすかな光として二人の間に灯った。
東の空の黒い雲は、少しずつ、しかし確実に、都を覆い始めていた。
陰陽寮の見習い・安倍有景が診察に来たのは、四日目の朝であった。若いながらも鋭い観察眼を持つと評判の陰陽師は、紫織の足首を凝視し、眉をひそめた。
「これは……尋常ではない穢れです」
有景が懐から取り出したのは、白い紙で作られた人形と、小さな鈴だった。彼は人形を紫織の足首にかざし、鈴を静かに鳴らす。
「清めの術を試みます」
鈴の音が清らかに響く。すると、黒い跡から微かに煙が立ち上り、人形の表面に黒い斑点が浮かび上がった。
「む……」
有景の表情がさらに険しくなる。
「この穢れ、通常の物の怪のものとは性質が異なります。より深い……より古い闇の気配がします」
縁が心配そうに声をかけた。
「姫君に危険はないのでしょうか?」
「今のところ、生命に直接の危険はなさそうです。しかし」
有景は紫織をまっすぐ見つめた。
「姫君、この穢れを受けたとき、何か特別なことを感じませんでしたか?冷たさ以外に」
紫織は考えた。あの瞬間、怪物が発した言葉。「かえれ」「異界の者」。
「その……物の怪が、言葉を話しました」
「言葉を?」
有景の目が鋭く光る。
「何と?」
「『かえれ』と。そして『異界の者』と」
一瞬、部屋の空気が凍りついた。有景の顔から血の気が引いていくのがわかった。
「それを、誰にも話してはなりません」
声は低く、しかし緊迫していた。
「特に、宮中や貴族方には。そんなことをすれば、姫君は『物の怪に取り憑かれた』と疑われるでしょう」
縁が顔を覆った。
「まあ……なんということ」
「では、この穢れは?」紫織が尋ねた。
有景は人形を懐に収め、立ち上がった。
「浄化の術を試みますが、完全に消すことは難しいかもしれません。この穢れは……『目印』のようなものです」
「目印?」
「はい。他の物の怪が姫君を探すための」
有景は深々と一礼した。
「私は調べを進めます。何かわかれば、すぐに参ります」
彼が去った後、紫織は縁に言った。
「少し、庭を散歩したい」
「でも姫君、お身体が」
「大丈夫です。少しの間だけ」
紫織は厚い単衣を纏い、渡殿を抜けて庭へ出た。秋が深まり、紅葉は最盛期を迎えていた。しかし、その美しさにもかかわらず、紫織の心は晴れない。
彰紋との約束から三日。彼は毎日、密かに連絡をよこしていた。物の怪の動向、陰陽寮の調査結果、そして紫織を元の世界に帰す方法についての手がかり。
しかし、進展はほとんどなかった。
「紫織殿」
振り返れば、彰紋が木陰から現れた。今日は水干姿ではなく、貴族風の直衣を纏っている。変装だろう。
「彰紋さん。どうしてここに?」
「有景が診察に来ると聞き、様子を見に来た」
彼は紫織の足首を見下ろした。
「悪化していないか」
「ええ、でも……消えません」
「有景は何と言った?」
紫織はためらったが、真実を話した。目印である可能性。彼女を狙う他の物の怪の存在。
彰紋の表情が硬くなった。
「ますます危険が迫っている」
「でも、なぜ私が?なぜ『異界の者』を狙うの?」
彰紋はそばの石に腰を下ろし、紫織にも座るよう促した。
「ここ数日、調べてわかったことがある。都で起こっている怪異のほとんどは、『境界』が薄くなっている場所で起きている」
「境界?」
「現世と異界の境だ。通常は見えない、触れられない。しかし何らかの力で弱まっている場所がある。貴女がこの時代に来たのも、おそらくそのためだろう」
紫織は考えた。図書室で触れたあの古書。あの瞬間感じた歪み。
「では、私が来た場所も、そのような『境界』が薄い場所なのですか?」
「そうだろう。そして物の怪たちは、その弱まった境界を通って現世にやってくる。貴女が異界からの来訪者であることを知っているなら、貴女を狙う理由は二つ考えられる」
彰紋は指を折った。
「一つ、貴女を異界に連れ戻そうとしている。二つ、貴女の持つ『異界の力』を利用しようとしている」
「私に力なんてありません」
「ないと言えるか?」
彰紋の目が真剣だった。
「有景が言うには、境界を弱めるほどの力を持つ者が異界から来たなら、その者自身が強大な力の源かもしれないと」
紫織は自分の手を見つめた。普通の女子高生の手だ。特別な力などあるはずがない。
その時、突然、庭の池の水面が揺れた。波紋がひとりでに広がり始める。
「あれは?」
彰紋が立ち上がり、刀に手をかけた。
水面に映るはずのないものが映り始めた。歪んだ建物。光る窓。走る箱のようなもの。
「あっ……」
紫織の息が止まった。
それは、現代の街並みだった。
「紫織殿、これは?」
「私の……私の世界です」
