屍人の陰陽師

うてな

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サトリ編

021 怪しい動き

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講義後、琴爪は大教室の外で翔太郎と対峙していた。

「翔太郎、貴様の苗字は。」

「えっ、ぼ、僕の名前を知っているんですか…!?」

翔太郎は顔を真っ青にして言うと、琴爪は呆れた顔をしてレフを見る。

「貴様の後ろにいる女が何度も言っていたからな。」

(やっぱ見えてるこの人…!)

翔太郎はそう思っていると、翔太郎は視線をできるだけ合わせないようにして言った。

「か、神木間と言います。」

「神木間翔太郎…か。私は琴爪【星夜(セイヤ)】と言う。」

「琴爪さん…だね。」

「単刀直入に言おう、サークル長。貴様のサークルを見学させて欲しい。」

「え…。エェッ!?!?」

翔太郎は突然の話に驚くと、星夜は続けた。

「無理にとは言わんが、早急に返事を頼む。」

「け、見学くらいは別に…」

翔太郎が言うと、星夜は黙り込む。何か不満があるのだろうか。翔太郎は目を丸くして星夜を見つめていると、星夜は翔太郎に詰め寄って言う。

「貴様、無条件で承諾するとは愚かなのか?せっかく人が下手に出ているのだ、そこは何か要求してみるべきだろう。」

熱心にも助言(?)をしてくる星夜に、翔太郎は思わず苦笑。

「で、でもサークル見学くらいで何の条件を…」

「私は与えられたものと相応しいものを返せぬと不満なのだ。早く何か言え、さもなくば首を折る。」

(折っ…この人すっごい怖い…!!ケンくんと同じ無表情キャラだけど…この人は凄く怖い…!!)

重く低い声で言う星夜に、思わず涙目になってしまう翔太郎。怯え切った翔太郎を見ると、星夜は何かに気づいた様子。星夜は翔太郎から離れ、視線を逸らしつつも言った。

「…首を折るは嘘だ。すまん、癖で口走ってしまった。」

(口癖で「首折る」って言っちゃう人は危険そのものなんだよ…!!)

怯えた様子から変わる事がない翔太郎。それを見ている星夜は表情が動かずとも、動きから焦りが伺えた。かける言葉に迷っている表情で、やがて眉を釣り上げて言う。

「なぜ怖がっているのだ!!」

最早その問には、怒りが混じっている。翔太郎は「ひぃっ!」と、小動物の様に怯えていた。そこで動じた様子もないレフが星夜に言う。

「ところで星夜さん。星夜さんは翔太郎さんに何を与えられますか?ほら、魂とか。」

「死の世界観で話すでない。…もうよい、また今度聞く。もう一度考えてみてくれ。」

そう言って星夜は立ち去ってしまうので、翔太郎は星夜の後ろ姿を見つめていた。翔太郎は眉を困らせながらも思う。

(気を使って早めに帰った…?でも、警戒しておかないと…怖そうな人だし…。いやちょっと待って、サークル見学は消しゴムのお礼…でもいいよね…。)

翔太郎は一人で完結して納得していた。





そして立ち去った星夜は、翔太郎が見えなくなると足を止めた。するとズボンのポケットから、ハンカチで包んである物を取り出す。中を開くと、そこには手のひらサイズの欠けた石。
それは正に、海美が持っていたあの石の半片だった。石を見つめると、星夜は呟いた。

「必ず、お前を助ける。」

星夜は石をハンカチに包み、再びポケットにしまう。その瞬間、星夜は貧血でも起こしたのか体のバランスを崩した。膝を着く前に立て直し、壁に手を添えながらもゆっくり立ち上がる。星夜の近くを歩く生徒達は驚いた様子を見せていたが、構内で浮いている彼に話しかける者はいなかった。星夜は冷や汗を流し、息を切らせていた。

「くっ…そろそろ…限界か…」

そして星夜は歩き出し、翔太郎に見られる前に立ち去っていった。





翔太郎が家へ帰った後、レフは首を傾げた様子で考え事。現在地は翔太郎の部屋で、翔太郎は机に向かって勉強をしている様子だった。

「どうしたんですか?レフさん。」

翔太郎がレフに聞くと、レフは言った。

「あの琴爪さんと言う人…知り合いによく似ているのです。」

「知り合い?レフさんの生前の知り合いとかですか?」

そう言われると、レフは難しい表情を見せる。翔太郎も首を傾げてしまうと、レフは首を左右に振って誤魔化した。

「いいえ、やっぱり知らない人です!」

「そうですか。」

翔太郎は気にした様子もなく答えると、再び勉強に集中。レフはそんな翔太郎を申し訳なさそうに眺めながらも、小さく溜息を吐く。何か、言えない理由があるようだ。





場面は変わって。
忙しなく車の巡りが続く都会のド真ん中に馴染む、とある高層ビルにて。頂上付近のビル内では、階の丸ごと人の気配がなかった。更には不気味で薄暗く、幽霊が出るのではないかと感じるほどだ。その中の一室から、この階の静寂をかき消すような声が聞こえてくる。

「また邪魔ぁ?君、全然ヒト殺せてないじゃん。」

この声の主は、室内の社長椅子に座っている。部屋のレイアウトは、机のなく暗いただの会議室。
短髪の赤い髪、水色の瞳を持った男性。その姿はどこか、レフを連想させる見た目だ。しかし幽霊の様に体が透けている訳ではない。
その男性の前には、跪くユリアの姿があった。それ以外にも、この会議室にはポツポツと人が存在するようだ。ユリアは男性に頭を下げながら、男性の話を聞き続けていた。

「本当に望みを叶える気ある?せっかく『僕の力』を分けてあげたのに、使えない屍人。」

それに対し、ユリアは動じた様子もなく言う。

「三回とも、陰陽師に邪魔されたわ。」

「陰陽師?」

「神木間寺の陰陽師の事。どうやら私達と同じ…屍人の霊能者みたい。霊力の強い女の亡霊といたわ、貴方の色によく似た女。」

「…あぁ…、レフちゃんか。」

男性は何か知っているような口ぶりをして、笑みを浮かべて言った。

「レフちゃんと繋がってるのか…なんか危険そう。絶対に始末しないとね、レフちゃんを含め。」

その言葉にユリアが頭を下げると、他の人影の一つが話し始める。

「【黄泉】様。その霊能者を殺す役、私にやらせてよ。ユリアじゃなくて、私の出番でしょ。」

そう言った声は女の声で、見た目は高校生くらいの活発な女性。ピンクに染められたボサボサの短髪、釣った目を合わせたら自信の塊。
ユリアはその女性に視線を向けながら、溜息を吐いた。

「無理ね、貴方は弱いもの。」

そう言われるとその女性はライバル心に火が付くのか、噛みつくようにユリアに言う。

「はぁ?弱くないわ!その霊能者とやらの力を手に入れて…ユリア!あんたの制約を破ってみせるわ!」

「…私に勝てた事、無いくせによく言うわ。」

ユリアにそう言われると、女性は悔しそうな表情を浮かべた。その女性を見た男性…もとい黄泉は、笑みを浮かべて言う。

「いいよ、次は君の番だ。」
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