扉の向こう

笹木紅

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近づく足音

暗闇の中で

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私は眠りについた。今日はなんか疲れた。部活にだって行ってないし、寄り道だってしなかった。変わったことといえば、東雲くんにガツンと言ってやったことぐらい。帰り道、神経を研ぎ澄まさせてきたからだろうか。気づいたらいつもより2時間も早く布団をかぶっていた。

                    *

鍵を手に入れたのは、1ヶ月前。
彼女が部活に行っている間に鞄から抜き取っておいた。怪しまれるので合鍵を作って次の日には戻した。
それから何度かこの家には入っている。家具を動かしたりなんてしてないし、なにかを盗んでもいない。ただ、入っただけ。だから、誰も僕の存在に気づいていない。いや、しいて言うならこの家の部屋の位置を確認して見取り図を作った。あとは、盗聴器を仕掛けて家族の行動を探った。

電気が消えた。1時間前。そろそろいいだろう。僕は鍵を握り締めた。
鍵穴に入れ、回した。もちろん開いた。中に入った。僕は行動を起こした。

                     *

その日私は焦った。
お昼休み、弁当を忘れた私は購買にいた。メロンパンを持ち、会計レジに並んでいた。財布を開き何気なくカードが入っているところを見ると、いつもは入っているはずの保険証がなかった。違うところに入れたのかと、全て見てみたがどこにもなかった。私は特に病気もしないし、ケガをするような部活に入っているわけでもないので今すぐ必要ではないが、あれを悪用されては困る。落としたとすれば、一昨日のコンビニか昨日のここ。購買だった。しかし、昨日は帰ってから財布を開いた。母さんにお釣りを返すため。その時にはあったと思ったが、それから今まで財布は開いていない。つまり、なくしたのは今日ではない。どうするべきか。取り敢えず、母さんに連絡をして、このことを伝えなくては。そう思ったが、家も一応探してからにしよう。今日も部活は休んだ。
家に帰ると、母さんはいなかった。多分今日はお花の教室。さて、探そう。
2時間かけて、家中を探したが、結局見つからなかった。その日私は母さんに散々心配をかけたが、次の日その母さんがあっけなく見つけてくれた。

あったわよ。保険証     ソファの下に
もう、なくさないでよね。

と、書かれていた。おかしいな、私も昨日ソファの下は探したのに。見逃した?暗くてよく、見えないし。
でも、私の保険証はあることを目的に悪用されていたのだ。だか、そんなことは
この時の私には知る由もなかった。

















今でもあの頃のことを思い出す。
私の青春時代と言われると、真っ先にあの頃のことが頭をよぎる。青春なんかじゃないのに。私はただ巻き込まれただけ。そう思いたかったが、あの事件を引き起こす引き金をひいたのは他でもない。私だ。なんてことない日常の中でも人は誰かの恨みを必ずかっている。そう思い知らされた。





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