水面はさらに揺らぎ、映像は変わっていく。桜華学園の校舎。図書室。そして――あの古書『平安異聞記』が開かれている机。
「彰紋さん、あれ、私が来たときの……」
その瞬間、水面から黒い手が伸びてきた。
紫織の足首を掴もうとする。
「離れろ!」
彰紋が紫織を引き寄せ、刀で黒い手を切り払おうとした。しかし刀は手を貫通し、水面に突き刺さるだけだった。
手は紫織の足首に触れようと伸びてくる。黒い跡が熱く疼き始めた。
「紫織殿、逃げろ!」
「でも――」
「早く!」
紫織は後ずさりした。すると、手は突然方向を変え、水面の中の『平安異聞記』に向かった。
本のページをめくるように、手が動く。
そして、ある一節を指さした。
紫織は必死にその文字を読もうとした。
『――西より来たりし姫、都の闇を祓う力を持つ。されどその力発露のとき、姫自らも闇に飲まれる危あり――』
「なに……?」
さらに手はページをめくる。
『――姫を護る将、その身をもって闇を封ず。されど代償として――』
そこまで読んだとき、水面が突然渦を巻き始めた。黒い手は引き込まれ、映像は歪み、やがて静かな池の面に戻った。
二人は息を殺して立ち尽くした。
「今の……なんだったの?」
紫織の声が震えていた。
彰紋はゆっくりと刀を納めた。
「境界からのメッセージ……か。それとも警告か」
「あの本、『平安異聞記』。私が図書室で触れた本です」
「その本に、貴女の運命が書かれているということか」
彰紋の顔が青ざめているのに紫織は気づいた。
「彰紋さん、どうかしたの?」
「……いや、なんでもない」
しかし、彼の目には動揺が隠せなかった。あの文章の続きが気になっているのだろう。『代償として』の後に何が書かれていたのか。
その時、遠くから叫び声が聞こえてきた。
「物の怪だ!物の怪が!」
二人は顔を見合わせ、急いで声のする方へ走った。
邸宅の東門に近づくと、家臣たちが騒いでいる。地面には黒い跡が残り、門番の一人が気絶していた。
「何事だ!」彰紋が駆け寄った。
「彰紋様!さっき、黒い影が門を襲い、この者を襲いました!」
「怪我は?」
「傷はありませんが、冷たくなっています。まるで生気を吸い取られたようです」
彰紋が気絶した男の脈を取る。かすかだが、脈は打っている。
「すぐに屋内に運べ。暖かい布で包み、湯を飲ませろ」
下人たちが男を運び去る間、彰紋は門の黒い跡を調べた。紫織の足首の跡と同じ性質のものだ。
「また……私を狙ってきたの?」
紫織の声が小さく響く。
彰紋は立ち上がり、彼女の肩に手を置いた。
「恐れるな。私が護る」
「でも、次は誰かが傷つくかもしれない。門番の方が、私の代わりに……」
「ならば、対策を急がねばならない」
彰紋の目に決意の光が灯った。
「陰陽寮と協力し、境界を強化する方法を探す。そして貴女を元の世界に帰す方法を、一刻も早く見つける」
「でも、あの水面に映った文章……私が力を使うと、闇に飲まれるかもしれないって」
「ならば、力を使わずに帰る方法を探せばいい」
彰紋の言葉は力強かったが、紫織は彼の目尻のわずかな曇りを見逃さなかった。あの文章の続きが気になっている。『代償として』の後に来る言葉が。
夕闇が迫り始めた。
二人は邸宅の中へ戻ろうとした時、紫織はふと東の空を見上げた。
薄暮の中、異様に黒い雲が渦を巻いている。それは自然の雲ではない。不気味な動きで、ゆっくりと都の中心へと向かっている。
「彰紋さん、あれ……」
彰紋も空を見上げ、顔を強張らせた。
「物の怪の気配が、一点に集まっている」
「どこへ?」
彰紋は黙って指さした。
その指の先にあったのは――
宮中の大極殿だった。
都の中心。天皇の住まう場所に、闇が集まり始めている。
紫織は足首の跡が疼くのを感じた。まるで、闇の呼びかけに応えようとしているかのように。
彰紋は紫織の手を握りしめた。
「明日から、計画を変えよう。陰陽寮だけでなく、宮中にも助けを求めねばならない」
「でも、私の正体がばれたら……」
「それでもだ」
彰紋の目は闇に向かって輝いていた。
「都全体が危険にさらされている。そしてその中心に貴女がいる。もう、隠しているだけでは済まされない」
彼の手の温もりが、紫織の冷たい指に染み渡っていく。
「約束しよう。たとえ宮中の全てが敵になろうとも、私は貴女を護る」
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東の空の黒い雲は、少しずつ、しかし確実に、都を覆い始めていた。
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