シャ・ベ クル

うてな

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人間ドール開放編

第二十三話 ライバルよ!夢を貫け!

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 シャ・ベ クルの部室に一足先に着いた大河。
大河はロディオン達が来るまで席について待っておこうと部室に入ったが、そこには涙を流すセオーネの姿があった。

「誰だ?」

大河はまずセオーネの正体を探りに入る。
セオーネは大河に気づくと、慌てて涙を拭いた。

「セ、セオーネと申します!ここのサークルメンバーで…!あの!何か依頼でしょうか…!」

掠れた声を出したセオーネに、大河は近くの席に着くと言う。

「そうだ。ロディオン達が戻ってくるのを待ってる。」

セオーネはロディオンの名を聞くとしょんぼりし、大河はそんな様子を気にせず質問してきた。

「メンバー全員で行動してるかと思ったらそうでもないんだな。依頼者が来た時の為の留守番か?」

セオーネは難しい顔をすると

「いえ…依頼は用紙に書いて、廊下の依頼箱に入れてもらうので…。私は今日は少し気分が悪いので…」

と呟いた。
大河はそれを聞くと、部室の黒板を見つめて

「そうか。」

と言った。
黒板には『世界を一つに!シャ・ベ クル!!』と、ロディオンの字で書かれている。
大河はそれを見ると軽く溜息をつき、セオーネと共に暫し沈黙した。
一分ほど経つと、ロディオン達が部室にやってくる。

「待ったー?大河!」

とロディオンは入室。
ロディオンは更にセオーネを見つけると、セオーネの顔色を伺った。
セオーネはロディオンに見られると焦り、いつものように振舞う。

「な、なんですかロディオン。」

セオーネの言葉にロディオンは数秒黙ったが、微笑んだ。

「いいや。」

ロディオンはそう言うと、手を叩く。

「さ!お仕事だ!大河のお悩み聞いちゃうぞ~!」

そう言ってロディオンは大河の前に椅子を置き、対面するように座った。
顔を近づけてくるので、大河は顔を離して

「近づくな気持ち悪い!!」

と怒る。
ロディオンはニヤニヤしてるだけなので、大河は呆れた様子で言った。

「んじゃ、さっさと話して帰るからな。」

大河は少しの間、下を向いて机を見つめると言う。

「さっき部室で言ってたろ?俺の将来就く仕事について。…地質学者か弁護士か。」

ロディオンは「うんうん!」と頷くと、大河は続けた。

「親といつも口論になってんだ。親は弁護士になって欲しい、でも俺は地質学者になりたい。」

そして、大河は悔しそうな表情を浮かべると言う。

「弁護士の道を選ばないと、学費を払わないだとか言うんだ。地質学は趣味だけにしとけってよ。
鬱陶しいんだよな正直、やる事をイチイチ指図する親ってもんはよ!過干渉なんだよ!」

