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勘違い【グラッスリド】
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キッチンの隅で座って食事をしているミラフィーナを見て、グラッスリドは自分を殴りつけたくなった。
こんなところで、一人で少女が食事をしていたなんて。
何日も気が付かなかった。
自分の分の食事は用意されていたから、彼女も食べているのだと思っていた。
だが、彼女が持っているのはパンだけで、机すら使っておらず床で膝を抱えてちまちまと固く古くなったパンをかじっていた。
まさか自分も食べたら、怒られるとでも思ったのだろうか。
ミラフィーナが来てから一か月。
少しずつ、部屋や廊下、至る所がきれいに掃除されていき、自分がしてしまったことを見せつけられているようだった。
それが嫌で、余計に研究室にこもっていた。
早く返さなければ、という思いも当然あった。
しかし、こんな生活をさせていいはずがなかったのだ。
「それは、硬いだろう」
それなのに、彼女にかけた自分の言葉は馬鹿みたいだった。
なのに。
自分を見て笑みを見せたミラフィーナは、自分の姿に疑問を抱いていないようだった。
「パン、とても美味しいです」
屈託もなく笑うミラフィーナに、グラッスリドは自分の間違いを知った。
これが、彼女の常態なのだ、きっと。
召喚してしまった夜に出したココアを一口飲んだ時の、信じられないという顔。
最初の朝、大事に飲んでいたスープ。
震える声。
帰りたいと口にしない、不安げに揺れる瞳。
「椅子に座れ」
焦って口にした言葉に、彼女の身体がこわばったのがわかった。
「は、はい」
「違う。間違った。しばらく人とまともに話していないんだ、許してくれ。……一緒に食事をしたい、という事を伝えたかったんだ」
言い訳がましく首を振って口にするが、返事は帰ってこなかった。
「ミラフィーナ?」
「えっ、わ、たしの、なまえ……」
驚いたように顔をあげたミラフィーナに、グラッスリドは安心させるように微笑んだ。
今度はちゃんと、優しい顔をできていたはずだ。
「ミラフィーナ、一緒に食事をしよう。ちゃんと、時間を合わせて」
「……わかりました」
硬い顔で頷いた彼女に、確信は深まった。
失敗も積み重なったのがわかったが。
「お前は、自分で決めていい。ただ、俺の希望を言わせてもらえば、一緒に食事ができるといいと思った。……研究の区切りにもいいだろう、いつも食べるのも寝るのも、忘れてしまうんだ」
「それは、身体によくありません」
「そうだ。だから、どうだろう。それに、一緒に食べると、より美味しいと思うんだ」
この少女に気を使ってほしくなくて、それでも頷いてほしくて馬鹿みたいな言葉を重ねてしまう。
そうしたら、ミラフィーナはぽかんとした顔をしたまま、こくりと頷いてくれた。
その仕草があまりにも可愛くて、どうしてだか抱きしめたくなるのを、グラッスリドは必死で抑えた。
その後一緒に食べた食事は、ミアとは違くて、でも温かくて可愛くて美味しくて。
グラッスリドはまるで二百年ぶりに人間に戻ったような気持になった。
こんなところで、一人で少女が食事をしていたなんて。
何日も気が付かなかった。
自分の分の食事は用意されていたから、彼女も食べているのだと思っていた。
だが、彼女が持っているのはパンだけで、机すら使っておらず床で膝を抱えてちまちまと固く古くなったパンをかじっていた。
まさか自分も食べたら、怒られるとでも思ったのだろうか。
ミラフィーナが来てから一か月。
少しずつ、部屋や廊下、至る所がきれいに掃除されていき、自分がしてしまったことを見せつけられているようだった。
それが嫌で、余計に研究室にこもっていた。
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しかし、こんな生活をさせていいはずがなかったのだ。
「それは、硬いだろう」
それなのに、彼女にかけた自分の言葉は馬鹿みたいだった。
なのに。
自分を見て笑みを見せたミラフィーナは、自分の姿に疑問を抱いていないようだった。
「パン、とても美味しいです」
屈託もなく笑うミラフィーナに、グラッスリドは自分の間違いを知った。
これが、彼女の常態なのだ、きっと。
召喚してしまった夜に出したココアを一口飲んだ時の、信じられないという顔。
最初の朝、大事に飲んでいたスープ。
震える声。
帰りたいと口にしない、不安げに揺れる瞳。
「椅子に座れ」
焦って口にした言葉に、彼女の身体がこわばったのがわかった。
「は、はい」
「違う。間違った。しばらく人とまともに話していないんだ、許してくれ。……一緒に食事をしたい、という事を伝えたかったんだ」
言い訳がましく首を振って口にするが、返事は帰ってこなかった。
「ミラフィーナ?」
「えっ、わ、たしの、なまえ……」
驚いたように顔をあげたミラフィーナに、グラッスリドは安心させるように微笑んだ。
今度はちゃんと、優しい顔をできていたはずだ。
「ミラフィーナ、一緒に食事をしよう。ちゃんと、時間を合わせて」
「……わかりました」
硬い顔で頷いた彼女に、確信は深まった。
失敗も積み重なったのがわかったが。
「お前は、自分で決めていい。ただ、俺の希望を言わせてもらえば、一緒に食事ができるといいと思った。……研究の区切りにもいいだろう、いつも食べるのも寝るのも、忘れてしまうんだ」
「それは、身体によくありません」
「そうだ。だから、どうだろう。それに、一緒に食べると、より美味しいと思うんだ」
この少女に気を使ってほしくなくて、それでも頷いてほしくて馬鹿みたいな言葉を重ねてしまう。
そうしたら、ミラフィーナはぽかんとした顔をしたまま、こくりと頷いてくれた。
その仕草があまりにも可愛くて、どうしてだか抱きしめたくなるのを、グラッスリドは必死で抑えた。
その後一緒に食べた食事は、ミアとは違くて、でも温かくて可愛くて美味しくて。
グラッスリドはまるで二百年ぶりに人間に戻ったような気持になった。
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