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7巻

7-3

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 街を出て飛んでいく。背中にスライムが乗り、サラは俺の両手にぶら下がる形での移動だ。グリザードの近くにはグリザード河川という大きな水の流れがあるのだが、そこの水系魔物が凶暴になっているようだ。
 釣りに来た人間を襲うわ、退治に来た冒険者を返り討ちにするわ、なかなか強いとのこと。
 到着すると、河川近くをみんなで移動してみる。そのうち、ザバァァと水の中からなにかが跳び上がって俺らの前に着地した。

「ゴォォオオオオ!」

 体長五メートルはあろうかというワニの魔物が大口を開いて咆哮ほうこうしてくる。強靱きょうじんそうなあごと噛まれたらタダじゃ済まなそうな牙、それらを見せて威嚇いかくしているつもりだろうか。
 サイズがデカいので一般人ならひるむだろうが、サラは逆にワクワクした顔をしている。このへん、根っからの戦闘人だな。

「きをつけてください、そのマモノは口からいろいろだすみたいです!」
「教えてくれてありがとうございます」

 スラパチの助言に礼を述べ、サラが大剣を構える。
 にらみ合いが十秒ほど続き、ついに先にワニが仕掛けた。ガチン! と歯を鳴らしてワニが噛みつこうとするが、空振りだ。サラはすでに上に跳躍していて、落下ついでに大剣をズドンと振り下ろす。
 衝撃波みたいなのが発生して、巨大ワニの口どころか胴体まで二つに裂けた。真っ赤な血肉をさらしながら一瞬で死亡する。

「相変わらずの威力でなんか安心した」
「いまのは軽めだったので、耐えてほしかったのですけどね」
「うーん……」

 戦いの女神に愛されてんなこいつ。
 ワニの肉は、使えそうな部分は切り取って黒袋に入れておく。
 しばらく歩くと、今度はまた別の魔物が登場だ。
 タツノオトシゴが川からジャンプして、水をすごい勢いで噴射する水砲すいほうを放ってくる。ただの水とはいえ、当たったら怪我くらいはする。

「おやびん、おいらたちがやります!」
「見ててね、これがあたしたちの修業の成果よ」
「変・身」

 なんとスラパチたちは合体するようだ。一メートルくらいあるビッグスライムに変身したので、俺は拍手した。


「やるじゃねえか」
「まだまだです。ここからがおいらたちのホンリョウハッキです」

 口調がスラパチっぽいし色も青なので、スラパチがベースみたいだ。進化スラパチとでも名付けよう。
 その進化スラパチだが、戦闘力もちゃんと上がっているみたいだ。タツノオトシゴが噴射した水砲に対抗して、こちらも液体を吐き出す。飛距離は十メートルくらいは余裕であるな。
 相手の水砲に威力で勝り、そのまま魔物に液体がかかった。お、なんか水中でめちゃくちゃ苦しんでるな。
 体が溶けていっているらしい。やがてタツノオトシゴは浮いたまま動かなくなった。

「酸か?」
「そうですよ~。硬い魔物でも溶かしますー!」
「へえ、強くなったな」
「おやびんに守られてばかりではふがいないですから」

 他にも特技はあるようで、斬撃、打撃にも強くなっているとか。

「こういうこともできます」

 びちゃ、と不定形な水たまりみたいになったかと思うや、そのまま地面を移動したりする。逆に硬質になることもできる。丸くなった状態で投げてみてくれと言われたので従う。
 近くの大きい岩に全力で投げつけたら、ヒビが入って形が崩壊してしまった。もちろん、岩の方がである。

「全然体は痛くねえの?」
「はい、ぴんぴんです」

 うん、これは普通に戦闘に役立ちそうだ。
 一時間はビッグスライム状態を維持できるというので、相当な進化だと思う。これなら俺がいなくても、他のやつらにイジメられるってことは減りそうで安心した。

