1 / 1
初恋
はじめまして
しおりを挟む
「僕、佐藤伊織っていうんだ。
よろしくね?」
……………………………
「うん。よろしく。私は華野眞奈美。」
初めて勇気を出せたのは多分この時。
それまでの僕は、臆病者で勇気なんて言葉が一番似合わない人間だった。
これは僕と彼女の初恋の物語。
「佐藤ってさ、なんか存在感ないよね。
いじめられてるわけじゃないけどさ…」
「うん。その……なんていうかいじめがいもないって感じで。」
「ま、よーするにさ。
つまんない人間ってこと!」
こんな理由で僕はクラスメートに避けられていた。
つまんない人間。存在感がない。
近づくと不幸になる。そんな勝手な理由だ。
最近僕の通る通学路に野良犬が住み着いているらしい。
僕は嫌われているのか毎度毎度吠えられる。僕は家で犬を飼っているからどちらかというと動物に好かれるタイプだと思ってたけど…。そして、その犬が来た頃には見かけなかった同い年位の女の子がその犬に餌をあげている。
「はい。今日はちょっと少ないけど…。
ごめんね、こんな物しかなくて。明日はお前の好きな犬缶持ってきてあげるから今日は我慢してね…………。」
なんて言いながら子犬とじゃれている。
ワンワンワンワンワンワンワンワンワン
ハッ!
タタタタタタタタタタタタッ
僕が通ると必ず悪いことをしたかのようにそそくさと逃げ帰ってしまう。
僕はクラスメイトや子犬以外にも見知らぬ女の子にまで怖がられるような容姿なのか。
ー1週間後ー
リーのエサなくなっちゃった!
今日の晩の分ないから、帰り買ってきてね!
あと、今日の晩ご飯ハンバーグだけどいいよね?
じゃ、忘れないでよね!?
伽奈帆
伽奈帆というのは僕の姉。
リーというのは僕の家で飼っている犬。
うちは母さんがいない。父さんは単身赴任しているから家には僕と姉と兄と妹の4人で暮らしている。
学校の近くにある薬局で犬缶を3つ買うといつもの道を通って帰る。
今日はあの女の子は見当たらなかった。あの野良犬は物欲しそうに僕の提げている袋を見つめている。
「腹減ってんのか?」
クゥ~ン
「………。これ、食うか?」
ワン
野良犬も子犬の頃はかわいいんだな。
そんなことを考えながら子犬を見つめていると……。後ろで物音がした。
ザッ
振り向くとそこにいたのはあの女の子だった。
「あ。きみ………。」
下を向いて落ち込んでいる。
「あぁごめんね。きみいなかったからこいつお腹空いてたみたいだし……………。余計なことしちゃったね。ほんとごめん。これからはこんなこと……」
「いぇ!ありがとうございます。
今日、学校が長引いちゃって。野良犬って一度エサをあげたら続けてあげないとダメだし…時間だって大幅にずれたらダメなんです。だから助かりました。でもこれからはこんなことしなくてもいいので。お願いですから私からこの子まで奪わないでください。すいませんけどそこをどいてください。」
「…………………………。」
ワンワンワンワンワンワンワン
「ねぇ。この子まで奪うなってどういうこと?」
………………………………………
「あ。ごめんね。じゃぁ僕行くから。
あんまり遅くまでいたらダメだよ?危ないからね。」
「この子のお母さん。保健所で殺されたんです。」
……………………「それって!」
女の子はこの子の母親の過去をぽつりぽつりと話し始めた。自分を責めながら。
「雑種だったから。野良犬だったし誰も拾ってくれなくて……。私の家でも飼ってあげられなくて。兄が動物アレルギーだったので。それでも兄はこの子の母親がかわいくて薬を持ってよく家族でここに来ていました。でも学校帰りに兄とここによったある日。その犬はいなくて。隣の家のおばさんに保健所に連れて行かれたって聞いて……。兄は自分を責めてました。俺が動物アレルギーだったばっかりにって。それから兄はほんとに動物に近づかなくなったんです。あの事を思い出すのが怖いんだと思います。だからあの子に子どもがいる事も知らないんです。この子を兄に会わせてあげたいんですけど兄はこの道を通ること事態もしなくなったんです。」
「………………。」
急に重くなった空気を僕はうまく吸えないでいた。だって多分その犬に僕は会っている。
「すいません。こんな暗い話ししちゃって。」
「僕。学校の通学路がここなんだ。だから多分その犬のこと知ってる。とんと見なくなったと思ってたけど…。そんなことがあったんだね。じゃぁこの子はその犬の子どもなんだ。なんか久しぶりな感じがするよ。」
「会ってたんですね。
私、この子が保健所に連れて行かれるんじゃないかって思ってました。あなたによく吠えてるからあなたがこの子を連れて行くんじゃないかって。違ったんですね。」
「僕もこの子の世話……手伝っていいかな?この子の親とは少し遊んだこともあるし。僕の家でも犬飼ってるんだけどその子も野良犬だったんだ。この子と同じ位の大きさで。この子のことなんかほっとけないよ。」
「はい!ありがとうございます。」
「敬語はよしてよ。同い年位だろ?