「そんな!!」

とロディオンは机を叩いて言った。
大河は机の音に少し驚くが、冷静な表情を保ったまま。
ロディオンは大河に言った。

「そんなの親の都合だろ!大河は地質学者になるのが夢なんだ!地層に触れ、地球の歴史に迫る…大河の夢をなんでわかってあげられないんだ…!」

すると大河はロディオンに言う。

「そりゃ、地質学者より弁護士の方が実用性高いからな。夢の欠片もない親だぜ。」

「地に足が着いてるとも言う。」

と善光。
大河とロディオンがチラッと善光を睨むと、善光は

「なんだよその目は!本当の事言ったまでだろ!」

と言う。ロディオンは大河にヒソヒソと話すように言った。

「善光は夢がある癖に他人の夢を否定するんだよ。酷い奴だと思わないか?」

「上郷は不幸体質なんだろ。こういう頭してるからだろうな。」

二人の会話に善光は

「本当の事を言ってるだけで否定はしてねぇよ!それに不幸体質は関係ないだろ!」

とボールペンで二人を指しながら言うが、二人は善光の話に耳を傾けない。
ロディオンは大河の手を両手で握ると、満面の笑みを見せて言った。

「大河の親に夢をぶち込みに行こうかと思ったけど、善光も並んでぶち込んだ方がいいな。」

「なんで俺も込みになってんだよ!」

善光はツッコミを入れるが勿論二人は聞いていない。
大河はロディオンを見つめていたが、ゆっくりその握られた手を離した。

「ぶち込みにって?俺の親に突撃する気か。」

その言葉にロディオンは真剣な顔で頷くと、大河は溜息をつく。

「いい、俺はそこまで頼んでない。」

しかしロディオンは席を立ってから大河の肩を掴み、揺さぶりながら言った。

「じゃあ誰がこれを解決するって言うんだ!!大河本人が言ってもダメなら!俺にも手伝わせてくれよ!」

すると大河も席を立つと、ロディオンを睨みながら言う。

「余計なお世話だ!自分でなんとかする!」

「学園を辞めさせられるんだろ!?もう大河だけの力じゃどうにもならないんじゃないのか!」

とロディオンも負けじと反論。

「バカ野郎ッ!」

と大河は言う。
ロディオンはそれでも真面目な表情で大河を見つめると、大河は言った。

「……学者は、社会人になってからでもなれる。」

ロディオンはそれを聞いて虚しそうな顔を見せると、続けて大河は言う。

「独り立ちしてからなんとかすればいい。俺は夢を諦める気は無いぜ。」

大河は真摯な様子で言っていた。
それを見たロディオンは、急に口角を上げて微笑む。
大河はその顔を見ると眉を潜めたので、ロディオンは笑顔で言った。

「それも道の一つだよな、近道なんてしなくてもいい。
好きな事は、どんなに道を外しても己の心にあるものだから。
そのくらい強い心があれば、問題ないだろうな。」

ロディオンの言葉に、大河は鼻で「フン!」と言うとロディオンに背を向ける。

「俺に諦めの文字はない。勿論、学園ナンバーワンの座だって奪ってみせる!」

「あ~…別に競ってるわけじゃないんだしぃ…」

とロディオンは言うが、大河はロディオンを指差して言った。

「お前はいつも通りにしてろ!!俺がその内絶対に超えてみせる…!」

ロディオンはその様子に圧倒されそうになっていると、大河は落ち着いて再び口を開けた。

「ありがとな、愚痴ったら気合が入ってきたよ。…正直、毎日親と口論して、親の言う事を聞いて夢を諦めようとも思ってたからよ。」

「大河…」

とロディオンが呟く。
大河は席を立ち去り、廊下への扉を開けて部室から出よう一歩踏み出し言った。

「ポポフも、何があっても諦めんなよ。…志したら絶対に貫け、俺のライバルなんだからよ。」

大河はそう言うと、部室を立ち去ってしまう。
ロディオンはその様子を数秒だけポカンと見つめていると、笑顔になってみんなの顔をキョロキョロして自分の喜びを見せる。

「聞いた!?あれ!きっと告白だよな!?おっぱい揉んでいいって事だよな!?」

瑠璃は顔を引き攣ってしまい、セオーネも瑠璃と似た表情になった。

「誰も揉んでいいとは言ってねぇだろ。何を勘違いしたらそうなるんだよ。」

善光は言うが、ロディオンは話が耳に入っていない様子。

「俺ね~大河となら掃除機プレイがしたいな!」

「なんだよ掃除機プレイって!」

そう言われたロディオンはにんまり。

「気持ちいいんだよそれが…弄ばれてる感じがして!」

「ドMかっ!」

善光のツッコミにニヤニヤしつつも、ロディオンは続けた。

「いやぁまさか大河に告白されるとはな~!嫌われてたと思ってたから安心したよ~!」

善光はそんな様子のロディオンに何を言っても無駄だと感じつつも、小声で言った。

「ま、嫌ってないのは確かだとは思うけどよ。」

ロディオンが喜びに浸っていると、部室に橙華が入ってきた。

「先輩…、親から反対を受けてるのは知ってたけど、まさか悩んでいたなんて…」

「スッキリしたかい?」

とロディオンはすぐに切り替えて橙華に微笑むと、橙華は頷く。

「ええ。これを機に、先輩に近づいてみようかしら。先輩にはきっと支えが必要だわ…」

橙華はそう言って頬を赤らめた。
ロディオンは

「いいじゃん!俺応援するよ!」

と喜ぶと、橙華は更に言う。

「セフレもやめちゃおっかなー!先輩に集中したいし!」

するとロディオンは少し目を見開いて

「オイ!?相性良かったのに残念だなぁ~」

と言うと、橙華は笑顔で言った。

「代わりなんてロディオンならすぐ見つかるってー!じゃね~!」

橙華はそう言うと、小走りで部室を立ち去った。
ロディオンは視線を天井に向けると呟く。

「そう簡単に言われましてもねぇ~」

「お前も好きな人にアタックしてみれば。チャンスだぞ~」

善光は煽るように言うと、ロディオンはムスっとすると

「何の前置きも無しにできないな俺は!」

と言うのだった。
セオーネはその言葉に頬を赤くしてしまうが、次にロディオンと目が合ってお互い恥ずかしそうに目を逸らす。
瑠璃は不機嫌な顔を見せると、善光は悪い空気を感じ取ったのか空気を読むように

「おい、もうすぐ講義の時間だぞ。」

とロディオンに知らせた。

「そうだな!行くか!」

ロディオンと善光は講義に向かい、瑠璃はロディオンを追いかけた。
学園の生徒ではないセオーネには講義がないので、ゆったりと部室で新聞を広げるとロディオンは言った。

「行ってきます。」

ロディオンのその微笑みを見ると、セオーネも微笑んで答える。

「行ってらっしゃいませ。」
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