「おもしろいものも見れたし、そろそろ帰ろうかね」

 今晩はさっきのワニ肉でも食べてみようか。


 自宅に帰ると、ルシルから報告があった。

「イレーヌの学校の件、話してみたわよ」

 さっそく交渉をしてきてくれたとのこと。行動が早くて助かるね。

「いけそうか?」
「理事長が、おとこまつりで優勝できたら特別待遇を認めるだってさ」
「男祭り?」

 妙な響きに首を傾げると、ルシルが教えてくれる。
 年に一回、男性だけが参加できるバトルロイヤルなのだとか。全員敵、という状態で戦って最後に残ったやつが優勝。
 優勝すると、なんと学校中の女性からキスされるというから俺は驚いたね。なんつーイベントだよ。

「まあキスって言っても、嫌な子は手の甲とか服とかにでもいいのよ」
「いや、それでもすげーけどな」
「まあね、大抵の人は勝利をたたえてほっぺたにするし」
「思春期の男子にはそれでもご褒美だろうな。それで俺も参加していいんだな?」
「優勝してくれないと、イレーヌの件は無理よ」
「オーケー」

 男祭りは来週。魔法学院らしく魔法対戦。
 竜式魔法りゅうしきまほうといままでの戦闘経験を活かせば優勝は間違いないだろう。さすがに学生相手に負けるわけにはいかない。
 しかし、そんなイベントを毎年許容している理事長ってのもすごい人だわ。

「ご主人様、よろしくお願いしますね」
「イレーヌ、任せておけ。それよりサラがワニ仕留めたんだけど、焼けるかな」
「それなら、今日は庭ででも食べますか?」
「いいねー、じゃあ準備するわ」

 天候も悪くないので庭でバーベキューでも楽しもうか。
 ワイワイ食った方がなんだかんだでいからな。


  ◇ ◆ ◇


 俺は丸薬で邪竜に戻れるようになったわけだが、丸薬の残りは限られているし時間制限もある。だから丸薬なしでも戻れるように、毎日寝る前にイメージトレーニングはしているんだが、部分的に邪竜化するくらいはできるようになったんだよな。まあ元が邪竜なので邪竜化ってのは変だけど、人化に慣れちまったからな。
 ともあれ本日もミーシャと一緒に草原に来て、体を戻す訓練をしている。
 ミーシャは獣人じゅうじんなので、爪を長くしたりといった肉体変化は起こせる。そこでアドバイスを受けているわけだ。

「なんかこうさー、あれだよ。体の芯から力が噴き出て、それが溢れ出すイメージをアタシはいつも持ってるにゃー」

 なんとなく感覚はわかる。俺もつばさ尻尾しっぽ、両手までは自由に変形できるんだから、あと一歩ではあるはずなんだよ。

「完全体のときの胴体と頭を想像してみたら?」
「やってみる」

 あの銀色で何者の攻撃も受け付けない肉体、そして多種のブレスを操る頭部。噛みつき攻撃も得意だった。
 どうせなので人間や魔物との戦闘シーンを思い浮かべる。槍で刺されてもビクともしなかったこと、魔王をブレスで倒したときのことなど。

「あーっ、少し戻ってきてるにゃ!」
「おお……」

 足から腹にかけて変化している。頭はどうかとミーシャに尋ねてみる。

「なりかけて……人間に戻って……なりかけて……」

 どうやら邪竜と人を行き来しているみてえ。ここは要練習だろう。一時間くらい頑張ってみる。
 結果、ミーシャに爆笑される結果となった。

「プププ! それ、変すぎるにゃん!」
「どこが?」
「首から下だけ邪竜なんだもん!」

 頭は人間、体は邪竜! なにそれ? ちょっとしたホラーじゃん。ブレス吐こうとしても吐息しかできねえよ。
 これもう新種の魔物として登録するのもありかも。

「ちっ、今日はここまでか。俺の心がもう休めって言ってやがる」
「賛成。しい物食べにいこ~」
「じゃ背中に乗ってくれ。薬使って感覚を覚えておくわ」

 丸薬を呑む。果てしないパワーがみなぎってくる。完全体に戻ると、肉体の奥底から来るなにかを抑えきれず咆吼。

「ヌォォオオオオオオオ!!」
「うわっ、すっごい迫力。かっこいいじゃんジャー」
「ふー、この感じを忘れないようにしよう」
「お邪魔するにゃ」

 ミーシャが背中に乗ったので、そのままグリザード方面へ飛び立つ。やはり人間状態とは飛行速度も違う。
 あっちが気球ならこっちはさしずめ飛行機かね。街に着いたら腹が減っていたので、大通りで飲食店を探す。

「ジャー、あれ見て」
「んーいい店でも見つかったか?」
「違うってば、あの囲まれてるのスラちゃんたちじゃん」

 本当だ、スラパチたち三体が子供に囲まれてるな。スライムってことで、からかわれているのかもしれない。俺は急いで駆けつける。

「おい、そのスライムは俺の従魔じゅうまなんだ。怪我させたりするんじゃ……」

 言葉が詰まったのは、俺の想像していた扱いと現実が違ったからだ。十歳前後の男女が愛おしそうにスラパチたちを抱っこしたり、頭を撫でたりしている。

「あ、おやびーん。おかえりですかー」
「スラパチ、いじめられてたわけじゃないんだな?」
「はい、みんなといっしょにあそんでました」
「あたしたち、最近人気者なのよ。おやびんほどじゃないけどね!」

 スラミがウインクをする。スライムたちが子供たちから人気なことに、俺は素直に納得した。普通に見た目も性格も可愛いからなこいつら。そもそもいままで人気出てなかった方が不思議なくらいだ。

「あー! そっちの姉ちゃん、耳生えてる!」
「えーっ、獣人なのっ」

 子供たちがミーシャを指さして驚く。グリザードに獣人はほとんどいないので、騒ぐ気持ちもわからんでもない。

「え? あー、あはは、どうかにゃ~」
「猫だ、ぜったい猫だよ!」
「お姉ちゃん耳さわらしてー。一生のお願いだからー」
「なに、獣人だからって馬鹿にしたりしないの?」

 ミーシャがそう言うと、子供たちは不思議そうな顔をする。獣人は差別されがちだけど、そんな概念すらこの子供たちには存在しない。
 それに気分を良くしたようで、ミーシャもしゃがんで耳や尻尾を触らせる。スライムと同じくらい人気だ。
 この人気者の中にいると、俺だけ場違いな気がしてくるな。一応俺も銀竜教徒ぎんりゅうきょうとにはすさまじい人気を誇るのだが、やはり純粋な子供人気が欲しい気もする。

「俺もさ、結構珍しい頭してると思わねえ? 銀色とかあんまいないでしょ?」
「いないねー」
「特別に今日は、触ってもいいんだぞ」
「けっこう」

 急に大人みたいな口調で冷たくあしらわれました。なにそれ、どうして俺にだけそんな冷たいんだよ。
 俺だって尻尾とか生えるんだけどね。普通に落ち込むわぁ……

「ねーねー、スラちゃん。おうち来てもらえない?」

 七、八歳くらいの女の子がスライレにそうお願いする。

「……ボク? どうして……?」
「お姉ちゃんがね、びょうきでお外でれないの。スライムが大好きだから、来てくれたら元気になるかなぁって。お願い」

 手を合わせて頼み込まれたスライレは、ぴょんぴょんと跳ねて俺の足下にやってくる。

「おやびん。行ってもいい?」
「もちろん。一応保護者的なあれで俺らも行ってもいいかね」
「うん、お兄ちゃんたちも来ていいよっ」

 そう女の子に許可をもらった。スライムたちをだまして拉致らちするとかはないと思うが、念のために俺とミーシャも同行する。
 全員で女の子の家に向かう。女の子は、ミアって名前だと教えてくれた。

「ミアの姉ちゃんはなんの病気なのよ?」
「うーんとね、いっぱい熱がでて、血も吐いちゃうんだ……それから肌にいっぱいボツボツがでるの」

 子供だから病名はわからないのだろう。ミーシャは心当たりがあるのか、けわしい表情をする。

悪熱痘瘡おねつとうそうかも。だったら、ちょっと良くない……」

 症状を教えてもらうと天然痘てんねんとうに似ているとわかった。ただ感染力は非常に弱いので、それが唯一の救いだとか。突然発症することが多く、原因もよくわかっていない。
 ミアの家は、裏通りの隅っこにひっそりとたたずんでいた。お世辞せじにも立派ではなく、住民の平均を下回る暮らしをしているのは容易に想像できた。
 ドアを開けると古くなった蝶番ちょうつがいがギィと耳に優しくない音を鳴らす。両親は仕事に出ているらしく、居間には誰もいない。ミアに案内されて奥の部屋にみんなで移動する。

「……ミ……ア?」
「お姉ちゃん、スライム連れてきたよ!」

 元気そうにミアは言うが、俺たちは同じようにはできない。ベッドに寝ていた少女の容体は相当に悪い。顔を含めて体中に包帯が巻かれているのだが、至るところがうみと血で汚れていた。
 顔立ちもよくわからない。呼吸も荒いな。

「スライム……連れてきたって?」
「前にまちで見つけたって言ったでしょ? 今日お願いして家まで来てもらったんだ」

 ミアに抱っこされて、スライレがお姉ちゃんと会話をする。

「ボク、スライレ」
「本当にスライムなんだぁ。可愛い」
「触っても……いいよ」
「うん」

 お姉ちゃんがスライレを愛おしそうに撫でる。スラパチとスラミも横で、病気に負けないで、なんて励ましの言葉をかけている。
 少し離れたところで、俺はミーシャとその光景を眺める。

「あの病気、すっごく辛いんだよ。治癒薬はあるけどものすごく高いから、貴族でもない限りまず買えないの」
「こんな寂しい部屋で、苦しんでるのを見るのは忍びないな。まだ十二、三くらいだろうに」
「お金がないと、なかなかなにもできない世の中だよ」

 ミーシャの言葉が妙に重く響く。こっちの世界では、テレビで寄付金呼びかけるなんて技も使えないだろうしな……

「嬉しい……ミア、ありがと。スライレも、ありがとう」
「お姉ちゃん、体いたくない?」
「うん、みんなのおかげで全然痛くないよ」

 お姉ちゃんが頑張ってVサインを作ったところで、時は満ちた。

「ミーシャ」
「はいよ~」

 ミーシャが空の小瓶の口を開けて、俺の顎下あたりに備える。ポタポタと順調に涙が溜まっていく。ええそうですよ、涙腺崩壊ってやつですわ。
 ミアとお姉ちゃんの姉妹愛の破壊力はすごすぎた。スライレが悲しそうな顔でやってきて、俺をうるんだ目で見上げる。

「……おやびん、助けてあげてほしい、な」
「その準備はできている」

 俺は涙の入った小瓶をミアに渡して、お姉ちゃんに飲ませるように教える。
 結論から言うと、邪竜の涙はちゃんと効いてくれて、お姉ちゃんは病気になる前の姿を取り戻した。化膿かのうした皮膚も完璧に快癒かいゆして、体のだるさも抜けたみたいだ。

「良かったな、でも念のため、今日明日くらいは安静にしていろよ」

 そう告げて俺は家を出ていく。お姉ちゃんはなにかお礼がしたいと言ってきたけど、必要ないと遠慮しておいた。
 帰り道、スライレがいままでにないほどのハイテンションではしゃぐ。

「ボク、嬉しいっ。またミアたちに会いにいく」
「いいじゃねえか。仲良くしてやれよ」
「ありがとう、おやびんのおかげで皆幸せになった……!」
「そう? んじゃお礼に帰ったらマッサージでも頼むわ」

 ハイジャンプしてイエスだと意思表示するスライレ。スラパチも嬉しいことを言ってくれる。

「おやびんがよわったら、おいらがカンビョウしますね?」
「心強いね~」
「アタシもやるにゃー。食事もフーフーして食べさせてあげる!」
「そいつはどうも」

 こいつらと話していると、病気になるのも悪くないような気がしてくるから困るね。




 3 イレーヌの冒険


 日射しの厳しい昼下がり。
 イレーヌは一人で街を散策していた。
 グリザードはやはり暑いので少し動くと汗ばんでくる。今日のイレーヌは風通しの良い半袖に膝丈のスカートを穿いていたが、もう少し露出度の高い服でも良かったと後悔する。
 すれ違う女性の中には、タンクトップのような物しか着ていない大胆な人も多い。
 そのうちチャレンジしてみようと思いつつ、小道へと入っていく。
 建物の密集する細道は熱気あふれる大通りに比べるといくらか涼しい。家々が陽光をさえぎってくれるというのもあるだろう。
 この家はどういった家族構成でどんな生活をしているのか? などと想像を働かせると、道を歩くだけでも飽きない。

「あそこは……」

 イレーヌが注目したのは、民家よりは大きな一階建ての家。公園のように大きな庭があり、そこで子供たちがはしゃぎ回っている。
 十人以上もいるから、一般家庭ではないのだろう。

「孤児院に興味があるのかしら?」

 不意打ち気味に声をかけてきたのは、美しい水色の髪をした女性。受付嬢の制服を着たシエラだった。

「あっ、こんにちは。シエラさん」
「こんにちは。よく会うわね。今日は彼は一緒じゃないの?」
「ご主人様は家で寝てます」
「そう、あの人らしいわね」

 イレーヌは、シエラが大量の食べ物が入った買い物袋を持っていることに気づく。

「それ、お一人で食べるのですか?」
「まさか。そこの孤児院に届けるのよ。良かったらアナタも来てみない」
「良いんですか?」
「悪かったら誘わないでしょう」

 そりゃそうだと納得しつつイレーヌはシエラのあとを追う。敷地内に入ると、子供たちがワーッと一斉にシエラに駆け寄ってきた。

「シエラねーちゃん! なんか持ってきてくれたのー?」
「果物やお菓子を持ってきたわ」
「ういやあああーー!」
「いやっほーーーい」
「ありがとーっ、おねーちゃん」

 子供たちが跳ね上がって喜ぶ。その光景をイレーヌは微笑ましく眺めながらも、子供たちとシエラの関係性が気になっていた。
 そんなイレーヌの思考を読み取ったようにシエラは説明する。

「孤児院を援助する助成会じょせいかいっていうのがあって、私はそれに参加しているの」

 グリザードでは、恵まれない環境下にある子供たちを救うために、孤児院が街中にいくつも建てられている。
 子供の未来を大切に思うフォード公爵は、税の一部を使い孤児院を支援しているのだが、満足に行えているとは言い難い。魔物対策など他のところに予算が持っていかれるからだ。
 そこで助成会を作り、民間から援助者を募集している。助成会に参加すれば、公爵が所有する貸し家などを安く借りられるようになるのだが、やはりボランティアの側面が強いため参加者はそう多くない。

「シエラさんは子供がお好きなんですね」
「そうでもないわ。別大陸だけれど私も孤児院育ちだったから。それでなんとなくね」
「シエラねーちゃん果物たべてもいい?」
「その前にこっちのお姉さんに挨拶しなさい。彼女はイレーヌよ」
「「「「こんにちはイレーヌねーちゃん!」」」」
「こんにちは!」

 子供たちにつられて、イレーヌの声も大きくなる。イレーヌは子供が大好きなので胸が自然と弾んだ。


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