僕、佐藤伊織っていうんだ。
よろしくね?」
…………………………………
「うん。よろしく。私は華野眞奈美。」
僕が彼女。華野眞奈美に恋した瞬間だ。
よろしくね?」
……………………………
「うん。よろしく。私は華野眞奈美。」
初めて勇気を出せたのは多分この時。
それまでの僕は、臆病者で勇気なんて言葉が一番似合わない人間だった。
これは僕と彼女の初恋の物語。
「佐藤ってさ、なんか存在感ないよね。
いじめられてるわけじゃないけどさ…」
「うん。その……なんていうかいじめがいもないって感じで。」
「ま、よーするにさ。
つまんない人間ってこと!」
こんな理由で僕はクラスメートに避けられていた。
つまんない人間。存在感がない。
近づくと不幸になる。そんな勝手な理由だ。
最近僕の通る通学路に野良犬が住み着いているらしい。
僕は嫌われているのか毎度毎度吠えられる。僕は家で犬を飼っているからどちらかというと動物に好かれるタイプだと思ってたけど…。そして、その犬が来た頃には見かけなかった同い年位の女の子がその犬に餌をあげている。
「はい。今日はちょっと少ないけど…。
ごめんね、こんな物しかなくて。明日はお前の好きな犬缶持ってきてあげるから今日は我慢してね…………。」
なんて言いながら子犬とじゃれている。
ワンワンワンワンワンワンワンワンワン
ハッ!
タタタタタタタタタタタタッ
僕が通ると必ず悪いことをしたかのようにそそくさと逃げ帰ってしまう。
僕はクラスメイトや子犬以外にも見知らぬ女の子にまで怖がられるような容姿なのか。
ー1週間後ー
リーのエサなくなっちゃった!
今日の晩の分ないから、帰り買ってきてね!
あと、今日の晩ご飯ハンバーグだけどいいよね?
じゃ、忘れないでよね!?
伽奈帆
伽奈帆というのは僕の姉。
リーというのは僕の家で飼っている犬。
うちは母さんがいない。父さんは単身赴任しているから家には僕と姉と兄と妹の4人で暮らしている。
学校の近くにある薬局で犬缶を3つ買うといつもの道を通って帰る。
今日はあの女の子は見当たらなかった。あの野良犬は物欲しそうに僕の提げている袋を見つめている。
「腹減ってんのか?」
クゥ~ン
「………。これ、食うか?」
ワン
野良犬も子犬の頃はかわいいんだな。
そんなことを考えながら子犬を見つめていると……。後ろで物音がした。
ザッ
振り向くとそこにいたのはあの女の子だった。
「あ。きみ………。」
下を向いて落ち込んでいる。
「あぁごめんね。きみいなかったからこいつお腹空いてたみたいだし……………。余計なことしちゃったね。ほんとごめん。これからはこんなこと……」
「いぇ!ありがとうございます。
今日、学校が長引いちゃって。野良犬って一度エサをあげたら続けてあげないとダメだし…時間だって大幅にずれたらダメなんです。だから助かりました。でもこれからはこんなことしなくてもいいので。お願いですから私からこの子まで奪わないでください。すいませんけどそこをどいてください。」
「…………………………。」
ワンワンワンワンワンワンワン
「ねぇ。この子まで奪うなってどういうこと?」
………………………………………
「あ。ごめんね。じゃぁ僕行くから。
あんまり遅くまでいたらダメだよ?危ないからね。」
「この子のお母さん。保健所で殺されたんです。」
……………………「それって!」
女の子はこの子の母親の過去をぽつりぽつりと話し始めた。自分を責めながら。
「雑種だったから。野良犬だったし誰も拾ってくれなくて……。私の家でも飼ってあげられなくて。兄が動物アレルギーだったので。それでも兄はこの子の母親がかわいくて薬を持ってよく家族でここに来ていました。でも学校帰りに兄とここによったある日。その犬はいなくて。隣の家のおばさんに保健所に連れて行かれたって聞いて……。兄は自分を責めてました。俺が動物アレルギーだったばっかりにって。それから兄はほんとに動物に近づかなくなったんです。あの事を思い出すのが怖いんだと思います。だからあの子に子どもがいる事も知らないんです。この子を兄に会わせてあげたいんですけど兄はこの道を通ること事態もしなくなったんです。」
「………………。」
急に重くなった空気を僕はうまく吸えないでいた。だって多分その犬に僕は会っている。
「すいません。こんな暗い話ししちゃって。」
「僕。学校の通学路がここなんだ。だから多分その犬のこと知ってる。とんと見なくなったと思ってたけど…。そんなことがあったんだね。じゃぁこの子はその犬の子どもなんだ。なんか久しぶりな感じがするよ。」
「会ってたんですね。
私、この子が保健所に連れて行かれるんじゃないかって思ってました。あなたによく吠えてるからあなたがこの子を連れて行くんじゃないかって。違ったんですね。」
「僕もこの子の世話……手伝っていいかな?この子の親とは少し遊んだこともあるし。僕の家でも犬飼ってるんだけどその子も野良犬だったんだ。この子と同じ位の大きさで。この子のことなんかほっとけないよ。」
「はい!ありがとうございます。」
「敬語はよしてよ。同い年位だろ?
僕、佐藤伊織っていうんだ。
よろしくね?」
…………………………………
「うん。よろしく。私は華野眞奈美。」
僕が彼女。華野眞奈美に恋した瞬間だ。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
【書籍化決定】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新
7月31日完結予定
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
ぱんだ
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる